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参考資料 1.公共の場における環境たばこ煙(ETS)評価のための文献
フィンランドのレストラン等における環境たばこ煙(ETS)のマーカーとして、ニ
コチン(nicotine)とエチニルピリジン(3-ethenylpiridine)による評価を行った。そ
の結果、ナイトクラブやデイスコで高く、レストランで低かった。ニコチン(nicotine)
濃度は1.4-42.2μg/立方メートル、エテニルピリジン(3-ethenylpiridine)濃度は、
1.4-6.3μg/立方メートルであり、両者には比較的よい相関(0.94)がみられた。こ
の2物質はタバコ煙に特異的な物質でエテニルピリジン(3-ethenylpiridine)濃度は
ニコチンに比べて低いがマーカーとなるといわれている。ニコチンは、発生直後から
減衰が激しいので煙が発生した直後であれば、良いマーカーとされている。また、低
濃度でも分析は容易である。その他に、TVOC(total volatile organic compounds)や
CO,CO2 の測定も行なわれた。TVOC濃度は、デイスコやナイトクラブで発煙装置が使
用された時が最も高かった。
J.N.Cardoso et al.: UV-respirable suspended particles as a marker of ETS in
indoor atmospheres in urban cities of Brazil, J.Aerosol Sci., Vol.24(1),
pS439-S440,1993
ブラジルのオフィスやレストランにおいて、ETS(environment tobacco smoke)
のマーカーとしてRSP(吸入性浮遊粉塵)、UV-RSP(UV吸入性浮遊粉塵)、ホルムア
ルデヒド、アセトアルデヒドの測定を行った。
RSPはフィルターでろ過捕集(15 l/min)後、重量分析、UV-RSPは、フィルターで
ろ過捕集後、メタノールで脱着、325nm 吸光度分析を行った。 アルデヒド類
(aldehydes)とケトン類(ketones)はSep-Pak C18 カートリッジ(SKC)で固体捕集後、
脱着し、HPLCで分析した。ニコチン(nicotine)は、XAD-4カートリッジ(SKC)で固体捕
集後、脱着し、GC(NPD)で分析した。VOCは活性炭管(SKC)で固体捕集後、脱着し、
GC-MSで分析した。
RSP(27-318μg/立方メートル)濃度は、 UV-RSP(0.44-13.5μg/立方メートル)濃度
やニコチン濃度と相関は見られなかった。RSP 中のUV-RSPの割合は0.53-14.7%で、喫
煙者の最も多かったオフィスでのこの値は5.19%であった。
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの濃度は、それぞれ33-425μg/立方メートル,
31-352μg/立方メートルであり、ホルムアルデヒドについては最も低かったのはレス
トラン、高かったのはオフィスで喫煙との関係は一定ではなかった。アセトアルデヒ
ドについては特にそのような傾向は見られなかった。これらの物質は屋外の車の影響
も考えなければならない。
Keith Phillips et all: Assessment of personal exposures to environmental
tobacco smoke in British nonsmokers, Environment International, Vol.20,6,
p693-712,1994
ノンスモーカーを対象に、24時間のパーソナルサンプリングを行った。
サンプリングは、2つのフィルター(テフロンフィルター(ETS用)、試薬含浸フ
ィルター(ニコチン用))を装着したホルダーを用い、ろ過捕集法により行った。
PAS((particles from all sources:分粒特性からTSP、RSPといえない)濃度は、
ろ過捕集後、重量分析を行った。 ETS粒子濃度は重量分析後の試料をメタノール脱着
し、UV-PM、F-PM、Sol-PMの分析をHPLCで行った。試薬含浸フィルターに捕集された
ニコチンは、イソプロピルエーテルで脱着後、分析をGC(NPD)で行った。パーソナ
ルサンプリング開始時と終了時に採取した唾液中のコチニンをジクロロメタンに抽出
後、その分析をGCMSで行った。
結果は、80%の被検者にETS暴露はないか低いレベルであった。暴露に多く影響を及
ぼすものの順位は、家にいる時間、レジャーの時間、勤務時間であった。また、旅行
は大きな影響を与えなかった。
ニコチン濃度とETS濃度(Sol-PM)との間には中程度の相関関係(0.66)が見られ
た。一方、唾液中コチニン濃度とニコチン濃度との間の相関は低く、ETS濃度も同様
に低かった。唾液中コチニン濃度の閾値25ng/mlは喫煙者と非喫煙者の区別に使われ
た。ETS濃度とPAS濃度との相関は見られなかった。
ETS粒子とニコチンは、たばこ煙から一定の割合で発生するが、ニコチンは、主に
ガス状で存在し、壁などに吸着して、ETS粒子よりも速く減衰してしまうといわれて
いる。よって、発生時と発生後一定時間たった後のETS粒子とニコチンの割合は異な
る。パーソナルモニタリングなど長時間(24時間)の平均値でETS暴露評価を行う際
には、ニコチン濃度とETS粒子濃度が有効と思われる。(ETS粒子とニコチンの割合の
変化が平均化されるためか?)
C.J.Proctor et all: Measurement of environmental tobacco smoke in an air-
conditioned office building, Present and future of indoor air quality,
p169-172,1989
空調のあるビル内の喫煙者のいるオフィスと喫煙者のいないオフィスに対してETS
の影響について比較を行うため、ニコチン、RSP、UV-RSP、CO、CO2、VOC(18物質)の
測定を行った。
ニコチンは、吸着剤にXAD-4を用いて固体捕集法で採取し、脱着後、GC(NPD:
nitrogen-phosphorous detector)で分析を行った。RSP は、3.5um以上の粒子をカッ
トするインパクター使用して メンブランフィルターでろ過捕集後、重量分析を行っ
た。
UV-RSPは、重量分析後の試料をメタノールで脱着の後、325nmでの吸光度の測定を
行った。COは、CO専用測定器、CO2は検知管による測定を行った。VOCは、TENAX TAに
固体捕集し、加熱脱着後、GC-MSで分析を行った。
喫煙者のいるオフィスと喫煙者のいないオフィスで顕著に差が見られたのは、ニコ
チン濃度とUV-RSP濃度であった。RST中のUV-RSPの割合は小さかった。また、ニコチ
ン濃度は、中央値で3.1 μg/立方メートルと微量であった。CO、CO2、VOC(18物質)
については、ほとんど差が見られなかった。
E.A.Miesner: Particulate and nicotine sampling in public facilities and
offices,JAPCA,39,1577-1582,1989
公共施設(地下、バスステーションなど)やオフィスにおいてPM-2.5(2.5um以下の
粒子)、ETS(ニコチン)の他、リアルタイムの粉じん計による測定も実施した。
PM-2.5濃度は、インパクターで2.5umよりも小さい粒子をテフロンフィルター上に
ろ過捕集し、重量分析により測定した。ニコチンは、試薬含浸グラスファイバーフィ
ルターに捕集し、GC で分析を行った。リアルタイム粉じん測定器は光散乱を利用し
たものであり、0.3-2.0umの粒子(比重:1.5g/立方メートル)について測定でき5sec
ごとの平均値が得られるものと、0.1-10umの粒子(比重:2.7g/立方メートル)につ
いて測定でき10sec平均値が得られる小型のものを用いた。
ニコチン濃度は、PM-2.5の濃度とともに増加し、両者の相関係数は0.76であった。
また、両者の比(PM-2.5の濃度/ニコチン濃度)は15であった。この比は、室内の壁
等に吸着したニコチンの再飛散の影響を受けるかもしれない。その濃度の最大値は喫
煙対策の行なわれているビル内の喫煙室で得られたもので26μg/立方メートルであっ
た。リアルタイム粉じん測定濃度とPM-2.5の濃度は喫煙場所での結果で良い一致を見
た。
Charles Thomas, Milton Parish, P.Baker, Robert A.Fenner, and John Tindall :
The reproducibility of ETS measurements at a single site; Environmental
tobacco smoke as a point source, proceeding of the annual meeting, air &
waste management association, 82nd. vol.6, 1-19,1989
オフィスビルでRSP、UV-PM、F-PM、ニコチン、COの測定を行った。
ニコチンは、XAD-4を捕集剤とした固体捕集法で行い、溶剤で脱着後、GCで分析を
した。(NIOSHの方法) RSPは、3.5um インパクターで分粒し、メンブランフィルタ
ーでろ過捕集を行った後、重量分析を行った。UV-PMとF-PMは、RSP試料をメタノール
脱着後、それぞれHPLC(UV検出器)、HPLC(蛍光検出器)で分析を行った。COについ
ては、専用の連続測定器を用いた。
喫煙本数と測定項目との関係については、喫煙本数とニコチン濃度の相関は0.76、
F-PM濃度との相関は0.79と一番高かった。ついで、UV-PM濃度との相関(0.59)であ
った。一方、CO濃度は、喫煙本数と良い相関は見られなかった。測定項目間では、一
番相関がよかったのはF-PMとUV-PM(0.74)、二番目がニコチンとF-PM(0.67)、三
番目がニコチンとUV-PM(0.56)であった。
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