II 労働時間に係る制度の在り方 1 裁量労働制の在り方 労働時間を適切に管理する必要がある一方で、経済社会の変化に伴い、成果等 が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加するなど、 働き方が変化している状況にある。 このような状況を踏まえ、企画業務型裁量労働制については、その導入、運用 等に係る手続及び要件について必要な見直しを行うとともに、裁量労働制が働き 過ぎにつながることのないよう、健康・福祉確保措置及び苦情処理措置が適切か つ確実に実施されるようにすることが必要である。 (1)企画業務型裁量労働制の導入、運用等の手続について イ 企画業務型裁量労働制が、多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能 するよう、その導入、運用等に係る手続については、制度の趣旨を損なわな い範囲において簡素化することが求められることから、次のとおり措置する ことが必要である。 (1)労使委員会が決議を行うための委員の合意について、委員の5分の4以上 の多数による決議で足りることとすること。 (2)労使委員会の委員のうち労働者代表委員について、労働者の過半数の信任 を改めて得なければならない要件を廃止すること。 (3)労使委員会の設置について行政官庁に届け出なければならないことを廃止 すること。 (4)健康・福祉確保措置の実施状況等の行政官庁への報告を簡素化すること。 (5)労使委員会の決議の有効期間に係る暫定措置(有効期間の限度を1年とす るもの)を緩和すること。 ロ また、企画業務型裁量労働制については、対象業務を労使委員会で決議す る仕組みとなっていることから、その対象事業場を現在対象となっている 「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定しないこととすること が必要である。 本項目については、労働者側委員から、「事業運営上の重要な決定が行わ れる事業場」に限定しないこととすることに伴い、企業において無原則な拡 大につながるとの懸念がぬぐいきれないとの意見があった。 ハ なお、時間外及び休日の労働等について、現在、労使協定に代えて労使委 員会の委員全員による合意による決議(協定代替決議)を行うことができる こととされているが、この協定代替決議についても、委員の5分の4以上の 多数による決議で足りることとすることが必要である。 ニ 企画業務型裁量労働制については、今般の導入、運用等に係る手続の簡素 化等に伴う影響を含め、その実施状況を把握し、当分科会に報告することと されたい。 (2)健康・福祉確保措置等の充実 イ 専門業務型裁量労働制の適用を受けている労働者について、健康上の不安 を感じている労働者が多い等の現状があることから、裁量労働制が働き過ぎ につながることのないよう、専門業務型裁量労働制についても、企画業務型 裁量労働制と同様に、労使協定により健康・福祉確保措置及び苦情処理措置 の導入を要することとすることが必要である。 ロ また、裁量労働制に係る健康・福祉確保措置の具体的な内容の一つとして、 働き過ぎにより健康を損なうことのないよう、必要に応じて、使用者に産業 医等による助言・指導を受けさせることとすることを加えることが適当である。 (3)その他 企画業務型裁量労働制の在り方に関連し、労使委員会の在り方について、今 後検討していくことが適当である。 2 適用除外について 労働基準法第41条の適用除外の対象範囲については、上記1の裁量労働制の 改正を行った場合の施行状況を把握するとともに、アメリカのホワイトカラー・ イグゼンプション等についてさらに実態を調査した上で、今後検討することが適 当である。 3 時間外労働等について 時間外労働の限度基準(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の 延長の限度等に関する基準)においては、労使協定の定めるところにより、限度 時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情が生じたときに限り、 限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができることとされて いるが、働き過ぎの防止の観点から、この「特別の事情」とは臨時的なものに限 ることを明確にすることが必要である。 また、平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措 置に関する基準」が発出されたところであるが、事業場において適正な労働時間 管理が行われるよう、適切な監督指導に努め、一層の周知徹底を図ることが必要 である。 4 年次有給休暇の取得について 年次有給休暇の取得が進まない実態の中、計画的に年次有給休暇を付与させる ことが、年次有給休暇の取得促進に有効であることから、計画的年休付与・取得 の普及促進策を実施することが適当である。