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III 労働者派遣法関係



 1 派遣期間関係



  (1) 派遣期間については、原則1年に制限されていることにより、結果的に派

   遣労働者の雇用が不安定となる面があること、また、派遣先にとっても、その

   処理すべき業務によっては期間が短く適切な対応ができない場合があることが

   指摘されている。

    一方、平成11年の労働者派遣法改正の際の基本的な考え方である労働者派

   遣事業制度の「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」としての位

   置付け、及び、これに基づく派遣期間の一定の限定は、いわゆる長期雇用慣行

   の我が国における位置付けを踏まえると、今回の見直しにおいては、引き続き

   維持することが適当と考える。しかしながら、常用雇用との調和を図りつつ、

   派遣労働者や派遣先のニーズに的確に応える観点から、現行の一律1年という

   制限については見直すこととし、3年までの期間で臨時的・一時的と判断でき

   る期間については、派遣を受け入れることができることとするのが適当である。

    この場合、臨時的・一時的と判断できる期間は、派遣先の事業の状況等によ

   って異なるものとみられることから、1年を超えても臨時的・一時的と考えら

   れる期間であると判断できるかどうかは、個別事業所ごとに、派遣先の事業主

   が判断することとし、派遣先の事業主が当該事業所の労働者の過半数代表の意

   見を聴いた上で判断することが適当である。なお、この意見聴取の手続は、派

   遣先の事業主が自ら臨時的・一時的と考えられる期間を判断するに当たり、あ

   くまでも現場の実情等を的確に把握するために、労働者の過半数代表の意見を

   聴くという性格を有するものである。



    労働者代表委員から、1年を超えても臨時的・一時的と考えられる期間の判

   断に当たっては、意見聴取では不十分であり、労働者派遣を受け入れる場合を

   含め労使協議が必要であること、現在の経済・雇用状況を踏まえれば、常用代

   替防止の措置を併せて講ずべきとの意見があった。



    雇用主代表委員から、上記の意見聴取の手続は、円滑な事業運営を妨げかね

   ないことから、適切でないとの意見があった。



    また、雇用主代表委員から、派遣期間の上限については、派遣労働者が希望

   する場合には、当事者の合意に基づく延長を認めるべきとの意見があった。





  (2) 現行の1年の派遣期間の制限の対象外となっているいわゆる26業務のう

   ち、専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務については、現在、合理的

   な理由なく、同一の派遣労働者について就業の場所及び従事する業務が同一の

   労働者派遣を、継続して3年を超えて行うことのないよう取り扱われていると

   ころであるが、派遣労働者の雇用の安定等を考慮し、2(2)に掲げる直接雇

   用の促進に係る措置の整備と併せ、この取扱いを廃止することが適当である。

    また、営業や販売等の業務については、必要とされる知識、技術又は経験等

   の専門性のレベルは業務により様々であり、営業や販売を広く一般的に専門性

   の高い業務としていわゆる26業務と同様に取り扱うことは困難であると考え

   られる。このため、今後、これらの業務をいわゆる26業務に追加するかどう

   かを検討していくに当たっては、専門性などについて具体的に検討することが

   適当である。



    労働者代表委員から、いわゆる26業務についての専門性の定義、根拠につ

   いて整理をすべきとの意見があった。





  (3) なお、短期間の雇用契約を反復更新することにより、派遣労働者の雇用が

   不安定になる面もあることから、(1)及び(2)の趣旨を踏まえると、派遣先及び

   派遣元事業主は、労働者派遣契約及び雇用契約の締結に当たり、派遣労働者の

   雇用の安定を確保するよう配慮することが望ましいと考えられる。



    労働者代表委員から、上記趣旨が確保されるよう、より実効性のある措置を

   検討すべきとの意見があった。





  (4) 現在、産前産後休業、育児休業及びこれらに先行又は後続する休業の期間

   を通算して2年を超えない期間内に終了することが予定されているものに限り、

   派遣期間の制限の対象外となっているが、介護休業及びこれに後続する休業も

   含め、これらの休業を取得する労働者の行う業務に労働者の派遣を行う場合は、

   常用雇用の代替のおそれが少ないことから、「通算して2年」等という制限を

   撤廃することが適当である。



  (5) 月初や土日のみに必要となる業務等就業日数が限られている業務に対する

   労働者派遣については、当該業務に常用雇用労働者が配置されている可能性が

   少なく、常用雇用の代替のおそれが少ないと考えられることから、派遣期間の

   制限の対象外とすることが適当である。



  (6) いわゆる26業務と現行の派遣期間が1年に制限されている業務とを併せ

   て行う労働者派遣の場合(いわゆる「複合業務」)については、現在、1年の

   派遣期間の制限の適用があるものと取り扱っているところであるが、いわゆる

   26業務の実施に伴い付随的に行う場合であって、かつ、その割合が低い場合

   (例えば1割)には、26業務の遂行を円滑に行うことができるよう、派遣期

   間の制限の対象外とすることが適当である。



  (7) 派遣労働者が派遣先における派遣就業に係る期間の制限を認識できるよう

   にすることは派遣労働者のために望ましく、また、派遣期間の制限の規定を遵

   守させるためにも有用であると考えられることから、派遣元事業主は、派遣労

   働者に対して、派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなけれ

   ばならないこととすることが適当である。

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