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(別紙)


平成9年12月4日


中央労働基準審議会会長
    花見  忠  殿

中央労働基準審議会     
労働時間部会長   小粥 義朗   
就業規則等部会長  諏訪 康雄   




今後の労働時間法制及び労働契約等法制の在り方について(報告)



 今後の労働時間法制の在り方については中央労働基準審議会労働時間部会において、今後の労働契約等法制の在り方については中央労働基準審議会就業規則等部会において、本年7月2日以後は両部会の合同会議として検討を行い、8月6日にはそれまでの意見を整理して中間的取りまとめとして報告したところであるが、その後、合同会議を13回行うほか適宜公益委員・労働者側委員会議、公益委員・使用者側委員会議を重ねるなどにより検討を行ってきたところである。
 労働基準法は、昭和22年に制定されて以来、経済社会情勢の変化に対応すべく数次の改正を経て今日に至っており、その遵守が企業活動の基本的条件であることが定着し、労働条件の向上に重要な役割を果たしてきているところである。
 しかしながら、我が国の経済社会は内外にわたる環境や構造の大きな変化が進みつつあり、労働条件の向上、維持を図るための新たな政策課題や制度の改善の必要性が生じている。
 具体的には、経済活動のグローバル化が進んでおり、企業の世界的な競争が激化し、国境を越えた経営資源の移動が加速する中で、雇用の維持・創出、豊かで安心できる社会、健全で活力ある経済を実現していくためには、産業、企業が積極的に事業展開できるようにするとともに、労働者も創造的な能力を十分に発揮し、労働を通じて自己実現ができるようにしていくことが重要となっている。
 また、情報化、サービス経済化さらには技術革新に伴い働き方の多様化が進行しているとともに、女性や若者、高齢者を始めとして多様な働き方を求める労働者が増加しており、こうした労働者が意欲を持ち安心して働くことができるようにしていくことが重要となっている。特に、男女共同参画社会の実現に向け男女労働者が共に充実した職業生活と家庭生活を営むことができるよう職場における労働条件や環境の整備を進めることが重要となっている。
 さらに、高学歴化が進み、就業意識やライフスタイルが変化する中で、専門的な知識、技術や創造的な能力をいかし、主体性を持って働きたいという労働者の増加がみられ、こうした労働者の要請に応えつつ、複雑化、個別化する労働関係が公正、妥当なものとなるようにしていくことが必要となっている。
 こうした状況の下で、従来行われてきた労働条件に係る法規制については、求められる効果が今日なお十分に及び得ていないものは実効性を高めるための方策を講ずるとともに、労働条件をめぐる状況の変化により規制の意義が薄れてきているものは率直に見直すことの必要性が増している。
 以上の基本的視点に立って、現行の労働基準法制について、中小企業及びそこで働く労働者等の実情にも配慮しつつ、その実効性を高めるための制度的基盤を強化するとともに、経済社会及び労使の新たな要請に応えるべく、労働者の主体的な選択の可能性を広げ、併せて労働者保護及び職業生活と家庭生活との調和の観点から、労働者が健康で安心して働ける環境の形成を図ることとし、そのための新たなルールを設定することが必要である。
 このような考え方に基づき両部会で検討した結果は、下記のとおりであるので報告する。
 この報告を受けて、労働省において、労働基準法の改正を始めとする所要の措置を講じ、この報告にある諸課題に適切に対処することにより、労働時間法制及び労働契約等法制が新たな時代にふさわしいルールとして定着することが望まれる。




1 労働契約期間の上限等について

 専門的能力を有し、柔軟、多様な働き方を志向する労働者がその能力をより一層発揮するための環境整備に、また、高齢者がこれまで培った能力、経験を生かすための雇用の場の確保に資する観点から、

1) 新商品又は新技術の開発等の業務に必要とされ、当該事業場で確保が困難な高度の専門的な知識、技術又は経験を有する者を新たに雇い入れる場合
2) 新規事業又は海外活動の展開等経営上の必要により一定の期間内に完了することを予定して行うプロジェクトに係る業務に必要とされ、当該事業場で確保が困難な高度の専門的な知識、技術又は経験を有する者を新たに雇い入れる場合
3) 定年退職者等高齢者に係る場合

の3つの場合を法律で規定した上で、これらの場合について、現行では1年とされている労働契約期間の上限を3年に延長することが必要である。
 また、有期労働契約の反復更新の問題等については、その実態及び裁判例の動向に関して専門的な調査研究を行う場を別に設けることが適当である。
 さらに、現在解雇予告の適用除外とされている労働者のうち、いずれも短期の有期労働契約に係るものである2か月以内の期間を定めて使用される者及び季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者について解雇予告制度を適用する意義や実効の有無について、引き続き検討することが適当である。
 本項目については、労働契約期間の上限の延長の対象とするとしている場合について、なお判断、解釈が難しく拡大適用や不安定雇用の増大につながるとの懸念がぬぐいきれないとの意見が労働者側委員からあったので、今後の具体化に当たってはこうした点に留意することが必要である。また、特に高齢者の雇用等を考えれば上限は5年でも良いのではないかとの意見が使用者側委員からあった。


2 労働契約締結時の労働条件の明示について

 現行の「賃金に関する事項」に加えて、

1) 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
2) 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに就業時転換に関する事項
3) 退職に関する事項
4) 労働契約の期間(有期労働契約の場合に限る。)

について、使用者は労働契約の締結時にこれらの事項を記載した書面を労働者に交付することにより明示するものとすることが必要である。
 この場合に、中小規模の事業場において明示が使用者にとって過大な負担となることなく適切かつ確実に行われるよう、労働者の雇用形態別に定型化したモデル様式を作成し、その普及に努めることが適当である。


3 退職事由の明示について

 労働契約の終了時において労働関係の内容を明確にし、また、退職に関する紛争を未然に防止するため、退職労働者から請求があったときは、使用者は、労働関係の終了期日及び解雇により終了した場合はその理由を含め労働関係の終了の事由を記載した書面を交付するものとすることが必要である。
 この場合に、退職事由の明示が使用者にとって過大な負担となることなく適切かつ確実に行われるよう、定型化したモデル様式を作成し、その普及に努めることが適当である。
 なお、解雇をめぐり形成されている判例法理を現行労働基準法に規定することは現状においては適当でないと考えるが、下記103の労働条件紛争の解決援助のためのシステムの運営に当たり、解雇に係る事案を判例法理を基に的確に処理するためのマニュアルを作成し、さらに、これを広く労使に周知、啓発することが適当である。
 本項目については、退職事由として記載すべき内容の実態は多岐にわたるものであり、書面による明示には一定の限界があり、モデル様式の作成に当たり十分な配慮が求められるとの意見が使用者側委員からあった。



4 変形労働時間制の在り方

(1)1年単位の変形労働時間制について
 業務の繁閑に合わせて効率的に労働することを実現するための計画的な労働時間管理が節度をもって行われ、休日の増加によるゆとりの創造、時間外・休日労働の減少による総労働時間の短縮を実現できるよう、1年単位の変形労働時間制が労使の自主的話合いにより活用されることが重要である。こうした観点から、制度導入の要件等に関し、次の1及び2の措置を相関連する一体のものとして講ずることが必要である。

1)休日の確保等に係る措置

 制度導入に当たり一定日数以上の休日を確保するものとすること。
1日又は1週間の最長所定労働時間を延長する場合は延長前より休日の日数を増加させるものとすること。
連続して労働させる日数の限度については、労使があらかじめ合意により定める期間を除き、毎週定期的に休日が確保されるようにすること。
時間外労働を減少させるための措置として、下記61の基準において1年単位の変形労働時間制に関する時間外労働について低い水準を設定すること。


2)所定労働時間の限度等に係る措置

 一定期間を通じた計画的な労働時間管理を業務の繁閑に合わせて行うことにより、閑散期における休日の確保等による総労働時間の一層の短縮を図るため、1日及び1週間の所定労働時間の限度について、労働者の健康、家庭生活との調和を考慮し、所定労働時間が限度に達する期間がいたずらに長期間にわたることのないように配慮することとしつつ、変形期間の長短による区別をなくし1日10時間・1週間52時間とすること。
 業務の繁閑を確実に見通した労働日及び所定労働時間のより適切、的確な設定を可能にするため、労働日及び労働時間の特定について、各期間の30日以上前に特定することを条件として、現行3か月以上とされているところを、変形期間を1か月以上の期間ごとに区分して特定できることとすること。
 各事業場における斉一的な労働時間制度の実施を可能とするため、対象労働者の範囲について、変形期間の中途で採用され、又は退職する労働者も対象とできることとし、これらの労働者については、法定割増賃金について所要の清算措置を講じ不利益が生じないようにすること。


 また、以上の新たに講ずることとした措置を中心に1年単位の変形労働時間制の実施状況を重点的に把握し、当審議会に報告することとされたい。
 本項目については、現行の要件と枠組みで良いと考えており、要件等を見直す必要がないとの意見が労働者側委員からあった。また、上記1の休日の確保等に係る措置の内容の具体化に当たっては、事業運営の実情に即したものとなるよう検討することが求められるとの意見が使用者側委員からあった。

(2)1か月単位の変形労働時間制について
 労使の自主的話合いによる制度の実施を可能とする観点から、導入要件を「労使協定の締結又は就業規則その他これに準ずるものにより定めること」とすることが適当である。



5 一せい休憩について

 労使協定の締結を要件として適用除外とすることが必要である。
 この場合に、既に適用除外の許可を受けている範囲については、引き続き適用除外とする旨の経過措置を設けることが適当である。



6 時間外・休日労働の在り方及び関連事項としての深夜業

(1)長時間時間外労働の実効ある抑制方策について
 次に掲げるような法令上の措置を講ずることにより、時間外労働に関し、労使協定が適正に締結され、実施されるよう、実効ある指導を行うことが必要である。

1) 労働基準法において、時間外労働協定において延長する労働時間の上限に関する基 準を定めることができる根拠を設定するとともに、使用者がその基準に留意すべきこととする責務やその基準に関し使用者に対して必要な指導、助言を行うことという一連の措置に関する規定を設けること。
2) 時間外労働協定の締結当事者である労働者の過半数を代表する者の選出方法及び職制上の地位等を適正なものとするため、これらに関し現在通達で示している内容を下記104のとおり省令で規定すること。


 また、上記1の基準及び2の過半数代表者の選出等に係る措置を含め時間外労働をめぐる実態を重点的に把握し、当審議会に報告することとされたい。
 本項目については、確実な効果を期するため法的規制力を持つ「時間外労働基準」を法律で明記し、当該「時間外労働基準」は当面年間360時間、平成13年4月から年間150時間とすることが求められ、休日労働は4週間につき1日に制限することが求められるとの意見が労働者側委員からあった。一方、上記1の基準の実効性を罰則をもって担保することは適当でなく、また、その基準の具体化に当たっては、予期せぬ経済の変動や事業の継続、維持にかかわるような経営上の重要な事情に対応できるよう検討することが求められるとの意見が使用者側委員からあった。

(2)女子保護規定の解消に伴う家庭責任を有する女性労働者の職業生活や労働条件の急激な変化を緩和するための措置について

 平成11年4月から男女雇用機会均等法等整備法が施行され、いわゆる女子保護規定が解消されることに伴い、家庭責任を有する女性労働者が被ることとなる職業生活や労働条件の急激な変化を緩和するための措置として、育児・介護休業法の深夜業の制限を請求できる労働者の範囲を基本に、そのうち激変緩和措置の対象となることを希望する者を対象として、上記1の基準において通常の労働者よりも低い水準の時間を設定し、3年程度この措置を講ずることが適当である。
 なお、具体的な水準や措置を講ずる期間については、当審議会において時間的余裕をもって検討することが適当である。
 また、上記1の事項と併せて、家庭責任を有する女性労働者の時間外労働をめぐる実態を重点的に把握し、当審議会に報告することとされたい。
 本項目については、具体的水準や措置を講ずる期間の検討に当たっては、「時間外労働基準」が実際に年間150時間となるまでの間年間150時間とすることが求められるとの意見が労働者側委員から、一方、措置を講ずべき期間はあくまで激変緩和措置なのでできるだけ短い期間とすることが求められるとの意見が使用者側委員から、それぞれあった。

(3)代償休日の付与について

 長時間労働による労働者の健康への影響等を考慮し、使用者は、労働者に上記1の基準の範囲内で定める一定の水準を超えて時間外労働を行わせた場合には、労働者の請求により代償休日を付与するよう努めることが適当である。この場合に、代償休日の付与方法等について労使の話合いのよりどころとなる事項をガイドラインとして示すことが適当である。

(4)時間外・休日労働及び深夜業の割増率について

 時間外・休日労働の割増率については、特に中小規模の事業場における労使の自主的取組による引上げの状況や、週40時間労働制の定着状況を見極める必要があることから、平成10年度の実態調査結果を見た上で、引上げの検討を開始することが適当である。また、深夜業の割増率についても、併せて検討することが適当である。
 本項目については、引上げの検討に当たりその目標とする水準と実現の手順を明らかにすることが求められるとの意見が労働者側委員から、また、特に中小企業の実情にかんがみ慎重に検討することが求められるとの意見が使用者側委員から、それぞれあった。

(5)割増賃金の算定基礎からの住宅手当の除外について

 除外賃金とされている家族手当及び通勤手当の取扱いとの均衡を考慮すると、住宅に要する費用に比例して支給される住宅手当については除外になじむと考えられるが、その具体的範囲は、改正法の施行までに引き続き検討を行い、省令により規定することが適当である。本項目については、一時金を割増賃金の算定基礎に算入することも検討することが求められるとの意見が労働者側委員からあった。

(6)その他

 深夜業については、その実態及び健康面への影響に関する調査をまず行い、その結果を踏まえ、深夜業にかかわる諸問題について深夜業に従事する労働者の就業環境整備、健康管理等の在り方を含め、検討する場を設けることが必要である。これに関連して、深夜労働時間の上限に関し3週間40時間以内とする旨を法律で明記することが求められるとの意見が労働者側委員から、一方、深夜勤務時間数、深夜勤務回数等について上限を設けることは適当でないとの意見が使用者側委員から、それぞれあった。この問題については、健康への配慮はもちろん、経済活動や国民生活の態様の変化も十分見極めながら、過度の深夜業に対してどのような対応が可能かを含め、広範囲な角度から議論を深めて検討していくことが必要である。
 なお、これらの検討に当たっては、改正法の施行までに早急に措置を講ずる必要があるものについては施行時期を念頭に時間的余裕をもって検討できるよう配慮することが適当である。
 また、別途定める水準に照らし過重な時間外労働や深夜業に従事した労働者の健康確保を図るため、疾病の予防の観点から労働者の健康管理努力に対する援助のための事業を実施することを検討することが適当である。



7 裁量労働制の在り方について

 経済活動のグローバル化による世界的な競争の激化、産業構造の変化が進む中で、活力ある経済社会を実現していくためには、産業、企業の積極的な事業展開とともに、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得るよう業務の遂行を労働者の裁量にゆだねていく必要性が高まっており、そうした動きも顕著となっている。また、こうした労働者の中には自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、労働時間の配分や仕事の進め方について自ら決定し、主体的に働きたいという者も増加している。これらの労働者については、業務の性質上、業務の遂行状況や成果等の評価を労働時間の長さによって行うことがなじまない者も増加しており、適切な労働時間管理が困難となっている者も見受けられる。このため、労働基準法上、このような業務に従事する労働者の働き方のルールを設定することによって、適正な労働条件や労働環境の確保を図っていくことが必要である。

(1)対象業務の範囲

 対象業務は、本社及び他の事業場の本社に類する部門における企画、立案、調査及び分析の業務であって、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があることから業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的指示をすることが困難なものである旨限定して法律で規定した上で、下記2の労使委員会において業務の特定が適切に行われるようにするための措置を講ずることが必要である。
 この場合に、当該業務の範囲を明確にするため、企業経営の動向や業績に大きな影響を及ぼす事項に関し、実態の把握、問題の発見、課題の設定、情報・資料の収集・分析、実施策の策定、実施後の評価等の関連し合う一群の業務を、その遂行の手段及び時間配分に関し自己の判断において決定し、遂行する労働者がこれに該当する旨を告示において具体的に明らかにすることが適当である。

(2)導入要件

 事業場内に賃金や評価制度等を含め労働条件全般を調査審議する労使委員会を設け、労使委員会において、対象労働者となり得る者の範囲の特定、深夜労働、休日労働を含む勤務状況の把握方法及び働き過ぎの防止・健康確保のための措置、苦情処理体制等について決議を行うことを制度実施の要件とすることが必要である。
 この場合に、労使委員会は、1導入手続及び運用の適正を確保する観点から、労使の自主的話合いを実質的に保障し得るものになるよう、委員の半数が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合の推薦に基づき、そのような労働組合がない場合には当該事業場の労働者の過半数の信任を得た上で、それぞれ指名されていること、2設置について労働基準監督署長に届け出られていること、3議事録が作成、保存及び周知されていること、4決議が周知され労働基準監督署長に届け出られていること等の要件を満たすものとすることが適当である。

(3)制度の適正な運用を確保するための指針

 制度の適正な運用を図るため、労働大臣は、上記1の対象業務等の具体例のほか、働き過ぎ防止・健康確保のための措置の内容、苦情処理体制の在り方、裁量労働制の適用に当たっての労働者本人の同意及び申出による適用除外並びに労働者が同意しなかったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止、業務の遂行状況や成果等の評価基準等制度導入に当たって労使が話し合って定めておく事項等について、指針を定めて示すことが適当である。

 上記による裁量労働制については、特に対象業務の特定、労使委員会の運営を始めその実施状況を重点的に把握し、当審議会に報告することとされたい。
 本項目については、「裁量労働制研究会報告」の内容とも大きな差異があると考えられ、また、新たな制度の導入の必然性が認められないので、現行制度での対応をしつつ結論を急がず引き続き検討することが求められるとの意見が労働者側委員から、一方、労使委員会によらず労使協定による等より柔軟な制度とすることも考えられるのではないかとの意見が使用者側委員から、それぞれあった。

8 年次有給休暇の在り方について

 労働移動の増加に対応して勤務年数の長短により付与日数に大きな差が生じないようにし、あわせて、特に中小企業における労働者の定着状況等をも考慮して、雇入れ後2年6か月までは現行どおり1年ごとに1日追加付与し、2年6か月を超えた後は1年ごとに2日追加付与する(雇入れ後3年6か月目から2日ずつの追加付与となる。)ものとすることが必要である。
 また、上記措置に関連し、年次有給休暇の取得促進のため、計画的付与制度の普及等を含め有効な方策について検討を行うことが適当である。本項目については、年次有給休暇の取得にかかわる「不利益取扱い」についての規定を附則から本則へ切り替えることが求められるとの意見が労働者側委員から、一方、年次有給休暇の取得促進のための具体的な方策を労使が協力して進めることが先決であり、また、小規模企業では年次有給休暇の付与日数の増加に対応するためには、相当の期間を要することに配慮することが求められるとの意見が使用者側委員から、それぞれあった。

9 特例措置の在り方について

 平成10年度の実態調査結果を見た上で検討を行い、水準及びその実施時期について平成11年3月末までに結論を出すことが適当である。本項目については、所定労働時間の短縮に応じて対応するよう、また、廃止時期を明らかにするよう検討することが求められるとの意見が労働者側委員からあった。一方、業種特性からみて労働密度が低く厳しい経営実態にある小規模企業の実情からみて特例措置は依然として必要であり、また、労働時間短縮の困難さを十分考慮して検討することが求められるとの意見が使用者側委員からあった。

10 その他

(1)法適用の方式について

 現行のいわゆる号別適用方式をいわゆる包括適用方式に改めることが適当である。

(2)就業規則について

 上記2により労働契約締結時の労働条件の書面による明示制度をまずすべての事業場に実施するとともに、あわせて、10人未満規模事業場を対象として、就業規則の普及促進に関する支援事業を実施することが適当である。
 また、別規則の制限については、廃止することが適当である。
 さらに、周知方法については、現行の掲示、備付け以外は労働者への写しの交付とすることが適当である。

(3)労働条件紛争の解決援助のためのシステムについて

 労働移動の増大、労働者の働き方の多様化等に伴い、労働条件に関する紛争の増大が予想されることから、将来的には労働条件に関する紛争を調整するためのシステムについて総合的に検討することが必要である。
 当面の措置として、労働基準監督署における相談、情報提供等の機能を強化し、紛争の発生の予防に努めることとするとともに、紛争の発生に至った場合に、当事者からの申出を受けて、都道府県労働基準局が労働条件に関する紛争について事実関係及び論点を整理し、助言や指導により、簡易かつ迅速に解決を促すシステムを創設することが必要である。
 その際、労働基準監督署及び都道府県労働基準局においては、労働条件や人事労務管理に関する知識、経験の豊富な民間の適切な人材の参画を求めることが適当である。

(4)労使協定について

 労使協定が事業場における労働基準法の具体的適用の在り方を規定するものであることから、労働条件の明確化を進めるため、使用者は、労働基準法上の労使協定の内容及び締結当事者について、就業規則等と同様に掲示、備付け又は労働者への写しの交付によって労働者に周知するものとすることが必要である。
 また、労使協定の締結当事者である労働者の過半数を代表する者の選出の方法及び選出される者の職制上の地位等を適正なものとするため、現在通達で示している内容を、省令で規定し、周知、徹底することが必要である。
 さらに、労使協定に有効期間を定めることとすることについて検討することが適当である。
 本項目については、労働者の過半数を代表する者の任期、権限及び不利益取扱いの禁止についても併せて規定することが求められるとの意見が労働者側委員からあった。


11 労働基準法の実効を期すためのフォローアップ

 今回の改正事項を含め、労働基準法の実効性を高めるため、運用の実情についてのフォローアップを行い、必要な措置についての検討を当審議会において引き続き行うこととする。



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