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(報告書の概要)


1 検討の前提(規模の想定等)

  内陸直下型地震等極めて被害の甚大な災害が発生し、地方公共団体の対応能力を

 超える事態になった場合、例えば避難所をどのように確保し、どの程度の水準まで

 対応できるのかなど、段階的な対応方策や対応水準の設定等が必要。
  このため、南関東直下型地震に係る東京都の被害想定等を前提として検討。

2 生活再建の基本的な考え方

  被災者の生活再建の過程においては、行政による一方的な救済措置だけでは十分

 なニーズに応えられず、被災者の努力や助け合い、ボランティア等による自発的な

 支援等を引き出すことが重要である。このため行政は、被災者等の自立支援を生活

 再建の基本理念としつつ、長期的なビジョンを示して支援を行うべき。
  また、被災者が自らの状況に応じて適切に生活再建の見通しをたてるためには、

 支援策の多様な選択肢を早い段階で提示することが重要。

3 応急救助の実施体制等のあり方

(1)都道府県の役割の増大

   昨年4月の地方分権一括法の施行に伴い、都道府県の自主性が高まり、その役

  割が大きくなっているが、災害救助について一定の水準を確保し、広域連携を図

  るため、国等において災害救助実務の標準化を図ることが重要。

(2)広域的な応援体制等

   都道府県間等での応援協定の締結・見直しは進んでいるが、災害時に実効を上

  げるためには、普段から協議や訓練等を通じて連携・協力関係を強化しておくこ

  とが必要。
   また、救助実務に精通した職員を登録しておき、災害発生時に活用するととも

  に、被災経験の少ない地方公共団体にアドバイザーとして派遣すべき。

(3)ボランティア、NPOとの連携

   ボランティアは災害対策に不可欠の存在となっており、防災訓練や研修の実施、

  ネットワーク化、情報通信機器、活動拠点の提供等を通じ、活動を支援。

(4)情報収集・提供体制

   情報を迅速に収集・集約して災害の全体像を明らかにし、地域外へ避難する被

  災者も含め、避難所の情報拠点化や居所登録に基づく広報紙の送付、インターネ

  ットの活用等により適切に情報提供を行うべき。
   また、今後、携帯電話に入力された避難先等個人情報を集約するシステムを開

  発するなどITの積極的な活用を図るべき。

4 避難所のあり方等

(1)避難所の防災拠点化

   従来、水・食料等の物資やトイレ、入浴、災害情報等については、避難所への

  避難者を中心に提供されているが、住家に被害のない住民についても、ライフラ

  インや流通の途絶等により生活に困難を来たす。
   そのため、避難所を避難所以外で生活する被災者に対しても必要なサービス提

  供を行う機能をもった、地域やコミュニティの防災拠点と位置づけることを検討

  すべき。

(2)避難所の確保

   想定を上まわる避難者が生じた場合に備え、地域内外の公共施設や民間施設を

  含むあらゆる社会資源を活用して避難所の追加指定が行えるよう、施設所有者等

  と事前協議しておくべき。
   また、高齢者、障害者等の要援護者については、防災拠点型地域交流スペース

  整備事業を活用して、入所施設を福祉避難所として整備すべき。

(3)避難所の管理・運営

   災害時、被災地の市町村職員等は他の災害業務にも従事することから、避難所

  内の避難者による自主的な運営を進めるため、ボランティアの協力を得ながら、

  避難所ルールの早期確立や班編成、リーダーの選出、当番制等を検討すべき。

(4)避難所の情報拠点化

   避難所を防災拠点とすることに合わせ、情報面についても地域の拠点として位

  置づけ、各種情報通信機器等を配備し、情報ボランティアと連携して、地域の被

  災者がいつでも利用できるようにすべき。

(5)帰宅困難者対策

   都市部の被災に伴う交通途絶により、多数の通勤、通学、買い物客等が帰宅で

  きなくなる事態に備え、これらの人々に対する情報提供や避難誘導、帰宅支援等

  のため、事業者等と連携を図るとともに、近隣地方公共団体との間で協議してお

  くべき。

5 応急仮設住宅等のあり方

(1)仮住まい対策等

   住居確保支援に当たっては、多様な選択肢をパッケージとして提示し、被災者

  の状況に応じた支援を図るとともに、住宅再建支援策等の情報を早期に住民に提

  供することが重要。

(2)既存の住宅ストックの活用

   ア 公営住宅、民間賃貸住宅の活用

     公営住宅の空き家の一時的な使用も緊急避難的な措置として現実的な対応

    策の一つと考えられる。また、民間賃貸住宅の空き家等の活用も図るべき。

   イ 応急修理制度の活用

     仮住まいではなく、できる限り自宅に居住できるよう応急修理制度の周知

    や標準化等による利用拡大を図るべき。


(3)応急仮設住宅

   ア 供給の確保等

     関東地域への応急仮設住宅の供給能力は3ヶ月で7万3千戸とされるが、

    例えば東京都区部直下型地震の場合約10万戸が必要とされていることなど

    から、資材の生産、供給能力の向上を図るとともに、用地を確保することが

    大きな課題。

    (1)供給能力の確保のため、資材の備蓄、ユニットハウスの活用、用地の事

     前点検、関係建設業者等との協定、小規模単位での完成・引渡し等により

     早期入居の実現を図るべき。


    (2)建設用地の確保のため、候補地リストの事前作成、民有地借上の事前協

     定、被災民有地の暫定借上、自己敷地への共同型仮設住宅の設置等につい

     て検討が必要。

    (3)用地が不足する中で、恒久住宅確保対策としての公営住宅の用地の確保

     を優先する一方で、応急仮設住宅は、地区単位での郊外等への仮移転や被

     災企業の移転に合わせた移転等弾力的な対応を図るべき。

    (4)規格仕様については、省スペース化のため、水廻りを共同化した寮タイ

     プや2階建ての推進等についても検討が必要。

   イ 生活支援

     応急仮設住宅において、生きがいを持って生活できるよう、自治組織やボ

    ランティア、行政の役割分担を明確にし、コミュニティの確保、生きがいづ

    くり、仕事づくり等ハード、ソフト両面にわたる生活支援メニューを用意し

    ておくべき。

    (1)入居者選定における地区抽選方式や数世帯単位での募集枠の設定

    (2)空きスペースを活用した生きがいづくり支援

    (3)簡易な環境整備等に対する入居者の雇用等

6 今後の課題等


   ア 災害時に生じる価値対立の予防に向け、平常時の住民啓発が必要。

   イ 応急対策、復旧・復興対策に係る多様な施策の運用に当たっては的確な総

    合調整を図るとともに、さらに施策の総合化、体系化を図る努力が必要。

   ウ 地方公共団体等の関係者が大規模災害に備えた各般の研究・検討の成果を

    防災対策に取り入れることを期待。

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