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雇用保険制度の見直しについて(中間報告)
第3 雇用保険制度の見直しに当たっての視点
1 基本認識
○ 雇用失業情勢が依然として厳しい状況にあり、さらに倒産・解雇等の非自発的
理由による離職者が増加傾向にある中では、総合雇用対策等に基づき雇用対策に
万全を期すことと併せて、支援を要する者について適切に対応しつつ、雇用のセ
ーフティ・ネットとしての雇用保険制度の安定的運営を確保することが極めて重
要になっている。
○ 雇用保険制度については、平成13年度に給付・負担両面にわたる制度の抜本的
な再構築が行われ、安定的運営が期されたところであるが、制度改正において見
込んでいた雇用失業情勢よりも実際の雇用失業情勢が悪化したことや労働市場の
構造変化により、収支均衡には至らず、依然として積立金の取崩しが続いている。
○ この結果、平成15年度中には積立金が完全に枯渇し、資金不足を生ずることが
ほぼ確実となっているほか、平成15年度当初の資金繰りが難しくなるなどのおそ
れもあり、引き続き総合雇用対策等に基づく雇用対策に万全を期すとともに、適
切な収支改善措置を早急に実施することが不可欠な状況にある。
○ 雇用保険制度に係る収支改善措置としては、現行制度の下で採り得る措置と法
律改正を要する措置とがあるが、特に前者については積立金の枯渇を回避するた
めにも早急に、また後者についても、雇用政策全体における雇用保険制度の役割
に留意しつつできるだけ早期に実施に移す必要がある。なお、法律上、雇用保険
制度に組み込まれている収支改善措置である弾力条項の発動要件は、現時点で満
たされている。
○ 雇用失業情勢は当面厳しい状況が続くものと見込まれるとともに、それ以降も、
中高年齢者を含め自発・非自発を問わず労働移動が確実に増加するほか、雇用就
業形態の多様化が一層進展し、保険料収入が減少傾向で推移するなど雇用保険制
度を取り巻く構造的変化を踏まえ、雇用政策全体との関連に留意しつつ、改めて
雇用保険制度を給付・負担の両面から全般的に見直す必要がある。この見直し内
容については、平成15年度の早期に実施に移すことが不可欠な状況にあり、その
ための法律改正を、遅くとも次期通常国会で行い、改正法の可能な限り速やかな
施行を期す必要がある。
2 留意すべき事項
○ 見直しに当たっては、雇用保険制度の意義、機能等を踏まえ、次のような点に
留意すべきである。
・ 雇用保険制度の在り方としては、前回制度改正後の予想を超える雇用失業情
勢の悪化等短期的な雇用・失業の動向に加え、労働移動の増加、雇用就業形態
の多様化等中長期的な労働市場の構造的変化に対応し、その機能を十分に発揮
できるようにするため、制度全般の見直しが必要となっている。
・ 見直しに当たっては、雇用保険が将来にわたり雇用のセーフティ・ネットと
して安定的に機能するようにすることが重要である。このため、給付と負担の
見直しが避けられないが、この検討に当たっては、まず給付の在り方について、
再就職を支援するという制度の趣旨に適う者への給付に絞り込むなど、受給者
の生活の安定及び早期再就職の促進をはじめとする制度本来の機能が適切に発
揮されるよう見直した上で、必要な負担措置を検討することが重要である。
この場合、我が国の雇用保険制度においては諸外国の雇用保険制度における
国庫負担水準に比して高水準の国庫負担が行われている事実も踏まえつつ、雇
用保険制度が本質的には労使の共同連帯による保険制度であるという性格に立
ち返り、給付を受ける立場・負担をする立場のそれぞれが、制度の安定的運営
の確保のためにいかなる対応をすべきか、という観点から建設的な議論を尽く
していく必要がある。
・ 経済変動等があっても制度が安定的に維持できるようにすることが必要であ
り、雇用保険のビルトインスタビライザーである積立金や弾力条項など、制度
の安定的運営を確保するための制度が十分に機能を発揮するようにする必要が
ある。このため、積立金がほぼ枯渇している状況にかんがみ、必要な積立金水
準を達成するまでの間は基本的には単年度黒字となるような収支構造を目指し、
必要な積立金水準の確保を図ること等が必要である。さらに、今後とも事態の
推移を見つつそれを着実に運用すべきである。
・ 雇用保険制度は雇用政策の一環をなすものであり、その見直しについては、
雇用政策全体の方向性を十分に踏まえる必要がある。さらに、職業相談・職業
紹介や職業能力開発等の事業は三事業を財源とするものが多く、その意味で雇
用保険のいわば現物給付としての性格を有するが、そうした「現物給付」の施
策をどのように進め、それとの関係で雇用保険給付という「金銭給付」の在り
方をどうするかという視点が必要である。
・ 政府の雇用政策の在り方が雇用保険制度の運営に重要な影響を及ぼすこと、
最近非自発的理由による離職者が増加していることを踏まえ、雇用保険受給者
の早期再就職等に資する観点からも、総合雇用対策等に基づく雇用対策を適切
に講じていく必要がある。
・ 「失業」は「労働の意思」という主観性を伴う概念であるため、雇用保険制
度を持続可能とするためには、受給者の早期再就職意欲が喚起され、あるいは
阻害されないよう、求職者給付や就職促進給付等の制度設計を行うとともに、
その運営状況を常に注視する必要がある。
・ 倒産・解雇等により離職を余儀なくされた者と離職前から予め再就職の準備
ができるような者との相違や保険制度における給付の在り方を踏まえ、それぞ
れ公正・効率的な給付内容となるよう見直す必要がある。
・ 雇用保険制度は社会連帯に基づく相互扶助の強制保険であり、信認性を確保
するためには公平・公正なものであることが求められるが、この公平・公正さ
は、様々な立場の事業主や労働者の間で確保される必要がある。
○ 平成13年度の制度改正の根拠となった平成11年12月の中央職業安定審議会専門
調査委員雇用保険部会の報告は、産業構造の変化等に伴う雇用慣行の変化、労働
移動の増加、雇用就業形態の多様化や少子・高齢化の進展など雇用を取り巻く状
況の構造的な変化を背景に、
(1) 早期再就職を促進するための給付体系の整備(中高年齢者を中心とした倒
産・解雇等による離職者への給付の重点化等)
(2) 雇用就業形態の多様化への対応(短時間労働者及び登録型派遣労働者に係
る適用基準等の改正)
(3) 少子・高齢化の進展に対応した就業支援対策の見直し(育児休業給付及び
介護休業給付の充実)
(4) 雇用保険財政の在り方の見直し(保険料率、弾力条項の見直し、国庫負担
に係る暫定措置の廃止)
の4つの方向性に立脚して雇用保険制度の再構築を提言したものであるが、これ
らの方向性は今日なお基本的には妥当するものと考える。
3 見直しの視点
雇用保険制度の見直しに当たっては、上記1の基本認識及び上記2の留意すべき
事項とともに、労使をはじめとする関係者の意見を十分に踏まえて対応することが
必要である。
これまで当部会においては、以下に示すように、平成13年度の制度改正の4つの
方向性を踏まえた5つの検討事項に関連する論点に関して様々な議論が行われてき
たところであるが、今後さらにこれらの議論を深めていく必要がある。
なお、以下は、今後新たな論点について議論することを妨げるものではない。
[5つの検討事項]
(1) 能力開発を含めた、早期再就職の促進
(2) 多様な働き方への対応
(3) 再就職の困難な状況等への対応
(4) 三事業の見直し
(5) 安定した制度運営の確保と当面の対応
(1) 能力開発を含めた、早期再就職の促進
イ 基本手当
(イ) 給付水準
基本手当の給付水準については、基本手当日額が高い層や60歳以上の年
齢層を中心として、基本手当日額と再就職時賃金との逆転現象が生じてお
り、このことが再就職の意欲を阻害している可能性があるのではないかと
の観点から、次のような議論が行われた。
○ 雇用保険給付の基本的な在り方として「給付が再就職を阻害すること
があってはならない」のは当然であり、この趣旨にそぐわない事態が生
じているのであれば見直しが必要ではないか。
○ 労働市場の賃金水準そのものを政策的に誘導することは困難であるこ
とを踏まえるならば、受給者の早期再就職が促進されるよう、基本手当
の給付水準について、再就職時賃金の実勢も考慮されるようにすべきで
はないか。その際雇用保険の基本的役割は失業前の生活の保障ではなく、
求職活動への支援であることも勘案すべきではないか。
○ 給付率(6〜8割)について、再就職時賃金と基本手当日額の逆転が
見られる基本手当日額の高い層の給付率を見直し、併せて上限額も見直
すべきではないか(60歳以上65歳未満層(給付率5〜8割)についても、
再就職時賃金と基本手当日額の逆転が見られる層の給付率を見直し、併
せて上限額も見直すべきではないか。)。
○ 支給終了後1ヶ月に再就職時期が集中していること、基本手当日額の
高い層で基本手当日額と手取りの再就職時賃金との逆転が生じているこ
と、支給中と支給終了後とで再就職時賃金の逆転が一部に見られること
等を踏まえれば、円滑な再就職を進めていくためには給付率や上限額の
見直しが必要ではないか。
○ 60歳以降いつ離職しても60歳時の賃金に基づいて基本手当日額が算定
され、他の年齢層と不均衡が生じていること、再就職時賃金との逆転が
特に顕著になっており、前職の賃金とさえ逆転が生じていること等を踏
まえ、60歳時賃金日額の算定の特例を廃止すべきではないか。
○ 雇用保険受給者の再就職等の実態については、現在入手可能なデータ
に基づいて、検討に必要な把握・分析がなされているのではないか。
一方、次のような議論もあった。
○ 基本手当日額と再就職時賃金との逆転現象の問題については、対象と
なる層の属性や失業実態、労働市場の状況についてもっと把握し分析し
た上で判断すべきではないか。そのような吟味なく、これを見直しの基
本的な考え方とすべきでないのではないか。
○ 失業者が再就職時賃金と比較するのは前職時の賃金であり、基本手当
日額の給付率・上限額の設定に当たって再就職時賃金の動向を反映する
のは、生活の安定を図りつつ再就職を支援するという制度の趣旨に反す
るのではないか。
○ 中高年の非自発的失業者が増大しているが、この層は非常に再就職が
厳しく、低い再就職時賃金でも生活のために就職しているのが実態では
ないか。支給終了後1ヶ月に再就職時期が集中しているのも、賃金をは
じめとする大きなミスマッチの下で、失業者がギリギリの努力をし、こ
れに対し、雇用保険がセーフティ・ネットとして機能していることを示
している面もあるのではないか。雇用保険の給付水準が高いためもらい
切るまで再就職をしないのが、本当に大多数の実態と考えられるのか。
○ 基本手当日額の高い層は中高年層とかなり重なるのではないか。そう
だとすれば、現状でも痛みが集中しているこの層に更に痛みを与えるよ
うなことは雇用政策として正しい方向とはいえないのではないか。
○ 65歳までの雇用就業機会の確保は、少子・高齢化が進行する下で雇用
政策の中期的な中心課題である。60歳時賃金日額算定の特例は、60歳以
上の労働市場の需給関係が非常に厳しい現実を踏まえ、「定年等による
離職→基本手当の受給→非労働力化」という悪循環を是正し、高齢労働
者の継続雇用、再就職を促進する機能を持っている。この特例の見直し
については、雇用政策と雇用保険制度の役割分担の在り方、雇用政策全
体の中でどうするのかを含めた議論が必要ではないか。
(ロ) 所定給付日数
所定給付日数については、平成13年度の制度改正により、中高年齢者を
中心に倒産・解雇等による離職者に給付を重点化したが、更なる問題はあ
るかとの観点から、次のような議論が行われた。
○ 所定給付日数について、前回の改正で一定の見直しを行ったが、その
後の状況を踏まえて更に補正すべき点があるか。
○ 年齢階層や離職理由にかかわらず、所定給付日数が長いほど給付期間
中の就職率が低くなっていること等からすると、現行の所定給付日数に
は再検討の余地があるのではないか。
○ 年齢層が同じでも所定給付日数が長いほど給付期間中の就職率が低く
なっているのは、制度の一部に不適切な部分があるからではないか。
○ 特に離職前から予め再就職の準備ができるような特定受給資格者等以
外の者については、自己責任の観点も踏まえ、さらなる給付日数の縮減
等の見直しを行うことについてどう考えるか。
一方、次のような議論もあった。
○ 給付期間中の就職率は、雇用・失業の構造変化や労働市場の状況が大
きな決定要因ではないか。雇用保険制度の不備というより、雇用政策全
体との関連で検討していく必要があるのではないか。
○ 中高年非自発的失業者を中心に、受給期間中の再就職が非常に厳しく
なっている状況にあるのではないか。
ロ 失業認定等
(イ) 失業認定等基本手当の受給手続においては、雇用保険制度本来の機能で
ある生活の安定と早期再就職の実現に反するような事態が生じている場合
もあるのではないかとの観点から、次のような議論が行われた。
○ 基本手当については、失業認定の厳格化を図り、制度の趣旨に適う求
職者に給付されるよう、失業の認定において、例えば直近の認定日以後
に求人への応募等の求職活動を一定回数以上行った実績を確認できた場
合に支給することについてどう考えるか。また、給付制限期間中の求職
活動実績を初回の失業認定に当たって考慮することについてどう考える
か。
○ 求職活動の確認として、ハローワーク又は民間の需給調整機関等によ
る職業紹介の実績等を失業の認定時に確認することにより行うことにつ
いてどう考えるか。
○ 受給者の求職活動実績の確認等により失業認定の厳格化を図り、制度
の趣旨にかなう求職者に給付されるようにする必要があるのではないか。
雇用保険の給付は退職金ではないので、結婚退職をする人や、年金で暮
らす予定の人については失業認定を厳しくするべきではないか。
○ 不幸にも保険事故が起きた場合には公平な対処が重要である。明らか
に労働の意思のない者については支給すべきではないし、明らかに自己
都合により離職した者や高齢者についてはどの程度就職の意思をもって
求職活動しているのか見えない者もいるので、公平という観点から問題
のあるケースもあるのではないか。
○ 再就職に向けた意欲を喚起するため、雇用保険受給者が能力開発を含
め誠実かつ熱心に求職活動を行うべき旨を法令上規定するとともに、雇
用保険法第32条の給付制限規定(紹介拒否、職業訓練の受講拒否、職業
指導拒否による1ヵ月の給付制限)を活用することについてどう考える
か。この場合において、同条の給付制限規定の運用基準の見直しについ
てどのように考えるか。
一方、次のような議論もあった。
○ ハローワークのサービスに係る問題点をそのままにして失業認定の見
直しを行うとすれば国民的合意が得られないのではないか。
○ 基本手当は、再就職の意欲がある者を支援する制度であるが、失業認
定に当たっては再就職に向け精一杯努力しても厳しい現実におかれてい
る失業者について、運用上十分な配慮が必要ではないか。
また、再就職支援の実効があがらないまま失業認定だけが威圧的にな
らないようにする必要があるのではないか。
○ 再就職の意思の確認は当然であるが、「結婚退職」、「年金で暮らす
予定の人」などを予め特定して失業認定の仕方を区別するのはおかしい
のではないか。また、そもそも特定できるのか。
○ 自己都合離職者や高齢者が再就職の意思がないと決めつけるのはおか
しいのではないか。「公平の観点」が仮に自己都合退職者に給付をしな
いということなら、退職の自由の保障に欠けることとなり、負担も、労
使折半とは異なってくるのではないか。
公平という観点では、倒産・解雇等の理由があるにもかかわらず特定
受給資格者とされないようなことが生じていないか、運用状況を調べる
必要があるのではないか。
○ 法令上誠実かつ熱心に求職活動を行うべき旨を規定することについて
は、当たり前の内容であり、現在の厳しい雇用失業情勢の下再就職に苦
労している失業者の気持ちを考えれば、書く意味があるのか。
(ロ) 制度本来の趣旨に反し不正受給の発生が後を絶たない現状を改めていく
必要があるのではないかとの観点から、次のような議論が行われた。
○ 支給期間中の就労の有無について失業者の申告の真実性を確保する方
策についてどう考えるか。例えば事業主の報告義務の創設や、関連する
行政上の情報の交換などの方策についてどのように考えるか。
○ 不正受給事案の把握に努めるとともに、確認された事案に対しては厳
正に対処すべきではないか。納付命令の要件・効果の拡充や罰則の強化
等サンクション強化についてどう考えるか。
ハ 職業紹介等
雇用保険受給者に対し、職業紹介、職業相談が必ずしも十分に行われていな
いのではないか、特に給付制限期間中について対応の強化を図るべきではない
かとの観点から、次のような議論が行われた。
○ ハローワークにおいては、雇用保険支給業務と職業紹介・相談業務とを一
体的に実施するほか、職業訓練やカウンセリングとも組み合わせて、雇用保
険受給者の早期再就職を支援しているが、より効果的に支援対策を展開する
ために見直しを行うべき点はないか。
○ その際には、(1)民間需給調整機関との積極的連携・活用、(2)自ら積極的
に求職活動を行おうとする者に対するインターネットを活用した情報提供等
の支援、(3)カウンセリング体制の整備をはじめとする国のセーフティネッ
トとしての機能の強化に留意すべきではないか。
○ 早期再就職の実現に向け、雇用保険の支給期間中について、ハローワーク
が求職活動に対する様々な支援を積極的に行うべきではないか。特に、給付
制限期間中についても、求職者が積極的に求職活動を行えるよう強力な支援
を行うべきではないか。
この場合、民間職業紹介機関、労働者派遣機関をはじめとする民間機関と
の連携・活用にも配慮すべきではないか。
特に、中高年齢者等について、失業期間が長期化しないよう、受給期間の
早い段階から積極的に再就職に向けた取組を進めることが必要ではないか。
○ ハローワークの情報については、インターネットを活用し、求人等の情報
提供機能の強化を図り(求人企業名の公開等の実施)、自ら積極的に求職活
動を行おうとする者を支援していくべきではないか。
○ 情報提供機能の強化によりハローワークの窓口の混雑を避け、雇用保険受
給者の職業紹介におけるカウンセリング(職業相談)機能の強化、体制整備
を図り、いわゆるトライアル雇用紹介の積極的な実施を行うとともに、求人
企業に対するサービスの向上を図るなど、国のセーフティネットとしての機
能の強化を図っていくべきではないか。
○ 「トライアル雇用紹介」については、その内容を明らかにするとともに運
用上の留意点等について詰めていくべきことがあるのではないか。
○ ハローワークにおける情報提供機能やカウンセリング機能、求人者サービ
スの強化、体制整備等については、できることは早期に実施し、再就職支援
につなげていくべきではないか。また、民間需給調整機関との積極的な連
携・活用を進めることも必要ではないか。
ニ 就職促進給付
現行の再就職手当は「安定した職業」に就いた場合に支給されているが、就
業形態の多様化が進んでいる現状を踏まえ、多様な形態による就労や多様なマ
ッチングの仕組みを支援するよう、再就職のインセンティブとなる仕組みを見
直すべきではないかとの観点から次のような議論が行われた。
○ 就職意欲の喚起、長期失業の防止、OJT的な機能の発揮等の観点から、
例えば紹介予定派遣やいわゆるトライアル雇用紹介による就労、派遣就業、
パートタイム、契約社員などと再就職手当制度との関係についてどう考える
か。
○ 早期の再就職を一層促進する観点から、現行の再就職手当及び常用就職支
度金を例えば下記のように見直すことについてどう考えるか。
・ 規制改革推進3カ年計画を踏まえ、ハローワークと民間職業紹介所の
紹介による再就職手当及び常用就職支度金の支給の仕組みを統一する。
・ 再就職手当と常用就職支度金を一本化する。
・ 安心して再就職できるよう、再就職手当を受給後すぐ、予め再就職
準備を行うことが困難な理由により離職した場合、受給期間に一定の配
慮をすることについてどう考えるか。
○ ハローワークによらない自由な求職活動を希望する求職者に対する取扱い
についてどう考えるか。
○ 再就職手当の政策効果についてどう考えるか。再就職手当がなくとも、あ
るいは今より低額であっても早期再就職していたような者が受給しているの
ではないか。その場合、再就職手当の拡充は雇用保険財政の悪化を招くだけ
ではないか。
ホ 教育訓練・能力開発
教育訓練給付については、その前提となる保険事故の性格が、他の失業等給
付とは相当異なることに留意する必要があるのではないか、また、教育訓練給
付や公共職業訓練については、政策効果を検証し、確実に職業能力の向上や再
就職に結びつくものとなるよう不断に見直しをすべきではないかとの観点から、
次のような議論が行われた。
(イ) 教育訓練給付
○ 教育訓練給付の政策効果はどうか。特に講座指定の際に念頭に置いた
政策効果を十分に実現できているか。
○ 教育訓練給付の対象講座を雇用の継続、安定に資することが明確であ
るものに限定するため、資格取得等訓練目標が明確で客観的な、効果検
証が可能なものに限るなど指定基準や支給要件についてさらなる見直し
を行うべきではないか。
○ 現行制度の実績等を勘案するとともに、適切な自己負担を求めること
により受講者本人の慎重かつ的確な選択を促すため、教育訓練給付の給
付率(現行8割)を縮減し、併せて上限額を見直すことについてどう考
えるか。この場合、自己負担能力の高低に一定程度配慮し、在職者と離
職者とで給付率を異ならせることについてどう考えるか。
○ 教育訓練給付は、キャリアアップという観点からすれば、失業等給付
になじまないのではないか。また、制度の意義は認めるとしても給付率
は高すぎるのではないか。
(ロ) 公共職業訓練
○ 公共職業訓練については、先の臨時国会で設けられた中高年齢者向け
特例制度も活用しつつ、施設内訓練、委託訓練ともに確実に再就職に結
びつくものとなるよう、再就職率等による政策評価も行いつつ、技術革
新等訓練ニーズの変化に対応した機動的な訓練コースの設定・見直しを
行うべきではないか。
○ 公共職業訓練における受講指示については、訓練受講による再就職可
能性等を踏まえ、より一層的確な受講指示に努めるべきではないか。
○ 公共職業訓練受講者に対する職業指導、職業紹介等の徹底を図り、就
職に着実に結びつけるようにすべきではないか。
○ 早期受講指示(所定給付日数の3分の2以前に開始される訓練につい
て指示)を徹底するべきではないか。さらに、訓練の受講指示について
求職者のおかれている状況や意欲、能力を踏まえ、確実に再就職に結び
つく内容・時期の訓練受講を確保するべきではないか。
(ハ) 教育訓練・能力開発に係る留意事項
○ 教育訓練メニューを政策的に決めるに当たっては、どのような産業で
どのような離職者が出てどのようなところへ流れていくのかというマク
ロイメージを基にすべきではないか。
○ 教育訓練においてどういうカリキュラムを提示すべきかを最もよく知
る産業界とヨコの連携をとるなど戦略性をもって取り組む必要があるの
ではないか。
○ 能力開発施策(特に雇用保険三事業のうち能力開発事業として実施さ
れているもの。)の見直しをドラスティックに行い、その上で給付の見
直しを議論すべきではないか。
ヘ 雇用政策との関連
雇用政策の方向性を踏まえた形で雇用保険制度の在り方について検討を進め
るべきではないかとの観点から、次のような議論が行われた。
○ 雇用保険制度の最終目的は求職活動を行っている失業者を生活の安定を図
りつついかに再就職に結びつけるかであり、雇用保険給付という形に限られ
ず、多様な雇用就業機会の確保、需給調整機能の強化、能力開発の充実など
の総合的な対応を図ることが重要ではないか。また、そのような雇用政策全
体の方向性と合わせて雇用保険制度の在り方についても議論すべきではない
か。
○ 失業がない形で再就職を実現することが最も望ましいことにかんがみ、関
係法令に、在職者が求職活動を円滑に行えるようにする等のため、必要な規
定を設けること等についてどう考えるか。
一方、次のような議論もあった。
○ 在職中の求職活動や需給調整制度の強化は重要であるが、雇用保険制度は
事後的なセーフティ・ネットとしての側面を有しており、事前に一般的な措
置を整備することにより、給付内容等を薄くするとすれば、おかしいのでは
ないか。
例えば仕事上や人間関係上の事情で退職し、仕事を探す場合、事前に在職
中の求職活動を要するとすることや事後的な給付内容を削減することは、労
働者の退職の選択権を実質的に制約することになるのではないか。このこと
は、使用者との関係で弱い立場におかれがちな労働者の立場を公平なものに
しようとするという労働関係法の理念との関係で問題はないのか。
○ なお、雇用対策法において、雇用に関し、政策全般にわたり必要な施策を
総合的に講ずることにより完全雇用の達成に資することが雇用政策の目的と
して掲げられていることを踏まえた検討を行うべきではないか。
(2) 多様な働き方への対応
産業構造や勤労者意識などの変化に対応し、就業形態の多様化が進展する中で、
労働者個々人の主体的な選択を通じて雇用の確保あるいは労働力の最適な配置が
図られるようにしていくことが重要となっており、現行雇用保険制度について、
就業形態に関する個々人の選択の余地を実質的に制約したり、選択に対する中立
性において問題となる点がないか見直しを行う必要があるのではないかとの観点
等から、次のような議論が行われた。
○ 就業形態の多様化に対応した適用の在り方については、前回の改正におい
てパートタイム労働者及び派遣労働者に係る見直しが行われ、平成13年4月
から新たな適用基準となったばかりであることに留意すべきではないか。
○ 基本手当は、一般被保険者と短時間労働被保険者とで給付内容(所定給付
日数、基本手当日額の下限額)を異ならせる仕組みをとっているが、このよ
うな仕組みについて、パートタイム労働と常用労働との間を行き来するケー
スや、一般と短時間の取扱い上のバランスに配慮して、見直す必要はないか。
○ 高年齢求職者給付金も基本手当と同様、一般被保険者と短時間労働被保険
者とで給付内容を異ならせる仕組みをとっているが、同様に見直す必要はな
いか。
一方、次のような議論もあった。
○ 制度の中立性は一つの考え方ではあるが、雇用保険制度の中でどの程度ウ
エイトを置くべきか。
(3) 再就職の困難な状況等への対応
イ 基本手当等
雇用失業情勢が依然として厳しい中、早期再就職の促進、労働力需給ミスマ
ッチの解消等のため、「総合雇用対策」をはじめ種々の雇用対策が講じられて
きているが、雇用保険制度本体の検討に当たっても、職業相談・職業紹介や職
業能力開発等の施策を通じて労働市場における需給調整機能の拡充をさらに図
っていくことを前提として、支援を要する者に対する再就職のためのセーフテ
ィ・ネットとしてどのような見直しが必要か検討すべきではないかとの観点か
ら、次のような議論が行われた。
(イ) 基本手当
○ 所定給付日数について、前回の改正で一定の見直しを行ったが、その
後の状況を踏まえて更に補正すべき点があるか。[再掲]
○ 年齢階層や離職理由にかかわらず、所定給付日数が長いほど給付期間
中の就職率が低くなっていること等からすると、現行の所定給付日数に
は再検討の余地があるのではないか。[再掲]
○ 特に離職前から予め再就職の準備ができるような特定受給資格者等以
外の者については、自己責任の観点も踏まえ、さらなる給付日数の縮減
等の見直しを行うことについてどう考えるか。[再掲]
○ 特定受給資格者の判断基準について、制度改正後の状況変化を踏まえ、
見直すべき点はないか。特に、現在の特定受給資格者の中に、再就職の
準備を行うことが可能な者はいないか。こうした者がいるとすれば、一
般の受給資格者として取り扱うべきではないか。
○ 再就職の困難な状況への対応としては、訓練延長給付制度を活用する
ことを基本とすべきではないか。
○ 訓練延長給付受給期間中の給付水準を異ならせることについてどのよ
うに考えるか。
一方、次のような議論もあった。
○ 給付期間中の就職率は、雇用・失業の構造変化や労働市場の状況が大
きな決定要因ではないか。雇用保険制度の不備というより、雇用政策全
体との関連で検討していく必要があるのではないか。[再掲]
○ 中高年非自発的失業者を中心に、受給期間中の再就職が非常に厳しく
なっている状況にあるのではないか。[再掲]
○ 中高年のリストラによる離職者が急激に増え、非常に再就職が厳しい
状況にあるが、離職者をできるだけ発生させない雇用政策についてどう
考えるのか。
○ 「予め再就職の準備ができるかどうか」を給付日数の基準の考え方と
するのではなく、事業主の責による離職など労働者の意図に反して離職
を余儀なくされたかどうかを考え方とするのが適当ではないか。
○ 使用者の責によるものではないが全て労働者個人の責ともいえない、
家族的責任との関係で離職せざるを得なかった者については、特定受給
資格者として扱っていくべきではないか。
○ 自発的理由による離職者の給付をさらに減らしてもよいという考え方
は、使用者との関係で弱い立場におかれがちな労働者の立場を公平なも
のにしようとするという労働関係法の理念に照らすと、離職理由の如何
を問わず給付することで、労働者の退職の自由を側面から支援するとい
う雇用保険制度が有してきた機能を大きく変質させることになるのでは
ないか。また、その場合、労使折半の拠出を基本としてきたことについ
て整理が必要になるのではないか。
(ロ) 職業紹介等
○ 早期再就職の実現に向け、雇用保険の支給期間中について、ハローワ
ークが求職活動に対する様々な支援を積極的に行うべきではないか。特
に、給付制限期間中についても、求職者が積極的に求職活動を行えるよ
う強力な支援を行うべきではないか。
この場合、民間職業紹介機関、労働者派遣機関をはじめとする民間機
関との連携・活用にも配慮すべきではないか。
特に、中高年齢者等について、失業期間が長期化しないよう、受給期
間の早い段階から積極的に再就職に向けた取組を進めることが必要では
ないか。[再掲]
○ ハローワークの情報については、インターネットを活用し、求人等の
情報提供機能の強化を図り(求人企業名の公開等の実施)、自ら積極的
に求職活動を行おうとする者を支援していくべきではないか。[再掲]
○ 情報提供機能の強化によりハローワークの窓口の混雑を避け、雇用保
険受給者の職業紹介におけるカウンセリング(職業相談)機能の強化、
体制整備を図り、いわゆるトライアル雇用紹介の積極的な実施を行うと
ともに、求人企業に対するサービスの向上を図るなど、国のセーフティ
ネットとしての機能の強化を図っていくべきではないか。[再掲]
○ ハローワークにおける情報提供機能やカウンセリング機能、求人者サ
ービスの強化、体制整備等については、できることは早期に実施し、再
就職支援につなげていくべきではないか。また、民間需給調整機関の積
極的な活用を進めることも必要ではないか。[再掲]
○ 雇用保険制度の最終目的は求職活動を行っている失業者を生活の安定
を図りつついかに再就職に結びつけるかであり、雇用保険給付という形
に限られず、多様な雇用就業機会の確保、需給調整機能の強化、能力開
発の充実などの総合的な対応を図ることが重要ではないか。また、その
ような雇用政策全体の方向性と合わせて雇用保険制度の在り方について
も議論すべきではないか。[再掲]
(ハ) 教育訓練・能力開発
○ 公共職業訓練については、先の臨時国会で設けられた中高年齢者向け
特例制度も活用しつつ、施設内訓練、委託訓練ともに確実に再就職に結
びつくものとなるよう、再就職率等による政策評価も行いつつ、技術革
新等訓練ニーズの変化に対応した機動的な訓練コースの設定・見直しを
行うべきではないか。[再掲]
○ 公共職業訓練における受講指示については、訓練受講による再就職可
能性等を踏まえ、より一層的確な受講指示に努めるべきではないか。
[再掲]
○ 公共職業訓練受講者に対する職業指導、職業紹介等の徹底を図り、就
職に着実に結びつけるようにすべきではないか。[再掲]
○ 早期受講指示(所定給付日数の3分の2以前に開始される訓練につい
て指示)を徹底するべきではないか。さらに、訓練の受講指示について
求職者のおかれている状況や意欲、能力を踏まえ、確実に再就職に結び
つく内容・時期の訓練受講を確保するべきではないか。[再掲]
ロ 雇用継続給付
厳しい雇用失業情勢の下で、雇用が継続している者に対する給付について、
離職者に対する給付との均衡や制度創設後の雇用保険制度をめぐる環境の変化
等の観点から見直す必要があるのではないかとの観点から、次のような議論が
行われた。
○ 失業等給付には新たに様々な給付が生まれてきたが、雇用保険で第一義的
に救済すべき本来の失業者に対する給付に重点化していくべきではないか。
○ 高年齢雇用継続給付については、60歳以上の離職者に係る基本手当の所
定給付日数の変更等の制度創設後の状況変化や、現在検討されている基本手
当の給付水準の見直し結果も踏まえ、受給要件や給付率を含めて抜本的に見
直すべきではないか。
一方、次のような議論もあった。
○ 65歳までの雇用継続、年金支給開始年齢との関係で65歳までの雇用が政策
の方向性ではないか。そうした中で高年齢雇用継続給付を政策的にどのよう
に位置付けるのか検討すべきではないか。
○ 老齢厚生年金の支給開始年齢が60歳以上に引き上げられていく中で、60歳
以上の継続雇用に労使で取り組んでいるが、労使交渉では高年齢雇用継続給
付の存在を前提としており、仮に給付が引き下げられると、そうした動きに
水を差すのではないか。
(4) 三事業の見直し
三事業は、本体給付と一体となって失業の予防及び再就職の促進等を目的とし
て、失業の予防、雇用状態の是正等のための事業(雇用安定事業)、労働者の能
力開発を促進するための事業(能力開発事業)、職場環境の整備改善等のための
事業(雇用福祉事業)の三つを柱として実施しているが、今回、早期再就職の支
援等の観点から本体給付に係る制度について見直すことを踏まえ、付帯事業であ
る三事業についても、円滑な労働移動の促進や早期再就職の支援をはじめ様々な
角度から、より効率的・重点的に行われるよう見直すべきではないかとの観点か
ら、次のような議論が行われた。
○ 三事業に係る各種給付金について、今後の安定した事業運営の確保に配慮し
つつ、事業主の共同連帯による支援策であることを踏まえ、政策目的に沿って
実効性のあるものとしていくことにより、必要な制度となるよう、さらに整理
合理化するべきではないか。
○ 本体給付に係る制度についての見直しに合わせて、保険事故である失業を予
防し、再就職の促進による給付減に資する等の付帯事業として期待される機能
が十分に発揮され、雇用保険制度全体として再就職の促進等の観点からさらに
有効に機能するものとなるよう、見直すべきではないか。
○ 前回(平成13年10月実施)の見直しの際に、4つの対策分野(注)ごとに、
「重点化」及び「簡素合理化」を図ることとし、各種給付金を整理(61本→39
本)し、申請・支給に係る諸手続の簡素化等を行ったところ。この見直し時に
おける、(1)対策分野の重点化に沿って見直すこと及び(2)手法・運用面からの
「簡素合理化」を図ること、の2つの視点から、再度検討を行うべきではない
か。
(注)(1) 円滑な労働移動の支援・・・・・・・・労働移動支援助成金 等
(2) 安定した雇用の維持・確保の支援・・・・・雇用調整助成金 等
(3) 良好な雇用機会の創出の支援
・・中小企業雇用創出人材確保助成金、地域雇用開発促進助成金等
(4) 労働力需給調整機能の強化・・・・・特定求職者雇用開発助成金
○ 上記4つの対策分野の区分を踏まえて重点化を行う場合、雇用保険の付帯事
業として期待される機能(失業の予防や再就職の促進による給付減等に資する
こと)をより発揮する観点から、以下のような対応が考えられないか。
・ 「円滑な労働移動の支援」(上記(1))に係る助成金については、労働市
場全体の機能を通じての失業の予防・早期再就職の促進に寄与することが期
待され、より効果的に支援を行い得るよう見直しを検討すべきではないか。
(その際、民間の一層の活用を図るほか、併せて、円滑な労働移動を図るた
め各種規制・制度の見直しも進める必要があるのではないか。)
・ 「安定した雇用の維持・確保の支援」(上記(2))に係る助成金について
は、構造改革を遅らせるとの批判があったため、前回見直し時に、急激な事
業活動の縮小を余儀なくされた場合の一時的な雇用調整を支援するとの性格
を明確にする改正等を行ったところ。現下の厳しい雇用失業情勢の下では、
特に失業の予防のため、個別企業(グループ)の雇用維持努力の重要性は依
然として失われていないことにかんがみ、景気変動への対処をはじめとする
機能が的確に発揮されるよう検討する必要があるのではないか。
・ 「良好な雇用機会の創出の支援」(上記(3))に係る助成金については、
まず、規制・制度改革により民間における雇用創出を進めるとの考え方に立
ち、雇入れ助成の効果に対する批判があることも踏まえ、雇用機会の創出へ
の支援という政策目的の達成が真に図られているか検証した上で、その在り
方についてさらに見直しを検討するべきではないか。
・ 「労働力需給調整機能の強化」(上記(4))に係る助成金については、再
就職の困難な状況等に対応し、早期再就職を促進することが期待され、職業
紹介におけるカウンセリング(職業相談)機能を強化し、対象者の再就職の
困難度等に応じ、対応すること等との関連も考慮し、再就職促進機能が的確
に発揮されるよう検討する必要があるのではないか。
○ 手法・運用面から、現下の雇用情勢等に照らして、真にニーズがあるかどう
かも含めて見直し、より活用される制度となるよう整理合理化するとともに、
徹底した不正防止策を講ずるべきではないか。
特に、利用実績の上がっていない助成制度や政策効果の薄い助成制度につい
ては、現在の厳しい財政状況も踏まえ、厳格に見直しを行うなど、できる限り
ムダを排除した整理合理化を徹底するべきではないか。
○ 三事業に係る各種給付金について、政策効果の観点から毎年度支給実績を当
部会に報告することとすべきではないか。
(5) 安定した制度運営の確保と当面の対応
雇用保険制度が、前回改正後の予想を超える雇用失業情勢の悪化や、中高年労
働者を中心とする非自発的離職者の増加等短期的な雇用・失業動向に加え、労働
移動の増加、雇用就業形態の多様化等中長期的な労働市場の構造的変化に対応で
きるようにするとともに、積立金や弾力条項など制度の安定的運営を確保するた
めの制度が十分に機能を発揮できるようにし、将来にわたり雇用のセーフティネ
ットとして安定的に機能するようにする必要があるのではないかとの観点から、
次のような議論が行われた。
○ 給付と負担の見直しの検討に当たっては、まず、給付面において、受給者の
生活の安定及び早期再就職の促進をはじめとする制度本来の機能が発揮される
ようにすることを主眼とすべきではないか。また、負担面の見直しは、見直し
後の給付面の在り方を前提として検討すべきではないか。
○ 雇用保険財政において、弾力条項による保険料引上げの発動基準が、積立金
が失業等給付費に相当する額を下回った場合とされていることにかんがみ、必
要な積立金水準を達成するまでの間は基本的には単年度黒字となるような収支
構造を目指し、必要な積立金水準の確保を図るとともに、将来、積立金が必要
な水準に達した後もその水準を堅持することを中期的な雇用保険財政の運営方
針とすべきではないか。
○ 弾力条項については、基本受給率の変動幅が雇用変動の幅の拡大等に伴い拡
大してきていることなどを踏まえ、最初から資金繰りが困難となる事態や借入
金に依存するような事態の発生を防ぎ、中期的に安定した雇用保険制度の運営
を確保するため、±2/1000という引上げ・引下げ幅を見直していくことについ
てどう考えるか。
○ 雇用保険制度における国庫負担の意義や在り方についてどう考えるか。
一方、次のような議論もあった。
○ 給付と負担の議論の前提として、前回の制度改正から2年も経たずにこのよ
うな事態になったことの経過や、雇用政策との関係を含めた整理をしなければ、
国民の理解は得られないのではないか。
4 当面の対応
○ 雇用失業情勢、雇用保険受給者の動向によっては今後さらに失業等給付費が増
大するおそれがあり、政府として総合雇用対策等に基づく雇用対策に万全を期す
ことは当然であるが、雇用保険制度としてもこれをできる限り抑制する努力が必
要であることや、雇用保険財政の現状を踏まえ、現行の制度の範囲内で実施する
ことが可能な措置については、制度本体の改正に先行して早急に実施に移すこと
が適当である。なお、労使においても雇用維持に努めることが重要であり、政
府・労使団体はそのことの周知に努めるべきである。
○ 雇用保険制度の機能を適切に発揮する観点から、受給者の早期再就職の促進や
給付の的確な実施は雇用保険財政の状況を問わず必要なことであるが、これまで
の議論にかんがみ、特に次のような措置については、早急に実施すべきである。
・ 雇用保険受給者について、給付制限期間中も含め、ハローワークが求職活動
に対する積極的な支援を行う。
・ この場合、民間職業紹介機関、労働者派遣機関をはじめとする民間機関との
連携・活用に配慮する。
・ ハローワークの情報について、インターネットを活用し、求人等の情報提供
機能の強化を図り(求人企業名の公開等の実施)、自ら積極的に求職活動を行
おうとする者を支援する。
・ ハローワークにおけるカウンセリング機能の充実を図る。
・ 基本手当が制度の趣旨に適う求職者に給付されるよう、失業の認定において、
直近の認定日以後に求人への応募等の求職活動を一定回数以上行った実績を確
認できた場合に支給するとともに、給付制限期間中の求職活動実績を初回の失
業認定に当たって考慮するなど失業認定の厳格化を図る。この場合、民間需給
調整機関による職業紹介等の実績を活用する。また、同一事業主の下で離職・
就職を繰り返す求職者については、失業認定を慎重に行う。
・ 教育訓練給付の対象講座を雇用の継続、安定に資することが明確であるもの
に限定するとともに、政策効果を客観的に検証し、指定基準についてさらなる
見直しを行う。
・ 公共職業訓練について、再就職率等による政策評価も行いつつ、技術革新等
訓練ニーズの変化に対応した機動的な訓練コースの設定、見直しを行う。
・ 求職者の置かれている状況や意欲、能力を踏まえ、確実に再就職に結びつく
内容、時期の訓練を選定の上、的確な受講指示を行う。
・ 公共職業訓練受講者等に対する職業指導、職業紹介等の徹底を図り、就職に
着実に結びつくようにする。
・ 早期受講指示(所定給付日数の原則3分の2以前に開始される訓練の受講指
示)を徹底する。
・ 雇用保険法第32条の給付制限規定(紹介拒否、職業訓練の受講拒否、職業指
導拒否による1ヵ月の給付制限)の運用基準の見直しを行う。
・ 私立大学をはじめ未適用事業所に対する適用促進を着実、迅速に進める。
・ 被保険者が自らの雇用保険加入手続が採られているかどうかの確認の手続等
を明確化する。
・ 労働保険料の適正な徴収を徹底する。
・ 不正受給事案の把握に努め、確認された事案に対しては厳正に対処する。
○ 以上の運用改善を実施するほか、総合雇用対策等に基づく雇用対策を迅速かつ
適切に実施することを前提として、雇用保険制度のおかれている現下の状況にか
んがみ、制度上予定されている収支改善措置である弾力条項については、可能な
限り早急に(本年10月を目途)、制度上可能な2/1000の引上げを発動することは
やむを得ないものと認める。
5 今後の対応
○ 現時点では、以上のように、基本認識及び留意すべき事項においては関係者が
認識を共有しているが、個別の検討項目においては十分具体化が進んでいない部
分があり、関係者の意見に相当程度の乖離が見られる部分もあることから、当部
会としては、上記の見直しの視点等を基に、今後さらに具体的な検討を深めてい
く必要があると考える。
○ 上記4の当面の対応として一致を見た事項については、厚生労働省においてで
きるだけ速やかに成案を得、必要なものについては労働政策審議会への諮問等所
要の手続を経て逐次実施に移すべきである。
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