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2.災害発生時の緊急医療チームの派遣体制の整備(日本版DMAT構想)について
1)米国及び日本の現状について
・米国では1984年に全国災害医療システム(The National Disaster Medical
System:NDMS)が組織された。このシステムは、米国保健福祉省、国防省、米国連
邦緊急事態管理庁や民間の援助団体等から構成され、DMAT(Disaster Medical
Assistance Team)の派遣と医療資機材の被災地への搬入を行うものである。
・DMATは、NDMSへの参画病院、参画ボランティア組織、保健・医療団体が組織してい
る緊急医療チームで(1995年現在、全米でレベル1のチームが約15存在)、
各チームは約35名の医師、看護婦等から構成され、災害発生時には被災地に赴き
自律的な医療活動を行うものとされている。
・我が国においては、災害時には都道府県又は市町村立病院・診療所(以下「公立病
院等」という。)の医師等が救護班を編成し活動するほか、災害救助法に基づき日
本赤十字社が都道府県から業務委託を受けて災害医療活動を行うこととなっている
が、大規模災害発生の際には、公立病院等や日本赤十字社だけでは十分な対応が困
難なのではないかという懸念が存在している。
2)検討会において提案された「日本版DMAT構想」の概要
・上述のような状況を踏まえ、本検討会の委員から「日本版DMAT構想」(以下
「本構想」という。)が提案され、検討が行われた。
・本構想は、全国の災害拠点病院に被災地への緊急派遣が可能な医療チームを編成し、
災害発生の際には、災害拠点病院間の事前の応援協定に基づき被災地の災害拠点病
院に自律的に入り、当該病院長の指揮下に災害医療に従事するというものである。
3)構想に対する評価と今後の検討課題
・本構想については、災害発生時における広域的医療支援の体制強化と迅速化、さら
には災害拠点病院そのものの活性化に資するものとの評価が可能である。
・しかしながら、本構想には、都道府県知事が派遣する救護班や日本赤十字社の救護
班活動との関係整理や被災地への派遣手段の確保の問題、あるいは、被災地におけ
る医療活動の範囲や指揮命令系統の明確化といった多くの検討課題も存在している。
・また、365日24時間の応援要請に対応できる体制(チーム編成や搬送体制の確
保)を採れる災害拠点病院がどの程度存在するのかという問題もあり、構想の実現
のためには、マンパワーの質量両面の充実など、災害拠点病院の機能強化を図るこ
とが不可欠である。また、全国を対象とする効率的な出動体制を構築するためには、
災害拠点病院相互間や、関係機関との間の機能分化を図っていくことも必要となる。
・したがって、本構想については、全国的な災害医療ネットワークに関する検討と併
せ、引き続き研究・検討を進めることが適当であろう。
・なお、被災地に派遣する医師等の補償問題については、各種災害補償法による補償、
都道府県知事による従事命令等を受け業務に従事した場合など一定の要件のもとに
おける災害救助法の定めによる扶助金により一応の対応が可能となっているが
(【資料5】)、本構想の検討に当たっては、救助活動に従事した医療者の間で補
償の不公平を生じさせないようにするといった論点も念頭に置く必要がある。
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