2 賃金制度
(1)賃金体系
- イ 基本給
- 基本給の決定要素は管理職、一般職とも「年齢・勤続、学歴など」とする企業数割合がそれぞれ81.3%、87.2%と最も高く、次いで「職務遂行能力」79.9%、78.4%、「職務、職種など仕事の内容」75.0%、74.9%、「業績・成果」68.7%、66.1%の順となっている。
- 企業規模別にみると、管理職では大企業、中企業とも「職務遂行能力」、一般職では、すべての規模で「年齢・勤続、学歴など」が最も高い。
- 産業別にみると、管理職では鉱業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、金融保険業、不動産業で「職務遂行能力」が、建設業、卸売・小売業、飲食店、サービス業で「年齢・勤続、学歴など」が最も高くなっている。
- 一般職では建設業の「職務遂行能力」以外はすべての産業で「年齢・勤続、学歴など」が最も高くなっている(第17表)。
- ロ 定期昇給
- 定期昇給制度のある企業数割合は、87.6%となっている。うち定期昇給の対象者を全員とする企業数割合は、84.1%となっている。定期昇給額の決め方は「考課査定と自動決定」51.1%、「全額考課査定」39.4%、「全額自動決定」9.4%と、9割の企業で「考課査定」としている。企業規模別にみると、大企業ほど「考課査定と自動決定」とする企業数割合が高い(第18表)。
- (注)定期昇給制度とは一定期間勤務し、一定の条件を満たした労働者の基本給額について、定期的に増額することがあらかじめ労働協約、就業規則等で定められているものをいう。
- ハ 賃金体系
- 労働者の職種や職務によって賃金(基本給)体系を別建てにしている企業数割合は50.9%となっている。その内訳(複数回答)は「管理職と管理職以外によって別建て」69.8%、「部門によって別建て」21.1%などとなっている(第19表)。
(2)賃金形態
- イ 企業における賃金形態
- 主な賃金形態別(複数の賃金形態を実施している企業については、最も多くの労働者に適用している形態)の企業数割合は、「定額制」が96.2%(前回平成3年調査94.9%)、「出来高払い制」は3.8%(同5.1%)と大部分の企業が「定額制」を採用している。「定額制」の企業の内訳をみると、「月給制」が79.9%(同78.4%)と高く、次いで、「日給制」が12.9%、「時間給制」が3.1%、「年俸制」が0.3%の順となっている。
- なお、「月給制」で「欠勤等による差引きがある(日給月給制)」は56.5%、「欠勤等による差引きがない(完全月給制)」は23.4%となっている(第20表)。
- いずれかの賃金形態(複数回答)を採用している企業数割合は、「定額制」が99.4%、「出来高払い制」は5.5%となっている。「定額制」の企業の内訳をみると、「月給制」が96.3%と最も高く、次いで、「日給制」が26.1%、「時間給制」が11.8%、「年俸制」が8.6%となっている。
- 企業規模別にみると、大企業では「年俸制」は15.9%(平成6年調査7.9%)の企業が採用している(第8図、表3、第21表)。
- ロ 適用労働者の状況
- 賃金形態別の適用労働者の割合は、「定額制」が97.8%(前回平成3年調査96.4%)、「出来高払い制」は2.2%(同3.6%)と大部分の労働者が「定額制」となっている。「定額制」の適用労働者の内訳をみると、「月給制」が89.7%(同88.4%)と高く、次いで、「日給制」が5.7%、「時間給制」が1.4%、「年俸制」が1.1%の順となっている。
- なお、「月給制」で「欠勤等による差引きがある(日給月給制)」は62.6%、「欠勤等による差引きがない(完全月給制)」は27.1%となっている。
- 企業規模別にみると、「月給制」の適用労働者の割合は、大企業が96.5%であるのに対して小企業は77.5%となっている。また「日給制」の適用労働者は、小企業では14.9%となっている(第22表)。
(3)賃金構成
- 平成8年11月の労働者1人平均月間賃金総額(賞与等は除く)は、355,625円、所定内賃金は318,242円となっている。賃金総額を100とした構成比は、所定内賃金89.5%(基本給75.1%、諸手当14.4%)、所定外賃金10.5%となっている(第23表)。
- 所定内賃金(労働者1人平均)に占める基本給の割合は83.8%、諸手当の割合は16.2%となっており、規模別にみると規模が大きいほど、基本給の割合が高い(第9図、第24表)。
(4)諸手当
- イ 諸手当の支給状況
- 手当の種類別に採用企業数の割合をみると、「通勤手当」89.9%が最も高く、次いで、「役付手当」86.7%、「家族、扶養手当」79.8%などとなっている。また、「精皆勤、出勤手当」53.5%、「技能、技術手当」49.7%、「住宅手当」47.8%などが約半数の企業で支給されている。
- 企業規模別にみると、「生活手当」のほとんどの手当は大企業で支給割合が高いが、「個人別業績手当」、「精皆勤、出勤手当」では、小企業で支給割合が高い(第25表)。
- ロ 諸手当の平均支給額
- 手当の種類別に支給対象労働者一人当たりの平均支給額をみると、「個人別業績手当」が62,103円と最も高く、次いで、「役付手当」37,130円、「単身赴任、別居手当」34,814円、「部門・グループ別業績手当」32,086円などとなっている(第26表)。
(5)賃金制度の改定状況
- 平成6年から8年までの過去3年間に何らかの賃金制度の改定を行った企業数割合は49.7%となっている。改定内容をみると、「昇給幅の縮小」が23.3%と最も高く、次いで「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」15.7%、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」15.0%などとなっている。
- また、今後3年間に改定を行う予定のある企業数割合は49.1%となっている。改定予定内容をみると、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」がいずれも27.2%と高い。
- 職種別にみると過去3年間に改定を行った内容は管理職、一般職ともほぼ同じ順位だが、今後3年間に改定を行う予定では、管理職では「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」21.8%、「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」21.5%、「職務、職種など仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」15.1%の順で高く、一般職では「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」25.1%、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」24.2%、「職務、職種など仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」18.0%の順となっている(第10図、第27表)。
- 過去3年間に何らかの賃金制度の改定を行った企業と、改定を行なわなかったが今後3年間に改定予定のある企業とを合計すると63.3%となっている。
- 企業規模別にみると、大企業では79.9%、中企業では67.5%、小企業では60.9%と、大企業では約8割の企業が行った又は行うとしている。また、過去3年間、今後3年間とも何らかの賃金制度の改定を行わない企業は36.7%となっている(表4)。
- 過去3年間に何らかの賃金制度の改定を行わなかった企業のうち今後3年間に改定予定ありとする企業の改定内容をみると、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」が58.9%と最も高く、次いで「職務遂行能力に対応する賃金部分の拡大」が55.6%となっている(第28表)。
3 労働者の資産形成への援助制度
- 貯蓄制度、持株援助制度、社内保険援助制度といった労働者の資産形成に関する援助制度を採用している企業数の割合は82.9%となっている。
- 企業規模別にみると、300人以上では90%以上、30〜99人規模でも80%と高い割合となっている。
- 種類別にみると貯蓄制度が69.1%(平成4年72.1%)と最も高く、次いで社内保険援助制度51.5%、持株援助制度12.2%(同12.7%)となっている。前回と比べると、貯蓄制度、持株制度は低下している(第29表)。
(1)貯蓄制度
- イ 貯蓄の種類別採用企業数
- 貯蓄の種類別に採用企業数割合(複数回答)をみると、一般財形貯蓄63.2%、財形年金貯蓄36.1%、財形住宅貯蓄35.2%、社内預金8.6%となっている(第30表)。
- ロ 貯蓄の種類別1企業平均契約金融機関数
- 貯蓄の種類別に1企業平均契約金融機関数をみると、一般財形貯蓄2.6社、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は2.4社となっている。また、制度のある企業の全労働者数に対する契約労働者数の割合は、一般財形貯蓄31.5%、財形年金貯蓄9.6%、財形住宅貯蓄12.1%となっている(第31表)。
(2)持株援助制度
- 労働者の持株援助制度がある企業数割合は12.2%となっている。このうち、援助の種類別に採用企業数割合(複数回答)をみると、奨励金の支給が83.8%と最も高く、次いで事務費等の援助20.2%、購入資金の貸付9.2%などとなっている(第32表)。
(3)社内保険援助制度
- 労働者を被保険者とする保険の保険料の全額又は一部を企業が負担する社内保険援助制度を採用している企業の割合は51.5%となっている。
- 種類別に採用割合をみると、団体定期生命保険が66.0%と最も高く、次いで災害保険44.1%、交通傷害保険30.8%などとなっている。災害保険と交通傷害保険についてみると、企業規模が小さいほど採用割合が高くなっている。
- 各保険の保険料の企業負担状況をみると、全額負担とする企業の割合は約7割以上となっている(第33表)。
4 職場外の生活設計への援助制度
(1)社会貢献活動や自己啓発のための活動への支援・援助制度
- 労働者が社会貢献活動や自己啓発のための活動を行う場合に支援・援助する制度のある企業数割合は24.1%となっている。活動内容別にみると、「自己啓発のための社外講座や研修への参加」が16.4%と最も高く、次いで「リフレッシュ、ゆとり活動」7.7%となっている(第11図、第34表)。
- 支援・援助制度を勤務時間内の活動に対するものと勤務時間外の活動に対するものに分けてみると、勤務時間内の活動(年次有給休暇を取得して行う活動を除く)に支援・援助制度のある企業数割合は19.6%となっている。活動内容別にみると、「自己啓発のための社外講座や、研修への参加」が12.3%と最も高く、次いで、「リフレッシュ、ゆとり活動」6.7%となっている。
- 活動期間別にみると、1ヵ月以内の活動への支援・援助制度のある企業数割合が19.1%、1ヵ月を超える活動への支援・援助制度のある企業数割合が3.9%と短期間の活動への割合が高い。
- 勤務時間外の活動(週休日、夜間及び年次有給休暇の取得日等に行う活動)に物的、金銭的あるいは情報提供等の支援・援助をする制度のある企業数割合は10.9%となっている。活動内容別には、「自己啓発のための社外講座や研修への参加」8.3%が最も高く、次いで「地域社会活動」3.7%となっている(第34表)。
- それぞれの支援・援助制度の内容等についてみると、「自己啓発のための社外講座や、研修への参加」については、1ヵ月以内の活動への支援・援助制度のある企業数割合は12.1%、このうち期間の定めのある企業は28.2%で1回当たりの最高付与日数は4.4日、年間では10.6日、平成8年1年間に利用者があった企業は85.9%となっている。
- 次に、1ヵ月を超える活動へ支援・援助制度のある企業数割合は1.9%で、このうち休暇・休職付与期間は特に定めてない企業が84.2%、賃金の支給状況は全額支給とする企業は64.8%、平成8年1年間に利用者があった企業は41.8%となっている。
- 「リフレッシュ、ゆとり活動」については、平成8年1年間に利用者があった企業が、1ヵ月以内の活動では87.1%、1ヵ月を超える活動では66.5%とともに高くなっている。
- 1ヵ月を超える活動を勤続年数に通算する企業数割合をみると、「海外留学」86.7%が最も高く、次いで「リフレッシュ、ゆとり活動」81.0%、「防災・災害援助活動」77.5%などと高いが、「地域社会活動」52.7%、「社会福祉活動」47.6%でも、約半数の企業で勤続年数への通算ありとしている(第35表)。
(2)5,000人以上の大企業の状況
- 5,000人以上の大企業についてみると、支援・援助制度のある企業数割合は73.3%と7割以上となっている。活動期間別にみると1ヵ月以内の活動への支援・援助制度のある企業数割合が56.9%、1ヵ月を超える活動の支援・援助制度のある企業数割合が48.2%となっている。また、勤務時間外の活動に支援・援助する制度のある企業数割合は34.8%となっている。
- 1ヵ月以内の活動への支援・援助制度では、「リフレッシュ、ゆとり活動」の40.0%が最も高く、そのうち期間の定めのある企業は97.0%で、1回当たりの最高付与日数は9.3日、年間では10.7日、平成8年1年間の利用者有りの企業は95.4%となっている。次いで「社会福祉活動」は18.5%の企業で支援・援助制度があり、そのうち期間の定めのある企業は78.1%で1回当たりの最高付与日数は7.9日、年間10.7日、平成8年1年間の利用者有りの企業は54.8%となっている。
- また、1ヵ月を超える活動への支援・援助制度では、「国際支援活動(通訳、青年海外協力隊への参加等)」が33.6%で最も高く、そのうち休暇・休職付与期間は2年以上の企業が37.9%、賃金の支給状況は一部支給が47.9%、勤続年数への通算有りが80.9%、平成8年1年間の利用者有りの企業は43.0%となっている。
- 勤務時間外の活動については、「自己啓発のための社外講座や、研修への参加」が25.6%と最も高くなっている(第34表、第35表)。
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