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別紙2
中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告
平成13年7月19日
1 はじめに
平成13年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催
し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるな
ど、十分審議を尽くしたところである。
2 労働者側見解
労働者側委員は、産業構造や就業構造の転換に伴って、失業や不安定な雇用労働
者の増加など、雇用不安、生活不安が蔓延しつつあるという考え方を表明した。厳
しい経営環境の中、使用者が企業の支払能力を重要視することに一定の理解はでき
るが、最低賃金の適用を受ける労働者にとっては、生活を守るという視点が大変重
要であり、デフレスパイラルに落ち込んでいる日本経済を回復基調に乗せるために
も、最低賃金制度の持っている生活の底割れを防ぐという機能が重要となってきて
いるとの考え方を主張した。
また、一般労働者の賃金水準と最低賃金の比率は横ばいで推移し、先進国の中で
かなり低い比率になっており、今の最低賃金では健康で文化的な生活ができる水準
ではないと考えるため、引上げ幅だけでなく最低賃金の水準そのものについて漸次
改善していくことが必要である旨主張した。
さらに、経済のグローバル化が進展し、産業構造や労働市場・雇用構造が急速に
変化する中で、非正規型労働者が急速に増加し、労働者間の賃金格差の拡大が見込
まれる中にあって、最低賃金の持つ社会的な役割や機能の重要性が高まっているこ
と、及び影響率は、昨年度は一昨年度と同様の数字となっており低下傾向にあり、
賃金構造基本統計調査特別集計結果によれば、影響率はわずか1.1%と最低賃金の
存在感がほとんど感じられないものになっており、賃金改善に結びつく実効力のあ
る最低賃金にすべきと主張した。
以上のような現状を改革、打開するためにも、最低賃金の対象労働者のおかれて
いる現状にも十分配慮し、公労使の三者が難しい環境にあっても、今年度の目安を
決定すべきである。特に結果の不平等を緩和するナショナル・ミニマムとしての地
域別最低賃金の役割を十分果たすような対応をすべきとの観点から、今年の賃上げ
については、連合、日経連双方の調査ともおおむね昨年並みの賃金引上げが行われ
た状況を十分勘案して、昨年並みの最低賃金の引上げを図ることが必要であると最
後まで強く主張した。
3 使用者側見解
使用者側委員は、昨年に比べて経済の全体の状況は明らかに悪化しており、今年
こそ賃金改定状況調査の第4表の数字のみによるのではなく、全体的な状況を踏ま
えた目安を決定すべきであるという考えを表明した。
また、3年連続物価が下落し、政府も初めてデフレと宣言するような状況の中で
は、基本的には最低賃金を上げる必要性はなく、倒産が増加するなど雇用は厳しい
状況が続き、失業率も史上最悪となっているが、今後痛みを伴う構造改革、不良債
権処理が進むと、状況は更に悪化する懸念があり、このような状況の中で今年の目
安を判断していかなければならない旨主張した。
加えて、賃金交渉について、日経連、連合どちらの調査でも、史上最低であった
昨年の結果を下回り、大変厳しい過去最低の水準で推移したこと、企業内最低賃金
や初任給の引上げ率はほぼゼロに近いことなどを参考にすべきであり、地域別最低
賃金の引上げ割合に比べ、高卒初任給や消費者物価の上昇度合いはかなり低い割合
であり、法定最低賃金を今年も改定する必要があるか疑問がある旨主張した。
さらに、中小企業の経営状況は大変厳しく、全国中小企業団体中央会の中小企業
労働事情実態調査によれば、4年連続4割を超える水準で賃上げを凍結した事業所
が出ている。そうしたことから、最低賃金の引上げはよほど慎重にすべきであると
主張した。
以上のような状況から、今年の目安の審議では、賃金改定状況調査の第4表を尊
重することはやぶさかではないが、経済社会情勢を判断して、目安をどうすべきか
について慎重な議論をしていかなければならないと最後まで強く主張した。
4 意見の不一致
本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたとこ
ろであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかっ
た。
5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見
公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金
改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え
方を基本としつつ、極めて厳しい経済状況における小規模企業の経営実態等の配慮
及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般
の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめ、本小
委員会としては、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に
報告することとした。
また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、
併せて総会に報告することとした。
なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内
容となっているとし、不満の意を表明した。
記
(以下、別紙1と同じ。)
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