青少年雇用対策基本方針を定める件(厚生労働四)
平成28年1月14日

厚生労働省告示 第四号

 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)第八条第一項の規定に基づき、青少年雇用対策基本方針を次のように定め、平成二十八年四月一日から適用することとしたので告示する。なお、第九次勤労青少年福祉対策基本方針(平成二十三年厚生労働省告示第百四十九号)は、同年三月三十一日限り廃止する。

  平成二十八年一月十四日

厚生労働大臣 塩崎 恭久

   青少年雇用対策基本方針

目次

はじめに

第一 青少年の職業生活の動向

 一 青少年を取り巻く環境の変化

 二 青少年等の現状

  (一) 若年労働力人口の動向

  (二) 青少年をめぐる雇用情勢

  (三) 就業構造の変化及び就業形態の多様化、自立に困難を抱える青少年の増大

  (四) 働くことに関する青少年の意識

第二 青少年について適職の選択を可能とする環境の整備並びに職業能力の開発及び向上等に関する施策の基本となるべき事項

 一 青少年雇用対策の方向性

 二 学校卒業見込者等の就職活動からマッチング・職場定着までの支援

  (一) 在学段階からの職業意識等の醸成

   [1] キャリア教育の推進を通じた職業意識の形成支援

   [2] 関係者の連携によるキャリア教育推進の基盤整備

   [3] 労働法制に関する知識等の周知啓発

  (二) マッチングの向上等による学校卒業見込者等の職業生活への円滑な移行、適職の選択及び職場定着のための支援

   [1] 学校等から職業生活への円滑な移行のための支援

   [2] 既卒者の応募機会の拡大に向けた取組の促進

   [3] マッチングの向上に資するための労働条件等の明示の徹底及び積極的な情報提供の促進

   [4] 労働関係法令違反が疑われる企業への対応

   [5] 就職後の職場適応・職場定着のための支援

 三 中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者に対する支援

 四 フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援

 五 企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援

  (一) 青少年の雇用管理の改善に向けた支援

  (二) 青少年の採用及び育成に積極的な中小企業の情報発信のための支援

  (三) 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の改善、多様なニーズに対応した働き方の実現

 六 職業能力の開発及び向上の促進

  (一) 職業訓練の推進

  (二) 職業能力検定の活用の促進

  (三) 職業人生を通じたキャリア形成支援

 七 ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援

 八 地域における青少年の活躍促進

 九 青少年福祉施策の実施

はじめに

 勤労青少年福祉法(昭和四十五年法律第九十八号)の制定以来、同法に基づき、福祉施設の設置や余暇活動の振興等、勤労青少年福祉施策が推進されてきた。

 勤労青少年福祉法が制定された高度経済成長期から、青少年を取り巻く社会経済状況は大きく変化している。少子高齢化が一層進展し、労働力人口の減少が見込まれる中で、次代を担うべき存在として青少年が活躍できる環境整備を行うことが重要な課題となっている。

 このため、就職準備段階から就職活動時、就職後のキャリア形成までの各段階において、総合的かつ体系的な青少年雇用対策を行うための初めての法的枠組みとして、勤労青少年福祉法を位置付けることとし、題名を「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)と改めるほか、適職の選択に関する措置等を新たに規定したところである。

 この法改正に伴い、従来の「勤労青少年福祉対策基本方針」については、「青少年雇用対策基本方針」として、その名称及び内容を改めることとする。

 本基本方針では、青少年の職業生活に関する動向を明らかにするとともに、第九次勤労青少年福祉対策基本方針(平成二十三年厚生労働省告示第百四十九号。以下「第九次方針」という。)策定以降の社会・経済の変化、少子高齢化の進行や青少年に求められる社会の期待等を踏まえ、青少年が、仕事、人、社会への積極的な関わりを通じて自信と意欲を備え、適職の選択並びに職業能力の開発及び向上を通じて継続的なキャリア形成を図り、社会の構成員として自立して健全に成長することを促すため、また、これを支える関係機関の連携による社会的ネットワークの整備を図るため、施策の基本となるべき事項を示すこととする。

 青少年の対象年齢については、第九次方針において「三十五歳未満」としていたことを踏まえ、引き続き、「三十五歳未満」とする。

 ただし、個々の施策・事業の運用状況等に応じて、おおむね「四十五歳未満」の者についても、その対象とすることは妨げないものとする。

 また、青少年の雇用の促進等に関する法律(以下「法」という。)第二条及び第三条の規定にあるように、青少年雇用対策は、青少年の意欲や能力に応じて、青少年が有為な職業人として成長するよう、就職支援、職業生活における自立促進等の必要な支援を行うこととしている。なお、法第三条の「青少年である労働者」は、現に働いている者に限らず、求職者やいわゆるニート等の青少年も含まれるものである。

  本方針の運営期間は、平成二十八年度から平成三十二年度までの五か年とする。

第一 青少年の職業生活の動向

 一 青少年を取り巻く環境の変化

 我が国の社会、経済をめぐる環境は、近年目まぐるしく変化している。サービス経済化や知識社会化が一層進み、産業活動や職務の内容は、知識・知恵や高度なノウハウの提供・活用により付加価値を生み出すものに重心を移しつつある。また、アジア市場の拡大等により、経済活動の国際化が一層進展し、世界経済の連鎖が強まっている。

 このような社会・経済環境の下での、青少年の雇用動向を見ると、青少年人口が減少局面にあっても、若年層の完全失業率は他の年齢層と比較しても高い水準にある。

 こうした中、学校等の新規卒業予定者(以下「学校卒業見込者」という。)の就職環境はいわゆるリーマンショック後の悪化から回復する一方で、いわゆるフリーターと言われる不安定就労を繰り返す者や、いわゆるニートと言われる若年無業者の数も高水準で推移しており、ニートの該当年齢層人口に対する比率(無業率)は、おおむね上昇傾向にある。

 大学への進学率は、引き続き上昇傾向にあり、平成二十一年以降はおおむね五十パーセントを超える水準にある。その一方で、各学校段階での中途退学者が相当程度の頻度で発生し、これらの者がその後、いわゆる非正規雇用となる割合が高くなるとともに、就職先が決まらないまま卒業した者や卒業後に非正規雇用となる者も一定数存在しており、継続的なキャリア形成実現を図ることが困難な状況となっている。

   以下、これらの青少年の職業生活の動向について、より具体的なデータに基づき概観する。

 二 青少年等の現状

  (一) 若年労働力人口の動向

 少子高齢化が進展する中で、十五歳から三十四歳までの若年労働力人口は減少が続き、平成二十六年で千七百三十二万人、総労働力人口に占める割合は二十六・三パーセントとなっている。労働参加が現状のままである等の仮定の下で、平成四十二年には、ピーク時(昭和四十三年)の六十一・六パーセントとなる千四百六十二万人まで減少することが見込まれている。このように、中長期的に社会の支え手である若年労働力人口の減少は避けられず、このことに伴い、社会・経済システム維持のための青少年一人当たりの負担はますます大きなものとなる見込みである。

  (二) 青少年をめぐる雇用情勢

 青少年の完全失業率は、平成二十一年をピークに低下傾向にある。平成二十六年における全体の完全失業率は三・六パーセントと前年比〇・四ポイント低下し、若年層も十五歳から二十四歳までは六・三パーセントと前年比〇・六ポイント、二十五歳から三十四歳までは四・六パーセントと前年比〇・七ポイント低下と改善したものの、他の年齢層に比べてなお高水準にある。

 また、学校卒業見込者の就職状況についても、リーマンショック後の悪化から回復し、大学・高等学校ともに学校卒業見込者の求人倍率や就職(内定)率が上昇し、平成二十七年三月卒業者の就職(内定)率は大学で九十六・七パーセントと七年ぶり、高等学校では九十八・八パーセントと二十三年ぶりの水準となっている。

 一方、学校等を卒業後、就職して三年以内に離職する者の割合は依然として高い水準で推移しており、平成二十四年三月卒業者については、中学校卒業者で六十五・三パーセント、高等学校卒業者で四十・〇パーセント、大学卒業者で三十二・三パーセントとなっている。

  (三) 就業構造の変化及び就業形態の多様化、自立に困難を抱える青少年の増大

 青少年の就業状況について、産業別の就業者数の構成割合を見ると、平成二十六年では、卸売業及び小売業が十八・三パーセントと最も多く、次いで製造業が十六・四パーセント、近年労働市場における需要が高まっている医療及び福祉が十三・四パーセントと続く。同じく職業別の就業者数の構成割合を見ると、専門的・技術的職業従事者が十八・四パーセントと最も多く、次いで事務従事者が十八・二パーセント、販売従事者が十六・二パーセント、サービス職業従事者が十五・二パーセントと続き、平成二十四年と比較すると、専門的・技術的職業従事者が〇・四ポイント低下し、サービス職業従事者が〇・四ポイント上昇している。

 一方、二十九歳以下の有効求人倍率は、平成二十六年度では、全職業計で一・一一倍となっている。これを職業別に見ると、事務的職業は〇・三五倍、運搬・清掃等の職業が〇・五八倍であるのに対し、サービスの職業は二・一九倍となっており、青少年の希望する職業と労働市場における需要との間にミスマッチが生じていることが分かる。仕事に就けない理由として「希望する職種・内容の仕事がない」と回答する青少年の割合が、他の年齢層に比べて高く、ミスマッチの要因の一つとして、仕事の内容に対する選好の強さがあると考えられる。また、学校卒業見込者等(法第十一条に規定する学校卒業見込者等をいう。以下同じ。)では、大企業と中小企業の求人倍率に大きな差が存在している。

 学校卒業見込者の就職状況に改善が見られる一方で、学校等から職業生活への円滑な移行ができず、キャリア形成に課題を抱える青少年の存在が見られる。就職を希望しつつも就職先が決まらないまま卒業した者も含め、卒業後に進学も就職もしない学校等の卒業者は、高卒で約四万八千人、大卒で約六万八千人(平成二十六年三月卒業者)存在するとともに、最初に就いた仕事(在学中のアルバイトを除く。)が非正規雇用である者の割合は約四割(平成十九年十月から平成二十四年九月まで)となっている。さらに、非正規雇用労働者のうち、不本意ながら非正規雇用で働いている青少年の割合は、二十二・六パーセント(平成二十六年)と、他の年齢に比べて高くなっている。

 非正規雇用労働者の給与は、ほぼ全ての世代で正規雇用労働者(期間の定めのない労働契約の下、いわゆるフルタイムで労働する者)の給与を下回り、年齢による変化がほとんどないことから、就業年数を重ねても増加することなく固定化していることがうかがえる。

 フリーター数は、平成十五年の二百十七万人をピークに五年連続で減少した後、平成二十一年以降は百八十万人前後で推移しており、平成二十六年は百七十九万人となっている。フリーター期間が長くなるほど、正規雇用への移行が難しくなる傾向が見られる。

 また、ニート数は、平成十四年以降六十万人台で推移し、平成二十六年には初めて六十万人を下回って五十六万人となったが、いまだに多い状況となっている。

 高等学校・大学等の中途退学者については、高等学校で約五万三千人(平成二十六年度)、大学等で約八万人(平成二十四年度)となり、中途退学後に就職した者の就業状況を見ると、正規雇用の比率が著しく低く、約六割(平成二十四年)がアルバイト又はパートの形態で働いており、安定的な仕事に就くことが困難な状況が見られる。

 このような状況の下で、キャリア形成の初期段階において基本的な職業能力の修得がなされないことにより、将来を担う人的資本の質の低下や、労働力人口が減少する中での社会経済への影響が懸念される。

  (四) 働くことに関する青少年の意識

 青少年にとっての働く目的を見ると、「新入社員『働くことの意識』調査」(平成二十七年)によれば、「楽しい生活をしたい」とする者が三十七パーセントと最も多く、平成七年から八ポイント増となっている。また、「経済的に豊かな生活を送りたい」とする者が二十七パーセントと、平成七年と同水準となる一方で、「社会のために役に立ちたい」とする者が十三パーセントと、平成七年から七ポイント増となっており、経済的・物質的な豊かさだけでなく、楽しさ、やりがい等の精神的な豊かさを重視する傾向が見られる。また、同じ調査によれば、仕事と生活のバランスについては、「両立」を志向する者が約八割と大多数を占め、平成七年と比べて増加しており、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を重視する傾向がうかがえる。

 また、「能力開発基本調査」(平成二十六年度)によれば、職業生活設計に関して、会社に提示してもらうのではなく自分で考えていきたいとする青少年(二十歳から二十九歳まで)は「正社員」では六十七・〇パーセント、「正社員以外」でも五十五・二パーセントに達する。一方で、職業生活を継続するため、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動である「自己啓発」を行った青少年(二十歳から二十九歳まで)は、「正社員」では四十六・四パーセントであるのに対し、「正社員以外」では十八・九パーセントにとどまっている。

 さらに、初めて勤務した会社の主な離職理由は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」及び「人間関係がよくなかった」との理由の回答が多く、次いで、「仕事が自分に合わない」及び「賃金の条件がよくなかった」との理由の回答が多くなっており、労働条件への不満や職場環境、仕事内容が大きな要因となっていることがうかがえる。一方で、「会社に将来性がない」との理由の回答も多い。

第二 青少年について適職の選択を可能とする環境の整備並びに職業能力の開発及び向上等に関する施策の基本となるべき事項

 一 青少年雇用対策の方向性

 若年期は、生涯にわたるキャリア形成のスタートとして重要な時期であり、青少年が安定した雇用の中で経験を積みながら職業能力を向上させていくことが必要である。

 しかしながら、第一にあるとおり、学校等から職業生活への円滑な移行ができず、キャリア形成の初期の段階でつまづき、基本的な職業能力の修得に困難を抱える青少年が存在するなど、次代を担う青少年のキャリア形成に大きな課題が見られる。

 青少年は心身ともに成長過程にあり、一般的に人生経験や職業経験が少ないことから、自らの適性等を理解した上で適職選択を行うことについても、他の年齢層に比べて未熟な面があり、マッチング向上等のための積極的な支援が求められる。

 具体的には、学校等から職業生活への移行を円滑にするために在学段階から職業意識の形成を行うとともに、就職活動段階においては、マッチングの向上等を図り、学校卒業見込者等が早期に離職することなく、最初の職場で集中的に職業経験を積んで、その後のキャリア形成のための基盤となる職業能力を培うことができるよう支援を行う。その際、青少年が多種多様な情報から必要な情報を取捨選択して判断することに課題が見られることから、情報面での支援に留意する。

 また、学校等の中途退学や就職先が決まらないまま学校等を卒業したことにより、学校等とのつながりがなくなり、適切な就職支援が受けられずに不安定な就業を繰り返す、あるいは、就職への意欲を失ってニートと呼ばれる状態に陥るといった課題を踏まえ、個人の事情に配慮した支援を行っていく。

 青少年雇用対策の推進に当たっては、事業主、学校等、地方公共団体、労働行政機関やその他関係行政機関、職業紹介事業者、募集情報提供事業者、職業訓練機関、地域の青少年支援機関等の関係者が連携・協力し、社会全体で取組を進めていくという観点が不可欠である。

   以下、施策分野ごとに、重点的に取り組む事項を掲げることとする。

 二 学校卒業見込者等の就職活動からマッチング・職場定着までの支援

  (一) 在学段階からの職業意識等の醸成

 在学段階は、社会・職業生活への移行の前段階である、職業生涯における初期キャリアの形成に向け、勤労観・職業観などの職業意識といった将来の進路決定・就職に向けた基盤が形成される重要な時期である。

 文部科学行政においても、「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(平成二十三年一月中央教育審議会答申)により、「キャリア教育は、キャリアが子ども・若者の発達の段階やその発達課題の達成と深くかかわりながら段階を追って発達していくことを踏まえ、幼児期の教育から高等教育に至るまで体系的に進めること」、「職業能力の開発・向上の促進等を担う厚生労働省等の関係府省間での連携・協力を図ること」等の方針が示されるとともに、大学設置基準等が改正され、全ての大学等に社会的・職業的自立に関する指導等の実施のための体制整備が求められることとなった。

 また、学校等の卒業者の早期離職や一定数の青少年がフリーター、ニート等になっていることなど、学校等から社会・職業生活への移行が必ずしも円滑に行われていない状況が見られる中、社会に出てから顕在化するこれらの問題に対する事後的な対応にとどまらず、未然に防止するための対策としても、在学段階から次の[1]から[3]まで等の体系的なキャリア形成支援の充実が求められる。

   [1] キャリア教育の推進を通じた職業意識の形成支援

 青少年が適職選択を行うためには、自らの適性や興味・関心、職業との関わり等に対する理解が前提となることから、在学段階から職業意識の形成支援を行うことが重要である。

 学校等におけるキャリア教育の推進に当たり、公共職業安定所は、職場体験・インターンシップの受入企業の開拓、地域の様々な産業で働いている社会人を講師とした職業講話及び自己理解や仕事理解を深める授業やガイダンスの実施、青少年が希望する地域の職業情報・雇用情報の提供等、積極的な協力に努める。

 なお、職場体験・インターンシップは、キャリア教育の一環として行われることが基本であり、その趣旨に沿った適正な形で実施されるよう、事業主等への周知徹底を図っていく。

 キャリア教育の推進に当たっては、学生が、インターンシップ、キャリア教育等の状況、自らの目標等を記入するキャリア・プランニングのツールとしてジョブ・カードを活用することが求められている。このため、関係各府省と連携して、在学段階からジョブ・カードが活用されるよう、利用の促進・周知を図っていく。

 ものづくり分野をはじめとする幅広い職業について理解を深め、就職前段階で適切な職業意識を持てるよう学校等と公共職業能力開発施設の連携により、学生・生徒等に対するものづくり体験や技能講習会等の実施を進める。

 保護者に対しても、保護者が時代に合った職業観を持ち、学校等におけるキャリア教育や学生・生徒自身の主体的な職業意識の確立について理解・協力してもらうことが望まれる。

   [2] 関係者の連携によるキャリア教育推進の基盤整備

 初等中等教育及び高等教育の各学校等による主体的な取組がより効果的に推進されるよう、その基盤として、各地域の地方公共団体、労使団体、企業、労働行政等関係機関の連携・協力が不可欠である。

 その際、職業適性や興味に関する各種検査の活用、詳細な職場情報や地域の企業情報の提供、キャリアコンサルタント等の専門人材の活用、ジョブ・カードの普及等、労働行政の有するキャリア形成に資する資源や手法、人材等を広く提供し、活用の促進を図ることも重要である。

   [3] 労働法制に関する知識等の周知啓発

 青少年の就職活動時や就職後のトラブルの防止のためには、労働法制に関する知識等の理解を深めることが重要であり、都道府県労働局等と学校等との連携・協力により、学生・生徒に対して労働法制に関する知識等の周知を図ることが求められる。

 このため、法において、学生・生徒に対する労働に関する法令に関する知識の付与について規定されたことも踏まえ、国は、都道府県労働局及び公共職業安定所による講師の派遣、労働法制に関する基礎的な知識をまとめた冊子の提供等を積極的に行うとともに、学校等に対しては、職場体験・インターンシップの実施の前後や学生・生徒の進路決定の際など、適切な機会を捉えた労働法制に関する知識等の付与に係る取組の周知を図る。

 さらに、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所は、労働に関するトラブルに適切に対処できるよう、都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナー等の相談窓口を周知する。

  (二) マッチングの向上等による学校卒業見込者等の職業生活への円滑な移行、適職の選択及び職場定着のための支援

 我が国の若年失業率は、国際的に見て相当低い水準に留まっているが、その背景には、学校等の卒業前に就職先が決定し、企業で継続的に人材育成を行う学校卒業見込者の一括採用があると考えられる。この仕組みは、事業主にとっても学校卒業見込者にとってもメリットがあり、一定の合理性を持つ雇用慣行として我が国で広く定着してきたところである。

 したがって、青少年の円滑なキャリア形成のためには、特に学校等の新規卒業時の職業選択が重要であり、次のとおり適職の選択を行うことができる環境の整備が必要である。

   [1] 学校等から職業生活への円滑な移行のための支援

 学校等から職業生活への円滑な橋渡しのため、公共職業安定所が学校等と連携・協力し、ジョブサポーターによる大学等への出張相談、就職支援セミナー等、地域の学校等や学生・生徒等のニーズに応じた支援を行う。

 特に、採用意欲が高く、青少年の雇用管理が優良な中小企業と、大企業志向の強い学校卒業見込者等との間にミスマッチが存在している状況等を踏まえ、法に基づく認定制度や若者応援宣言事業により、中小企業の情報発信を支援し、企業規模等にとらわれない職業選択を促す。その際、大企業や知名度の高い企業を子どもに推奨する傾向があると言われる保護者の意識への働きかけも求められる。

 卒業間近になっても内定を得られていない学生・生徒に対しては、卒業までに内定を得られるよう、関係省庁との連携の下で、新卒応援ハローワーク等において毎年一月から三月までの期間に集中的に就職支援を行うとともに、就職先が決まらないまま卒業した者に対しても、新卒応援ハローワーク等において継続して就職支援を行う。

 公共職業安定所は、学校卒業見込者等に対して就職支援を行う際に、トラブルに巻き込まれた際の相談窓口(都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナー等)について周知啓発を図る。

   [2] 既卒者の応募機会の拡大に向けた取組の促進

 学校卒業見込者の一括採用の仕組みについては、事業主にとっては、職業経験のない学校卒業見込者を集団的かつ集中的に正規雇用労働者として採用し、長期雇用の下でOJT(業務の遂行の過程内において行う職業訓練)等の企業内での訓練を実施しながら必要な知識・技能を習得させていくこと等が効率的であること、学校卒業見込者にとっても失業状態を経ることなく円滑に社会・職業生活に移行できること等のメリットがあり、一定の合理性を持つ雇用慣行として広く定着してきたところである。

 一方で、社会・経済環境及び労働市場の構造の変化の下、急激な雇用情勢の悪化等の影響により、就職先が決まらないまま卒業した者、次年度の就職活動のために学校等を留年した者、不本意ながら非正規雇用に就いた者、ミスマッチにより早期の離職を余儀なくされた者等が存在し、さらに、フリーター等の不安定な就業形態に就くことで、その後正規雇用に移行することがより困難となる状況が生じている。

 こうしたことから、青少年の募集及び採用に当たり、卒業後の経過期間にとらわれることなく人物本位による正当な評価が行われるよう、学校卒業見込者の採用枠について、既卒者が学校等卒業後少なくとも三年間は応募できるように努めること、できる限り上限年齢を設けないようにすること等について、法に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成二十七年厚生労働省告示第四百六号)に定めたところである。この指針を活用し、事業主への周知啓発、指導を着実に実施することにより、学校等卒業後の一定期間は「新卒」扱いとする、通年採用を拡大する等の既卒者が正規雇用に応募する機会を広げる取組を促す必要がある。

   [3] マッチングの向上に資するための労働条件等の明示の徹底及び積極的な情報提供の促進

 事業主から示される労働条件等は、学校卒業見込者等が就職先を決定する際の重要な情報であるが、募集時に示された労働条件等と労働契約締結時に明示された労働条件等が異なる等、労働条件等をめぐるトラブルが発生している現状に鑑み、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)等の労働条件等の明示に関する規定等の周知徹底を図る。

 また、労働条件等をめぐるトラブル等に対し、法令等に基づく行政指導を実施してもなお、個々の事業主と労働者の間の紛争が解決しない場合には、都道府県労働局による個別労働紛争解決制度等が利用できることを周知するとともに、公共職業安定所は必要に応じて相談等に適切に対応する。

 さらに、マッチングの向上のためには、労働条件等に加えて、職場の就労実態に係る情報が提供される環境の整備が重要である。このため、法第十三条及び第十四条に規定する青少年雇用情報の提供について履行確保を図るとともに、公共職業安定所が学校卒業見込者等求人(法第十一条に規定する学校卒業見込者等求人をいう。以下同じ。)の申込みを受理するに当たっては、求人者に対して、全ての青少年雇用情報の提供を求めていく。

 また、公共職業安定所においては、青少年雇用情報の求めを行ったことを理由とした不利益取扱いに係る相談への対応、学校卒業見込者等が具体的な項目の求めを行った場合の事業主への対応等その他青少年雇用情報の提供の仕組みが学校卒業見込者等の適職選択に有効に機能するために必要な取組を進める。

 なお、青少年雇用情報の提供は、学校卒業見込者等の適職選択のための措置であり、事業主及び学校卒業見込者等の双方に適正な対応が求められることについて周知を図っていく。

   [4] 労働関係法令違反が疑われる企業への対応

 労働基準法等の法令違反が疑われる企業については、労働基準監督機関等において監督指導等を行っていくほか、社会的に影響力の大きい企業については、労働基準監督機関が是正を指導した段階で企業名を公表するなど、実効性のある取組を行っていく。

 また、公共職業安定所において、労働基準監督機関等との連携の下、法第十一条に規定する求人不受理の措置を着実に実施していく。

   [5] 就職後の職場適応・職場定着のための支援

 公共職業安定所は、学校卒業見込者等について就職後においてもその状況把握に努め、職場適応のための相談対応等、職場定着に向けた支援を行うとともに、事業主に対し、個々の状況に応じて助言・指導等により雇用管理の改善を促していく。

 青少年の早期離職の防止・職場定着の促進を図る観点からも、メンタルヘルス不調の発生の防止、不調者への適切な対応、職場復帰支援等、職場におけるメンタルヘルス対策の充実を図り、青少年が心身ともに充実した状態で意欲と能力を十分に発揮できる職場環境を整備していく。

 三 中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者に対する支援

 学校等を中途退学し、又は就職先が決まらないまま卒業したこと等を理由として、学校等から社会・職業生活への円滑な移行ができなかった者等については、個々の事情に配慮しつつ、希望に応じた就職支援等を行っていくことが必要である。

 中途退学者の中には安定的な就労に困難を抱える者が多い状況に鑑み、就職を希望する中途退学者に対しては、中途退学後に各支援機関の支援の谷間に陥ることのないよう、中途退学に際して、学校等、公共職業安定所、地域若者サポートステーション等が連携して、就職支援機関、職業訓練機関等に関する情報を提供し、継続的に支援を行っていく。

 また、就職先が決まらないまま卒業した者については、卒業から就職までの期間が短いほど正規雇用労働者として就職する割合が高まるなど、早期の就職実現が重要となっていることから、学校等、新卒応援ハローワーク等が連携し、公共職業安定所における個別支援や面接会の集中的な開催等により、卒業直後の支援の充実を図っていく。

 四 フリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援

 非正規雇用労働者の現状等に関する情報を青少年に提供することも含め、主体的に職業選択やキャリア形成を行えるように支援していく。

 不本意ながら非正規雇用で働いている青少年も多いことを踏まえ、わかものハローワーク等において、個々のニーズや課題に応じて、的確な就職支援を行うためのキャリアコンサルティング、就職活動の方法に関する助言・指導のほか、職業相談・職業紹介、職場定着や適切な職業訓練への誘導等の支援を行い、正規雇用への移行を促進していく。

 また、地域のニーズに応じた多様な就職支援メニューをワンストップで提供する取組(ジョブカフェ)など、都道府県等が中心となって、地域の関係機関との連携の下で青少年が利用しやすいサービスの提供を推進していくことが期待される。

 事業主に対しては、トライアル雇用、雇用型訓練や企業内での正規雇用への転換の取組など、青少年の正規雇用化に係る積極的な取組を促していく。

 五 企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援

  (一) 青少年の雇用管理の改善に向けた支援

 青少年の適切なキャリア形成の実現のためには、早期離職の防止の観点から入口段階でのマッチングの向上のための取組に加え、青少年の能力や経験に応じた適切な待遇を確保するなど、企業内での適切な雇用管理を促進することが課題となっている。

 また、青少年にとって魅力のある職場となるよう、学校卒業見込者等募集(法第十三条第一項に規定する学校卒業見込者等募集をいう。)及び学校卒業見込者等求人に当たって提供する青少年雇用情報の内容の充実や、法に基づく認定制度に係る認定の取得に向け、各企業において自主的に雇用管理の改善が図られることが期待される。

 このため、企業の雇用管理の改善に向けて、離職率の高い業種について、雇用管理面での課題分析・改善等を促進するなど積極的な支援を行う。

  (二) 青少年の採用及び育成に積極的な中小企業の情報発信のための支援

 青少年の雇用管理に積極的に取り組みながらも、知名度等の点から青少年の採用に課題を抱える中小企業の情報発信を支援するため、法に基づく認定制度等を推進し、公共職業安定所等において重点的にマッチングを行っていく。

  (三) 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の改善、多様なニーズに対応した働き方の実現

 青少年が働きがいを持ちながら、ライフステージに沿って、希望に応じた働き方を選べるような環境づくりに取り組んでいくことが必要である。

 具体的には、所定時間外労働の削減、年次有給休暇・育児休業の取得の促進、自己啓発のための時間の確保への配慮等、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の改善に向けた企業における自主的な取組を促していくとともに、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)のとれた働き方の円滑な導入の促進を図っていく。

 六 職業能力の開発及び向上の促進

  (一) 職業訓練の推進

 公共職業訓練として実施している日本版デュアルシステム等の主として青少年を対象とした訓練メニューや、企業内での実習と教育訓練機関等での座学等とを組み合わせて実施する雇用型訓練を引き続き推進する。また、産業界や地域のニーズを踏まえて産学官による地域コンソーシアムを構築し、就職の可能性をより高めるための職業訓練コースの開発・検証を行い、不安定な就労を繰り返す青少年の安定的な就職の実現等にも活用する。

 また、離職後、相当な期間が経過した青少年や一度も就労したことのない青少年など、雇用保険を受給できない青少年に対しては、求職者支援訓練により早期の就業に向け引き続き支援する。

 職業訓練の実施に当たっては、対象となる青少年が職業経験の不足等により、職業能力が十分に形成されていない現状にあることに鑑み、訓練受講前にキャリアコンサルティングを行うことにより、職業能力開発の課題や目標を明確にした上で適切な訓練へ誘導することが重要である。また、訓練中についても、コミュニケーション能力の不足、人間関係への不安、仕事への理解不足等、最近の青少年の特徴や抱える課題等を踏まえ、社会人・職業人として必要な基礎的能力の習得や職業意識の醸成を図りつつ、きめ細かな職業指導等を併せて行う。

 また、企業内の青少年の育成については、景気の動向や企業の業績等に関わらず、事業主が、中長期的な視点で人材投資を行うことができるよう、引き続き、助成金、認定職業訓練制度等により必要な支援等を行う。

  (二) 職業能力検定の活用の促進

 職業に関する知識や職歴がない青少年にとって、技能検定を中心とした職業能力検定は、目指すべき職業能力開発の明確な指標となるものであり、また、いわゆるキャリアラダー(職務やこれに応じた職業能力をレベルごとに階層化することにより、労働者がはしごを昇るように着実に職業能力を高め、キャリア向上を図る道筋として機能するものをいう。)としての機能も有する。また、青少年の職業能力の見える化を進めることは、青少年の実践的な職業能力が適正かつ客観的に評価されることにつながり、円滑なマッチングに資するものである。

 このため、技能検定制度について、青少年のモチベーションの向上やキャリアアップに資するよう、青少年を主な対象とした技能検定三級の対象職種の拡大など、積極的にその設定を進めるとともに、学校教育等との連携を通じた青少年に対する技能検定の積極的な活用促進を図っていく。

 また、今後も雇用吸収力の増大が見込まれ、青少年のキャリア形成上の課題がより顕在化している対人サービス分野等に重点を置いて、業界内共通の職業能力を評価する技能検定の職種の整備等を進める。

 さらに、業界内共通の検定と連関性を持つ実践的な企業単位の社内検定の普及促進を図る観点から、これらの検定に取り組む業界団体や企業等に対する積極的な支援を進める。

  (三) 職業人生を通じたキャリア形成支援

 青少年の主体的なキャリア形成を図ることは、職業能力開発に対する意欲を高め、豊かな職業人生をもたらす等の効果がある。このため、青少年本人が将来の経済及び社会を担う者としての自覚を持ち、職業人生を通じてキャリア形成に取り組むことが必要である。

 また、求職者だけでなく、在職者も含めた青少年の主体的なキャリア形成を促進するため、教育訓練給付等の各制度の活用、企業への支援等により、青少年が能力開発を行う環境整備に取り組む。

 一方で、職業経験が少ない青少年の中には、個人でキャリア形成について考えることに課題を抱えている者もいることから、こうした青少年を支える人材として、職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)に基づくキャリアコンサルタントの登録制度等を活用し、一層のキャリアコンサルタントの資質の向上を図るとともに、養成を促進すること等により、支援の機会の拡充に努める。

 さらに、青少年のキャリア・プランの作成及びこれに基づく職業能力開発、希望に応じた円滑な就職の支援を行うために、定期的なキャリアコンサルティングやキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールとして見直しを行ったジョブ・カードの活用を促進する。

 加えて、仕事をしながら異国での社会生活を体験できるワーキングホリデーや海外留学を行う青少年に対して、その前後の機会等を捉え、キャリアコンサルティングの実施やジョブ・カードの作成を通じた目的意識や海外体験で得た能力の明確化等のキャリア形成の支援を行うことにより、国際化に対応することのできる青少年を育成する。

 七 ニート等の青少年に対する職業生活における自立促進のための支援

 将来の労働力を確保する等の観点から、就業、通学及び職業訓練の受講のいずれもしていない青少年であって、職業生活を円滑に営む上での困難を抱えるいわゆるニート等と呼ばれる青少年に対し、その特性に応じた適職の選択その他の職業生活に関する相談の機会の提供、職業生活における自立を支援するための施設の整備その他の必要な質の高い支援を継続的に提供する。

 具体的には、ニート等の青少年の支援の拠点である地域若者サポートステーションにおいて、公共職業安定所、地方公共団体等の関係機関との連携を通じた情報提供等や職場体験の充実を図ることにより就職に向けた支援を行うとともに、就職した者に対する職場定着支援等を実施する。また、各地域若者サポートステーションが有するノウハウや経験の普及、研修体制の整備や好事例の周知、支援を行う専門人材の育成等に努める。

 八 地域における青少年の活躍促進

 青少年が希望する地域において就職することができるよう、国、地方公共団体、事業主、大学等が連携し、地域の募集・求人情報の収集及び提供等の必要な取組を進めることにより、いわゆるUIJターン就職を積極的に支援していく。

 なお、支援の際には、地域における良質な雇用の場の創出のほか、青少年自身による起業等も含めた多様な選択肢があり得ることに留意することが必要である。

 九 青少年福祉施策の実施

 青少年が自律的に職業生活設計を行い、仕事に対する意識改革に取り組み、充実した職業生活を送ることができるよう地域の関係者の意識啓発等を行っていくことは、引き続き重要である。

 こうしたことから、地方公共団体や、勤労青少年福祉に係る支援機関等が中心となって、地域の実情を踏まえた、青少年の福祉の増進に係る事業を実施していくことが期待される。