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2 調査結果

   

(1)企業が間接部門と考えているのは、本社の総務、経営企画、財務・経理、人事

  労務・教育・福利厚生など本社組織の主な部分

   本社の総務、経営企画、財務・経理、人事労務・教育・福利厚生の各部門につ

  いては、いずれも90%以上の企業が間接部門と考えている。また、その他の本社

  の部門についても、営業販売、研究・開発、生産技術をのぞいては、いずれも70

  %以上の企業が間接部門と考えている。(図表1   

(2)厳しい経営環境を背景に組織のスリム化の取組が進む

   平成不況後の経営状況については、「経営改善は続けているが回復にはほど遠

  い」が最も多く39.0%、次いで「経営改善努力が実り、回復基調にある」が34.6

  %となっている。(図表2)

   最近5年間で、減量や効率化のため何らかの取組を行った企業は90%を超えて

  おり、具体的な施策としては、「電子メールやグループウェアの導入」「業務予

  算の削減」「正社員の削減」が多くなっている。(図表3)

   また、減量や効率化のための取組を進めるに当たり、「具体的な数値目標を決

  めた(37.5%)」、「社長・役員を加えた推進組織を作り全社的に進めた(35.8

  %)」、「横断的なプロジェクトチームを作って進めた(33.4%)」企業が多い。

  (図表4)

   一方、効率化の阻害要因としては、「適正人員を確定できない(46.6%)」 

  「明確な目標や方針にかけ、漠然としたかけ声にとどまっている(39.0%)」な

  どが多くなっている。(図表5)

   減量の施策としては、「自然減」が最も多く73.2%、次いで「関連会社への出

  向・転籍」が53.5%と多い。(図表6)

   本社の部と課の数は、5年前(平均部19.6課38.2)と比べ、現在は少なくなっ

  ており(同部18.3課35.8)、望ましいと考える数はさらに少なくなっている(同

  部15.8課31.5)。本社の管理階層数についても減少する傾向にある。5年前は平

  均で7.3階層であったのが、現在は7.0階層、望ましいと思う階層数は6.0階層と

  なっている。

   現在の人員の過剰感については、現在の人員が必要な要員数に比べて「多い」

  と回答した企業が40.2%、「一致している」が37.9%となっている。(図表7)

   過去5年間の本社の正社員の減少率(-1.97%)は、会社全体の正社員の減少

  率(-1.63%)に比べやや高い程度だったが、今後5年間の予想では、本社正社

  員の減少率(-7.81%)が会社全体の正社員の減少率(-1.44%)をかなり上回っ

  ており、小さな本社化が進むことが予想される。(図表8   

(3)正社員の間接部門に属する比率の高さが経営状況の悪化に関係しているとは言

  えない

   正社員の間接部門に属する比率別の売上高経常利益率の伸び率(91-96年度)

  は、間接部門比率46%以上で平均2.4%、26-45%で-0.7%、16-25%で1.0%、15

  %以下で-0.9%となっており、必ずしも正社員の間接部門に属する比率が高いか

  ら直ちに経営状況が悪化しているとは言えない。(図表9)



(4)間接部門の効率化の課題は、「情報伝達の迅速化」「人材の活性化」「コスト

  削減・収益性の改善」「組織・人のフレキシビリティ」「少数精鋭化」「組織の

  活性化」

   「間接部門の効率化」とは、単一的な概念ではなく、その概念を掘り下げると、

  例えば「情報伝達の迅速化」「人材の活性化」「コスト削減・収益性の改善」 

  「組織・人のフレキシビリティ」「少数精鋭化」「組織の活性化」という6つの

  異なる課題があげられる。企業ではこれらのうちいずれか、あるいはこれらのう

  ちの複数の項目を方向性として認識し、取り組んでいると考えられる。

   

(5)本社の減量化は、企画・戦略、調査等の部門よりもルーティーンワーク・ライ

  ン業務部門でより進展

   本社の企画部門等とライン部門等で、効率化と減量化の実現企業の比率を比較

  してみると、効率化実現企業比率では大きな差はないが(企画部門等56.6%、ラ

  イン部門等61.8%)、減量化に関しては差が大きくライン部門等で減量実現企業

  比率が高くなっており(企画部門等37.8%、ライン部門等53.3%)、本社の減量

  化は、企画部門等に比べライン部門等でより進展している。(図表10   

(6)間接部門と効率化の取組にはある程度の成果が見られるとともに、採用方針に

  も影響

   効率化の成果としては、「社員のコスト意識の徹底(59.9%)」「総額人件費

  の削減(59.0%)」「上位下達のスピードアップ(55.4%)」などが顕著に見ら

  れる。(図表11)

   効率化が採用に影響を及ぼしたと多くの企業で考えているが、その具体的な内

  容としては、「業務の必要に応じて雇用する臨時、パート、派遣社員、契約社員

  の活用をする(59.8%)」「事務作業など付加価値の比較的低い仕事は非正社員

  に任せていったり業務委託してゆくので正社員の採用を減らす(41.9%)」「少

  数精鋭化するために正社員の採用人数をできるだけ減らす(39.6%)」が高い割

  合となっている。(図表12   

(7)間接部門において、業務量に基づく要員数の算出を行っている企業は多くはな

  いが、その中では効率化実現企業で実施している企業が多い

   「直接部門」と「間接部門」とを分けて要員管理している企業は58.4%、分け

  て管理していない企業は41.1%である。(図表13)

   間接部門における業務量に基づく要員数算出については、「現在間接部門全体

  で実施している」のは34.3%にすぎず、「一部の部署で実施」が18.5%、「一部

  の業務で実施」が10.0%、「実施していない」企業は35.8%である。(図表14)

   しかし、効率化が実現できた企業では、それ以外の企業に比べ業務量に基づく

  要員数を算出していることが多い。(図表15   

(8)外部労働力活用志向企業では短期的なコスト削減では成果が上がっているが、

  残った社員の負担が増加するなど、効率化の取組により生じた問題点も多い

   外部労働力活用志向企業では、総額人件費の削減、社員のコスト意識の徹底な

  ど、短期的コスト削減については成果が上がったとしている。実際に業績につい

  ても、経常利益率平均の伸び率(91-96年)を見ると、0.46%であり、内部労働

  力活用志向企業の0.02%に比べわずかであるが高くなっている。(図表16)

   しかし、効率化の取組により生じた問題点については、多くの項目で、外部労

  働力活用志向企業の方が内部労働力活用志向企業よりも該当すると回答した割合

  が多い。特に、「基幹社員がルーティーンワークまで負担せざるを得なくなっ 

  た」(外33.3%、内12.7%)で、その差が大きくなっている。(図表17   

(9)目標管理制度など人事労務管理制度の変化も最近多く見られる

   過去5年間の目標管理制度の導入・拡充の有無については、「新規に導入し 

  た」企業が29.3%、「拡充した」企業が27.9%、「導入・拡充していない」企業

  が41.1%となっている。(図表18)

   目標管理制度の運用上の問題については、「目標の数量化が難しい」が73.8%

  と最も高く、次いで「目標達成が個人の努力によるものか、経営環境や周囲の応

  援によるものか不分明である」が42.6%、「目標達成と人事考課との連動のさせ

  かたが曖昧、不明確」が42.1%となっている。(図表19)

   その他の人事労務制度の改定は、「成果にもとづいた処遇の強化」で56.3%の

  企業が実施したと回答しており、次いで「フレックスタイム制の導入(26.4% 

  )」「出向制度の拡充(24.0%)」「抜擢人事の導入(23.8%)」「職能資格制

  度の改正(23.5%)」が多くなっている。(図表20   

(10)人事部門と各部門レベルとでは、効率化の状況や必要要員数に対する認識にギ

  ャップ

   効率化の進展状況について、人事部門(本社全体について回答)と各間接部門

  の認識を比較すると、人事部門で効率が上がったと考えている企業では、各間接

  部門レベルでもある程度同様の回答をしているが、人事部門で効率が上がらなか

  ったと回答している企業では、各間接部門レベルで逆に効率が上がったと考えて

  いることが多いなど、両者の間にギャップが見られる。

   また、業務量に基づく要員数の算出をしている企業を見てみると、全般的に各

  部門より会社全体の間接部門について回答している人事部門の方が、業務量に基

  づき算定した必要数よりも、実際の人員の方が多いと考える傾向にある。

  (図表21)



(11)業務量増大、責任や権限・裁量範囲の広がり等、増える社員の負担

   実際に間接部門で働く正社員の負担の最近の変化として、実労働時間、仕事量、

  業務範囲、裁量と権限の程度、責任の大きさの状況について、管理職、一般社員

  別に見てみると、一般社員で実労働時間が短くなる傾向があるものの、その他に

  ついては、全般的に正社員の負担度が大きくなっており、特に営業企画部門にお

  いてその傾向が強く見られる。

   効率化との関係では、実労働時間については営業部門を除き、効率化した企業

  以外の企業の方が長くなっているが、仕事量、業務範囲、裁量・権限、責任につ

  いては、全般的に効率化した企業の方がそれ以外の企業に比べ正社員の負担度が

  大きくなる傾向が見られる。



(12)明確な目標・方針に基づく戦略的効率化が必要

   間接部門における工数管理や具体的目標の設定は、実際に実施するのは難しい

  ものの、効率化の推進に相当な効果があると考えられることから、可能な限り個

  別企業において取り組むことが望まれる。



(13)個々の企業の条件に適応した組織改革や人材活性化策が必要

   間接部門の効率化の具体的取組としての組織改革や、それに伴う人材活性化の

  ための取組が最近多く見られるが、企業形態や人事制度は、その企業の業種、規

  模、企業風土などにより望ましい姿は多様であると考えられることから、自社の

  特徴に合ったものを慎重に検討した上で実施していくことが肝要である。









  間接部門の効率化等の雇用への影響に関する調査研究会 委員

  座長  佐藤 博樹  東京大学社会科学研究所 教授

  委員  川喜多 喬  法政大学経営学部 教授

      西川 真規子 東京都立労働研究所 研究員

      浅海 典子  (株)マネジメントサービスセンター

               主任コンサルタント

                   (所属は平成10年3月現在)


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