I 平成8年の働く女性の状況
平成8年の労働経済面では、年央には完全失業率が過去最高になる等雇用情勢は厳しい状況で推移した。
働く女性の状況については、労働力率の伸びの鈍化、完全失業率の上昇等雇用情勢は厳しい状況で推移したが、新規求人の増加幅の拡大、雇用者数の増加幅の拡大等の改善の動きもみられた。
1 就業、雇用の状況
(1)労働力人口
平成8年の女性の労働力人口(就業者+完全失業者)は 2,719万人で、前年に比べ18万人増加(前年比 0.7%増)で、前年(7年 7万人、0.3%増)より増加数、増加率ともに拡大した。しかし、労働力率は、50.0%と前年と同率にとどまった。
年齢階級別の女性の労働力率をみると、20〜24歳で0.3%ポイント減、60〜64歳層で0.7%ポイント減と若年層と高年齢層で低下している一方、M字の底である30〜34歳層が 1.1%ポイント増(10年間で4.8%ポイント増)と、上昇幅が比較的大きかった。[ポイント1−(1)]
(2)非労働力人口
女性の非労働力人口は 2,712万人と前年に比べ14万人増加した。特に家事専業者の増加数25万人のうち、65歳以上の家事専業者が、22万人と増加が大きい。
(3)就業者
女性の就業者数は、前年に比べ、8年は13万人増加した。自営業者及び家族従業者の減少が続く一方、雇用者は増加を続けている。
(4)完全失業者
女性の完全失業者は91万人で前年比4万人増となった。完全失業率は15〜19歳層、20〜29歳層の若年層を中心に上昇し、 全体では3.3%(男性3.4%)と前年より 0.1ポイント上昇し、過去最高水準を示した。[ポイント1−(2)]
(5)雇用者
雇用者数は 5,322万人、うち女性は 2,084万人で前年に比べ36万人増加(前年比 1.8%増)し、増加幅が6年ぶりに拡大した。また、雇用者総数に占める女性の割合も、39.2%と、前年に比べ 0.3%ポイント上昇した。[ポイント1−(3)]
産業別には、サービス業での増加率が顕著であり、前年と比較して、25万人増加(同3.6%増)したが、金融・保険業、不動産業は平成4年以降横ばいであったのが、8年は前年より4万人減少(同3.3%減)した。
企業規模別では、前年に比べ1〜29人規模、30〜99人規模でそれぞれ13万人増加(前年比1.8%増、3.8%増)、100〜499人規模で11万人(同3.2%増)と増加したが、500人以上規模では5万人減少(同1.2%減)している。この傾向は男性についても同様であり、景気回復のテンポが緩やかな中で、大企業でのリストラなどの動きが顕著であることが窺われる結果となっている。
2 労働市場の状況
(1)求人・求職状況
平成8年の新規求人倍率は、1.19倍(7年1.06倍)、有効求人倍率は0.70倍(同0.63倍)とそれぞれ6年ぶり、5年ぶりに上昇に転じ、労働力需給にやや改善の動きがみられた。パートタイム労働者を除く一般労働市場の動きをみると、新規求人数は 月平均で40万6,770人で前年に比べ9.5%増と昨年の伸び率を大幅に上回った。一方、新規求職者数は、月平均38万329人で、5年ぶりに減少し、その結果、新規求人倍率は1.07倍(7年0.97倍)と、再び1倍台に回復した。
パートタイム労働市場では、新規求人数は前年に比べ20.7%増と前年の増加幅(14.2%増)に比べ、大幅に拡大した。新規求職者は、前年より3.7%増加であったが、新規求人数の増加幅が大きいため、新規求人倍率は1.92倍と前年より0.27ポイント上昇した。
(2)新規学卒者の就職状況
平成9年3月の女性の新規学卒就職者数に占める大卒の割合(27.8%)は上昇したが、短大卒の割合は、昨年に引き続き低下している。
女性の高等学校卒業者の就職率は21.3%(8年21.9%)と、進学率の上昇に伴い年々低下しているが、女性の短期大学卒業者の就職率は68.9%(前年66.5%)と前年に比べ 2.4%ポイント上昇し、また、女性の大学卒業者の就職率は、64.9%(前年63.5%)となり前年に比べ、1.4%ポイント増と6年ぶりに増加に転じた。
このように、女性の短期大学卒業者や大学卒業者の就職状況は改善の兆しがみられた。[ ポイント1−(4)]
3 労働条件の状況
女性一般労働者のきまって支給する現金給与額は、22万1,300円(前年比1.7%増)で、伸び率は前年と同程度であったが、対前年上昇率は、男性(同1.3%増)に比べ、女性の方が高かった。女性の新規学卒就職者の初任給は大卒事務系で0.4%の減少に転じたほか、中卒を除く新卒就職者の初任給は、依然低い上昇率となっている。
また、労働時間は、女性の常用労働者1人平均月間総実労働時間が 143.5時間と前年より0.5時間の増加となった。
4 パートタイム労働者の状況
女性の短時間雇用者(週間就業時間が35時間未満の非農林業)は692万人(短時間雇用者総数の68.2%)で、前年に比べ60万人増加(前年比9.5%増)と大幅に増加した。また、女性の非農林業雇用者に占める短時間雇用者の割合は34.0%(前年31.6%)と2.4%ポイント上昇した。[ポイント1−(5)]
女性のパートタイム労働者の平均勤続年数は、5.0年で昨年と同じであった。産業別には、製造業が6.4年と最も長くなっている。女性のパートタイム労働者の1時間当たりの所定内給与額は870円で、前年に比べ1.9%上昇した。