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       介護分野における雇用機会の創出対策等の推進について





T 基本的考え方



  我が国における急速な高齢化の進展に伴い介護を必要とする高齢者の増加が見込

 まれる中で、平成12年4月の介護保険制度の開始等に伴い新たな介護サービス需

 要が増大し、今後介護分野では新たな民間事業者の参入や新たな業務分野への進出

 等により労働需要が大きく拡大すると考えられる。

  一方、現下の厳しい雇用失業情勢の下、このような成長が期待される介護分野で

 の雇用機会の創出等を進めていくことは喫緊の重要課題となっている。

  このような状況の下、「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成4年

 法律第63号。以下「介護労働者法」という。)」や同法に基づく介護労働に関す

 る諸制度について見直しを行い、介護分野における労働の特性、社会保障施策との

 連携に留意しつつ、介護分野における能力開発の推進、労働力需給調整機能の整備、

 労働者の福祉の一層の増進を図るとともに、これらの施策と相まった介護分野にお

 ける労働力の確保と良好な雇用機会の創出対策を早急に実施していく必要がある。

  この場合、次のような考え方に基づき見直していくことが適当である。



 1.関係施策の一体的実施



   介護分野における労働力の確保と良好な雇用機会の創出を効果的に進めていく

  ためには、能力開発、労働力需給調整、労働者の福祉の増進、労働力の確保と良

  好な雇用機会の創出のための施策等が可能な限り一体となって実施される仕組み

  とすることが適当である。

   それに伴い、施策の実施主体についても制度利用者の便宜を図る等の観点から

  一本化を図ることが適当である。



 2.広範な対象に対する支援の実施

 (1)介護保険制度の開始後は、社会福祉法人のみならず民間事業者、NPO等様々

   な事業主の介護分野への参入が見込まれる。そのため介護分野における労働力

   の確保と良好な雇用機会の創出を図っていくためには、可能な限り広範な事業

   主及び労働者を施策の対象とすることが適当である。

 (2)介護分野においては、介護保険制度の対象となるサービス以外にも多様な介

   護関連サービスの需要が見込まれることから、施策の対象は介護保険の対象と

   なる事業主及び労働者のみに限定しないことが適当である。

 (3)介護分野の労働には、全労働者に占める短時間労働者の比率が他の分野に比

   して相当高いという特性があり、これら短時間労働者も施策の対象とすること

   が適当である。





U 具体的施策



 1.介護分野における労働力の確保と良好な雇用機会の創出のための施策



   現在、雇用機会の創出のための支援については、「中小企業における労働力の

  確保及び良好な雇用機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平

  成3年法律第57号。)に基づく各種支援措置を講じているところであるが、同

  法は、中小企業施策の一環として、我が国の雇用機会の創出の担い手として期待

  される中小企業の振興及びその労働者の職業の安定その他福祉の増進を図ること

  を目的としていることから、営利を目的とした事業を営む個人又は会社、及びそ

  れらを構成員とする事業協同組合等を対象としており、また、短時間労働被保険

  者以外の雇用保険の一般被保険者を対象として次のような助成措置を講じている

  ところである。(ただし、中小企業雇用創出等能力開発給付金は短時間労働被保

  険者も助成対象)

  ・ 中小企業雇用創出人材確保助成金

  ・ 中小企業雇用創出雇用管理助成金

  ・ 中小企業雇用創出等能力開発給付金

  ・ 中小企業雇用環境整備奨励金

  ・ 中小企業高度人材確保助成金

   しかしながら、介護分野においては、社会福祉法人、医療法人、NPO等、様々

  な法人が雇用の受け皿となると期待されることや、介護分野の労働者に占める短

  時間労働者の割合が高いことから、これら介護分野の特殊性に対応した支援措置

  が必要となっている。

   そこで、介護労働者法を改正し、新たに介護分野に進出する事業主や新分野展

  開を行う事業主を幅広く対象として、労働力の確保と良好な雇用機会の創出のた

  めの支援措置を設けることが適当である。

   また、この支援措置は、雇入れ、教育訓練、雇用管理改善及び雇用環境整備を

  対象とし、介護労働安定センターに実施させることが適当である。

   なお、この支援措置は、雇用保険の一般被保険者のうち短時間労働被保険者も

  対象とすることが適当である。



 2.介護分野における能力開発の推進



   介護保険制度の下で中心的な労働力と位置付けられるホームヘルパーの養成に

  ついては、現在、介護労働者法に基づく養成事業は、有料職業紹介所の家政婦に

  対して実施されている。

   しかしながら、今後、労働力の確保と良好な雇用機会の創出を幅広く図ってい

  くためには、家政婦に限らず幅広く養成事業を行うことが適当である。

   このため、介護労働者法を改正し、介護労働安定センターが離転職者をはじめ

  幅広く介護分野の能力開発を行えるようにすることが適当である。

   また、能力開発の内容については、介護保険制度の開始に伴いホームヘルパー

  2級、3級の養成を拡充するとともに、今後介護分野の業務の高度化、多様化が

  見込まれる中で、ケアマネージャーの準備講習を実施する等、介護技術面の高度

  化、多様化を図っていくことが適当である。



 3.介護分野における労働力需給調整機能の整備



   現在、介護分野の労働力需給調整に中心的な役割を果たしている福祉重点ハロ

  ーワークと介護労働安定センターとの連携は必ずしも十分とはいえない。そのた

  め今後介護労働安定センターが、介護分野における労働力の確保と良好な雇用機

  会の創出、能力開発、労働者の福祉の増進のための諸施策を担うこととなること

  も踏まえ、介護労働安定センターがこれら支援措置に係る事業主の求人情報を提

  供するなど両者の連携を強化し、迅速、的確な労働力需給調整の実現を図ること

  が適当である。

   また、今後の介護分野の労働市場の拡大に伴って、労働力需給調整機能の充実

  を図る観点から、福祉人材センター(バンク)を含め、介護分野の労働力需給調

  整を担う民間職業紹介事業等の民間の需給調整機関と福祉重点ハローワークを中

  心とした公共職業安定機関との間で介護労働に係る労働市場情報の交換を行うな

  ど連携を図っていくことが適当である。

   なお、従来より介護分野の需給調整の一翼を担っている家政婦紹介所について

  は、介護保険制度の指定居宅サービス事業者となるために請負事業との兼業が必

  要であるが、家政婦の雇用機会を確保するためにも、これについての支援策を講

  ずることが適当である。



 4.介護分野における労働者の福祉の増進

 (1)労働者の福祉の増進のための支援等

    現在の介護労働者対策に係る支援としては次のような助成措置があるが、

   その財源は雇用福祉事業のみで施策の範囲が限定されている。

   ・ 介護労働者雇用管理研修助成金

   ・ 介護労働者福祉施設助成金

   ・ 介護労働者雇入時福祉助成金

    したがって、今後、介護分野における労働力確保と良好な雇用機会の創出を

   支援していくためには、財源として雇用安定事業、能力開発事業を活用できる

   ようにすることが適当である。

    また、現行の雇用福祉事業に基づく労働者福祉の増進を目的とした各種助成

   金については、その見直しを行い、必要な部分は上記1により設ける新たな支

   援措置に統合することが適当である。

 (2)ケアワーカー福祉共済制度の見直し

    ケアワーカー福祉共済制度は、家政婦紹介所のケア・ワーカーの労災補償に

   相当する部分の補償等を行う任意の制度である。しかし、補償内容も通常の雇

   用労働者に係る労災補償に比し必ずしも十分ではない現状にある。

    このため、現状の問題点に対応できるよう今後は労災保険の特別加入の対象

   に加える方向で検討を行うことが適当である。

 (3)介護福祉基金制度の見直し

    現在、介護福祉基金は雇用・能力開発機構に設置され、その運用益により債

   務保証が行われているが、その対象経費は労働者の福祉の増進のための施設、

   設備の設置、整備に限定されている。

    今後は、介護分野の労働力の確保と良好な雇用機会の創出を図る観点から、

   対象経費についても、これに資するよう必要な見直しを行うことが適当である。

    また、この債務保証制度は雇用・能力開発機構で実施されているが、制度利

   用者の便宜にも配慮し、関係施策の実施主体を一本化することが期待されてい

   ることも踏まえ、基金を利用した事業を実質的に介護労働安定センターを通じ

   て利用できるような改善を行うことが適当である。



 5.その他



   介護労働分野の支援等を一体的に運用する観点からは「介護雇用管理改善計画

  」を都道府県知事の認定とする現在の仕組みは非常に煩雑であり、支援等を利用

  しにくい大きな要因となっている。

   このため、今後の支援等の前提となる「計画」は介護労働安定センターで実質

  的に認定できるように検討を進めることが適当である。




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