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(別紙2)





        中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告







                              平成12年7月21日







1 はじめに



  平成12年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催

 し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるな

 ど、十分審議を尽くしたところである。





2 労働者側見解



  労働者側委員は、産業構造の転換などに伴い雇用形態の多様化が進展し、賃金格

 差の拡大や賃金の分散が顕著になってきており、労働者全体に雇用不安、生活不安

 が蔓延しつつあるという考えを表明した。しかし、景気は底入れし、中小・零細も

 含め景気は緩やかながら回復の方向に向かっているというのが一般的な見方で、最

 低賃金を取り巻く状況はむしろ好転していると強く主張した。こうした中で多少の

 明るさが見えてきた日本経済を安定軌道に乗せ、生活水準を早急に回復させる必要

 があり、最低賃金制度が本来持っている賃金のセーフティネットとして生活の底割

 れを防ぐ機能と役割を果たすことが従来にも増して重要になっているとの考え方を

 主張した。

  また、昨年度の審議において、使用者側は最低賃金の引上げは中小企業の経営を

 圧迫すると主張していたが、公益委員見解を受けて展開された実際の審議の結果は

 影響率を0.2ポイント低下させており、その数値も製造業が100人未満、卸売・小売

 業,飲食店及びサービス業が30人未満に限定したものであることから、全労働者を

 対象とした影響率はさらに下がると想定されることを考慮すると、最低賃金の水準

 は極めて不十分な状態にあることは明らかである。また、昨年度の改定額は決して

 高いとの認識は持っていない旨主張した。

  以上のことを踏まえ、今年度の目安については、国民の各層から期待されている

 景気回復の流れに水をさすような姿にすべきではなく、最低賃金が低賃金労働者の

 生活の底割れを防ぎつつ景気の底支えの役割を果たすため、一般労働者の賃金水準

 に対する最低賃金の比率や影響率をより一層高めるとともに、最低賃金を社会的に

 存在感のあるものにするためにも、組織労働者の賃上げ結果を勘案して目安を作成

 すべきであると最後まで強く主張した。





3 使用者側見解



  使用者側委員は、今年度の目安は今世紀最後のものとなるものであることから、

 これがどのように決まるかが我が国の最低賃金の将来に大変大きな影響を及ぼすも

 のとなるため、本年度の審議については、慎重に対応する必要があるという考えを

 表明した。

  また、具体的な目安の審議に当たっては、賃金改定状況調査の第4表の賃金上昇

 率を従来どおり重要な参考資料として取り扱うことには異存はないが、その一方、

 昨今の経済状況をみると、低成長経済への移行など構造的な変化が進み、ますます

 複雑で多様な様相を呈しており、第4表の賃金上昇率だけを尊重すべきではなく、

 他の社会経済情勢について総合的に検討を加え、適切な目安を決定することが重要

 である旨主張した。

  さらに、我が国の経営状況をみると、3月期決算に象徴されているように惨憺た

 る有様であり、昨年度赤字決算を出した企業は過去最高の数に上り、企業倒産件数

 は依然として多い状況にあるなど、現在の景況としてはいまだ厳しい状況にあり、

 とりわけ最低賃金の適用労働者の多い中小企業については、特に厳しい状況にある

 ことを指摘し、そのような中で、中小企業をはじめとする経営者は必死に経営を行

 っている事実を踏まえるべきと主張した。

  加えて、全国中小企業団体中央会の中小企業労働事情実態調査によれば、今年賃

 上げを凍結した事業所の割合が前年に引き続いて高い割合(45.9%)を示している

 こと、各種指標においては、本年の賃金決定を取り巻く状況は昨年より厳しいこと

 を示しているものが多く、かつ、地域によっては引上げゼロやマイナスの割合が極

 めて高い数値を示しており、今年度の審議においてはこの点を十分考慮すべきこと、

 平成11年度の最低賃金は平成7年を100とした場合107.1となっているが、これは所

 定内給与の 103.7、高卒初任給(男性)102.3、そして消費者物価指数が102.2であ

 ることと比べて高い引上げ水準にあること、雇用失業状況も引き続き戦後最悪の水

 準にあることなども踏まえるべきであると主張した。

  以上のような諸般の状況から、今年度は過去のトレンドに引きずられることなく

 大きなカーブを切るべきであり、将来にわたる最低賃金制度の健全な発展を期すた

 めにも、最低賃金額を引き上げるべきではないと最後まで強く主張した。





4 意見の不一致



  本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安をとりまとめるべく努めたとこ

 ろであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかっ

 た。





5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見



  公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金

 改定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え

 方を基本としつつ、上記の労使の小規模企業の企業経営への配慮及びそこに働く労

 働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に

 勘案し、公益委員による見解を下記1のとおりとりまとめ、本小委員会としては、

 これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとし

 た。

  また、同審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、

 併せて総会に報告することとした。

  なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内

 容となっているとし、不満の意を表明した。







                  記





(以下、別紙1と同じ。)


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