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第2章 自殺予防対策
第3節 自殺予防対策
4.事後対策 〜自殺未遂者や自殺未遂者・死亡者の家族、友人等の周囲の者に
対する相談・支援〜
(1)必要性
20歳未満の自殺死亡者の遺児数は平成12年で約9万人と言われており、その数
は近年、急増している。自殺により遺された家族・友人等は、心に深い傷を負い、
最悪の場合、「後追い自殺」や「群発自殺」が起こることもある。したがって、
これら遺された家族、友人等に対する相談・支援は極めて重要である。
自殺死亡者の数倍から数十倍といわれる自殺未遂者においても、救急医療現場
と精神科医等との連携が重要であり、また、家族・友人等への影響は非常に大き
いことから、相談・支援の充実が必要である。
「群発自殺」とは (高橋祥友委員:「群発自殺」)
自殺が単独で生じるばかりでなく、時に複数の人々による自殺が起きる
ことがあり、この現象は群発自殺(clustered suicide)と呼ばれている。
群発自殺には、連鎖自殺(狭義の群発自殺)、集団自殺、自殺名所での自
殺等が含まれるが、これらが複雑に組み合わさって生じる場合もある。
(2)地域等における相談・支援体制
大切な家族を自殺で亡くされた遺児の方々が、勇気をもって公の場で自らの体
験を語り始めている。このような活動により、遺された家族、友人、職場の同僚
等に対する支援体制について、ようやく社会的な関心が向けられるようになって
きた。しかし、まだ自殺問題をタブーとする傾向は強く、自殺で家族、友人等を
亡くしたことの辛さを人に話せず、一人で抱えている現状があることも事実であ
る。地域等の相談機関や医療機関において、精神科医や臨床心理技術者等が中心
となって、自殺死亡者の家族、友人等に対し心のケアを行うことが重要である。
あわせて、相談機関において、遺された家族、友人等が気軽に相談できることを、
普及・啓発することも重要である。
(3)児童・思春期における留意事項
学校等児童生徒を取り巻く環境において、不幸にして自殺が起きた場合、周り
の児童生徒に対する強い心理的影響が考えられることから、これを軽減すること
は重要的課題である。この心理的影響は、個々の児童生徒によって異なるため、
個別にきめ細かな支援を行うことが望まれる。また、児童生徒は、流行に影響さ
れやすく、「後追い自殺」や「群発自殺」が発生しやすいといわれている。その
ため、万が一、自殺が起きた場合の具体的な対応策について、海外の動向や様々
な研究成果を踏まえ、例えばマニュアル化等も含めて検討の上、そうした成果を
学校等において普及・啓発を行うとともに、担任、養護教諭等が中心となって相
談体制の充実を図ることが必要である。
5.その他
(1)報道・メディアに望まれること
精神疾患や精神医療に対する偏見が根強く残っており、心の健康問題を抱える者
が気軽に精神科医等を受診できる状況にないと言われている。このため、報道機関
においては、精神疾患や精神医療に対する偏見を助長することのないような適切な
報道に努めていただいたい。
一人の自殺の結果、それに影響を受けた複数の者の自殺が誘発される場合(群発
自殺)があり、これは、報道の仕方によっては、さらに拡大する可能性がある。過
去にも、有名人の自殺の方法や場所、後追い自殺の発生等が、詳細かつセンセーシ
ョナルに報道され、その後、自殺が急増した例が複数報告されている。特に、児童・
思春期の自殺については、こうしたリスクが高いとの指摘があり、関係者には留意
していただきたい。
一方、メディアは、国民に対して大きな影響力をもつため、適切な報道によって、
自殺予防に大きな力を発揮できると考えられる。自殺のサインへの気づき方、その
際の対応の仕方、相談機関等自殺予防のために有用な情報を報道するよう、自殺予
防を考慮した自殺報道のあり方に留意していただきたい。
最近では、インターネットの普及により、自殺予防に関するものから自殺を促す
ものに至るまで「自殺」関連サイトが多数存在する。インターネット上における様
々な自殺関連情報にも留意していただきたい。
(2)自殺の社会経済的影響
近年の自殺の急増の原因の一つに経済・生活問題があると考えられることから、
自殺予防対策には、経済状況等の観点も考慮する必要がある。しかし、経済の変化
が起こる以前にストレスを予防できるような心の健康づくり対策を行うことで、経
済・生活問題が自殺につながる危険性を小さくする可能性があると指摘されており、
経済施策の影響も勘案して総合的な対策を行うことにより、さらに大きな効果を期
待できる。
(3)自殺予防対策の推進
自殺は、国民の健康に関する問題であると同時に社会状況にも大きく影響を受け
ることから、現行の対策を適宜評価し、実態に応じた対策を実施することが重要で
ある。そのためには、まず、当面の自殺の動向を詳細に把握し、さらに継続的な調
査研究、情報収集、事業の効果の評価等を実施することが必要である。また、円滑
かつ効果的に対策を推進するため、各種関係機関・団体、国及び地方公共団体等が
緊密な連携を図ることが必要である。さらに、対策の推進には、各種の調査研究、
相談体制の整備、情報発信、自殺予防対策の提案等を一括して行ういわゆる「自殺
予防センター」機能が必要である。
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