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◎ 最優秀改善事例の概要



第1部



最優秀賞・・・・・労働大臣賞
(株)ダイキンサンライズ摂津
【上下肢障害者のための各種組立作業の改善】


T 事業所の概要

 ・ 事業内容:一般機械器具製造、自動潤滑システムポンプ・バルブ機械加工・組

        立、空調機用部品組立等

  ・ 従業員数:27名 うち障害者24名(平成9年12月末日現在)
肢体不自由者
24(23)
( )内は重度障害者 


U 改善の概要

 1 改善の背景

   主力としていた自動潤滑システム機器の需要が伸びないことから、主に健常者

  が担当していた部門の製品を中心に製作することとした。このため、同部門に障

  害のある従業員を新たに配置することとしたが、

   @ ルブマックス分配弁組立作業、ルビエース分配弁組立作業は、部品が小さ

    いこと、指先に力がかかり疲れやすいこと、また検査が目視確認であり、作

    業時に油の飛び散りもあることから、上肢障害者や車椅子使用者の作業が困

    難である。

   A プラグOリング装着作業は、1個ずつの装着が必要だが、装着確認が難し

    くミスが発生しやすい。

   B ルブマックスポンプ組立作業、ルビエースポンプ組立作業は、熟練作業者

    に限られる工程があるほか、かなりの体力を必要とする。

   C 空気清浄機エレメント組立作業は、パイプ穴開け工程にミスが発生しやす

    いほか、搬送時に落下等事故の危険がある。

   D 圧縮機オイルチューブ組立作業は、握力を必要とすることから、障害者に

    は疲労が生じやすい。

   E 酸素ボンベ完成組立作業は、両手を使用することから、上肢障害者や車椅

    子使用者の作業が困難である。

  等の問題があることが判明した。



 2 改善の内容

   上記の問題から、作業に従事する障害者の疲労感と危険を取り除き、生産性と

  品質を向上させるための改善を行うことが必要であったことから、以下のような

  改善を実施した。

   @ ルブマックス分配弁組立作業については、部品置台の前にスポンジシート

    を設置するほか、細かな作業や手指の力を極力必要としない組立治具を新た

    に考案した。また、自動検査装置を開発するとともに、カバーを取り付け、

    油の飛び散りを防いだ。

   A ルビエース分配弁組立作業については、止め輪等の取り付けミスを防ぐた

    めにガイドピンを設け、ハンドプレスによる作業を可能とした。また、治具

    に磁石を取り付け、小さな部品を使用する作業のミスを防止するほか、ハン

    マーにより打刻していた刻印作業をハンドプレスに刻印を直接取り付けるこ

    とにより、作業の省力化を行った。また、自動検査装置の開発、カバーの取

    り付けにより、油の飛び散りを防いだ。

   B プラグOリング装着作業については、チェック治具を開発し、複数のリン

    グの装着、装着漏れについては、次の工程に進まないようにした。

   C ルブマックスポンプ組立作業については、座面とシート面の一体加工がで

    きるよう特殊な刃物を作成し、マシニングセンタでの加工を可能にするとと

    もに、体力を必要としていたグリースの充填作業をバイパスラインにより自

    動化した。

   D ルビエースポンプ組立作業については、ハンドプレスによる作業を可能に

    するほか、作業台に保持具を固定するなどした。

   E 空気清浄機エレメント組立作業については、パイプ穴開け作業に使用する

    ミニプレスの左右にスイッチを取付け、適正な位置でのみ電源が入るように

    したほか、搬送用ローラーコンベアの両側に転倒落下防止柵を取り付けた。

   F 圧縮機オイルチューブ組立作業については、ほとんど力を必要としない回

    転式の組立治具を開発した。

   G 酸素ボンベ完成組立作業については、手でボンベを保持する必要をなくす

    ため、作業台に固定装置を開発するとともに、ボンベ内に挿入するカップを

    エアシリンダーにより挿入させる装置の開発を行った。



 3 改善の効果

   この改善により、上肢障害者や車椅子使用者も作業可能となり、職場内のロー

  テーションに加わることが可能となった。

   また、健常者と同じ生産性、品質が実現するとともに、作業による障害者の疲

  労感を解消することができ、安全性も高まった。


第2部



最優秀賞・・・・・労働大臣賞
ホンダ太陽(株)
【心身に障害はあっても「人生に障害はなし」〜Quality of Lifeの実現に向けて〜】




T 事業所の概要

 ・ 事業内容 : 輸送用機器の製造及び販売、福祉機器の研究開発

 ・ 従業員数 : 136名 うち障害者65名(平成9年12月末日現在)
視覚障害者 肢体不自由者 内部障害者 知的障害者

(6)
55
(41)

(2)

(2)
( )内は重度障害者





U 改善の概要

 1 改善の背景

   「変化に弱い」と言われる障害者多数雇用事業所が技術革新等の社会環境の変

  化に対応するとともに、障害のある人たちが一人の人間として誇りを持ち、安心

  して働ける会社とするためには、そこで働く一人ひとりが変化に強くなると同時

  に、変化に強い企業体質となることが不可欠である、との認識から、創立15周

  年(平成8年)を契機に、「新しいホンダ太陽、新しい次のステージを築く」た

  め、製品品質や人事制度、また、クラブ活動や地域交流などのあり方を改善する

  ことを目的とした3カ年計画をスタートさせた。



 2 改善の内容

   3つの柱(基本方針)、7つの目標を掲げた3カ年計画を企画、立案し、NS

  P(NEW SUN・NEXT STAGE PLAN)と名付け、以下の項目についての改善を実施し

  た。

   @ 「技を磨こう!(ラインの自立)」を基本方針に、次の2つの目標を掲げ、

    改善を行った。

     ・ No.1の品質づくり

       本田技研工業(株)の取引先の中で「No.1」になることを目指した。

      具体的には、製品に関する知識、意識を高めるため、製品機能勉強会や

      不良品サンプルの展示を行うほか、ライン別の目標達成表彰制度を設け

      るとともに、品質に対する意識と製品に関する知識が特に優れている者

      を、QE(Quality Expert=造りのエキスパート)として認定する制度

      を創設した。

       また、手の機能が弱いことが不良発生の原因となっていた設備につい

      ては、左右の安全センサーの位置を上下に移動させたほか、うっかりミ

      スを防止するため、コンベア上に信号ゲートを設けるなどの改善を行っ

      た。

     ・ よい職場・高い効率

       働きがいのある職場を実現するため、単純作業であったヒーターファ

      ンスイッチの組立検査作業を自動化するとともに、効率性を向上させる

      ため、新たな検査機器の開発を行い、2工程を一体化させるなどの改善

      を行った。

   A 「百花百香・個性を輝かそう!(一人ひとりが主役)」を基本方針に、次

    の2つの目標を掲げ、改善を行った。

     ・ 拡げよう、高めよう一人ひとりの技

       重度障害者、特に脳性マヒでアテトーゼや緊張の強い人などに合わせ

      た設備改善や作業訓練を実施し、より多くの工程につくことが可能とな

      るように改善を行った。この結果、脳性マヒによる上下肢障害(障害等

      級1級)のある者が平均以上の生産性を実現するなどの効果があった。

     ・ 1人1遊1サークル

       「遊びがあってはじめて人生」との趣旨から、各種スポーツや文化部

      など10のクラブを発足させた。クラブとして会社が認める基準は、障

      害のある人でもできるという一点だけとした。

   B 「文化を創ろう!(自立と共生)」を基本方針に、次の3つの目標を掲げ、

    改善を行った。

     ・ 夢・希望・笑顔の施策づくり

       将来も安心して働き、お互いを認め合いながら生きていけるための環

      境整備が必要であることから、新たに次の5つの制度を創設した。

       ○ 継続雇用制度(平成11年より実施予定)

         定年となっても継続して働ける機会を作ることとした。

       ○ 短時間勤務制度(平成11年より実施予定)

         身体機能が低下してフルタイム就労が困難となった者への対応を

        図ることとした。

       ○ 介護休職制度

         家族に介護が必要となった者が発生した場合の休職制度を設ける

        こととした。

       ○ 勤続15年旅行制度

         15年勤続者に10万円の旅行クーポン券を贈呈することとした。

       ○ 連続有給休暇制度

         長期勤続者を慰労することとした。

       このほか、韓国ムグンファ電子(障害のある従業員数約80名)との

      間で年に2回2名ずつの従業員派遣交流を実施させた。

     ・ オリジナル商品の開発

       将来的には自社において生産・販売していくことを目標に、障害者自

      身のニーズに基づくオリジナル商品(電動パワーアシスト車椅子、車椅

      子用エンジンパワーユニット)の開発をスタートさせた。

     ・ 地元との交流

       地域の住民や地元の学校をはじめ多くの人たちとの交流を重要な問題

      と認識し、会社見学を積極的に受け入れるほか、地元の協賛を得て、地

      元住民等との夏祭りの開催及び祭りの売上金の地元への寄付並びに会社

      施設の開放などを実施した。



 3 改善の効果

   3カ年計画のうち2年が経過した段階で既に当初の計画以上の実績が得られて

  いる。

   このうち、特に「技を磨こう!」については、当初の目標であった不良品発生

  率の半減を、わずか6ヶ月で達成するなど著しい改善効果が得られたことから、

  新たに国際標準化機構ISO9002に挑戦を行い、本年4月に認証取得した。

   また、障害のある従業員の多くが仕事も遊びも前向きの姿勢で取り組む環境作

  りがなされた。

 



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