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<調査結果の概要>
1 発注事業所の特性
(1)「印刷出版」と「情報サービス」が中心で小零細規模の傾向
発注事業所の業種構成は印刷出版(28.2%)と情報サービス(26.9%)で過半数を占
め、土木・建築・機械設計(15.7%)、広告・宣伝物製作(9.3%)、調査・経営コンサ
ルタント(5.6%)などとなっている。
また従業員規模は10人未満が32.8%、10〜29人が39.3%と30人未満が7割強を占める
一方、50人以上は16.2%に過ぎず、小零細規模の傾向が強い。
(2)3分の2近くは最近10年以内の開始
在宅就業者への発注開始年は、95〜97年の最近3年以内で3分の1近くを占める。
また92〜94年及び89〜91年を加えると最近10年以内の開始が3分の2近くとなり、近
年の在宅就業の急速な普及がうかがえる(図1)。
(3)専門的業務への対応が発注理由のトップ
発注理由(2つまでの複数回答)をみると、全体として最も指摘の多い専門的業務
への対応は、高付加価値サービスや手頃な価格でしっかりしたサービスの提供を方針
としている事業所に特徴的である。同様の傾向は労働力の確保にもみられる。一方、
繁忙期への対応と人件費の削減も上位にあるが、これらはコスト削減による低価格サ
ービスの提供を方針としている事業所で多い(図2)。
なお発注事業所ごとの在宅就業者数は、事業所規模や発注理由を反映して、1人が
23.1%、2人が19.0%、3〜4人が22.7%と5人未満で約3分の2を占め、少ない傾向が強
い。
2 在宅就業者の特性
(1)半数が子供のいる女性で末子は幼い傾向
性・子供有無別には子供のいる女性が半数を占め、子供のいない女性を加えると7
割が女性で、男性は3割である。子供のいる女性の過半数は末子が6歳以下の育児期
にある(図3)。
年齢構成は、女性は育児期を反映し30歳代(52.4%)が半数を占め、次いで40歳代
(24.1%)が多い。男性も同じく30歳代(34.2%)と40歳代(25.3%)が中心であるが、
60歳以上(21.5%)も少なくない点が特徴である。
(2)高い学歴と短くない会社員等勤務年数
学歴は大学(院)卒が3分の1(34.4%)のほか、短大高専卒が15.2%、専門学校卒
が11.9%の一方、高校卒は38.1%と、全体として高い傾向が強い。
在宅就業の開始以前にほとんど(97.0%)の者は会社員等としての勤務経験を有し
ており、その年数も10年以上が29.3%、6〜9年が29.3%、4〜5年が20.7%と短くない傾
向にある。
(3)子供のいる女性は「能力発揮」や「社会とのつながり」のため働く傾向
退職理由(複数回答)としては、子供のいる女性は結婚(46.6%)や出産育児(45.
0%)が多い。男性は在宅就業のため(53.9%)が多いが、定年(15.8%)や解雇・希望
退職(14.5%)もみられる。
子供がいる女性が働いている理由(複数回答)は、家計の補助や副収入のためとい
う経済的要因とともに、能力経験を活かすや社会とのつながりを持つためといった要
因も大きい(図4)。
(4)自分のペースで働けるため、また家族や家事のため“在宅”を選択
在宅就業という働き方を選んだ理由(複数回答)としては、自分のペースで柔軟・
弾力的に働ける(63.7%)、家族や家事のため(48.1%、特に子供のいる女性では79.9
%)、自分がやった分だけ報われ働き甲斐がある(35.6%)などが上位にある。
3 職種内容と労働者の募集、仕事の獲得
(1)文章等入力・処理、設計・製図・デザイン、プログラミング等が上位
事業所、労働者とも複数の職種を発注し、また従事している傾向にあるため、事業
所は最も人数の多い職種(最多人数職種)、労働者は従事しているうち専門度が高い
と考えられる職種(職種類型)の状況をみると、両者とも文章等入力・処理、次いで
設計・製図・デザインやプログラミング等が上位にある(図5)。
(2)募集は縁故、退職者の応募、本人の売り込みなど
発注事業所による在宅就業者の募集ルート・手段(複数回答)としては、第一位の
社員の紹介(32.9%)のほか取引先の紹介(23.6%)、在宅就業者の紹介(16.7%)と
いった縁故関係が上位にある。また退職労働者の活用という発注理由に対応し、退職
者の応募・申し出(31.5%)も多い。さらに本人の売り込み(24.1%)、逆に会社側の
依頼(15.7%)も少なくない。
(3)仕事獲得ルートは継続年数により変化
在宅就業者による仕事依頼の獲得ルート(複数回答)は、全体として分散的な中で、
在宅就業の継続年数が短い間は「以前の勤め先」や「勤め先以外の知人の紹介」が中
心であるが、長くなるにつれ「自分で営業」のほか「仕事仲間の紹介」や「求人広告
への応募」が増加している(図6)。
4 労働時間と収入
(1)労働時間は子供のいる女性で短く、男性で長い傾向
週平均の労働時間は性・子供有無別に異なる。末子が6歳以下の女性は35時間未満
がほとんど(93.3%)で、20時間未満も50.0%を占める。末子が7歳以上の女性も35時
間未満(73.4%)が4分の3を占める。子供のいない女性でも35時間未満が59.6%を占
めるが、50時間以上も14.0%いる。一方男性は35時間以上(62.1%)が多く、50時間以
上も4分の1(25.4%)を占める。
(2)育児期の女性は夜に働いている傾向大
労働時間帯(2つまでの複数回答)をみると、全体として通常のオフィス勤務と同
様、昼間の13〜17時と8〜12時が上位にあるが、夜の20〜24時も3人に1人で少なくな
い。特に育児や家事が優先されるとみられる末子が6歳以下の育児期の女性では過半
数を占める(図7)。
(3)年収は労働時間に比例傾向
年収(継続1年以上)は全体としては分散的であるが、平均の労働時間が20時間未
満では100万円未満が83.1%、また20〜34時間では50〜299万円が72.3%、一方35〜49時
間では300万円以上が52.0%、さらに50時間以上では500万円以上が50.0%と労働時間に
比例傾向にある(図8)。
5 情報通信機器の使用状況とコミュニケーション
(1)3割近くが電子メールも活用
在宅就業者の情報通信機器の使用状況(複数回答)をみると、電話(67.8%)、フ
ァックス(56.3%)、留守電(42.2%)などの通信機器だけでなく、パソコン(58.5
%)あるいはワープロ(40.7%)などの情報機器も幅広く使用されており(両者いずれ
かの使用率は87.4%)、さらに電子メールも28.9%で活用されている。
(2)最初の受注時と仕事終了時は面接のウエイト大
在宅就業者が発注者と仕事の各段階でどんな手段によりコミュニケーションを取っ
ているかをみると、2回目以降の受注時や仕事の進行段階では電話の利用度が最も高
く、ファックスもかなり活用されているが、最初の受注時と仕事の終了時では面接の
割合が最も大きい。電子メールは進行段階での連絡や終了時の成果納入などに相対的
に使われている(図9)。
(3)発注事業所、在宅就業者とも大都市圏とその周辺に集中
地域別分布をみると、まず発注事業所については東京の4割に南関東3県を加える
と首都圏が5割近くを占める。続いて東海・近畿が約2割など大都市圏への集中傾向
が強い。
在宅就業者は、発注事業所に比べ東京(全体の約4分の1)がやや少ないが、南関
東や甲信越など東京の隣接あるいは周辺地域の割合が大きく、周辺への分散傾向が若
干みられるものの大都市圏への集中傾向は基本的に同様である(図10)。
6 作業環境とVDT作業(注)
(注)パソコン等のブラウン管や液晶などの画面に向かって入力などを行うこと。
(1)子供のいる女性では居間や台所、また食卓や座卓も少なくない。
仕事部屋の状況(複数回答)に関しては、全体としては専用・独立的な部屋の傾向
が強いが、子供のいる女性では居間での方がやや多い。また台所の場合も少なくない
(図11)。
また仕事机も、仕事部屋の状況を反映して、子供のいる女性では専用ではなく食卓
(末子6歳以下21.6%、7歳以上13.3%)あるいは座卓(同10.8%、6.7%)といったケー
スが見られる。
(2)VDT作業への発注者の指導や自分自身での配慮は少ない
在宅就業者のVDT作業への発注者の指導状況は、「指導をしている」(1.9%)は
わずかで、具体的には行っていないが「必要を感じている」(27.3%)も多くはない。
過半数は「個人で対応する問題」(61.6%)として行っておらず、「関心がない」(8.3%)
もみられる。
自分自身での配慮状況も、気を付けていても「どちらかといえば」(41.1%)が中心
で、「かなり」(12.3%)は多くない。逆に、「どちらかといえば気を付けていない」
(29.2%)あるいは「ほとんど気を付けていない」(16.9%)が半数に近く、全体とし
て低調である。
(3)かなりの者が眼精疲労、肩凝り等を感じている
仕事上のVDT作業により感じている症状としては、眼精疲労が8割、肩凝りが7
割、腰痛が5割とかなり高い割合である(図12)。
症状を感じている場合の通院治療率は、眼精疲労では5.7%、肩凝りでは14.4%、腰
痛では11.2%、また胃痛は18.4%といった状況にある。
7 問題点やトラブル
(1)需給のミスマッチなどが問題点の上位
在宅就業の問題点(複数回答)としては、まず発注事業所側では「仕事成果の個人
差が大」の指摘がトップとなっており、事前に能力を把握することの難しさがうかが
える(図13)。
発注事業所側では続いて、「必要時に必要量やってもらえない」や「優秀な人材の
確保が難しい」が挙げられている一方、在宅就業者側では「仕事の確保」と「単価の
安さ」が第一に指摘されており、需要と供給のミスマッチが生じている状況にある
(図14)。
また在宅就業者側では「能力、知識の不足」や「ハード、ソフトのレベルアップ」、
「仕事スペースの確保」の指摘も少なくなく、能力開発や仕事環境の整備の遅れも意
識されている。
さらに、納期に関する問題が共通的に指摘されている。
(2)口頭契約も多く、在宅就業者の15%が報酬支払い等のトラブルを経験
発注者との間で報酬支払い等に関するトラブルが「たまにある」としている在宅就
業者は14.8%と少なくない(「よくある」を含めると15.2%)。
この背景の一つとして契約の仕方の不明確さが考えられ、在宅就業者側からみて(
複数回答)、契約は口頭(49.6%)による場合が最も多い。また書面であっても契約
書形式(24.4%)はあまり多くなく、伝票形式(29.6%)あるいはメモ程度(15.6%)
といった手段が中心となっている。
8今後の見込みと希望
(1)発注は維持拡大の傾向、就業者も継続希望強い
発注事業所の今後の発注見通しについては、現状維持が半数であるが、拡大させる
も3割強を占めており、維持拡大の傾向が強い。残りは不明が多く、縮小や中止は少
ない(図15)。
次に在宅就業者の今後の希望については、「ぜひ」が半数強、「できれば」が3分
の1と継続希望が約87%を占めている(図16)。ただ、迷っている者が1割強存在し、
子供のいる女性(16.4%)にやや多い。迷っている理由(複数回答)としては、収入
が少ない・不安定(68.6%)、一時的な仕事(31.4%)、体力的に無理(22.9%)など
となっている。
(2)発注していない事業所でも半数で可能性
現在、在宅就業者への仕事発注を行っていない事業所の今後の導入見込み・可能性
については、現に「導入について議論検討中」が3.8%、また「可能性はあると思う」
が47.3%と、半数の事業所では可能性を指摘している。
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