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〈 概要 〉
1 雇用保険制度の見直しの必要性
雇用保険制度は、制度創設以来最も厳しい財政状況にあり、当面する財政破綻を
回避するとともに、将来にわたり制度の安定的運営を確保するため、給付・負担の
両面にわたり見直しを早急に行う必要がある。
この見直しについては、短期的な雇用・失業の動向に加え、中長期的な労働市場
の変化を背景とした雇用保険財政の構造的な変化等を踏まえる必要がある。
見直しの方向としては、給付について、失業中の生活の安定に加え再就職の促進
を図るという雇用保険制度の基本的役割が適切に果たせるよう、(1)早期再就職の
促進、(2)多様な働き方への対応、(3)再就職の困難な状況に対応した給付の重点化
等を図るとともに、保険料率について、給付と負担の公平性を確保しつつ、制度の
安定的運営の確保に必要な水準とすることとする。
2 雇用保険制度の見直しの方向
(1)早期再就職の促進
イ 基本手当日額と再就職時賃金の逆転現象の解消による再就職意欲の喚起
○ 基本手当については、高賃金・高給付層の中に基本手当日額が再就職時
賃金を上回る者が多く見られること等を踏まえ、現行の給付率60〜80%を
50〜80%(60〜64歳は50〜80%を45〜80%)に改めることが適当である。
また、基本手当日額の上限額等について見直すことが適当である。
ロ 就職促進給付の整備
(イ)就業促進手当(仮称)の創設
○ 多様な方法による早期再就職の実現のため、現行の再就職手当の支
給対象とならない就業形態で働いた期間について、基本手当日額の一
定割合を支給する仕組みを設ける必要がある。
(ロ)現行就職促進給付の整備
○ 再就職手当と常用就職支度金を就業促進手当(仮称)に統合するほ
か、再就職手当の給付率及び上限額の見直し等を行う必要がある。
(2)多様な働き方への対応
イ 通常労働者とパートタイム労働者の給付内容一本化
(イ)基本手当
○ 雇用就業形態の多様化等を踏まえ、短時間労働被保険者とそれ以外
の被保険者との給付内容(所定給付日数、下限額)を一本化する必要
がある。
(ロ)高年齢求職者給付金
○ 短時間労働被保険者以外の高年齢継続被保険者の給付内容を短時間
労働被保険者である高年齢継続被保険者の給付内容に一本化する必要
がある。
ロ 育児・介護休業法による勤務時間短縮措置等の期間中の基本手当日額の算
定の特例
○ 育児・介護休業法による勤務時間短縮措置等により賃金が喪失・低下し
ている期間中に倒産・解雇等の理由により離職した者については、措置前
の賃金日額を用いて基本手当日額を算定する特例を設けることが適当であ
る。
(3)再就職の困難な状況に対応した給付の重点化等
イ 再就職の困難度に応じた壮年層の所定給付日数の改善
○ 35〜44歳で被保険者であった期間が10年以上の特定受給資格者の所定給
付日数については、延長する必要がある。
ロ 訓練延長給付制度における複数回受講制度の拡充
○ 雇用対策臨時特例法による公共職業訓練の複数回受講等の特例措置の対
象年齢を拡大するとともに、特例措置の終期を延長する必要がある。
ハ 在職者への給付の失業者への給付との均衡を考慮した見直し
(イ)教育訓練給付
○ 慎重かつ的確な受講を促すため、給付率を縮減する必要がある(現
行の8割を4割にする。)。
○ 若年者の利用機会を確保する等のため、被保険者であった期間に係
る要件を緩和するとともに、被保険者であった期間に応じて上限額に
格差を設ける必要がある(現行の5年30万円を3年10万円、5年20万
円とする。)。
この場合、被保険者であった期間5年未満の者については、給付率
を低く設定する(2割)
(ロ)高年齢雇用継続給付
○ 60歳以上の定年退職者等の基本手当の所定給付日数の変更等を踏ま
え、支給要件、給付率を見直す必要がある。
ニ 不正受給に対する対応
○ 現行の事業主に対する連帯納付命令等と同様の措置を職業紹介事業者等
に対して講ずることができるようにすることを検討する必要がある。
○ 不正受給者に対して不正受給金の返還と併せて行う納付命令の額につい
ては、引き上げる必要がある。
ホ その他
○ 基本手当の受給期間延長事由に子の看護及び一定のボランティア活動を
追加する必要がある。
○ 受講手当について見直し、特定職種受講手当について廃止する必要があ
る。
(4)雇用保険三事業の見直し
○ 雇用保険三事業については、現下の厳しい雇用失業情勢の中で十分な政策
効果が上がるよう、重点化、合理化を図る必要がある。
○ 助成金については、政策的必要性を踏まえるとともに、分かりやすく利用
しやすいものとするため、整理統合を図る必要がある。
(5)負担面の見直し
イ 保険料率
○ 保険料率について、雇用保険制度の安定的運営を確保するために必要な
負担として、失業等給付に係る法律本則の雇用保険料率を1.6%とするこ
とはやむを得ない。ただし、平成15年度及び平成16年度は法律附則におい
て1.4%とする。
○ 弾力条項による保険料率の変更幅については、±0.2%を維持する。
なお、平成16年度末までの間について、失業等給付の支給に支障を生ず
るおそれがあるなど保険料率を変更しなければならない財政状況に立ち至
った場合に対応できるよう、弾力条項の発動ができるものとする。
ロ 適用促進
私立大学等の未適用の事業所に対する適用促進を着実かつ迅速に進めると
ともに、非国家公務員型独立行政法人に対する適用を確実に進める必要があ
る。
3 今後の課題(略)
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