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障害者雇用問題研究会報告概要
1.現状
(1) 障害者雇用の状況
○我が国の障害者雇用の状況は、さらに厳しさを増している雇用失業情勢の下、
有効求職者数は過去最高、障害者の解雇届出者数も高水準である等厳しい状
況にある。
○企業の実雇用率の改善のテンポは鈍化しており、平成12年6月で1.49%と
前年から横ばいであり、雇用率未達成企業の割合は過去最高の55.7%である。
(2) 施策の進展
○平成9年の障害者雇用促進法の改正以後、新たな取組が進んできている。
○知的障害者の雇用義務化による企業の取組、特例子会社の設立、あっせん型
の「障害者雇用支援センター」による事業が進展し、「障害者緊急雇用安定
プロジェクト」は大きな成果を上げ「障害者雇用機会創出事業」につながっ
ている。
○精神障害者に焦点を当てた事業の充実も進められてきている。
2.課題
(1) 経済情勢や職場環境の変化等に対応した施策の推進
○厳しい経済情勢の下、企業組織の再編等が進む一方で、職場環境の改善等に
よるバリアの低減等、障害者雇用を取り巻く状況が変化している。
○障害者の雇用の場の確保、職域拡大のため、企業組織の変化等に合わせた雇
用しやすい条件の整備や、除外率制度についての縮小に向けた取組が必要と
なっている。
(2) 雇用と保健福祉の連携強化
○就業を希望する障害者が増加する中で、就業支援と生活支援が必要な障害者
も増加しており、きめ細かな職業的自立支援策の充実・強化が重要である。
○厚生労働省の発足による統合のメリットを生かして、障害者の雇用施策と保
健福祉施策の連携を強化する等総合的な施策の推進を図ることが求められて
いる。
(3) 精神障害者の雇用施策の充実
○近年、医療・福祉の進展等により、社会参加や就業への可能性を持つ精神障
害者の増加が見られており、就業を希望する精神障害者も大きく増加してい
る。
○精神障害者の雇用促進のための施策の一層の充実が必要であり、雇用率制度
のあり方についての検討も求められている。
3.今後の施策の方向
(1) 障害者の職域等雇用の場の拡大
障害者の雇用の場の確保に大きく寄与している雇用率制度により、障害者雇
用をさらに促進し、雇用におけるノーマライゼーションの実現を図ることが求
められている。
(1) 特例子会社制度の活用等による環境整備
○従来障害者雇用を困難と考えていた企業においても、障害者雇用を進める
方法として特例子会社制度が活用されている。障害者雇用の実績などから、
障害者本人にとってメリットが大きいこと、企業にとって障害者雇用に積
極的に取り組む契機となるという点で、特例子会社制度が評価されるよう
になっており、その経営の安定及び発展、設立促進が必要である。
○分社化による事業のスリム化の進展、持株会社制度の導入等による企業再
編成の進展、国際会計基準の導入等の状況に対応し、特例子会社制度を活
用した障害者の雇用の場を拡大するため、以下のことを行うべきである。
・親会社の責任の下で雇用促進を行う場合、特例子会社及び他の子会社
を合わせてグループで雇用率の算定を行えるようにすること
・特例子会社と親会社の関係における資本要件を支配力基準に拡大する
こと
○重度障害者多数雇用事業所についても、先駆的な取組が期待されるため、
引き続き支援が必要である。
(2) 除外率制度の縮小
○職場環境の整備等が進む中、障害者にとって困難と考えられていた職種に
おいても就業可能性が高まっており、特例子会社制度、助成金の充実など
の条件整備が図られている。また、障害者の資格欠格条項の見直しが進め
られている。
○民間企業の除外率、国及び地方公共団体の除外職員は、以下の点で不合理
がある。
・ノーマライゼーションの理念から見て問題があること
・職場環境の整備等が進んでいる実態と合わなくなっていること
・障害者の雇用機会を少なくし、障害者の職域を狭めることになること
○したがって、企業の除外率については、職場環境の整備等を更に進めつつ、
今後、周知・啓発を行いながら、準備期間を置いて、廃止の方向で一定の
期間をかけて、段階的に除外率を引き下げ、縮小を進めていくべきである。
○国及び地方公共団体の除外職員も、企業との均衡を考慮して、同様に、廃
止の方向に進めていくべきであり、この場合、実態も踏まえ機関ごとの除
外率に転換を図り、縮小を進めていくべきである。
(3) 雇用率達成指導と助成措置の改善
○個々の事業主に対して障害者雇用を促すため、障害者雇用率達成努力に大
きな問題のある企業名の公表も含め、引き続き厳正な雇用率達成指導が必
要である。
○障害者雇用の環境整備を図る助成金については、手続きの簡素化を含め確
実・迅速な処理、支給基準の明確な周知等により、より利用しやすい仕組
みとするとともに、ニーズに合致した内容の改善等の検討が必要である。
○調整金と報奨金の支給額の在り方については、納付金徴収対象となる企業
の範囲と併せて、今後、経済情勢も見つつ、検討することが必要である。
(4) 試行的雇用を活用した障害者の雇用機会の創出
○事業主に障害者雇用への理解を深めるきっかけ作りを行う「障害者雇用機
会創出事業」については、その成果を踏まえ、今後さらに事業の推進が必
要である。
(5) 多様な雇用・就業形態への対応
○事業所での常用雇用だけでなく、在宅勤務、短時間勤務、派遣労働等など
多様な形態が生じており、障害者の特性を踏まえた対応が望まれる。派遣
労働については派遣先企業に対して、障害者の作業環境への適応等に係る
助言等の支援が重要である。
○関係団体等からの適切な情報提供などにより、自営業も含めた職場の拡大
の促進も図ることが必要である。
(2) 障害者への総合的支援の充実
職業リハビリテーションは保健福祉との連携強化を図る中で新たな施策の展
開が可能となっており、障害者の特性に合わせたきめ細かな支援の充実が求め
られている。
(1) 就業・生活面からの支援の強化
○身近な地域で、就業面及び生活面で一体的かつ総合的な支援が展開できる
よう、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の支援ネットワークの拠点とし
て、「障害者就業・生活支援センター」(仮称)による支援事業を全国に
展開していくべきである。
(2) 職場適応のための人的支援の強化
○事業所内で職場適応を援助する外部の専門家による人的支援を行うため、
地域障害者職業センターにより、職場適応援助者(ジョブコーチ)による
人的支援事業の全国展開を行うべきである。
○地域障害者職業センターにおいては、社会福祉法人など障害者の就労支援
の経験のある機関を活用することが必要である。
(3) 障害者の職業準備訓練、職業能力開発の促進
○地域障害者職業センター、障害者職業総合センターの事業の充実が必要で
ある。
○障害者職業能力開発校については、障害者のニーズにあった能力開発等が
必要であり、知的障害者養護学校の職業教育の分野で協力が期待される。
(4) 福祉的就労から雇用への移行の推進
○福祉的就労から雇用への移行が進むよう、授産施設等に対する雇用関係の
情報提供等による施設側の意識改革、適正な方法による「施設外授産」の
実施により、施設利用者の雇用につなげるきっかけを作ることが重要であ
る。
○就業が継続できなくなった障害者について、社会福祉施設等に一時的に受
け入れる等「双方向性」の確保を含め、再度就職できる仕組みの充実が必
要である。
(5) 地域におけるネットワークの形成
○日常的支援を安定して行うには、職業生活を送る身近な地域で「障害者就
業・生活支援センタ ー」を拠点として、ネットワークを構築することが
効果的である。これと公共職業安定所が連携しながらこうした役割を果た
すことも重要である。
○専門的な職業リハビリテーションを実施し、都道府県で中心となって専門
的な知識・技術等によりネットワークの形成を促す機関として、地域障害
者職業センターがその役割を果たすものと考えられる。
(6) 雇用支援の人材の確保・育成
○障害者の就業支援のネットワークを支える人材の確保が重要であり、ジョ
ブコーチ事業等を担う人材の育成等を図ることが重要である。
(7)職場での障害者の権利擁護
○職場において障害者の権利が擁護されるため、障害者雇用連絡会議や個別
労働紛争解決制度の活用等が考えられる。
(3) 精神障害者の雇用の促進
「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」報告における課題の整理も踏
まえて、本研究会で、今後の施策の方向を取りまとめた。
(1) 雇用支援の対象とすべき精神障害者の範囲
○障害者雇用促進法の雇用支援の対象となる精神障害者については、精神障
害者保健福祉手帳の交付該当者に相当する障害を有する者(手帳所持者及
び申請すれば交付される者)とすることが適当である。手帳を所持してい
ない精神障害者については、プライバシーに十分配慮した把握・確認方法
を構築することが必要である。
○精神障害者に対する雇用支援を進めることを明確にすることが必要である。
(2) 精神障害者の雇用支援施策
ア.特性に応じた総合的な対策の推進
○職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用を図るとともに、障害者雇用
機会創出事業についてもさらに活用されることが必要である。
○精神障害者を雇い入れた事業主に対しては、特定求職者雇用開発助成
金の期間延長等の支援措置の拡充が必要である。また、支援対象とな
る労働時間の下限の引下げ等の検討を進めることが必要である。
○「グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業」につい
て、その状況を踏まえ、今後、拡充を検討することが必要である。
イ.ネットワークの構築
○雇用と医療・福祉の間の双方向のシステムを円滑に機能させつつ、関
係機関の総合的な支援が行えるよう、「障害者就業・生活支援センタ
ー」の活用が必要であり、精神障害者社会復帰施設等における取組を
促すことが必要である。
○「地域雇用支援ネットワークによる精神障害者職業自立支援事業」や
「医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業」等の拡
充が必要である。
ウ.採用後精神障害者施策の強化
○採用後精神障害者への支援のため、関係機関の密接な連携の下での企
業や精神障害者本人に対する相談体制の確立や円滑な復帰のためのウ
ォームアップの場の確保等が必要である。特に職場のメンタルヘルス
対策との連携も必要である。
○障害者雇用継続助成金等については、採用後精神障害者を対象とする
必要がある。
また、納付金に基づく助成金についても同様の検討が必要である。
エ.きめ細かな啓発・広報の展開
○精神障害者の雇用の促進と安定を図るためには、関係者や社会全体の
理解の促進が重要であり、障害者団体等とも連携したきめ細かな啓
発・広報が必要である。
(3) 雇用義務制度
○精神障害者も雇用義務制度の対象とする方向で取り組むことが適当と
考えられるがそのためには雇用支援施策の積極的展開と拡充を図りつ
つ、その実績を周知することにより、当事者を含む関係者の十分な理
解を得るとともに、対象とする精神障害者の把握・確認方法の確立、
採用後精神障害者を含む精神障害者の実態把握等制度適用に必要な準
備を的確に講じるべきであり、関係機関・組織の十分な連携の下に、
こうした課題を解決するための取組を図ることがまず必要である。
○このためにも、今後、こうした実態把握等の取組を行うため、関係者
の参画する調査研究の場を早期に設け、継続的に検討を進めていくこ
とが必要である。
(4) その他
(1)障害者雇用促進施策の検討について
(2)障害者のニーズの変化と政策施策に係る評価について
(3)障害者の範囲・種別の捉え方等について
(4)経済的自立のための所得確保について
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