高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針(厚生労働三五一)
2020年10月30日

厚生労働省告示 第三百五十一号

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)第十条の二第四項の規定に基づき、高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針を次のように定め、令和三年四月一日から適用することとしたので、同条第五項において準用する同法第六条第四項の規定に基づき、告示する。

  令和二年十月三十日

厚生労働大臣 田村 憲久

   高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針

第1 趣旨

 この指針は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)第10条の2第4項の規定に基づき、事業主がその雇用する高年齢者(法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(昭和46年労働省令第24号)第4条の4に規定する者を除く。以下同じ。)の65歳から70歳までの安定した雇用の確保その他就業機会の確保のため講ずべき法第10条の2第4項に規定する高年齢者就業確保措置(定年の引上げ、65歳以上継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後等(定年後又は継続雇用制度の対象となる年齢の上限に達した後をいう。以下同じ。)も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入、定年の定めの廃止又は創業支援等措置をいう。以下同じ。)に関し、その実施及び運用を図るために必要な事項を定めたものである。

第2 高年齢者就業確保措置の実施及び運用

 65歳以上70歳未満の定年の定めをしている事業主又は継続雇用制度(高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。以下同じ。)を導入している事業主は、高年齢者就業確保措置に関して、労使間で十分な協議を行いつつ、次の1から5までの事項について、適切かつ有効な実施に努めるものとする。

 1 高年齢者就業確保措置

 事業主は、高年齢者がその意欲と能力に応じて70歳まで働くことができる環境の整備を図るため、法に定めるところに基づき、高年齢者就業確保措置のいずれかを講ずることにより65歳から70歳までの安定した就業を確保するよう努めなければならない。

 高年齢者就業確保措置を講ずる場合には、次の(1)から(4)までの事項に留意すること。

  (1) 努力義務への対応

   イ 継続雇用制度に基づいて特殊関係事業主に雇用されている高年齢者については、原則として、当該高年齢者を定年まで雇用していた事業主が高年齢者就業確保措置を講ずること。

 ただし、当該事業主と特殊関係事業主で協議を行い、特殊関係事業主が高年齢者就業確保措置を講ずることも可能であること。その際には、特殊関係事業主が高年齢者就業確保措置を講ずる旨を法第10条の2第3項の契約に含めること。

   ロ 一の措置により70歳までの就業機会を確保するほか、複数の措置を組み合わせることにより65歳から70歳までの就業機会を確保することも可能であること。

  (2) 労使間での協議

   イ 高年齢者就業確保措置のうちいずれの措置を講ずるかについては、労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置が講じられることが望ましいこと。

   ロ 雇用による措置(法第10条の2第1項各号に掲げる措置をいう。以下同じ。)に加えて創業支援等措置(同条第2項の創業支援等措置をいう。以下同じ。)を講ずる場合には、雇用による措置により努力義務を実施していることとなるため、創業支援等措置を講ずるに当たり、同条第1項の同意を得る必要はないが、過半数労働組合等(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合を、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者をいう。以下同じ。)の同意を得た上で創業支援等措置を講ずることが望ましいこと。

   ハ 高年齢者就業確保措置のうち複数の措置を講ずる場合には、個々の高年齢者にいずれの措置を適用するかについて、個々の労働者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定すること。

  (3) 対象者基準

   イ 高年齢者就業確保措置を講ずることは、努力義務であることから、措置(定年の延長及び廃止を除く。)の対象となる高年齢者に係る基準(以下「対象者基準」という。)を定めることも可能とすること。

   ロ 対象者基準の策定に当たっては、労使間で十分に協議の上、各企業等の実情に応じて定められることを想定しており、その内容については原則として労使に委ねられるものであり、当該対象者基準を設ける際には、過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいこと。

 ただし、労使間で十分に協議の上で定められたものであっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や、他の労働関係法令に反する又は公序良俗に反するものは認められないこと。

  (4) その他留意事項

   イ 高年齢者の健康及び安全の確保のため、高年齢者就業確保措置により働く高年齢者について、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」を参考に就業上の災害防止対策に積極的に取り組むよう努めること。

   ロ 高年齢者が従前と異なる業務等に従事する場合には、必要に応じて新たに従事する業務に関する研修、教育又は訓練等を事前に実施することが望ましいこと。

 2 65歳以上継続雇用制度

 65歳以上継続雇用制度を導入する場合には、次の(1)から(4)までの事項に留意すること。

  (1) 65歳以上継続雇用制度を導入する場合において法第10条の2第3項に規定する他の事業主により雇用を確保しようとするときは、事業主は、当該他の事業主との間で、当該雇用する高年齢者を当該他の事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があること。

  (2) 他の事業主において継続して雇用する場合であっても、可能な限り個々の高年齢者のニーズや知識・経験・能力等に応じた業務内容及び労働条件とすべきことが望ましいこと。

  (3) 他の事業主において、継続雇用されることとなる高年齢者の知識・経験・能力に係るニーズがあり、これらが活用される業務があるかについて十分な協議を行った上で、(1)の契約を締結する必要があること。

  (4) 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。以下同じ。)に該当する場合には、継続雇用しないことができること。

 就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできること。また、当該同一の事由について、65歳以上継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができること。

 ただし、継続雇用しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられること。

 3 創業支援等措置

 創業支援等措置を講ずる場合には、次の(1)から(3)までの事項に留意すること。

  (1) 措置の具体的な内容

   イ 法第10条の2第2項第2号ロ又はハに掲げる事業に係る措置を講じようとするときは、事業主は、社会貢献事業を実施する者との間で、当該者が当該措置の対象となる高年齢者に対して当該事業に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があること。

   ロ 法第10条の2第2項第2号ハの援助は、資金の提供のほか、法人その他の団体が事務を行う場所を提供又は貸与すること等が考えられること。

   ハ 法第10条の2第2項第2号に掲げる社会貢献事業は、社会貢献活動その他不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業である必要があり、特定又は少数の者の利益に資することを目的とした事業は対象とならないこと。

 また、特定の事業が不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業に該当するかについては、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されること。

   ニ 雇用時における業務と、内容及び働き方が同様の業務を創業支援等措置と称して行わせることは、法の趣旨に反するものであること。

  (2) 過半数労働組合等の合意に係る留意事項

   イ 過半数労働組合等に対して、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則第4条の5第1項に規定する創業支援等措置の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)に記載する事項について定めるものであること及び当該措置を選択する理由を十分に説明すること。

   ロ 実施計画に記載する事項については、次に掲げる点に留意すること。

    ① 業務の内容については、高年齢者のニーズを踏まえるとともに、高年齢者の知識・経験・能力等を考慮した上で決定し、契約内容の一方的な決定や不当な契約条件の押し付けにならないようにすること。

    ② 高年齢者に支払う金銭については、業務の内容や当該業務の遂行に必要な知識・経験・能力、業務量等を考慮したものとすること。

 また、支払期日や支払方法についても記載し、不当な減額や支払を遅延しないこと。

    ③ 個々の高年齢者の希望を踏まえつつ、個々の業務の内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大又は過小にならないよう適切な業務量や頻度による契約を締結すること。

    ④ 成果物の受領に際しては、不当な修正、やり直しの要求又は受領拒否を行わないこと。

    ⑤ 契約を変更する際には、高年齢者に支払う金銭や納期等の取扱いを含め労使間で十分に協議を行うこと。

    ⑥ 高年齢者の安全及び衛生の確保に関して、業務内容を高年齢者の能力等に配慮したものとするとともに、創業支援等措置により就業する者について、同種の業務に労働者が従事する場合における労働契約法に規定する安全配慮義務をはじめとする労働関係法令による保護の内容も勘案しつつ、当該措置を講ずる事業主が委託業務の内容・性格等に応じた適切な配慮を行うことが望ましいこと。

 また、業務委託に際して機械器具や原材料等を譲渡し、貸与し、又は提供する場合には、当該機械器具や原材料による危害を防止するために必要な措置を講ずること。

 さらに、業務の内容及び難易度、業務量、納期等を勘案し、作業時間が過大とならないように配慮することが望ましいこと。

    ⑦ 法第10条の2第2項第2号ハに掲げる事業に高年齢者が従事する措置を講ずる場合において、事業主から当該事業を実施する者に対する個々の援助が、社会貢献事業の円滑な実施に必要なものに該当すること。

    ⑧ 創業支援等措置は、労働契約によらない働き方となる措置であることから、個々の高年齢者の働き方についても、業務の委託を行う事業主が指揮監督を行わず、業務依頼や業務従事の指示等に対する高年齢者の諾否の自由を拘束しない等、労働者性が認められるような働き方とならないよう留意すること。

   ハ 実施計画に記載した内容に沿って、個々の高年齢者の就業機会が確保されるよう努める必要があること。

  (3) その他留意事項

   イ 創業支援等措置により導入した制度に基づいて個々の高年齢者と契約を締結する際には、書面により契約を締結すること。なお、その際には、高年齢者の雇用の安定等に関する法律施行規則第4条の5第2項第2号に掲げる事項について、個々の高年齢者との契約における就業条件を記載すること。

 また、この際、当該高年齢者に対して実施計画を記載した書面を交付するとともに、創業支援等措置による就業は労働関係法令による労働者保護が及ばないことから実施計画に記載する事項について定めるものであること及び当該措置を選択する理由を丁寧に説明し、納得を得る努力をすること。

   ロ 創業支援等措置により就業する高年齢者が、委託業務に起因する事故等により被災したことを当該措置を講ずる事業主が把握した場合には、当該事業主が当該高年齢者が被災した旨を厚生労働大臣に報告することが望ましいこと。

 また、同種の災害の再発防止対策を検討する際に当該報告を活用することが望ましいこと。

   ハ 契約に基づく業務の遂行に関して高年齢者から相談がある場合には誠実に対応すること。

   ニ 心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、業務の状況が著しく不良で引き続き業務を果たし得ないこと等実施計画に定める契約解除事由又は契約を更新しない事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、契約を継続しないことができること。

 なお、契約を継続しないことについては、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられること。

 また、契約を継続しない場合は、事前に適切な予告を行うことが望ましいこと。

 4 賃金・人事処遇制度の見直し

 高年齢者就業確保措置を適切かつ有効に実施し、高年齢者の意欲及び能力に応じた就業の確保を図るために、賃金・人事処遇制度の見直しが必要な場合には、次の(1)から(7)までの事項に留意すること。

  (1) 年齢的要素を重視する賃金・処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度に向けた見直しに努めること。この場合においては、当該制度が、制度を利用する高年齢者の就業及び生活の安定にも配慮した計画的かつ段階的なものとなるよう努めること。

  (2) 高年齢者就業確保措置において支払われる金銭については、制度を利用する高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、業務内容に応じた適切なものとなるよう努めること。

  (3) 短時間や隔日での就業制度など、高年齢者の希望に応じた就業形態が可能となる制度の導入に努めること。

  (4) 65歳以上継続雇用制度又は創業支援等措置を導入する場合において、契約期間を定めるときには、高年齢者就業確保措置が70歳までの就業の確保を事業主の努力義務とする制度であることに鑑み、70歳前に契約期間が終了する契約とする場合には、70歳までは契約更新ができる措置を講ずるよう努めることとし、その旨を周知するよう努めること。また、むやみに短い契約期間とすることがないように努めること。

  (5) 職業能力を評価する仕組みの整備とその有効な活用を通じ、高年齢者の意欲及び能力に応じた適正な配置及び処遇の実現に努めること。

  (6) 勤務形態や退職時期の選択を含めた人事処遇について、個々の高年齢者の意欲及び能力に応じた多様な選択が可能な制度となるよう努めること。この場合においては、高年齢者の雇用の安定及び円滑なキャリア形成を図るとともに、企業における人事管理の効率性を確保する観点も踏まえつつ、就業生活の早い段階からの選択が可能となるよう勤務形態等の選択に関する制度の整備を行うこと。

  (7) 事業主が導入した高年齢者就業確保措置(定年の引上げ及び定年の定めの廃止を除く。)の利用を希望する者の割合が低い場合には、労働者のニーズや意識を分析し、制度の見直しを検討すること。

 5 高年齢者雇用アドバイザー等の有効な活用

 高年齢者就業確保措置のいずれかを講ずるに当たって、高年齢者の職業能力の開発及び向上、作業施設の改善、職務の再設計や賃金・人事処遇制度の見直し等を図るため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に配置されている高年齢者雇用アドバイザーや雇用保険制度に基づく助成制度、公益財団法人産業雇用安定センターにおける他の事業主とのマッチング支援等の有効な活用を図る。