1.現状 (1) 障害者雇用の状況 我が国の最近の雇用失業情勢をみると、平成13年9月の完全失業率が5.3%と過 去最高水準となるなど、さらに厳しさを増しており、こうした中で、障害者の雇用 の状況は、以下のとおり、厳しい状況にある。 公共職業安定所に求職登録する障害者数(有効求職者数)は、平成12年度末で、 約13万2千人と過去最高であり、平成7年度末の約8万8千人から大幅に増加して いる。障害種別に見ると、特に、知的障害者、精神障害者の伸びが大きく、重度の 身体障害者の割合も増加している。これらは厳しい雇用情勢の反映というだけでな く、就職が困難と考えられていた障害者も就業意識が高まってきたことの現れとい う側面もあるものと考えられる。 また、障害者の解雇届出者数も高水準にあり、平成12年度は2,517人と前年度の 2,425人を上回るものとなっている。 企業の実雇用率については、改善を続けているが、近年は厳しい雇用失業情勢を 反映して改善のテンポは鈍化しており、平成12年6月現在の企業の実雇用率は1.49 %と前年から横ばいである。雇用率未達成企業の割合は過去最高の55.7%となり、 半数を超える企業が未達成の状態である。企業の規模別に見ると、これまで低かっ た1,000人以上の大企業では雇用率が上昇しているが、なお多くの企業(74.5%)が 未達成である。一方、これまで高かった100人未満の中小企業の雇用率が大幅に低 落している。 国、地方公共団体の実雇用率については、法定雇用率2.1%が適用される機関で 2.35%、2.0%が適用される都道府県等の教育委員会では1.22%となっている。 (2) 施策の進展 このような厳しい状況ではあるが、様々な施策が実施され、障害者雇用に向けた 新たな取組が行われている。 平成9年の障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」とい う。)の改正により、知的障害者の雇用義務化が行われたことにより、企業におけ る知的障害者の雇用への取り組みが進んできている。 また、障害者雇用のために企業が設ける「特例子会社」は平成9年の認定基準の 改正により設立が進み、平成13年8月現在で112社、雇用されている障害者は 約2,800人に達している。業務内容については、障害者の特性に応じた再編成を行 い、生産現場だけではなく、データ入力、メール配送、清掃など幅広い分野に及ん でおり、中堅・大企業を親会社とする企業にも障害者の職場が広がっている。 さらに、市町村レベルで障害者の雇用に係る支援を行う「障害者雇用支援センタ ー」は平成9年の法改正により、社会福祉法人を活用したあっせん型の設立が可能 となり、平成13年度で施設設置型13か所、あっせん型21か所が設置されている。平 成11年度からは、生活支援センターと組み合わせて雇用支援と生活支援を一体的に 行う「障害者就業・生活総合支援事業」が試行的に実施され、地域のネットワーク を活用した障害者の雇用支援が成果を上げている。 さらにまた、日本障害者雇用促進協会を中心に様々な職業リハビリテーションサ ービスの拡充も行われてきている。障害者の基本的な労働習慣の体得や仕事への適 性を見極めるため地域障害者職業センターが模擬的な場所で訓練を行う「職業準備 訓練」の充実のみならず、職場実習、試行的雇用(トライアル雇用)を通じて障害 者の就職につなげていく手法も進んでいる。こうした中で、地域障害者職業センタ ーにおいて就職前の職場定着を支援する「職域開発援助事業」が11年度から全国実 施となり、障害者の就業体験の機会を提供する「障害者就業体験支援事業」も平成 10年度から実施された。特に、雇用情勢が急速に悪化する中、平成11年1月から実 施された、障害者の雇用のきっかけ作りを行う「障害者緊急雇用安定プロジェク ト」は、平成13年6月までで、6,407人が職場実習を行い、4,990人がトライアル雇 用に移行し、最終的に4,176人が本雇用に移行する等、中小企業を含め大きな成果 を上げたが、この成果を踏まえ、平成13年度から、トライアル雇用を行う「障害者 雇用機会創出事業」が実施されている。 以上の施策に加えて、精神障害者に焦点を当てた事業の充実も進められてきてお り、平成11年度から、求職活動の準備段階における支援として、公共職業安定所の 職員が医療機関等で就職活動に関するガイダンスを実施する「医療機関等と連携し た精神障害者のジョブガイダンス事業」、職業準備訓練等の前段階の職業リハビリ テーションとして、地域障害者職業センターが医療、福祉等の関係機関と連携して 実施する「地域雇用支援ネットワークによる精神障害者職業自立支援事業」が実施 されている。また、平成12年度から、知的障害者、精神障害者等の就職後の職場定 着のための支援として、「職場適応援助者(ジョブコーチ)による就職後の人的支 援パイロット事業」が実施されており、中小企業を中心に利用され、障害者の雇用 の安定に効果を上げている。