タイトル:障害者雇用対策基本方針の策定について [障害者の雇用の促進及びその職業の安定に関する施策の基本となるべき方針] 発 表:平成10年3月27日(金) 担 当:労働省職業安定局高齢・障害者対策部障害者雇用対策課 電 話 03-3593-1211(内線5783) 03-3502-1173(夜間直通)
1 労働省では、平成10年度から平成14年度までを運営期間とする「障害者雇用対 策基本方針」を策定したところであり、今月30日告示する予定である。 2 この「障害者雇用対策基本方針」は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基 づき、労働大臣が障害者の雇用の促進及びその職業の安定に関する施策の基本となる べき方針として策定し、公表するものである。 3 現行の「障害者雇用対策基本方針」の運営期間が平成9年度で満了することから、 昨年来、新たな「障害者雇用対策基本方針」の策定作業を進めてきたところであり、 障害者雇用審議会(会長 三澤 義一 筑波大学名誉教授)に対しては、今月23日 に「障害者雇用対策基本方針案」を諮問し、同日、概ね妥当である旨の答申を得たと ころである。 4 労働省では、今後、この「障害者雇用対策基本方針」に沿って、より一層の障害者 の雇用の促進及びその職業の安定を図っていくこととしている。
障害者雇用対策基本方針概要 はじめに 1 方針のねらい 障害者の雇用は着実に進展し、近年は特に精神薄弱者において顕著に雇用状況が改 善しているが、企業の実雇用率は、法定雇用率を依然下回った状態にあり、その雇用 環境は依然として厳しい。 このような中、平成9年には法改正が行われ、精神薄弱者を含む障害者雇用率が設 定されることとなった。 そこで、今後は、重度障害者に引き続き最大の重点を置いて、精神薄弱者を含む障 害者雇用率の設定を踏まえ身体障害者及び精神薄弱者の雇用を一層促進し、精神障害 者についても、その障害の特性等に関する正しい理解を促進しつつ、就業環境の整備 を通じてその雇用の促進や雇用の継続を図るなど、きめ細かな対策を総合的かつ計画 的・段階的に推進していくことが必要である。また、障害者が雇用の分野と福祉の分 野を円滑に移行できるようにするため雇用部門と福祉部門とが密接な連携を図るとと もに、多様な雇用・就労形態も視野に入れた雇用施策の充実を図っていく必要がある。 この基本方針は、このような今後の障害者雇用対策の展開の在り方について、国民 一般に広く示すとともに、事業主が行うべき雇用管理に関する指針を示すことにより、 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図ることを目的とする。 2 方針の運営期間 この方針の運営期間は、平成10年度から平成14年度までの5年間とする。 第1 障害者の就業の動向に関する事項 1 障害者人口の動向 (1) 身体障害者人口の動向 在宅の者272万2千人(平成3年)等と増加している。また、重度化、 高齢化が進んでいる。 (2) 精神薄弱者人口の動向 在宅の者19万5千人(平成7年)等と増加している。 (3) 精神障害者人口の動向 精神病院入院34万人、在宅182万人となっている(平成8年)。また、 精神障害者保健福祉手帳は9万9千人に対して交付されている(平成9年 12月末現在)。 2 障害者の就業の動向 (1) 障害者の就業状況 身体障害者の就業者数は89万4千人、就業率34.1%(平成3年)と、 精神薄弱者の就業者数は13万人(平成7年)と増加している。 (2) 障害者の雇用状況 常用雇用されている身体障害者34万4千人、精神薄弱者6万人、精神分 裂病、そううつ病にかかっている者1万1千人、てんかんにかかっている者 1万2千人となっている(平成5年)。 民間企業における実雇用率は、平成9年は前年と同率の1.47%であり、 依然として法定雇用率からは隔たりが見られる。 障害者である有効求職者は9万9千人であり(平成9年12月末現在)、精 神薄弱者の占める割合、重度身体障害者の割合が年々増加している。 第2 職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図るため講じようと する施策の基本となるべき事項 障害の重度化や、障害者の高齢化が進展する中で、以下に重点を置いた施策の展 開を図っていく。 1 障害の種類及び程度に応じたきめ細かな措置の開発、推進 職業リハビリテーションの措置の開発に努めるとともに、関係行政機関、企業との密 接な連携の下に職業リハビリテーションの措置を推進する。 2 一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者に対する職業リハビリテーション の推進 精神薄弱者や精神障害者等一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者の円滑な雇 用の促進を図るため、実際の作業現場を活用した職業リハビリテーションを一層拡充す る。雇用された障害者についての相談、職場適応指導を一層強力に実施しその職場定着 の推進を図る。職業生活における自立を図るために継続的な支援を必要とする障害者に 対して、障害者雇用支援センターを通じた職業リハビリテーションの実施を推進する。 3 職業能力開発の推進 一般の公共職業能力開発施設において、障害者の受入れを促進する。重度障害者等に 対しては、障害者職業能力開発校において訓練科目の設定等を推進する。在職者訓練を 積極的に推進する。 4 実施体制の整備 職業リハビリテーション実施機関において職業リハビリテーションの措置を充実する。 障害者が、雇用の分野と福祉の分野との間を円滑に移行できるようにするため障害者の 雇用を支援するネットワークの形成等を進め、教育、福祉及び医療機関との連携を強化 する。 5 専門的知識を有する人材の育成 職業リハビリテーションに従事する人材の養成と資質向上をより一層積極的かつ着実 に推進するとともに、障害者職業生活相談員等の資質の向上に努める。障害者自身の有 する経験や実際に障害者が雇用されている事業所において経験的に獲得された知識、技 法等の活用を図る。 第3 事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項 事業主は、関係行政機関や事業主団体の援助と協力の下に、以下の点に配慮しつ つ適正な雇用管理を行うものとする。 1 基本的な留意事項 (1) 採用及び配置 障害の種類及び程度を勘案した職域を開発することにより積極的な採用を図 るとともに、障害者個々人の適性と能力を考慮した配置を行う。 (2) 教育訓練の実施 障害者に対し、能力向上のための教育訓練等の実施を図り、障害者職業能力 開発校等で実施される在職者訓練等の活用も考慮する。 (3) 処遇 障害者個々人の能力の向上や職務遂行の状況を適切に把握し、適性や希望等 も勘案した上で、その能力に応じた適正な処遇に努める。 (4) 安全・健康の確保 障害の種類及び程度に応じた安全管理、健康管理の実施を図る。 (5) 職場定着の推進 障害者雇用推進者や障害者職業生活相談員について、その業務に適した者を 選任する。 (6) 障害及び障害者についての理解の促進 職場内の意識啓発を通じ、職場全体の、障害及び障害者についての理解や認 識を深める。 2 障害の種類別の配慮事項 (1) 身体障害者 障害の種類及び程度が多岐にわたることを踏まえ、職場環境の改善を中心と した事項に配慮する。 (2) 精神薄弱者 複雑な作業内容や抽象的・婉曲な表現を理解することが困難な場合があるこ と、言葉により意思表示をすることが困難な場合があることを踏まえ、障害者 本人への指導・援助を中心とした事項に配慮する。 (3) 精神障害者 例えば、臨機応変な判断や新しい環境への適応が苦手である、疲れやすい、 緊張しやすい、精神症状の変動により作業効率に波がみられることがある等の 特徴が指摘されていることに加え、障害の程度、職業能力等の個人差が大きい ことを踏まえ、労働条件の配慮や障害者本人への指導・援助を中心とした事項 に配慮する。 第4 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため講じようとする施策の基本と なるべき事項 重度障害者に最大の重点を置きつつ、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対 策を総合的に講ずることとし、以下に重点を置いた施策の展開を図っていく。 1 障害者雇用率制度の厳正な運用等 法定雇用率の達成に向けて民間部門、公的部門に対する指導を強力に実施し、事業主 名の公表を含めた厳正な運用を図る。必要に応じて特例子会社制度の積極的な周知を図 り、その活用を促す。除外率制度については、当該業種における障害者の雇用促進に 努めつつ、縮小を前提とした検討を行う。 2 事業主に対する援助・指導の充実等 障害者雇用に関する好事例を積極的に周知するとともに、障害者の雇用管理に関する 知識、情報を提供すること等により事業主の取組を促進する。障害者雇用納付金制度を 適正に運営することにより、障害者雇用に伴う事業主間の経済的負担を調整し、助成金 制度を活用することにより障害者の雇用の促進及び継続を図る。 3 重度障害者の雇用・就労の場の確保 第3セクター方式による重度障害者雇用企業の設立・育成や重度障害者多数雇用事業 所の設置を促進する。一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者については、福祉 的就労から一般雇用への移行に加え、在宅勤務や自営業等多様な雇用・就労形態も視野 に入れ、福祉機関等関係機関との連携による雇用支援体制の整備に努めるとともに、職 務の見直し、職域の拡大、施設・設備の改善の促進、障害者及び事業主に対する相談等 の施策の充実を図る。 4 精神障害者の雇用対策の推進 精神障害者のうち、その症状が安定し就労が可能な者については、職業リハビリテー ションの措置の的確な実施に努めるとともに、各種助成措置の活用も図りつつ、雇用の 促進及び継続を図る。精神障害者の雇用に関する理解を促進するため、事業主のみなら ず、医療、福祉関係者等に対しても周知啓発を充実する。障害者雇用率制度の適用につ いては引き続き検討を加え、適切な措置を講じる。 5 障害者雇用に関する啓発、広報 事業主団体、労働組合、障害者団体の協力も得ながら、国民一般を対象とした啓発、 広報を推進する。 6 研究開発等の推進 障害者雇用の実態把握のための基礎的な調査研究を計画的に推進する。障害者雇用に 係る専門的な研究を事業主団体等の協力も得て計画的に推進する。障害者の加齢に伴う 職業上の問題、雇用の分野と福祉の分野との間の円滑な移行を確保する上での問題等障 害者の雇用に関する今後の課題に関する研究を積極的に推進する。併せて、これらの研 究成果についての活用に努める。 7 関係機関との連携 障害者雇用連絡会議の開催や個別の事案への対応を通じて、障害者を支援する機関相 互間の連携の強化を図る。障害者の職業生活に関わる社会環境を地域に根ざした形で、 住宅、交通手段等も含め総合的に整備していくことが重要であり、これに対する援助措 置の充実に努める。 8 国際交流、国際協力の推進 我が国の国際的地位にふさわしい国際交流、国際協力を一層推進する。
障害者雇用対策基本方針