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第2部 雇用失業問題の解決に向けた先進国の取組



 先進国の失業問題は、景気の回復のみによって解決されるものではなく、その原因

の多くが各国の構造的な問題に根ざすものであり、先進国の状況に合わせた構造改革

のための対策が不可欠であるということが、先進国の共通認識となっている。

 失業問題の解決はこのように先進国共通の課題であることから、毎年のサミットの

場において重点課題とされるとともに、94年、96年には雇用サミットが開催されてい

る。

 また、97年11月には、我が国政府の提案に基づき、日米欧とロシアの主要8カ国に

よる神戸雇用会議が開催された。

 神戸雇用会議は、「活力ある雇用社会の実現」をメインテーマとして、各国の雇用

担当大臣、産業担当大臣を含むハイレベルが参集し、これまでの雇用サミット等を通

じて形成された、持続的な成長をもたらすマクロ政策と構造政策との連携が必要であ

るとの認識を背景に、今後各国が共通して取り組むより具体的な政策の方向、指針に

ついて合意がなされた。このような神戸雇用会議の成果は、98年2月にイギリスで開

催された「成長と雇用に関する8カ国会合」の成果ともあいまって、98年5月に同じ

くイギリスで開催されたバーミンガム・サミットで各国首脳が雇用問題を議論する上

での基礎となった。

 一方で、OECDなどの国際機関においても、雇用失業問題解決のための取組がな

されてきている。とりわけOECDでは、92年以来の「雇用研究」により、各国が雇

用失業問題に対処するための政策リストを提示している。

 これら90年代にわたる一連の先進国共同の取組については、以下に述べる意義があ

ると考えられる。第1に、経済の構造変化の中で、深刻化が予想される雇用問題につ

いて処方箋を提供していくため、先進各国政府の確固たる意志を内外に示してきた。

第2に、各国が相互に率直に経験や情報を交換し、問題解決に向けて政策を改善する

場として欠かせない役割を果たしてきたことが挙げられる。第3に、先進国諸国間で

緊密な協力を図ることは、成長と雇用のための新たな機会を世界中に広く生み出すグ

ローバル化の過程から、できるだけ多くの利益を得るために役に立つものであり、ア

ジア諸国を含む他の諸国と協力関係を進めていく上でも大きく貢献するものであった。

 96年4月のリール雇用サミットで、シラク大統領は、アメリカ・モデル(社会保障

の水準は低く、賃金上昇は小さく均等ではないが、雇用は大きく増加している)でも

欧州モデル(社会保障は手厚く、賃金上昇も大きいが、雇用は増加していない)でも

ない「第3の道」を探る決意を表明した。この方向は、「活力ある雇用社会の実現」

をテーマとした97年の神戸雇用会議、「成長、雇用可能性及び社会的一体性」への道

を示した、98年のバーミンガムサミットへ引き継がれ、各国が等しく目標とすべき課

題となっている。同サミットで主要先進国は、社会的一体性を確保しつつ、雇用可能

性の向上と新たな雇用創出を実現する決意を表明した。これは、先進諸国が雇用問題

に取り組むに際し、目指すべき共通の方向が示されたものと言える。今後これをどの

ような手段で実現していくか、各国がそれぞれの実状を踏まえ、具体策を検討し、実

行に移していかなければならない。今は各国ともそれぞれの国に応じた「第3の道」

を模索している段階である。

 雇用問題に対する先進国共同の取組は、これまでの蓄積を基としつつ、相互に経験

を共有し、より一層の情報交換を行うことにより、各国の政策の効果をより拡大する

ため、今後も継続されていくことが望まれる。



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