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資料1



       都道府県労働局雇用均等室が扱った指導事例の概要





事例1 従業員に対する啓発が形式的にとどまっていた事例 



(相談内容)

 A社の忘年会において、男性社員が女性社員の身体に接触するようなゲームが行

われ、参加した女性社員は大変不快な思いをした旨の投書が労働局雇用均等室に寄せ

られた。



(労働局雇用均等室の対応)

 A社のセクシュアルハラスメント防止対策について聴取したところ、A社ではセク

シュアルハラスメントを許さないという方針を就業規則に記載し、就業規則を改正し

た旨の通知を各部門あてに配付していた。また、相談・苦情には人事部が対応する旨

を役員会等で口頭で説明していた。

 問題となった忘年会については、例年、男女の身体が接触するようなゲームを行っ

ていた事実があり、人事部主催により社員食堂で開催したものではあるが、自由参加

であり、参加を断った女性社員もいたことから、参加した女性社員はそうしたゲーム

が行われることは承知の上であったと考えており、職場でのセクシュアルハラスメン

トには該当しないとの認識であった。

 労働局雇用均等室は、A社に対し、問題となった忘年会は社内で開催され、人事部

主催であれば参加を拒否しづらいと考えられることから、実質的に職場の延長線上の

ものと考えられること、社内にセクシュアルハラスメントに関する認識が薄いために

女性が不快に感じるようなゲームが企画されたと考えられること、不快に感じた女性

社員が社内で相談することができなかったことを指摘した上で、講じられているセク

シュアルハラスメント防止対策が形式的であり、従業員に対する十分な周知・啓発が

行われていないことから、実効ある防止対策を講じるよう助言した。



(会社の対応)

 就業規則において、セクシュアルハラスメントを禁止し、懲戒処分の対象としてい

ることを全従業員あて文書で通知し、再度徹底させた。また、従業員のセクシュアル

ハラスメントについての理解を深めるため、セクシュアルハラスメント防止マニュア

ルを購入し、管理職全員に配付した。さらに、管理職全員に対し啓発研修を行い、今

後、一般従業員に対しても順次研修を行っていくこととした。







事例2 相談・苦情窓口が機能せず、適切な対応が行われなかった事例 



(相談内容)

 B社に勤務する複数の女性社員は、男性管理職Cから、不必要に身体に接触する、

性的な発言をする等のセクシュアルハラスメント行為をひんぱんに受けていたが、B

社では、人事総務部門の管理職であるCを相談・苦情に対応する担当者として定めて

いたため、女性社員は相談することができず、Cの上司に、Cの行為をやめさせてほ

しいと訴えた。

 Cは親会社から出向してきている幹部社員であり、B社はCについて人事権を持た

ないことから、上司は「再発させないよう十分気をつけて見守ることにするので、我

慢してほしい」と女性社員に説明するにとどまった。

 女性社員はこの対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。



(労働局雇用均等室の対応)

 B社に対し、被害者に我慢を強いる等の対応は不適切であり、状況の悪化を招きか

ねないことから、放置せず真摯に対応することが重要であり、当事者からの事実確認

を行った上で、必要に応じ席を離す等の雇用管理上の配慮や親会社への報告、就業規

則等に基づく適正な処分等を行うよう助言、指導するとともに、権限をもつ親会社が

必要な対応を行わない場合には、親会社に対しても行政指導を行う旨を説明した。ま

た、利用しやすい相談・苦情窓口とするよう、担当者を複数とする、女性も担当者に

加えるなどの工夫をするよう助言、指導した。さらに、B社はセクシュアルハラスメ

ントを許さないという方針を就業規則に記載していたが、従業員に周知されていなか

ったので、周知するよう助言、指導した。



(会社の対応等)

 上司が改めて複数の女性社員からの相談内容をもとにCに事情を聞いたところ、C

が事実を認めたため、社内のセクシュアルハラスメント防止対策の推進を担う人事総

務部門の責任者としてあるまじき行為として強く反省を促すとともに、親会社に報告

した。 親会社では、Cの出向を解いて親会社に異動させた上で、就業規則に基づき

降格処分とした。

 また、B社では、就業規則の該当部分を全従業員に配付した。さらに、今後は人事

総務部門の女性社員を相談・苦情窓口とし、担当となった女性社員には相談対応のた

めの研修を受講させた。







事例3 事実確認を行わず、拙速な対処をした事例 



(相談内容)

 D社に勤務する男性社員Eは、日頃から女性社員の服装に対して「派手すぎる」

「遊びに行くような格好だ」等の意見を述べることが多く、女性の部下Fは不快に感

じていた。しばらくは黙って我慢をしていたが、会社の取引先企業に勤務する知人に

不満を漏らしたところ、その知人がD社の役員に「女性の服装をとやかく言うのはセ

クシュアルハラスメントではないか」と話したことから、Eは事情聴取や弁明の機会

が与えられないまま「セクシュアルハラスメントを行ったことで、取引先企業に対す

るD社の名誉を毀損したため、就業規則の懲戒事由に当たる」として、1か月分の解

雇予告手当の支払いをもって解雇された。

 Eは、復職は希望しないが、自分の行為がセクシュアルハラスメントであったのか

を知りたいとして、労働局雇用均等室に相談した。



(労働局雇用均等室の対応)

 D社に対し、セクシュアルハラスメントが生じた場合には、迅速かつ正確に事実確

認を行い、それに基づいて適正な対処をしなければならないことを指摘し、今後は迅

速に事実確認し事案に応じて適切に対処できるようにするため、あらかじめ相談・苦

情への対応手順や事後の対応方法を定めるよう助言、指導した。

 また、D社では、社員あての通知により、セクシュアルハラスメントを許さない会

社の方針と、相談・苦情窓口担当者の氏名を明らかにしていたが、セクシュアルハラ

スメントがどのようなものであるか、またその問題点等についての啓発は実施してい

なかったことから、各社員がセクシュアルハラスメントについて正しい認識をもつこ

とができるようにするため、従業員研修を実施するよう助言した。

 また、Eに対しては、相手が不快に感じているにもかかわらず職務遂行上必要のな

い性的な言動や性的とも取れる言動を行うことは、場合によってはセクシュアルハラ

スメントになりうることを説明した。







事例4 セクシュアルハラスメントかどうか判断が困難であるとして、対応

    しなかった事例 



(相談内容)

 G社の女性社員Hは、上司Iから夕食に誘われ、同行した車中で拒否したにもかか

わらず身体への不必要な接触をうけ、その後も執拗に交際を求められたため大変不快

に感じ、社内の相談・苦情窓口担当者に相談した。G社では、当事者双方から事情聴

取を行ったが、Hはセクシュアルハラスメントであると主張したものの、Iは恋愛関

係であると主張し、言い分が対立したため、G社は「セクシュアルハラスメントかど

うか判断できないので、双方で話し合い、決着がつかなければ裁判で解決するように。

Iがセクシュアルハラスメントをしたと司法が判断した場合、Iに対する会社として

の処分を行う」としてHの相談への対応を途中で止めてしまった。

 Hはこの対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。



(労働局雇用均等室の指導)

 G社に対し、たとえ個人的な好意から出た行為であっても、相手が不快に感じてい

ればセクシュアルハラスメントであることを説明し、セクシュアルハラスメントかど

うか微妙なケースであっても、放置すれば就業環境が害されるおそれもあることから、

幅広く対応し、従業員への再度の意識啓発や、客観的にセクシュアルハラスメントを

招きかねない勤務状況があればその改善を行うよう助言した。

 また、IがHへの好意から交際を求めていたのに対し、Hが不快に思いながらも明

確な抗議や拒否をしていなかったためにIが行為をエスカレートさせていったことが

うかがえたため、G社に対し、管理職研修において「相手は、いやだと思っていても、

職場の上下関係を考慮して拒否の意思表示ができない場合がある」といったことも啓

発する必要があること、あわせて従業員研修や従業員の集まる機会等に「不快な性的

言動を受けたときには拒否の意思をはっきり示すこと」についても説明するよう助言

した。



(会社の対応)

 G社では、HがIと同じ部署で仕事をすることが耐えがたいと訴えたことから、両

当事者が顔を合わせて仕事をすることのないよう、Iを他の部署に配置転換した。さ

らに、管理職研修や従業員研修において、セクシュアルハラスメントの被害者にも加

害者にもならないための心がまえも含めて意識啓発を実施した。







事例5 セクシュアルハラスメントはなかったとして適正な対処を行わなかった事例



(事案の内容)

 観光温泉ホテルJ社に勤務する女性社員Kが、タオルや浴衣を補充するため男性用

の脱衣室に入ったところ、男性客から身体に接触される、性的な発言をされる等の行

為をされたため、再び同様のことがあるかもしれないと思うと不安であるとして会社

に相談した。

 J社では、社内の手続きに沿って同僚女性等に対し事実確認のための調査を行った

が、K以外にはそうした相談をした者がいなかったため、Kが過剰に反応したもので、

格式あるホテルの利用者はみな良識ある人物なのでセクシュアルハラスメントは起こ

りえないとしてそれ以上の対応を取らなかった。

 Kは会社の対応に納得せず、労働局雇用均等室に相談した。



(労働局雇用均等室の対応)

 J社に対し、防止の対象となるセクシュアルハラスメントには、行為者が職場の上

司・同僚だけではなく顧客によるものも含まれるものであることを説明し、男性用の

脱衣室で女性社員が一人で作業するといった客観的にみてセクシュアルハラスメント

が生じやすい労働環境は、問題を未然に防止するという観点から見直すよう助言した。



(会社の対応)

 J社は、女性労働者が安心して作業ができるよう、(1)脱衣室内の作業を女性が行

う場合には必ず2人で作業すること、(2)勤務シフト上複数の女性がいない場合には、

他の部署の男性社員が作業に加わること、(3)脱衣室内の作業が迅速に行えるよう、

脱衣室内に「タオル・浴衣の交換のため従業員が入室することがありますがご協力く

ださい」という表示を掲示することを決め、社内に徹底させた。






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