第3 平成14年度地方労働行政の重点施策 1 労働基準行政の重点対策 (1) 厳しい経済情勢下での労働条件の確保・改善等 イ 一般労働条件の確保・改善対策の推進 すべての労働者が適法な労働条件の下で安心して働くことができるように するため、一般労働条件の確保・改善対策を労働基準行政の重点対策の一つ として位置付け、積極的に推進していく。 具体的には、最も基本的な労働条件である賃金の支払、法定の手続に則っ た解雇を行う場合の法定の手続の履行、時間外労働・休日労働協定の適正な 締結及び遵守、時間外労働等に係る割増賃金の適正な支払など法定労働条件 の遵守等を図るため、管内の動向を注視しつつ、引き続き、同対策を積極的 に推進する。 また、労働基準関係法令違反に対しては、厳正に対処する。 ロ 解雇、賃金不払事案等に対する的確な対応 経済、雇用情勢や企業の動向を注視し、企業倒産、事業場閉鎖、人員削減、 労働条件の引下げ等に伴う法定労働条件の履行確保の問題が懸念される事案 に対しては、早期に情報を把握し、賃金債権の確保や社内預金の保全等につ いて迅速かつ的確な対応を図る。 また、労働基準関係法令上の問題が認められる賃金不払等に係る申告・相 談がなされた場合には、申告・相談者が置かれている状況に意を払い、その 解決のための迅速・的確な対応を図るとともに、労働基準関係法令上の問題 が認められない場合であっても、総合労働相談コーナーと連携を図りつつ、 その内容に応じ、相談者等に対しては、その自主的解決を図るため、引き続 き、関連する裁判例等の情報の提供や個別労働紛争解決制度、適切な相談先 の教示等を行うなど懇切丁寧な対応に努める。 ハ 未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営 依然として厳しい雇用・経済情勢の下、企業倒産により賃金の支払が受け られない労働者に対する未払賃金立替払制度について、雇用のセーフティネ ットの充実の観点から立替払の限度額を引き上げたところであり、引き続き 迅速かつ適正な事務処理に努める。 ニ 最低賃金制度の適正な運営 地域別最低賃金については、地域の実情に応じた適正な改正を行うととも に、産業別最低賃金についても、各産業における企業経営や賃金の実態等に 応じた適正な改正等を行う。また、依然として厳しい経済情勢の下で、最低 賃金法の履行を確保するため、最低賃金制度のより一層の周知徹底に努める とともに、問題のある地域、業種を的確に把握し、その遵守の徹底を図る。 さらに、平成12年12月に取りまとめられた「中央最低賃金審議会目安 制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、中央最低賃金審議会時間 額表示問題全員協議会において引き続き表示単位期間の時間額単独方式への 移行のための具体的な検討を進めるとともに、産業別最低賃金についても同 様、中央最低賃金審議会産業別最低賃金制度全員協議会において、引き続き そのあり方についての検討を進める。 ホ 賃金・退職金制度改善の推進 賃金・退職金セミナーの開催及び中小企業賃金制度支援事業を中心として、 経済情勢等の変化に対応した的確な情報提供を行うことにより、援助等の充 実を図る。 へ 企業倒産等の場合における労働債権の取扱いについての適切な対応 平成12年12月に取りまとめられた「労働債権の保護に関する研究会報 告」を踏まえ、労働債権の保護強化のため、引き続き法制審議会等の場を通 じ適切に対応する。 ト 契約期間の上限を3年とする高度な専門的知識等を有する者の拡大に伴う 対応 平成14年2月より、契約期間の上限を3年とする高度な専門的知識等を 有する者の対象が拡大されていることから、集団指導時等あらゆる機会をと らえて周知を図るとともに、その適正な履行確保を図る。 チ 特定の労働分野における労働条件確保対策の推進 (イ) 外国人労働者、技能実習生 外国人労働者にも労働基準関係法令が適用されることについて周知徹底 を図るとともに、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づ く啓発・指導により、引き続き外国人労働者の適正な労働条件及び安全衛 生の確保対策を推進する。 また、技能実習生については、労働契約時の労働条件の書面による明示、 賃金支払の適正化等労働基準関係法令に基づく法定労働条件の履行確保を 図る。 (ロ) 自動車運転者 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等の周知及び遵守 の徹底により、引き続き自動車運転者の労働時間・賃金制度等の労働条 件の改善を図る。 (ハ) 派遣労働者 派遣労働者が年々大幅に増加し続けていること、派遣期間の制限を中高 年齢者について3年間に延長したこと等を踏まえ、引き続き職業安定行政 との連携を図りつつ、派遣元及び派遣先の事業主双方に対して労働基準関 係法令の遵守の徹底を図る。 (ニ) 介護労働者 介護保険法に基づく介護サービスに従事する労働者の法定労働条件の確 保を図るため、引き続き実態把握に努めるとともに、労働基準関係法令の 遵守を図る。また、事業主による労働条件の改善に向けた自主的な取組を 促進する。 (ホ) 短時間労働者 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム 労働法」という。)」並びに「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理 の改善等の措置に関する指針(以下「パート指針」という。)」の趣旨及 び内容についての周知啓発を重点とした対策を推進し、事業主による自主 的な取組を促進する。 (ヘ) 障害者である労働者 障害者である労働者の労働環境の整備が求められている中で、引き続き その法定労働条件の履行確保を図るため、職業安定行政との連携の下、こ れら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努めるとともに、的確 な情報の把握を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。 (ト) 出稼労働者 出稼労働者に対する適正な賃金の支払の確保、有給休暇制度の普及促進、 労働災害の防止、健康管理の充実等を重点として、引き続き、労働条件確 保対策を推進する。 また、建設業附属寄宿舎を設置する使用者に対して寄宿舎における労働 基準関係法令の遵守を図る。 リ 過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進 脳・心臓疾患に関する新認定基準の考え方の基礎となった医学的知見を踏 まえ、過重労働による脳・心臓疾患の発症を防止するため、時間外労働の削 減、健康管理対策の強化、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場 に対する再発防止の徹底等による総合対策を推進する。 ヌ いわゆる労災かくしの排除 労災かくしの排除を期すため、引き続き、的確な監督指導を実施し、その 存在が明らかになった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。さらに、 医師会及び医療機関と情報収集等を通じて連携を図り、被災労働者に対する 労災保険制度の周知に努めるほか、安全パトロール等を活用した事業者等へ の啓発を行う。