(参考) 民間労働力需給制度小委員会報告書の概要 T 基本的考え方 ○ 産業構造の急速な変化、経済産業活動の国際化、就業意識の変化などに伴う 労働力需給調整に係るニーズの変化及び民間の労働力需給調整事業に関する新 たな国際基準としてのILO第181号条約(民間職業仲介事業所条約)の採 択等の国際的動向に対応して、労使双方が労働力需給調整に関しニーズに応じ た多様な選択を安心して行えるようにすることにより、労働力需給のミスマッ チを解消し、失業期間の短縮が図られるよう、職業紹介事業等に関する法制度 について公正かつ効率的でセーフティネットを備えた労働力需給調整機能の整 備を図る。 ○ 国の公共職業安定機関について勤労権等の保障のセーフティネットとしての 役割を適切に発揮するため機能の充実、強化を図るとともに、民間機関につい て活力や創意工夫を活かし適切に労働力需給調整の役割を果たせるよう有料職 業紹介事業等のルールの見直しを図る。 ○ 公共、民間に共通する労働者保護、労働力需給調整の円滑化等のための労働 市場のルールを整備、充実し、極力透明、明確なものとして示すとともに、そ の厳格な履行確保を図る。 U 公共及び民間の職業紹介事業等に共通するルールの在り方 1 労働者保護のためのルール ○ 差別的取扱の禁止の規定の具体的内容を下記3の指針において明確化する。 ○ 個人情報の保護 ・ 職業紹介等に関する個人情報の漏えいの禁止の規定について、禁止の対 象となる者を明確化し、違反についての罰則を設ける。 ・ 職業紹介事業者等は、個人情報について、事業目的に必要な範囲内で収 集、保管、利用し、また、その適正な管理を行われなければならない旨を 法令上明確化し、この具体的内容は指針において明確化する。 労働者派遣事業についても、同様にルールを法令上明確化する。 ○ 賃金、労働時間等の基本的労働条件等について、文書明示を要することと する。 2 労働力需給調整の円滑化のためのルール ○ 職業分類や労働力需給調整に関する専門用語の公共及び民間における共通 使用について法令上明確化する。 ○ 国による労働市場に関する情報の収集、整理、提供等について法令上明確 化する。 ○ 公共と民間の職業紹介事業者等との間の雇用情報、職業紹介等についての 相互協力について法令上明確化する。 3 国による指針の策定 労働者の保護及び労働力需給調整の円滑化のためのルールの具体的内容、留 意事項等について、法律に根拠を有する指針を定めて示す。 4 苦情処理体制の整備 ○ 民間の職業紹介事業者等及びその団体における求職者、求人者等からの苦 情に適切に対応するための体制整備を促進する。 ○ 国は、苦情を受け付け、相談、助言等を行うとともに、民間の職業紹介事 業者等に対し必要な指導等を行うことにより、簡易、迅速な解決を促す体制 を整備する。 5 申告制度の創設 民間の職業紹介事業者等の法令違反について労働大臣への申告制度を創設す る。 6 罰則 個人情報の漏えい禁止の違反に罰則を設ける。さらに、職業紹介事業者の許 可等の手続違反について罰則規定を整備する。 V 民間職業紹介事業等の在り方 1 有料職業紹介事業 (1)取扱職業 弊害が明らかに予想される職業等を除き、有料職業紹介事業を行うことが できることとする。この場合に、建設業務の職業及び港湾運送業務の職業を 除くこととし、これ以外でも、今後弊害の発生状況等に照らし、必要なもの は適時除いていくものとする。 (2)許可制度 ○ 不適格な業者の参入を排除することにより、事業運営の適格性を確保し、 求職者の利益を保護する観点、ILO第181号条約において許可又は認可 によることが原則とされていること等から、有料、無料のいずれについても、 許可制を維持する。 ○ 許可の欠格事由、許可の基準等許可要件の基本的事項を法令で定める。 ○ 現行1年の許可の有効期間を、新規は3年、更新は5年に延長する。 ○ 許可等の手続について、簡素化を図るとともに申請書記載事項等の基本的 事項を法律に規定する。 ○ 効果的、効率的な求人、求職の結合を促進する観点から、職種等の取扱範 囲をあらかじめ設定できることとする。 (3)手数料 ○ 求人者等からの手数料については、上限付きの手数料のほかに付加的サー ビスについて労働大臣の承認制のある現行の二階建ての制度を、上限付きの 手数料又は労働大臣に届け出た手数料との選択ができる制度に改める。 ○ 求職者からの手数料の徴収を原則禁止とした上で、労働者の利益確保の観 点から、家政婦、マネキン、配ぜん人、モデル、芸能家等一定の職業につい ては例外的に求職者から手数料を徴収できることとする。 (4)職業紹介責任者 ○ 職業紹介責任者の選任義務を法律上明確化するとともに、事業所ごとにか つ求職者数に応じた人数を選任すべき旨及び行うべき業務を法令に明らかに する。 ○ 職業紹介責任者の選任要件を見直すとともに、職業紹介責任者講習会の内 容の充実を図る。 (5)職業紹介事業に係る基本的事項の明示等 ○ 職種等の取扱範囲、手数料、提供するサービスの内容、苦情処理の方法等 の基本的事項について、利用者への明示を義務づける。 ○ 労働者派遣事業との兼業の取扱いについては、労働者派遣法に係る国会審 議の結果を踏まえ、今後、職業紹介事業、労働者派遣事業等の許可基準に係 る議論の中で検討する。 ○ ルール違反についての現行の許可取消、事業停止命令制度に加え、助言・ 指導、改善命令、事業報告の制度を法律に規定する。 ○ スカウト行為を事業として行うヘッドハンターや職業紹介まで行うアウト プレースメントは、職業紹介事業に該当し許可の取得が必要である旨を指針 において明らかにし、必要な指導等を行う。 2 無料職業紹介事業 (1)許可制度 ○ 許可要件の基本的事項を法令で定める。 ○ 営利法人についても、社会貢献等の目的での無料職業紹介事業の実施を認 める。 ○ 現行3年の許可の有効期間を5年に延長する。 ○ 全国的又は広域的な公益法人、労働組合等については、当該法人等に対す る包括的な許可によることもできることとする。 (2)無料職業紹介事業を行う公益法人、労働組合等に対し、公共職業安定所が 雇用情報の提供等の援助を行う。 3 労働者供給事業 (1)許可制度 ○ 現行3年の許可の有効期間を5年に延長する。 ○ 通勤可能な地域に供給地域を限定して行う許可の仕方を見直す。 (2)組合員について、安定的な就業機会の確保と社会・労働保険の適用を促進 するため、労働者供給と労働者派遣とを組み合わせた仕組みにより対応する ことが考えられるので、具体的方策を引き続き検討する。 (3)労働者供給事業を行う労働組合に対し、公共職業安定所が雇用情報の提供 等の援助を行う。 4 労働者の募集 (1)通勤圏外からの直接募集の届出制は廃止する。 (2)委託募集 ○ 労働者保護の観点から許可制は引き続き維持する。 ○ 募集の委託を受ける者等に法令違反がなく、労働条件が適正である等の要 件を満たす場合には、中小企業に限らずどのような事業主でも広く第三者に 委託できるようにする。 ○ 報償金の額についての上限規制を廃止するとともに、労働大臣の許可制を 認可制に改める。 W 国、公共職業安定機関の在り方 1 国の業務 勤労権及び職業選択の自由を保障する憲法の規定に基づき、国は、労働力需 給の適正かつ円滑な調整の確保、促進を図る責務を有しており、労働市場政策 の策定、実施を行うとともに、需給調整が円滑、的確に行われ、労働者保護が 確保される労働市場のルール作り及びその履行確保、並びにセーフティネット の整備に積極的に取り組む必要がある。 2 公共職業安定所の労働力需給調整機能の強化 ○ 情報提供を公共職業安定所の業務として法令上明確化し、求職者等に対す る情報提供機能を強化する。 ○ カウンセリング、コンサルティング等求職者に対するきめ細かな相談援助 や適職選択の支援のための各種講習の実施、インターンシップの推進等の求 職者援助を充実する。 ○ 在職求職者について、その特性、ニーズに的確に対応した各種のサービス の提供や在職求職者が利用しやすい手段の工夫を行う等円滑な就職の支援を 充実する。 ○ 事業主団体、労働組合等の関係者との求人確保等についての連携、協力に より、より広範かつ的確な求人、求職の結合を図る。 ○ 職業紹介、職業指導に当たり、民間を含めた各種教育訓練の受講に関する 情報提供、相談等の充実が図られるよう、職業能力開発機関との連携を一層 強化する。 ○ 政府が行う労働力需給調整の対象に国内の外国人労働者が含まれることを 法令上明確化する。 3 雇用施策に関する国と地方公共団体との連携 公共職業安定機関が行う職業紹介等の施策と地方公共団体の講ずる雇用に関 する施策については、より密接な連携の下に、円滑かつ効果的に実施されるこ とが重要であり、公共職業安定機関の保有する求人情報、労働市場情報等を地 方公共団体に積極的に提供する一方、地方公共団体の保有する産業・企業情報、 生活情報等を公共職業安定機関が行う職業紹介等の施策に有効に活用するとと もに、国の職業紹介等の施策と地方公共団体の雇用施策との有機的、一体的な 推進を図る。