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      職業能力開発関連情報のあり方に関する調査研究報告書

 

3 労働市場政策の企画立案に当たって有効に活用すべき情報



 上記2の観点から必要な情報のうち、我が国労働市場全体のキャリア形成、職業能

力評価、教育訓練等に係るインフラの整備状況(実態)を鳥瞰できる情報については、

キャリア形成支援、職業能力評価制度の整備、教育訓練システムの確立等、今後の労

働市場政策の企画立案に当たって有効に活用できるのではないか。



(情報の必要性)



  個人主導の職業能力開発の重要性が増す中、今後、労働者個々人が効果的なキャ

 リア形成を図っていくためには、職業能力の適正な評価を行うとともに、自らの能

 力に応じた効果的な教育訓練の受講等を通じて、能力を向上させ、雇用の安定や就

 業の促進が図れるよう、キャリア形成支援、職業能力評価制度の整備、教育訓練シ

 ステムの確立等、中長期的な視点に立った新たな労働市場政策の枠組み整備、構築

 を官民が連携していく必要がある。

  こうした労働市場インフラの整備に当たっては、官民連携により構築していくこ

 とが重要であるが、官は、民間におけるこうしたインフラシステムの整備状況(労

 働市場のインフラが整っているのか、個人が利用できるようになっているのか等)

 を常に把握しつつ、システム整備を検討していく必要がある。



(必要となる具体的な情報内容)



  このような中、上記2で整理した労働市場におけるインフラとして必要な情報の

 ユーザーとしては、主として労働者個人、企業等であるが、行政としても、これら

 の情報のうち、特に、以下のような、我が国労働市場全体(特に民間)のキャリア

 形成や職業能力評価、教育訓練の実態を鳥瞰できる情報については、今後、新たな

 労働市場政策の企画立案や既存政策の評価を行うに当たり有効に活用することがで

 きると考えられる。

  なお、こうした情報を定期的に収集、更新することにより、時系列的に把握する

 ことで、労働市場の成熟度を測ることも可能になると考えられる。



  ・キャリア形成支援に係る具体的な支援機関(公共、企業内、外部等)及び数、

   支援体制、具体的な支援内容等、我が国労働市場全体のキャリア形成支援に係

   る実態(労働市場インフラとしての整備状況)を鳥瞰できる情報



  ・公共及び民間の資格制度の活用状況、具体的な職業能力評価機関(企業内、外

   部等)及び数、評価基準の有無等、我が国労働市場全体の職業能力評価制度に

   係る実態(労働市場インフラとしての整備状況)を鳥瞰できる情報



  ・専修・各種学校等の民間教育訓練機関の数、教育訓練の実施状況、大学・大学

   院におけるリカレント教育の実施状況等、我が国労働市場全体の教育訓練に係

   る実態(労働市場インフラとしての整備状況)を鳥瞰できる情報



 

4 公共職業訓練コースの開発・設定等に当たって有効に活用すべき情報



 公共職業訓練コースの開発・設定に当たっては、政策方針企画から訓練コースの設

定・実施に至るまでの各段階において、各種の情報が活用されているが、今後は、特

に、設定した訓練コースの実施成果(政策評価)という観点が重要になってくると考

えられるが、その際、有効に活用すべき情報としては、具体的にどのようなものか。



(必要となる具体的な情報内容)



  産業界の求める人材育成ニーズに資する多様な教育訓練機会を確保するため、公

 共職業訓練を効果的に実施していくには、業種、職種ごとの労働力需給動向、人材

 ニーズ動向、能力開発ニーズ等、以下のような各種情報が、公共職業訓練に係る、

 政策方針企画から訓練コースの設定・実施に至るまでの各段階ごとに有効に活用で

 きると考えられる。(別表2参照)



 (1) 政策方針企画



  (活用目的)



  ・公共職業訓練の拡充が必要な分野、仕上がり水準、量的目標等のターゲット設

   定の検討、決定



  ・当該分野の訓練実施上、制度面の措置が必要な事項の検討、決定(訓練科別標

   準、設備の細目、訓練実施方法等)



  (活用すべき主な情報)



  ・職種別の労働力需給動向



  ・職種(訓練科)別の具体的な能力開発上の課題、その評価の方法(資格の市場

   価値等を含む)



  ・現行訓練の実績(入校率、就職率、修了者の能力評価)



  ・訓練実施に係る労使団体、関係機関の要望



  ・民間の教育訓練機関に係る事例(好事例、課題)情報



 (2) 教材開発



  (活用目的)



  ・教材(教科書、映画、ビデオ、シミュレーター等)の開発



  ・民間教育訓練機関の開発した教材の認定



  (活用すべき主な情報)



  ・全国の官民教育訓練機関のコース設定、受講者数等



  ・民間の産業活動、教育訓練及びその教材等に係る事例(好事例、課題)情報



  ・教育訓練技法に係る基礎的研究成果



 (3) コース開発



  (活用目的)



  ・訓練科別標準等を踏まえたモデルカリキュラムの開発、各施設に対する提示



  ・施設内訓練に係る具体的なコース開発



  ・委託訓練に係る委託契約基準、方法等に係る細目の決定



  ・施設内・委託分を含めた、訓練実施計画(総量)の決定



  (活用すべき主な情報)



  ・職種(訓練科)別の産業界(企業)の具体的な人材ニーズ



  ・企業内訓練、民間教育訓練機関における訓練内容、手法等に係る事例情報



  ・職種(訓練科)別の具体的な能力開発上の課題



  ・委託訓練に係る受託機関の実施能力



 (4) コース設定・訓練実施



  (活用目的)



  ・施設における具体的なコース設定、設定頻度・期間・定員の決定、これに係る

   設備、教材、指導者の調達・調整



  ・委託訓練に係る受託候補機関の開拓、委託条件の摺り合わせ、選定、委託契約



  ・設定したコースに係る受講者募集(公共職業安定所求職者については受講指示

   等により対応)



  ・訓練実施実績・成果の把握・分析(受講者の属性、資格、能力向上評価、就職

   率等)



  (活用すべき主な情報)



  ・自地域の民間教育訓練機関の訓練実施状況(所在、内容、規模等)



  ・自地域の外部講師リスト(所在、経歴、能力・資格等)



  ・自地域の公共職業安定所求職者の訓練受講ニーズ(分野、水準、人数等)



  ・自地域の受託候補機関・教育訓練コースの所在、訓練実施能力等



  ・自施設の受講者(修了者)の能力測定ツール



(今後の具体的な情報収集方策)



  今後は、設定した訓練コースの実施成果(政策評価)を次の段階の訓練コース設

 定に反映させるため、産業別人材ニーズに始まり、訓練コースの設定・実施、訓練

 コースの受講成果の分析に至るまでの循環的なプロセスを標準化、構築することが

 重要となってくる。

  具体的には、現在実施している訓練の成果がどれだけ上がっているのかを把握、

 評価して、既存の訓練コースの改廃、コース数・定員の増減に反映させていくこと

 が重要であるが、現状では、入校率、就職率の2つが主要な評価の指標となってい

 る。

  今後は、両指標のみでは測りかねる、受講者本人や、当該受講者を雇い入れる

 (離職者)あるいは雇用している(在職者)企業の受講した訓練の成果に係る評価

 が重要な判断指標になると考えられる。しかしながら、こうした情報については、

 業務を通じて把握することは困難と考えられるため、当面、マクロ的なアンケート

 調査を実施して収集、把握していくことが適当である。

  このほか、受講開始時と修了時に訓練受講生の能力を何らかの評価ツールを用い

 て測定し、訓練成果を測定することも有効であるが、これについては、当面、効果

 的な能力評価ツールの開発が求められる。

  また、今後は、新たな人材育成ニーズに即した効果的な訓練コースを設定してい

 くことも重要である。その際、離職者訓練については、その訓練内容が職種と概ね

 対応しているため、職種ごとの労働力需給動向に係る情報が有効である。一方、在

 職者訓練については、訓練コースの内容が総じて特定の職務に特化したものとなっ

 ているため、既存の情報に加え、地域ごとに業界ヒアリング調査を実施するなどし

 て、こうした新しい人材育成ニーズについて、随時、把握、収集していくことが適

 当と考えられる。

  なお、こうした業界の人材ニーズについては、経済社会情勢に応じた変化の激し

 いものであり、時宜に応じた緊急性の高いニーズを業界(企業)からどのようにし

 て拾い上げていくかが重要となってくるため、今後は、可能な限り体系的にこうし

 た情報を収集していくような体制を整備することが重要である。



 

(参考)



<21世紀人材立国計画モデルプロジェクト>



  21世紀人材立国計画は、経済新生対策(平成11年11月11日閣議決定)の一環と

 して、我が国経済を新生させ、社会を活力あるものとするため、情報化、高齢化等、

 21世紀に必要な人材を育成するシステムを、産学官の連携により構築することを目

 的としたものである。

  本計画の実施主体である雇用・能力開発機構では、本計画の推進に当たり、能力

 開発ニーズの把握等から教育訓練コースの開発を行うに当たって、中央と地方との

 連携を通した、地域における人材育成ネットワークを構築することを目指している。

  このため、平成12年度において、4つのモデル地域を指定し、当該地域の産業

 特性等に応じて、業種ごとに、経営・人材育成上の現状・課題等の把握を行い、そ

 の課題解決の一つの手段・手法としての能力開発ニーズを捉え、そのニーズに対応

 した教育訓練コースの開発等を通して地域の人材育成のシステム作りを図ることを

 モデルプロジェクトとして実施している。

  また、モデルプロジェクトにおいては、次のようなプロセスにより教育訓練コー

 スの開発を行っている。



  ・対象業種の企業における教育訓練実施状況や従業員の能力開発ニーズ、地域の

   教育訓練の実態などの情報のアンケート調査による収集



  ・研究会における当該情報の分析による課題(職業能力(開発)体系)等の整理、

   分析



  ・研究会における情報の分析、及び、関連する既存の訓練コースのモデルカリキ

   ュラムや技法、教材等の情報を参考にしたモデルカリキュラム、訓練コースの

   開発



  ・開発した訓練コースの試行的な実施、検証



  本モデルプロジェクトによる教育訓練コースの開発については、特定地域、特定

 業種に係る情報に基づき実施しているものである。このため、今後、本プロジェク

 トの成果を踏まえ、各地域において人材ニーズに即した効果的な訓練コースを開発

 するためには、本プロジェクトにより開発したコースを実際に立ち上げ、その実施

 成果を評価した上で、仮に成果不十分な面が生じた場合には、コース開発手順・手

 法に係る問題を明らかにし、業種や職種の垣根を超えた訓練コース開発プロセスの

 標準化を段階的に進めることが必要と考えられる。



 

5 今後の情報システムの構築に向けた事業展開



 今後、特に、上記2の観点から労働市場におけるインフラとして必要となる情報を

収集・整理し、提供・活用していくための情報システムを構築していくに当たり、具

体的にどのような段取りで検討を進めていくことが適当か。



 労働市場におけるインフラとして必要な情報については、関係部局、関係機関等と

の連携・調整の上、収集・提供していくべきものであるが、労働市場の構成員である

労働者個人、企業等によって、様々な目的に沿って効果的に活用されてこそ、また、

労働市場政策の企画立案、公共職業訓練コースの開発・設定に当たって必要となる情

報についても、それぞれの目的に資する情報を収集し、活用できてこそ、労働市場イ

ンフラとしての機能を果たしたと言える。

 このため、平成13年度以降は、今後の本格的な情報システムの構築に向けて、本

研究会において整理した事項を踏まえ、以下のように事業を展開していくことが考え

られる。



 (1) 必要情報に係るニーズ調査(予備的調査)



   (1) アンケート調査の実施



     本研究会において、労働市場におけるインフラとして必要な情報について

    一定の整理を行ったところであるが、今後、本格的な情報収集活動を展開す

    る前に、その整理の妥当性について検証する必要がある。このため、労働者

    個人、企業等が必要とする情報について、関係部局とも連携の上、以下のよ

    うな方策で調査を行うことが考えられる。



    (ア) 業種を特定して、当該業種の企業(事業主等)に対してアンケート調

      査を行い、情報の具体的な活用場面、必要な情報内容等を把握する。



    (イ) (ア)と並行して、当該企業に勤務する在職者、公共職業訓練の受講者

      等、労働者個人に対して同様のアンケート調査を行う。





   (2) 研究会の開催



     (1)のアンケート調査の結果を踏まえ、当該業種に係る企業関係者(人事

    担当者等)を交えた有識者による研究会を開催し、労働市場におけるインフ

    ラとして必要な情報について、具体的にどのような目的(場面)で、どのよ

    うな情報が活用又は必要とされているかを整理し、今後の本格的な情報収集

    について、具体的にどのような手法で、どのような内容の情報を収集するこ

    とが適当であるかを整理することが効果的と考えられる。



   (3) 継続的な調査の実施



     労働市場の構成員である労働者個人、企業が必要とする情報内容について

    は、経済社会情勢に応じて変化が予想されるため、概ね3年ごとに上記(1)、

    (2)のような必要情報に係るニーズ調査を継続的に行うことが適当と考えら

    れる。



 (2) 情報収集活動の展開



   (1) 全国規模のアンケート調査の実施



     (1)の結果等を踏まえ、毎年、定期的に全国規模のアンケート調査を実施

    し、必要となる情報を収集、分析、提供していくことが考えられる。



   (2) 業界又は地域ごとのヒアリング調査の実施



     (1)の結果等を踏まえ、各地の業務支援機関等と連携の上、業種を特定し

    て、地域ごとに業界団体ヒアリングを段階的に行い、必要となる情報を収集、

    分析、提供していくことが考えられる。



 (3) 業務統計の活用



   教育訓練給付講座指定、委託訓練の実施、各種助成金の支給等、既存の業務を

  通じて得られる民間教育訓練機関や企業等に関する情報については、今後、各情

  報にコードを付与し、データベースを構築することにより、情報収集に係る直接

  な入力作業等に係るコスト負担をなくし、自動的に情報を収集・更新することが

  可能になると考えられる。

   また、適切なインデックスを設定することにより、様々なニーズに沿った情報

  検索も可能になると考えられる。

   なお、職業安定行政において、既に一定のデータベース化がなされている労働

  力需給等に係る情報システムとも互換性を持たせることが、今後、労働者の雇用

  の安定、就業の促進に資する、一体化した労働行政の推進に当たっては不可欠で

  ある。

   しかしながら、こうした業務統計を活用したシステム構築については、技術的

  にも複雑な作業になるため、中長期的に推進していく必要があり、今後は、概ね、

  以下のような段取りで検討を進めていくことが考えられる。



   (1) 対象となる業務統計の選定、その技術的な方法等に係る、関係機関の有

    識者やシステム開発担当者等による検討



   (2) 業務統計を活用したシステムの設計、簡易版の作成及び検証



   (3) 業務統計を活用したシステムの構築、試行、運営開始



 (4) 情報収集・提供体制の整備



  情報システムの構築に当たっては、職業能力開発行政のみならず職業安定行政と

 も緊密に連携して事業を展開すべきであり、また、雇用・能力開発機構、中央・都

 道府県職業能力開発協会、日本労働研究機構等の関係団体相互の効果的な連携方策

 や、「私のしごと館」等の関係施設の活用方策等を検討する必要がある。

  このため、当面、関係行政機関及び関係団体の有識者により、効果的で実現可能

 性のある情報システムの構築に向けた連携方策等について整理することが適当と考

 えられる。

  また、情報システムを構築するに当たっては、インターネットを活用して、業種、

 職種に限らず、様々な観点からの情報検索を可能とするとともに、関係業界団体等

 の情報サイトとリンクさせるなどの付加機能を有したものとする必要がある。

  以上のようなことを踏まえ、具体的には、概ね、以下のような段取りで検討を進

 めていくことが考えられる。



   (1) 関係行政機関、関係団体、関係施設間の連携・活用方策の検討



   (2) 情報システム構築に向けた検討



   (3) 情報システムの設計、簡易版の作成及び検証



   (4) 情報システムの構築、試行、運営開始

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