1 企業組織の再編等と労働組合の対応に関する事項 (1)企業組織の再編等の実施状況 過去3年間(平成9年7月1日〜平成12年6月30日まで、以下同じ)に所属する事業 所において企業組織の再編・事業部門の縮小等(以下「企業組織の再編等」という。) が「実施された」労働組合の割合は45.7%、「実施されていない」労働組合の割合は 54.3%となっている。 企業組織の再編等が「実施された」労働組合を産業別にみると、運輸・通信業(54.6 %)、電気・ガス・熱供給・水道業(50.1%)、卸売・小売業,飲食店(49.6%)、製造 業(47.2%)で高く、一方、サービス業(29.8%)、金融・保険業、不動産業(34.8%)で は低くなっている。 前回(平成7年)は、「事業部門の再編成・撤退・縮小」の実施の有無として調査し ているが、「企業組織の再編等」が「実施された」労働組合の割合は前回と比べ3.9 ポイント高くなっている(第1図)。 第1図 過去3年間における企業組織の再編等の実施の有無別労働組合の割合(2)企業組織の再編等の実施に当たっての労働組合の関与 企業組織の再編等が実施された労働組合について、企業組織の再編等の実施に当た り「関与した」労働組合の割合は82.2%、「関与しなかった」労働組合の割合は17.8 %となっている。 産業別にみると、「関与した」割合が高いのは電気・ガス・熱供給・水道業(98.7 %)、運輸・通信業(91.7%)で9割以上となっている(第1表)。 また、「関与した」労働組合について、どのように関与したかをみると、「労使協 議機関で協議した」労働組合の割合は90.7%、「団体交渉を行った」労働組合の割合 は36.5%となっている。「労使協議機関で協議した」を内容別にみると、「協議事項 として」が75.3%、「説明報告事項として」が36.9%、「同意事項として」が27.8%、 「意見聴取事項として」が21.2%となっている。 「団体交渉を行った」労働組合の割合を産業別にみると、運輸・通信業では54.0%、 サービス業では47.9%と高くなっている(第2表)。 第1表 企業組織の再編等の実施に当たっての労働組合の関与の有無
(%) | |||
産業 | 企業組織の再編等が 「実施された」 |
関与した | 関与しなかった |
計 | 100.0 | 82.2 | 17.8 |
鉱業 | 100.0* | 100.0* | − |
建設業 | 100.0 | 77.4 | 22.6 |
製造業 | 100.0 | 83.4 | 16.6 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 100.0 | 98.7 | 1.3 |
運輸・通信業 | 100.0 | 91.7 | 8.3 |
卸売・小売業,飲食店 | 100.0 | 79.9 | 20.1 |
金融・保険業、不動産業 | 100.0 | 59.5 | 40.5 |
サービス業 | 100.0 | 73.6 | 26.4 |
第2表 関与の内容別労働組合の割合
M.A.(%) | |||||||||
産業 | 関 与 し た |
労使協議機関 で協議した |
団体 交渉を 行った |
そ の 他 |
|||||
同意 事項 として |
協議 事項 として |
意見 聴取 事項 として |
説明 報告 事項 として |
||||||
計 | 100.0 | 90.7 | (100.0) | (27.8) | (75.3) | (21.2) | (36.9) | 36.5 | 3.1 |
鉱業 | 100.0* | 71.4* | (100.0)* | (80.0)* | (20.0)* | (40.0)* | (60.0)* | 57.1* | − |
建設業 | 100.0 | 90.4 | (100.0) | (34.8) | (70.6) | (22.5) | (38.6) | 32.2 | 0.5 |
製造業 | 100.0 | 95.4 | (100.0) | (25.9) | (80.9) | (21.6) | (34.9) | 30.9 | 3.4 |
電気・ガス・ 熱供給・水道業 |
100.0 | 97.6 | (100.0) | ( 8.3) | (89.8) | (10.5) | ( 8.8) | 25.2 | 3.6 |
運輸・通信業 | 100.0 | 86.0 | (100.0) | (37.5) | (76.0) | (21.4) | (32.1) | 54.0 | 2.1 |
卸売・小売業, 飲食店 |
100.0 | 85.0 | (100.0) | (26.3) | (66.5) | (24.5) | (51.6) | 30.1 | 3.1 |
金融・保険業、 不動産業 |
100.0 | 96.8 | (100.0) | (29.5) | (60.4) | (19.6) | (46.7) | 24.2 | 2.5 |
サービス業 | 100.0 | 79.2 | (100.0) | (15.6) | (59.3) | (17.6) | (46.4) | 47.9 | 6.2 |
(3)使用者側からの提示事項 企業組織の再編等の実施に伴い、使用者側から提示された事項をみると、「出向・ 転籍」(49.2%)の割合が最も高く、次いで「配置転換(転居を伴わない)」(42.2%)、 「配置転換(転居を伴う)」(35.7%)、「早期退職優遇制度の創設・活用」(29.0%)、 「新規・中途採用の抑制」(27.3%)等の順となっている。 前回と比べると、「配置転換(転居を伴わない)」が14.4ポイント、「職種転換等の 教育訓練の実施」が0.2ポイントそれぞれ低下したほかは、どの提示事項の割合も前 回の割合より高くなっており、特に「定昇・ベースアップの凍結・賃金の引き下げ」 は15.2ポイントも高くなっている(第2図)。 第2図 企業組織の再編等の実施に伴う使用者側からの提示事項別労働組合の割合 (M.A.)(企業組織の再編等が実施された労働組合=100)(注)「新規・中途採用の抑制」、「退職金・企業年金の見直し」については、前回 (平成7年)は調査していない。 (4)労働組合が重視した事項 使用者側から提示された事項のうち、労働組合が重視した事項をみると、「出向・ 転籍」(38.6%)の割合が最も高く、次いで「配置転換(転居を伴う)」(27.8%)、「配 置転換(転居を伴わない)」(26.2%)、「定昇・ベースアップの凍結・賃金の引き下げ」 (22.7%)、「早期退職優遇制度の創設・活用」(22.3%)、「希望退職の実施・解雇」 (20.3%)等の順となっている。 使用者側から提示された事項ごとに重視した労働組合の割合(重視率)をみると、 「定昇・ベースアップの凍結・賃金の引き下げ」(90.2%)が最も高く、次いで、「希 望退職の実施・解雇」(81.6%)、「出向・転籍」(78.4%)、「配置転換(転居を伴う)」 (78.1%)、「早期退職優遇制度の創設・活用」(77.0%)等の順となっている(第3図)。 当該事項を重視した労働組合数 重視率 = ──────────────────────── × 100 使用者側から当該事項の提示があった労働組合数 第3図 労働組合が重視した事項別労働組合の割合及び重視率
(5)企業組織の再編等の実施に対する労働組合の認識 企業組織の再編等が実施された労働組合について、企業組織の再編等の実施に対す る労働組合の認識をみると、「企業組織の再編等の実施は避けられないとしても、労 働条件の変更は最小限に止めるべきである」とする労働組合の割合が46.5%で最も高 く、「雇用の維持が図られるならば企業組織の再編等は実施してもよい」が29.9%、 「企業の生き残りのためには企業組織の再編等の実施も必要である」が20.1%となっ ており、「企業組織の再編等を実施する必要性はない」とする労働組合の割合は1.0 %となっている。 前回と比べると、「企業組織の再編等の実施は避けられないとしても、労働条件の 変更は最小限に止めるべきである」とする労働組合の割合が11.4ポイント、「企業組 織の再編等を実施する必要性はない」が2.7ポイントそれぞれ低下し、一方、「企業 の生き残りのためには企業組織の再編等の実施も必要である」が8.1ポイント、「雇 用の維持が図られるならば企業組織の再編等は実施してもよい」が7.3ポイントそれ ぞれ高くなっている(第4図)。 また、産業別にみると、鉱業を除き、「企業組織の再編等の実施は避けられないと しても、労働条件の変更は最小限に止めるべきである」とする労働組合の割合が最も 高くなっているが、金融・保険業、不動産業では「企業の生き残りのためには企業組 織の再編等の実施も必要である」が36.9%となっている(第3表)。 第4図 企業組織の再編等の実施に対する認識別労働組合の割合
(注)前回は「事業部門の再編成・撤退・縮小」の実施に対する認識について調査した。 第3表 企業組織の再編等の実施に対する認識別労働組合の割合
(%) | |||||||
産業 | 企業の組織の 再編等が 「実施された」 |
企業の 生き残りの ためには 企業組織の 再編等の 実施も 必要である |
雇用の維持 が図られる ならば 企業組織の 再編等は 実施しても よい |
企業組織の 再編等の 実施は 避けられない としても、 労働条件の 変更は 最小限に 止めるべき である |
企業組織の 再編等を 実施する 必要性は ない |
そ の 他 |
不 明 |
計 | 100.0 | 20.1 | 29.9 | 46.5 | 1.0 | 2.4 | 0.1 |
鉱業 | 100.0* | 28.6* | 71.4* | − | − | − | − |
建設業 | 100.0 | 8.4 | 37.1 | 54.0 | 0.4 | − | − |
製造業 | 100.0 | 20.7 | 30.6 | 46.3 | 0.1 | 2.3 | − |
電気・ガス・ 熱供給・水道業 |
100.0 | 6.3 | 44.9 | 48.3 | − | − | 0.5 |
運輸・通信業 | 100.0 | 16.1 | 35.3 | 45.0 | 2.4 | 1.2 | − |
卸売・小売業, 飲食店 |
100.0 | 21.0 | 27.0 | 50.3 | 0.8 | 0.9 | − |
金融・保険業、 不動産業 |
100.0 | 36.9 | 16.3 | 41.9 | − | 4.8 | − |
サービス業 | 100.0 | 19.6 | 20.8 | 43.8 | 4.4 | 9.8 | 1.6 |
(平成7年) | 100.0 | 12.0 | 22.6 | 57.9 | 3.7 | 3.7 | 0.1 |
(注)前回は「事業部門の再編成・撤退・縮小」の実施に対する認識について調査した。