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◇都道府県女性少年室が取り扱った育児休業関係相談事例


【事例1】 育児休業の申出を拒まれた例

<きっかけ>
 A事務所に勤務する女性職員M子から、女性少年室(以下「室」という。)に次のような相談があった。
1) 産後休業に引き続き育児休業をしたい旨、所長に申し出たところ「当事務所は育児休業制度を設けていないので、休業することはできない。」と言われた。
2) 就業規則に育児休業規定はないが、どのように対応したらよいのか。
<室の対応>
M子に対して、育児休業は労働者の権利であり、休業の申出を適切に行った場合には、事業主は拒否できないものであることを説明し、再度事業主へ申し出るようアドバイス。その後、M子から「事業主に説明したが理解が得られないので、事業主を指導してほしい。」との連絡があった。
A事務所長に来室を要請し、次のように助言、指導を行った。
1) 育児休業法の趣旨・内容につき理解を求めるとともに、育児休業は労働者の権利であり、事業主は拒否できないものであること。
2) 育児休業に関する規定を整備するとともに、労働者から休業申出があった場合には、当該労働者の具体的取扱いを明示すること。
<結  果>
 A事務所では、直ちに就業規則に育児休業に関する規定を整備し、M子は、育児休業をすることができることになった。

【事例2】 代替要員の雇い入れにより育児休業中に解雇通告を受けた例

<きっかけ>
 C事務所に勤務する女性職員R子から、室に次のような相談があった。
1) 所長に勧められ育児休業を取得した。
2) C事務所では代替要員として非常勤職員を雇用、その後当該非常勤職員を正規職員として採用し、R子に対し「事務所に職員としての籍はない。」と解雇通告を行った。
3) 事務所長は余剰人員であることを理由とした解雇であると主張しているが、公共職業安定所を通して1名募集中であり、正当な理由とは思えない。
4) 事務所長は、解雇に当たり退職金を優遇することを申し出ている。
5) 復帰したとしても、その後の人間関係に不安が残るが、どうしたらよいか。
<室の対応>
 R子に対して、事業主は育児休業の取得を理由とした解雇はできないこと、また、結婚、妊娠及び出産を理由として解雇してはならないことを説明した。
 また、退職するか、引き続き勤務するか自分の意思を明確にした上で、復職を希望するのであれば事務所長に退職の意思がないことを明示するようアドバイス。室からC事務所に事情を聴取することも可能である旨説明したところ、R子から事情聴取の要望があった。
 C事務所に対し事情聴取した結果、R子が主張する事実を確認するとともに、所長は、3人いる女性職員のうちR子が最も勤続年数が長いので、人件費を抑えるため新規職員と交代させたい考えを持っていることを把握した。
 C事務所長に対し、次のように助言、指導を行った。
1) 育児休業の取得及び妊娠、出産を理由として解雇することはできないこと。
2) 育児休業をする労働者がでた場合の業務処理体制として、代替要員の雇い入れのほか、他の労働者に対する業務の再配分など、事業所の状況に応じた措置を講じる必要があること。
3) 育児休業法の趣旨・内容を踏まえて、労働者の職業生活と家庭生活との両立が図りやすい環境づくりをすること。
<結  果>
 R子は、当初の予定どおりC事務所へ復帰することができた。

【事例3】 復帰直後に転勤を命じられた例

<きっかけ>
 D社V事務所に勤務する女性社員S子から、室に次のような相談があった。
1) 5月1日に復職したところ、同日付けで異動を命じられた。異動の理由は、休業前に勤務していたJ事務所で代替要員を採用したため、J事務所では復帰しても仕事がないということらしい。
2) 5月22日までは育児時間の利用により何とかできるが、J事務所からの通勤に便利なように保育所を選んだので、別の事業所へ異動すると、保育所の保育時間に間に合わない。
3) 会社に対して、元の職場あるいは保育所への送迎が便利な事業所への異動につき指導してほしい。
<室の対応>
 S子に対して、V事務所における勤務時間の短縮等の措置を確認し、その一つである短時間勤務制度や始業・就業時間の繰上げ・繰下げ制度がある場合には、当該制度を活用することをアドバイス。また、本人としても保育所の送迎対策を検討するようアドバイスするとともに、フレーフレー・テレフォン事業を紹介した。
フレーフレー・テレフォン事業とは…
 育児、介護等を行う労働者の就業継続や円滑な職場復帰を支援するため、(財)21世紀職業財団において、保育施設、ベビーシッター、高齢者福祉サービスなど育児、介護等に関する各種サービスに関する相談を電話等により受け付け、地域の具体的な情報を提供する事業を実施している。
 事情聴取に対しD社は、通常の定期的に行う配置転換の一環であることを主張。
 その際、室は、同時期に他に数名の異動者がいること、過去に育児休業終了後復職した社員がいること、また、勤務時間の短縮等の措置が未整備であることを確認した上で、次のように助言、指導を行った。
1) 育児休業終了後、復職と同時に配転することは、育児休業を安心して取得できず、育児休業の申出を躊躇させることになりかねないこと。
2) 通常の配置転換であったとしても、育児休業終了後職場に復帰して間もなくであるので、職場復帰に当たり事前に異動の可能性について情報を提供し、仕事と育児との両立を図る対策について準備を促す配慮も必要であること。
3) 就業しつつ子を養育することを容易にするための措置として、育児のための勤務時間の短縮等の措置を講じなければならないこと。
<結  果>
 D社は、育児休業終了後の復帰者の配置としてS子の配置を見直し、S子は保育所への送迎が便利な事業所へ異動することができた。
 また、S子としては、フレーフレー・テレフォンを利用し、残業があった場合の保育所への送迎について相談することにした。

【事例4】 職場復帰に当たり身分変更を言われた例

<きっかけ>
 E社の女性社員Q子から、室に次のような相談があった。
1) E社は、F社のグループ会社であり、社員の大半はF社に出向している。Q子はF社支店に勤務していた。
2) 6か月の育児休業を取得し、1か月後に育児休業が終了する予定であるが、E社の人事担当社から「復帰してもらっても定員に空きがなく、正規社員としては配置できるところがないので、辞めるかパートタイマーとして働くかにしてほしい。」と言われた。
3) 会社の規定では、育児休業終了後復帰するに当たっての取扱いは「業務にかかわらず、復職の都度決める。」となっている。
4) 育児のために突発的に欠勤したりすることがないよう体制は整えており、復職後、子が1歳になるまでは正社員として育児時間を取り、その後はフルタイムで働き続けたい。
<室の対応>
Q子に対して、正社員として継続勤務する意思が固いことを再度明示するようアドバイス。その後、Q子から「正社員として復帰できないようなので事業主を指導してほしい。」との連絡があった。
事情聴取に対しE社は「不況のためF社グループ企業間の人事異動がままならない状況である。Q子から復帰し勤務を継続したい旨再度の申出があったので了解するが、復帰先については検討させてもらいたい。」と説明した。
E社社長に来室を要請し、次のように助言、指導を行った。
1) 育児しつつフルタイム勤務することはできないであろうという推測の下に解雇することは認められないこと。
2) 労働基準法の規定に基づく育児時間とは異なる目的による別の措置として、育児のための勤務時間の短縮等の措置を講じなければならないこと。
3) 復帰に当たりパートタイマーへの身分変更は給与の減額を生じ、Q子も納得できないこと、また、原則として原職又は原職相当職に復帰させることが多く行われているものであることに配慮すること。
4) 復帰後の取扱いについて、規定では「復職の都度決める」となっているが、あらかじめ休業取得者の復帰後の配置についても具体的に明示しておくこと。
5) E社の雇用管理の問題として、F社に対して援助を求めることも考えられること。
<結  果>
 Q子は、休業前と勤務先は異なるが、了解の下にF社系列の事業所へ正社員フルタイムで職場復帰することができた。



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