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報 告 書 概 要





1.本調査研究の目的



○ 目的

  企業の人材確保戦略の多様化の現状及び今後の方向について実態把握を行うとと

 もに、中途採用者の転職前後の処遇の変化等就労の実態や、就業意識等を明らかに

 し、採用戦略の多様化に伴う課題を抽出して、労働行政としての今後の対応の方向

 について検討する。



○ 実施した調査

・ 全国上場企業から無作為抽出した企業(2100社)に対しアンケート調査(企業の

 採用戦略の多様化に関する調査)及び企業調査で対象となった企業に勤務する中途

 採用者(6300名)に対しアンケート調査(ホワイトカラーの転職実態に関する調査

 )を実施(平成11年12月実施)

・ 中途採用の現状や課題に関して、一般事業会社(4社)及び民間人材ビジネス会

 社(5社)に対しヒアリング調査を実施(平成11年12月〜12年1月実施)





2.企業の採用戦略



○ 採用戦略の多様化に向け「ホワイトカラー正社員の中途採用」「派遣社員の

 受け入れ」を半数程度の企業が実施。大企業、業績のよい企業で多様化の動き。

・ 採用戦略の多様化に向け企業が導入している施策は「ホワイトカラー正社員の中

 途採用」(47.3%)、「派遣社員の受け入れ」(45.3%)の割合が高く、次いで

 「有期契約社員の採用など雇用期間の多様化」(29.7%)が続く。

・ 特に大企業や業績の良い企業でこれらの施策の導入率が高い。

・ 業種別では、中途採用はサービス業(62.5%)、製造業(53.7%)で高く、一方

 派遣社員の受入は卸売・小売業、飲食店(42.9%)で高い。



○ 採用時期、採用選考等の方式についても多様化の動き。

・ 採用方式については、新卒採用では、「学校名不問採用」(44.6%)に加え、

 「職種別採用」(37.1%)、「インターンシップ制度」(22.1%)の導入等も進ん

 でおり、多様化が見られる。特に大企業では4割の企業がインターンシップ制度を

 導入済み。

・ 一方中途採用では、新卒採用と比べ職種別採用、部門別採用の導入率が高い。



○ ホワイトカラー社員に占める中途採用者の割合は5人に1人。中途採用者比

 率が50%以上の企業も10社に1社。

・ ホワイトカラー社員に占める中途採用者の割合は20.3%と5人に1人の割合。中

 途採用者比率10%未満の企業が31.5%あるものの、50%以上の企業も10.2%と10社

 に1社の割合。



○ 新卒者と中途採用者の比率は、今後6割の企業が現状維持。但し変更する意

 向のある企業では、新卒採用より中途採用を重視する傾向。

・ 新卒者と中途採用者の比率は、今後(3〜5年後)約6割の企業が現状維持の意

 向であり、少なくとも中期的には現在の水準が大きく変更することはないものと思

 われる。但し、過去との比較において「中途採用の割合を増やした」(23.4%)が

 「新規卒業者採用の割合を増やした」(17.9%)を上回っており、その傾向は今後

 の見通しにおいて拡大していることから、長期的には中途採用を重視する企業は増

 加するものと思われる。

・ また業績の良い企業では中途採用を積極的に実施している。





3.中途採用の現状



○ 過去3年間に中途採用を実施した企業は4社に3社。

・ 過去3年間で中途採用を実施した企業は74.3%で、業績のよい企業やサービス業

 業、製造業で積極的に行っている。



○ 「営業・販売」部門では7割の企業で中途採用を実施。業績の良い企業では、

 事業の拡大を背景に企画部門、管理部門での中途採用も活発。

・ 職能別の中途採用については、「営業・販売」が70.6%と高い。業績の良い企業

 では、「総務・人事」「経営企画」等での中途採用が積極的に行われ、事業拡大を

 背景に企画部門、管理部門の強化に伴う人材需要による中途採用も見られる。



○ 「即戦力の確保」が中途採用の大きな理由。「職務経験」や「専門的知識・

 技能」を重視した中途採用を実施。ただし、即戦力といいながら「年齢」を条

 件とする企業が過半数。

・ 中途採用の実施理由は、「欠員の補充」より「即戦力となる人材の確保」をあげ

 る企業が多い。ただし、中途採用の条件として「年齢」をあげる企業は52.6%にの

 ぼるなど、年齢を意識した中途採用が行われている点も指摘できる。



○ 中途採用の際の上限年齢は30〜34歳が最も多い。

・ 中途採用の際上限年齢を設けている企業において、上限年齢を見ると、事務職、

 専門・技術職、営業・販売職では30〜34歳が最も多く、39歳以下で8割を占める。

 一方管理職では40〜44歳が最も多い。



○ 中途採用の募集は「求人情報誌の広告」の活用が多く、専門・技術職ではイ

 ンターネットで募集している企業も増加。

・ 中途採用の募集方法は、事務職、専門・技術職、営業・販売職では「求人情報誌

 の広告」の割合が最も高い。一方管理職は「民間の職業紹介会社」の割合が最も高

 い。専門・技術職ではインターネットで募集している企業も多く、38.5%を占める。

 インターネットを活用し始めたのは1997、1998年が多く、これ以降急速に拡大して

 いる。





4.中途採用に係る担当部門



○ 中途採用に際し、募集方法の決定、処遇の決定は人事部門中心であり、採用

 や担当職務の決定は、配属部門の関与度も高い。

・ 中途採用の決定にあたっては、人事部門と配属部門が協力し、ある部分は役割分

 担しながら進めている。募集方法の決定、処遇の決定は人事部門中心の企業が7割

 を越え、一方で募集要員の計画、採用選考、能力判定、採用可否の決定では、人事

 部門と配属部門の共同で行う割合が高く、担当職務の決定は、配属部門中心の企業

 の割合が高くなっている。

・ 採用選考、能力判定等において、中途採用に積極的な企業では、配属部門の関与

 度が高い傾向がみられる。



○ 人事部門関与度の高い企業は「年齢」重視、配属部門関与度の高い企業は

 「職務経験」重視。

・ 中途採用に際し、人事部門と配属部門の関与の程度を見ると、人事部門の関与度

 の高い企業は、条件として「年齢」(63.5%)をあげ、配属部門の関与度の高い企

 業は、条件として「募集職務の経験の有無」(54.2%)をあげる場合が多い。





5.中途採用者の受入体制



○ 中途採用者の待遇は、在職職員とのバランスや年齢重視。

・ 中途採用者の初任格付けは「在職社員とのバランス」を重視する企業が多く、事

 務職や専門・技術職、販売・営業職では「年齢」を重視する企業も比較的多い。特

 に人事部門中心に中途採用を行っている企業では、「年齢」を重視する傾向がみら

 れる。 



○ 8割の企業で「中途採用者も新卒採用者と同じキャリアコースを歩む」。

・ 「中途採用者も新卒採用者と同じキャリアコースを歩む」とする企業が8割を占

 め、多くの企業で新卒採用と中途採用でキャリアコースを区分していない。特に人

 事部門中心に中途採用を行っている企業では、この傾向が強い。





6.ホワイトカラー転職者の転職行動



○ 転職時にブランクを経験した人は44.8%。

・ ホワイトカラー転職者の行動を見ると、転職時にブランクを経験した人は44.8%

 にのぼり、平均ブランク期間は5.8カ月となっている。また、年齢が高くなるとブ

 ランクなしでの転職が増える傾向にあるが、ブランクがあった場合は、その期間が

 長期化する傾向がみられる。



○ 勤務先選定時の情報源は「求人情報誌の広告」が多い。若い年代や専門・技

 術職では「インターネット」の利用も。

・ 勤務先の選定の際の情報源は、「求人情報誌の広告」(34.3%)が最も高く、「新

 聞・チラシ等の広告」(25.5%)、「職業安定所や人材銀行などの公的機関」(21.9%)、

 「友人・知人の紹介」(20.7%)と続く。

・ 男性管理職で「友人・知人の紹介」「直接スカウトされた」「ヘッドハンティン

 グ会社」の割合が高い。また「インターネット」の利用は若い年代や専門・技術職

 などで高い傾向が見られる。



○ 自己都合退職は3/4を占めるが、男性40歳以上、女性30歳以上では、会社都

 合退職が2割を超える。自己都合の理由は、前の会社への不満に加え、キャリ

 アアップを目指すことが多い。

・ 転職理由については、74.6%が自己都合であるが、男性40歳以上、女性30歳以

 上では「会社などの倒産、人員整理など」が2割を超えている。

・ 自己都合の理由は、「前の会社や前の仕事に将来性がなかった」(47.3%)が最も

 多く、「自分が保有する能力・適性や専門性を活かせる仕事がしたかった」(38.4

 %)、「専門性の向上やキャリア形成につながる仕事がしたかった」(32.9%)という

 キャリアアップ志向の理由がこれに続く。



○ 転職に伴って、業種変動は比較的多いが、職種変動は少ない。

・ 転職に伴って業種変動は64.5%と比較的多いが、一方職種変動は36.0%と少ない。

 特に男性の専門・技術職では、「職種変動なし」が8割近くを占め、専門領域を意

 識した転職が行われている。





7.転職者の意識



○ 転職の際の重視事項は、「仕事・職務の内容」「自分の技術・能力が活かせ

 ること」。但し女性は「労働時間、勤務体制、休暇制度」「勤務地」も重視。

・ 転職者に重視事項を尋ねると、重視度が最も高いのが「仕事・職務の内容」

 (92.0%)、次いで「自分の技術・能力が活かせること」(87.6%)となっている。

・ 男女別に見ると、女性ではこれらに加え「労働時間、勤務体制、休暇制度」

 (84.7%)、「勤務地(転職有無・頻度、通勤が便利)」(86.5%)を重視する特

 徴がある。



○ 勤務先に対する満足度は高く、満足度を高める要因としては、転職時に「会

 社の将来性」「会社理念・経営戦略」など『会社選択』に関する項目を重視し

 ていること。

・ 8割を超える人が現在の勤務先に対して「満足」している。直前の勤務先と比べ

 て満足している点は「仕事・職務の内容」「自分の技術・能力が活かせること」が

 多く、一方不満足な点は「賃金水準や賃金の額」「組織文化・組織風土」が多い。

・ また、転職時の重視項目について、満足度に影響を及ぼす要因を分析すると、 足度を高める要因としては「会社の将来性」「会社理念・経営戦略」などの『会社

 選択』に関する項目があり、満足度を低下させる要因としては「労働時間、勤務体

 制、休暇制度」「福利厚生制度」など『労働条件』に関する項目がある。





8.採用多様化に伴う課題と対応の方向



○ 企業・転職者双方とも、外部労働市場における人材の能力評価、それに見合

 った処遇のあり方が課題。また、転職者の問題意識として、転職先企業の情報

 不足も。

・ 中途採用市場の課題について、企業は「採用したい人材の労働市場の給与相場が

 わかりにくい」が多く、一方転職者は「自分の能力が外部市場でどれくらい価値が

 あるのか分からなかった」が多く、企業・転職者双方とも外部市場における人材の

 能力評価、それに見合った処遇のあり方についての課題が提起されている。

・ また、転職者は「転職先としてどんな職場があるか情報が不足していた」「転職

 先の労働条件等の詳細が不明確」など、転職先企業に関する情報不足についても問

 題意識が強い。



○ 企業側は、中途採用者のスキル判定や、自社の求める人材の適性・人柄の見

 極めが課題に。

・ 中途採用者と仕事の間でミスマッチが発生していると考える企業は4社に1社の

 割合で、ミスマッチの内容としては、「採用時の能力や専門性の判定がうまくいっ

 ていない」といった中途採用者のスキル判定や、自社が求める人材とマッチする適

 性・人柄などの見極めがうまくいっていないことをあげる企業が多い。



○ 受入体制として、処遇方針やキャリアコースの設定、入社後の教育訓練、評

 価制度などへの問題意識も。

・ 中途採用者の受入体制について、過半数の企業は問題を感じていないが、「中途

 採用者の将来の処遇方針、キャリアコースの決定が難しい」「中途採用者向けの人

 事・評価制度が未整備である」「入社後の教育訓練が難しい」といった問題意識も

 見受けられる。



○ 企業と人材のマッチングの「目利き」役が求められる民間人材ビジネス。

・ 民間人材ビジネスについては、現状では人材の情報入手としての役割が中心であ

 り、能力判定や初任格付けにあたって、こうしたサービスを活用している企業は非

 常に少ない。民間ビジネスの企業の利用率は半数程度で、情報量に関してはある程

 度満足しているもものの、費用や人材評価の面で不満の声もある。企業と人材のマ

 ッチングの「目利き」役が求められるなか、人材ビジネスサイドの質的な向上が今

 後の課題といえる。



○ 企業・労働者双方とも転職者が不利にならない労働市場の整備を求める。

・ 「労働行政に対する要望」をみると、企業側は「転職者が不利にならないような

 退職金・企業年金制度の見直し」(47.5%)「公的な求人情報の提供拡充」(37.5%)

 「規制緩和を通じた民間人材ビジネスの成長支援」(34.2%)をあげ、転職者側は

 「転職者が不利にならないような退職金・企業年金制度の見直し」(48.8%)「公的

 な求人情報の提供拡充」(30.7%)「個人の能力を認定する公的制度の充実」(18.2%)

 「規制緩和を通じた民間人材ビジネスの成長」(17.1%)をあげている。いずれも長

 期継続雇用を前提にした制度の見直しや、転職情報の充実等が上位にあがっており、

 こうした面でのさらなる対応が求められている。




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