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2 有期契約労働者の現状



  本研究会は、第一の検討事項である「有期労働契約の反復更新に係る実態の把握

 及び分析」の基礎資料として、「有期労働契約者に関するアンケート調査」*3を実

 施した。同調査は、有期契約労働者の雇用状況の把握と二次調査対象事業所の抽出

 のために、まず企業を対象とする一次調査を行い(12,600社に実施し、有効回答は

 7,193 社。以下「企業調査」という。)、その後二次調査として、有期契約労働者

 を雇用している事業所に対する調査(6,000事業所に実施し、有効回答は1,788事業

 所。以下「事業所調査」という。)及び事業所調査対象事業所に勤務する有期契約

 労働者に対する調査(各事業所4人、計24,000人に実施し、有効回答は5,106人。

 以下「労働者調査」という。)を行った。

  以下、主にその調査結果に基づいて、我が国の有期契約労働者の現状や有期労働

 契約の更新、雇止めの状況について分析を行う。



 2−1 有期契約労働者の雇用状況



  <有期契約労働者は非農林業雇用者の11.9%>

   我が国の労働者のうち、有期契約労働者は、どの程度の割合を占めているので

  あろうか。

   就業形態別の雇用者数について、総務庁統計局「労働力調査」*4でみると、非

  農林業雇用者 5,298万人のうち、定義上有期契約労働者とほぼ一致すると考えら

  れる臨時雇及び日雇は、それぞれ510万人、121万人(平成11年)おり、あわせて

  非農林業雇用者全体の11.9%を占めている。この比率は10年前(平成元年:10.6

  %)に比べ 1.3%ポイント上昇している。



  <企業の7割で有期契約労働者を雇用>

   企業調査で有期契約労働者の有無をみると、有期契約労働者を雇用している企

  業は全体の69.0%と、約7割の企業で有期契約労働者を雇用している。ただし、

  有期契約労働者を雇用していない企業に対して、今後の採用意欲を聞いたところ、

  「雇用する予定」3.3% 、「雇用するかどうか検討する」25.8%に比べ、「今後

  も雇用しない」が70.2%と高く、現在有期契約労働者を雇用していない企業にお

  ける今後の採用意欲は必ずしも高くない。



  <有期契約労働者を雇用している事業所の6割でパート、契約社員を雇用>

   事業所調査で有期契約労働者の雇用形態別の雇用状況をみると、パートタイマ

  ーを雇用している事業所が61.6%、契約社員59.5%、臨時雇15.0%、その他有期

  13.8%となっており、パートタイマーと契約社員は多くの事業所で雇用されてい

  る。

   また、事業所調査対象事業所における労働者構成比をみると、有期契約労働者

  の占める割合は 16.6%(パートタイマー9.0%、臨時雇1.7%、契約社員4.1%、

  その他有期1.7%)である。



  <有期契約労働者の半数はパート、4割は契約社員>

   労働者調査における有期契約労働者の属性をみると、次のとおりである。

   有期契約労働者の雇用形態別の割合は、パートタイマー49.0%(うち短時間パ

  ートタイマー37.3%、長時間パートタイマー11.7%)、契約社員41.1%、臨時雇

   6.0%、その他有期 3.4%となっている。全体の半数がパートタイマーであるが、

  契約社員も約4割を占めている。

   職種についてみると、有期契約労働者全体では「事務職」が38.5%と最も多い。

  雇用形態別には差がみられ、パートタイマーは「事務職」が47.6%と最も多いが、

  臨時雇は「技能工、製造・建設作業職」が38.2%と最も多く、契約社員は「事務

  職」(29.1%)に次いで「専門職、技術職」(19.2%)が多いのが特徴である。

  また、その他有期では「事務職」(36.0%)に次いで「サービス職」(18.0%)

  が多い。

   男女の比率をみると、有期契約労働者全体では男性35.7%に対し女性64.1%と

  女性の方が多い。ただし、雇用形態による差が大きく、パートタイマーでは女性

  が86.8%を占めており、特に短時間パートタイマーでは90.9%が女性である一方

  で、臨時雇では男性が52.6%、契約社員では男性が60.4%と男性の方が多くなっ

  ている。

   年齢については、有期契約労働者全体では、60〜64歳が18.9%であるほかは、

  どの年齢層(20歳未満〜70歳以上までの5歳刻み)も10%程度となっている。た

  だし、契約社員では、60歳以上の者が42.8%とかなり多く、職種も60歳以上では

  専門・技術職、管理職の割合が高い(60〜64歳37.4%、65歳以上35.8%)のに対

  し、29歳以下の者(17.7%)については事務職の割合が高い(53.8%)。

   税込み年収をみると、雇用形態による差が大きく、契約社員は年収 500万円以

  上の者が17.4%を占めているなど相対的に高くなっている*5。

   有期契約労働者の生活費の主な収入源についてみると、有期契約労働者全体で

  は自分の収入である者が45.7%、配偶者の収入である者が39.8%となっている。

  これを雇用形態別にみると、短時間パートタイマーでは自分の収入が主である者

  は16.2%にとどまっているのに対し、長時間パートタイマー(45.7%)、臨時雇

  (60.5%)、契約社員(71.3%)では自分の収入が主である者が多くなっている。

  なお、その他有期については、親の収入が主である者が22.7%と他の雇用形態に

  比べ高い。



 2−2 企業が有期契約労働者を雇い入れる理由及び雇用調整時の位置づけ



  <有期契約労働者を雇用する理由は「人件費節約のため」が多いが、雇用形態に

   よるちがいも少なくない>

   事業所調査で有期契約労働者を雇用する理由(複数回答)をみると、「人件費

  節約のため」を挙げた事業所がパートタイマーで67.6%となっているほか、臨時

  雇42.5%、契約社員32.3%、その他有期30.1%と有期契約労働者の各雇用形態に

  共通して高い割合となっている。しかし、人件費節約以外の理由についてみると、

  雇用形態により異なっており、パートタイマーでは「1日・週の中の仕事の繁閑

  に対応するため」(41.1%)、臨時雇では「臨時・季節的業務量の変化に対応す

  るため」(57.8%)、契約社員では「専門的な能力を活用するため」(49.6%)

  及び「経験等を有する高齢者の活用のため」(44.6%)が多い。

   なお、有期契約労働者の今後の活用について事業所調査でみると、「現状維

  持」がほぼ半数を占めるが、その他の回答をみると「一層積極的に活用していき

  たい」が「今後は活用を縮小していく方向で検討している」を上回っている。*6



  <過半数の事業所は雇用調整を有期契約労働者から行うと回答>

   経済的事情により必要になり雇用調整の人員削減を行う場合、人員整理の対象

  については、有期契約労働者と正規社員を区別しないとする事業所が31.9%と少

  なくない一方で、有期契約労働者から先に行うとする事業所が54.0%と、有期契

  約労働者の立場が不安定であることがうかがえる。



 2−3 労働者が有期労働契約を締結する理由



  <有期労働契約を積極的に選択した者は3割、消極的に選択した者も3割>

   一方、労働者が有期労働契約をどのように受け止めているかについて、労働者

  調査で有期労働契約を選択した理由をみると、「その他」と回答した者が33.4%

  と少なくないことや、雇用形態等により差異があることに留意する必要はあるが、

  「望んだため」とする者が29.5%(臨時雇では35.6%とやや高い)、「やむなく」

  が34.1%(長時間パートタイマーでは39.0%とやや高い)と、いずれも約3割と

  なっており、積極的に有期労働契約を選択した者の割合が消極的な選択をした者

  の割合を若干下回っている。なお、年齢別にみると、60歳以上では「やむなく」

  の比率が低く(60歳代21.2%、70歳以上11.5%)、「望んだため」の比率が相対

  的に高く(60歳代37.1%、70歳以上42.3%)なっている。



  <有期労働契約で就業している具体的理由は、勤務場所の都合や家計の補助が多

   いが、雇用形態によるちがいも少なくない>

   労働者調査で、有期労働契約で就業している具体的な理由(複数回答)が何で

  あるかをみると、有期契約労働者全体では「勤務場所の都合がよかった」が39.7

  %と最も高く、パートタイマー、臨時雇、その他有期ではそれぞれ48.8%、41.2

  %、43.0%と4割を超えて最も高くなっているが、契約社員では「これまでの経

  験を活かせるため」が40.0%と最も高くなっている。また、有期契約労働者全体

  では、これに次いで「家計を補助するため」が31.6%と高く、特に短時間パート

  では「家計を補助するため」が47.6%と高い。これに対し、長時間パートでは

  「正社員として働ける職場(会社)がないから」が41.2%と高い。なお、「契約

  期間が自分の希望に合っていたから」は有期契約労働者全体で14.8%であるが、

  臨時雇では26.1%とやや高くなっている。



 2−4 契約期間満了後の希望



  <契約期間は「6カ月超1年以内」が多い>

   事業所調査で、有期契約労働者の1回当たりの契約期間の長さをみると、6カ

  月超1年以内の者の割合がいずれの雇用形態でも最も高く、とりわけ契約社員で

  は76.8%と4分の3以上を占めている*7。一方、契約期間6カ月以内の者の割合

  はパートタイマーや臨時雇、その他有期では約3分の1を占めるが、契約社員で

  は1割弱となっている*8。



  <有期契約労働者の3分の2は契約期間満了後の更新を希望>

   現在の労働契約期間が満了した後の希望を労働者調査でみると、「契約を更新

  したい」とする者が65.9%と最も多い*9。これに対して、「現在の勤務先で正社

  員に登用してもらいたい」は 8.9%、「別の会社で正社員として働きたい」は

  5.0 %と相対的に少ないが、これらを合わせた正社員への希望は、長時間パート

  タイマーと臨時雇ではそれぞれ21.7%、20.9%と、他の雇用形態よりも高くなっ

  ている。

 

  *3 「有期契約労働者に関するアンケート調査」

   労働省の委託に基づいて株式会社三和総合研究所が平成11年10〜11月に実施。

   調査手法及び調査結果については、報告書参考資料1を参照されたい。

    同調査では、有期契約労働者を雇用形態別に次のように分類している。



   パートタイマー…調査事業所でパートタイマーとしている者のうち有期労働契

           約の者

           短時間パートタイマー(正規社員より勤務時間の短いパート

           タイマー)と長時間パートタイマー(正規社員と勤務時間が

           同じまたはそれ以上のパートタイマー)に分けて集計した箇

           所がある。

   臨時雇……………臨時的・季節的な業務量増加に対応するため、臨時的に雇用

           している者で、正社員と1日の所定労働時間及び1週の所定

           労働時間が同一の者(期間工、季節工等)

   契約社員…………専門的又は特定の職種に従事させることを目的に、期間を定

           めた契約に基づき雇用している者(嘱託等を含む)

   その他有期………有期労働契約の者で、パートタイマー、臨時雇、契約社員の

           いずれにも該当しない者(アルバイト等)



    なお、正規社員は「雇用している労働者のうち、特に雇用期間を定めていな

   い者」と定義した。



 

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  *4 労働力調査における定義は次のとおりである。

   雇用者:会社、団体、官公庁又は自営業主や個人家庭に雇われて給料、賃金を

       得ている者及び会社、団体の役員

   臨時雇:雇用者のうち1か月以上1年以内の期間を定めて雇われている者

   日 雇:雇用者のうち日々又は1か月未満の契約で雇われている者



 

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  *5 平均年収は、パートタイマー145.8万円(短時間パートタイマー124.7万円、

   長時間パートタイマー215.1万円)、臨時雇238.5万円、契約社員334.4万円、

   その他有期163.0万円。



 

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  *6 各雇用形態の有期契約労働者を雇用している事業所についてみると、「現状

   維持」はパートタイマー57.0%、臨時雇61.2%、契約社員59.0%、その他有期

   32.1%、「一層積極的に活用していきたい」はパートタイマー30.2%、臨時雇

   14.9%、契約社員21.5%、その他有期17.5%、「今後は活用を縮小していく方

   向で検討している」はパートタイマー6.2%、臨時雇13.8%、契約社員9.3%、

   その他有期8.5%となっている。



 

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  *7 パートタイマー55.9%、臨時雇49.3%、契約社員76.8%、その他有期27.6%。



  *8 パートタイマー37.1%、臨時雇38.4%、契約社員 7.5%、その他有期31.3%。



  *9 パートタイマー69.5%(短時間パートタイマー 74.0%、長時間パートタイ

   マー 55.3%)、臨時雇53.3%、契約社員64.6%、その他有期54.7%。



 

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