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分煙効果判定基準策定検討会報告書  平成14年6月



4.新しい分煙効果の判定基準

  

1 有効な分煙の評価法について



 分煙は非喫煙者の受動喫煙による健康への影響を排除・減少させるのが大きな目的

の一つであるが、同時に喫煙する者のために、喫煙場所もビル衛生管理法、事務所衛

生基準規則の基準を超えない、良好な空気環境に保持することも重要であり、分煙効

果を評価するためには、その両者を評価しなければならない。また、受動喫煙を防止

しても、屋外に環境たばこ煙を排出する場合には、大気環境を損なう恐れもある。従

って分煙の評価法の観点として以下の2つの条件が考えられる。



 * 判定条件1 受動喫煙を防止する。

 * 判定条件2 受動喫煙を防止するとともに、きれいな大気環境を保持する。



 判定条件1は、受動喫煙の防止を第一に考えた場合、判定条件2は、受動喫煙の防

止だけではなく、大気環境全体を視野に入れた分煙対策と言える。後者の方が理想的

ではあるが、費用の面や屋外の分煙対策では困難を伴うことが多いので、判定条件2

を考慮しつつ、判定条件1を当面の目標としてもよい。以下に、両者の分煙効果の判

定基準を示す。

 なお、以下にいう喫煙場所は、隔離された喫煙室、あるいは非喫煙場所との境界が

家具、パーティション、カーテンを用いるなど、何らかの方法で仕切られている場所

を、あるべき姿として想定している。したがって、非喫煙場所と境界のない喫煙席や

喫煙コーナーを喫煙場所としている場合は、喫煙場所と非喫煙場所の最も適切と思わ

れる境界を決める必要がある。

  

● 判定条件1(受動喫煙を防止する)の場合



 1)屋内における有効な分煙の条件



 (1)喫煙場所から非喫煙場所に環境たばこ煙成分(粒子状物質及びガス状物質)が

   漏れ出ないこと(非喫煙者の受動喫煙防止)



 (2)喫煙場所における空気環境を良好な状態に保つこと(喫煙者の受動喫煙の軽

   減)



  a 屋外への排気装置による喫煙場所の場合



   (a) 喫煙場所と非喫煙場所との境界における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定

     し、漏れ状態を確認すること。すなわち非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙に

     よって増加しないこと(強制排気の場合はガス状物質も粒子状物質と同様

     に排気されるので、粒子状物質の測定のみで代表できる)



    (2) 非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s以上)があ

     ること



   (b) 喫煙場所における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じんの濃度が

     0.15mg/立方メートル以下に保たれていること



    (2) 検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下であること



  b 空気清浄機による喫煙場所の場合



   (a) 喫煙場所と非喫煙場所との境界における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定

     し漏れ状態を確認すること。すなわち非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙によ

     って増加しないこと



    (2) 非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s以上)があ

     ること



    (3) ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、漏れ状態を確認する

     こと(現在、適切な評価対象となるガス状成分および測定手法は確立され

     ていない)



   (b) 喫煙場所における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じんの濃度が

     0.15mg/立方メートル以下に保たれていること



    (2) 検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下であること



    (3) ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、その値がある一定値

     以下であること(現在、適切な評価対象となるガス状成分および測定手法

     は確立されていない)

  

● 判定条件2(受動喫煙を防止するとともにきれいな大気環境を保持する)の場合



 1)屋内における有効な分煙の条件



 (1)喫煙場所から非喫煙場所に環境たばこ煙成分(粒子状物質及びガス状物質)が

   漏れ出ないこと(非喫煙者の受動喫煙防止)



 (2)喫煙場所における空気環境を良好な状態に保つこと(喫煙者の受動喫煙の軽

   減)



 (3)屋外へ排気する際には、建物周辺の大気環境を汚染しないように、適切な処

   理をしてから排気すること(周辺住民の受動喫煙防止及び環境の保全)



  a. 屋外への排気装置による喫煙場所の場合



   (a) 喫煙場所と非喫煙場所との境界における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定

     し、漏れ状態を確認すること。すなわち非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙に

     よって増加しないこと



    (2) 非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s以上)があ

     ること



   (b) 喫煙場所における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じんの濃度が

     0.15mg/立方メートル以下に保たれていること



    (2) 検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下であること



   (c)屋外排気装置周辺の大気の判定基準



    (1) 大気の環境基準が設定されている浮遊粒子状物質濃度の1時間値が

     0.2mg/立方メートルを超えないこと



    (2) 大気の環境基準が設定されているガス状物質のうち、1時間値がある

     もの(二酸化硫黄:0.1ppm、オキシダント:0.06ppm)は、その濃度を超え

     ないこと



  b. 空気清浄機による喫煙場所の場合



   (a) 喫煙場所と非喫煙場所との境界における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定

     し、漏れ状態を確認すること。すなわち非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙に

     よって増加しないこと



    (2) 非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s)があるこ

     と



    (3) ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、漏れ状態を確認する

     こと(現在、適切な評価対象となるガス状成分および測定手法は確立され

     ていない)





   (b) 喫煙場所における分煙効果の判定基準



    (1) デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じんの濃度が

     0.15mg/立方メートル以下に保たれていること



    (2) 検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下であること



    (3) ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、その値がある一定値

     以下であること(現在、適切な評価対象となるガス状成分および測定手法

     は確立されていない)



 分煙効果をより高め、かつその効果を評価するためのまとめと今後の課題は以下の

通りである。今後さらに調査・研究が行われ、より優れた分煙方法及びその効果判定

基準が作成されることを望むものである。



1)屋内に設置された現有の空気清浄機は、環境たばこ煙中の粒子状物質の除去につ

 いては有効な機器があるが、ガス状成分の除去については不十分であるため、その

 使用にあたっては、喫煙場所の換気に特段の配慮が必要である。



2)受動喫煙防止の観点からは、屋内に設置された喫煙場所の空気は屋外に排気する

 方法を推進することが最も有効である。



3)受動喫煙防止及びきれいな空気環境を保持する観点から、環境たばこ煙成分をす

 べて処理できる空気清浄機の機能強化が求められるが、現在においてたばこ煙成分

 すべてを処理できるものはないのが現状であり、より有効なガス状物質を除去でき

 る適切な機器の開発が今後の課題である。



4)環境たばこ煙の適切な指標となるガス状成分の除去率を定量できる手法を確立す

 る必要がある。

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