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第1 基本的な考え方

 平成13年1月に実施された中央省庁等改革において、中央省庁の再編により厚生労

働省が設置されるとともに、政策評価を導入することとされた。

 厚生労働行政は、人の誕生から就労・退職後までの一生涯にわたり、また、家庭・

地域・職場などあらゆる場面にかかわるものであり、疾病・失業・育児・貧困・障害

・高齢など社会的支援を必要とする様々な事態に対応し、国民の生活を全般的に支え、

向上させることをその目的としている。

 新省の発足とともに導入する政策評価においては、行政の説明責任(アカウンタビ

リティ)の徹底、政策の企画・立案・実施過程の改善を通じた国民本位の効率的で質

の高い行政の実現等を図るものとする。
 特に、国民生活に密接した幅広い分野を担当する厚生労働省においては、政策評価

を全省的に実施することにより、統合の実をあげ、国民の視点に立った政策運営やサ

ービスの提供などを通じて、国民生活の向上により一層貢献することを目指すものと

する。

 本実施要領は、以上のような基本的な考え方に立ち、厚生労働省が実施する政策評

価について、その目的・方式・体制などを規定するものである。
  
第2政策評価の目的

 厚生労働省においては、以下に掲げる目的の達成を目指し、厚生労働行政全般を対

象として、政策評価を実施することとする。

  (1)国民に対する行政の説明責任(アカウンタビリティ)を徹底すること


   政策評価の実施を通じて、厚生労働行政の目的や効果等を国民に対して明らか

  にすることにより、行政の透明性を確保し、厚生労働行政に係る説明責任の徹底

  及び国民の信頼性の向上を図る。


  (2)国民本位の効率的で質の高い行政を実現すること


   政策評価の実施を通じて、厚生労働行政に対する国民のニーズへの的確な対応

  を図る。また、効果的で質の高い行政サービスを必要最小限の資源で効率的に提

  供する政策運営の実現を図る。


  (3)国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図ること


   政策評価の実施を通じ、行政サービス等を提供した結果として、国民にどのよ

  うな成果をもたらしたかということを重視した行政運営を推進し、政策の有効性

  の向上を図る。


  (4)厚生労働省の総合的・戦略的政策展開を推進すること


   政策評価の結果を政策の企画・立案・実施に反映させるとともに、政策評価の

  継続的な実施を通じて得られる知見を蓄積していくことにより、政策の質及び政

  策形成能力の向上を図り、総合的・戦略的に政策を展開することによって、新省

  発足の実をあげることを目指す。
  
第3政策評価の方式

1.政策評価の方式

 厚生労働省においては、所管行政の分野・内容等に応じ、事業評価・実績評価・総

合評価の3つの方式により、政策評価を実施する。

(1)事業評価

  1)事業評価の内容


  ア.事前評価


   事前評価については、予算、財政投融資及び税制に関わる事務事業等の導入並

  びに規制の新設の際、当該事務事業等が意図する政策目標を明らかにするととも

  に、当該事務事業等の必要性、有効性等について、評価を実施することにより、

  当該事務事業等の意図・目的や期待される効果を明確にするものとする。


  イ.中間・事後評価


   中間・事後評価については、一定期間にわたる事務事業等の途中又は事後にお

  いて、必要に応じ、当該事務事業等の進捗状況や社会経済状況の変化を踏まえた

  評価を実施することにより、当該事務事業等の課題及び改善点を明確にするもの

  とする。


  ウ.公共事業等に関する評価


   厚生労働省が所管する公共事業の個別プロジェクトに関する評価については、

  「環境衛生施設整備事業の再評価の実施について」(平成11年3月厚生省生活衛

  生局水道環境部長通知)に基づく従来の取組みに沿って、引き続き着実に評価を

  行うものとする。
   また、研究開発課題に関する評価については、「国の研究開発全般に共通する

  評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(平成9年8月内閣総理大臣決

  定)に基づき、事前及び中間・事後評価を引き続き実施する。
   ODA事業については、「ODAの透明性、効率性の向上について」(平成10

  年11月対外経済協力関係閣僚会議幹事会申合せ)に基づく従来の取組みに沿って、

  引き続き着実に評価を実施する。
   なお、規制については、「規制改革推進3か年計画」(平成13年3月閣議決

  定)を踏まえ、新設を必要最小限にするとの基本的な方針の下に、規制の必要性、

  期待される効果、予想される国民の負担等のコスト等について検討する。

  2)事業評価の実施方法


  ア.事前評価


  (1)担当部局等による事業評価書第一次案の作成


   各事務事業等の担当部局等は、予算要求、財政投融資資金要求及び税制改正要

  望を伴う新たな事務事業の導入並びに規制の新設を図る際、当該事務事業等に関

  係する部局と調整の上で評価を実施し、事業評価書第一次案として取りまとめ、

  査定課(予算及び財政投融資に係る政策については大臣官房会計課、税制及び規

  制の新設に係る政策については政策統括官付参事官室をいう。以下同じ。)及び

  政策統括官付政策評価官室(以下「政策評価官室」という。)に提出する。

  (2)査定課による審査等


   査定課は、事業評価書第一次案が妥当かどうか審査するとともに、事業評価書

  第一次案を参考に査定を行い、厚生労働省予算概算要求、財政投融資資金要求、

  税制改正要望及び規制の新設に反映させる。
   政策評価官室は、評価専担組織として、事業評価書第一次案の内容について、

  技術的助言等を行うとともに、審査を経た事業評価書第一次案を事業評価書原案

  として取りまとめる。

  (3)事業評価書の公表


   政策評価官室は、事業評価書原案を取りまとめた後、速やかに公表する。


  (4)財政当局等による査定等に基づく事業評価書の変更及び公表


   事業評価書原案の公表後、財政当局等の査定等により事務事業等の内容に変更

  があった場合、担当部局等において事業評価書原案の変更を行う。政策評価官室

  は、修正を加えた事業評価書を取りまとめ、事務事業等の内容確定後に速やかに

  公表する。

  イ.中間・事後評価


   事務事業等の実施過程で中間・事後評価を行う必要があると判断された場合、

  担当部局等において、事前評価の方法に準じて評価を行う。

(2)実績評価


  1)実績評価の内容


   実績評価については、厚生労働行政全般を対象として、達成すべき目標をあら

  かじめ明らかにし、各年度終了時等にその達成度を評価することにより、行政の

  達成度合いを明確にするものとする。
   なお、達成すべき目標については、対象となる施策の性質に応じ、可能な限り

  客観的に達成度を測定できるようなものとなるよう努める。

  2)実績評価の実施方法


  ア.厚生労働行政の基本目標の設定


   政策評価官室は、評価の実施に先立ち、厚生労働行政の基本目標を設定する。

  基本目標については、社会経済状況等の変化に応じ、適切に見直す。


  イ.施策目標等の設定


   各施策の担当部局等は、基本目標を達成するための施策目標及び評価指標等を

  設定し、政策評価官室に提出する。


  ウ.達成状況の把握


  (1)担当部局等における実績評価書の作成


   各施策の担当部局等は、各年度の概算要求時を目途として、当該施策に関係す

  る部局と調整の上、施策目標及び評価指標等に係る達成状況、評価結果及び政策

  への反映方針を確定し、それらの事項を記載した実績評価書を政策評価官室に提

  出する。


  (2)政策評価官室における実績評価書の取りまとめ


   政策評価官室は評価専担組織として、実績評価書の内容について技術的助言等

  を行い、担当部局等による修正を経た実績評価書を取りまとめる。


  (3)実績評価書の公表


   政策評価官室は、実績評価書を取りまとめた後、速やかに公表する。


  エ.施策目標及び評価指標の見直し


   担当部局等は、各年度の終了時における評価結果を踏まえ、必要に応じて、施

  策目標及び評価指標の見直しを行う。

(3)総合評価

  1)総合評価の内容


   総合評価については、従来の政策を見直して新たな政策展開を図ろうとするも

  の、他の評価手法によっては政策を的確に評価することが困難であるものなどに

  ついて、特定のテーマを設定し、様々な角度から掘り下げて評価を行うことによ

  り、政策の効果・課題を明らかにするものとする。

  2)総合評価の実施方法


  ア.テーマの設定


   政策評価官室は、時々の課題に対応して、評価の必要性・緊急性等を勘案し、

  関係部局の意見を踏まえつつ、総合評価の対象となるテーマを設定する。

  イ.評価の実施


   総合評価については、対象となる政策の内容に応じて、厚生労働省自らによる

  実施、審議会や外部有識者による研究会等による実施、外部研究機関等への委託

  など、適切な方法により行うものとする。
   第三者等による評価の実施に当たっては、対象となる政策の内容に応じて、各

  政策の担当部局等が、必要な協力・援助を行うものとする。
   政策評価官室は、評価結果を取りまとめた後、速やかに公表する。

2.評価の基準

 厚生労働省が実施する政策評価においては、次のような一般的基準を基本としつつ、

政策評価の方式、行政の内容等に応じて適切な観点・基準に基づき、評価を行うもの

とする。

  (1)「必要性」の観点


  ・政策の目的が国民や社会のニーズに照らして妥当か、また、上位の目的に照ら

   して妥当か。


  ・行政関与のあり方から見て行政が担う必要があるか。


  (2)「効率性」の観点


  ・投入された資源量に見合った結果が得られるか、又は実際に得られているか。


  ・必要な効果がより少ない資源量で得られるものが他にないか。


  ・同一の資源量でより大きな効果が得られるものが他にないか。


  (3)「有効性」の観点


  ・政策の実施により、期待される効果が得られるか、又は実際に得られているか。


  (4)「公平性」の観点


  ・政策の目的に照らして、政策の効果の受益や費用の負担が公平に分配される

  か、又は実際に分配されているか。

  (5)「優先性」の観点


  ・他の政策よりも優先的に実施すべきか。
  
第4政策評価の実施体制

1.基本的枠組み

(1)政策評価の担当組織

 厚生労働省においては、個別の政策・施策・事務事業等の担当部局等、査定課及び

政策評価官室が、次のような役割分担の下、互いに協力、牽制及び補完をしつつ、政

策評価を実施するものとする。

  1)担当部局等は、自ら又は第三者の活用により、その担当する政策・施策・事

   務事業等について評価を実施する。


  2)査定課は、事業評価に係る評価案の審査を行うとともに、評価結果を厚生労

   働省の予算編成等に適切に反映する。


  3)政策評価官室は、以下のような事務を行う。


  ・実施要領、運営方針等の政策評価に関する基本的事項の企画・立案
  ・評価結果等の取りまとめ及び公表
  ・評価手法の調査研究の推進
  ・政策評価を担当する職員の技能向上の推進
  ・政策評価に関する情報提供及び助言等を通じた関係部局への支援

(2)政策評価の実施に関する関係課長会議

 厚生労働省内に「政策評価の実施に関する関係課長会議」を設け、厚生労働省の政

策評価の実施・運営に関する基本的事項について審議、情報交換等を行い、総合的観

点から調整する。

(3)第三者の活用

 政策評価の実施に当たって高度の専門性や実践的な知見が必要な場合、客観性の確

保や多様な意見の反映が強く求められる場合等にあっては、以下のような方法により、

第三者の活用を積極的に図ることとする。


  ・学識経験者等からの個別の意見聴取

  ・学識経験者等により構成される検討会、研究会等の開催

  ・既存の審議会の活用

  ・外部研究機関等の活用

2.社会保険庁の実績評価

 厚生労働省の外局である社会保険庁については、中央省庁等改革基本法(平成10年

法律第103号)第16条に規定する実施庁として、社会保険庁長官にその権限が委任さ

れた事務の実施基準を定めて公表するとともに、達成すべき目標を設定し、その目標

に対する実績を評価して公表することとされている。
 この社会保険庁の実績評価については、政策評価との類似性にかんがみ、実施庁の

実績評価としての性格を踏まえつつ、この実施要領の定めるところに準じて実施する

ものとする。
  
第5評価結果の政策への反映

1.意義

 政策評価は、政策の企画・立案・実施過程の一部として組み込まれ、当該過程を改

善することを目的の一つとするものである。
 このような観点から、政策評価の評価結果については、政策の企画・立案等に反映

することが重要であり、評価結果の有効かつ適切な活用を図るものとする。

2.政策への反映状況の公表

 担当部局等は毎年一回、評価結果の政策への反映状況を作成し、政策評価官室に提

出する。政策評価官室は、反映状況を取りまとめた後、速やかに公表する。
  
第6評価結果等の公表等

1.公表の目的

 政策評価は、行政の透明性を確保し、厚生労働行政に係る説明責任の徹底及び国民

の信頼性の向上を図ることを目的の一つとするものであることから、政策評価の評価

結果等については、国民に対して積極的に公表することが重要である。
 このような観点から、評価結果等については、適時適切に公表する。

2.公表の方法

 本実施要領及び評価書等の政策評価に関する各種資料については、策定後速やかに、

厚生労働省ホームページへの掲載や文書公開窓口への備付けなどの方法により、公表

するものとする。
 評価結果等の公表に際しては、以下の事項のほか、評価の際に使用した評価手法・

指標等について積極的な公表を図るものとする。


  ・評価実施主体

  ・評価の対象とした政策の目的、目標、内容、関連する予算

  ・評価結果

3.外部からの意見等の受付

 政策評価に関する外部からの意見等については、厚生労働省ホームページ等におい

て広く受け付け、可能な限り回答を行うなど適切な対応に努めるものとする。
  
第7政策評価の継続的改善等

1.政策評価の継続的改善

(1)実施要領等の見直し

 政策評価は今般新たに導入される制度であり、評価の実施に関する知識・情報のさ

らなる蓄積が必要であることから、具体的な評価の在り方については、今後、実施の

過程を通じて改善・充実を図っていくことが必要である。
 このような観点から、本実施要領及びこれに基づく評価の実施手順などについても、

継続的に見直していくものとする。

(2)評価手法の改善

 政策評価の手法については、試行的実施も含め具体的に評価を実践する中で、個々

の評価手法についての特性を十分に検証し、知識や経験を蓄積していく。また、新た

な手法の開発や詳細な分析を行うために必要な情報・データの収集に努め、段階的に

評価の質の向上を図るものとする。

2.政策評価に係る運営方針の策定

 本実施要領を踏まえ、各年度における評価の実施計画など具体的な実施方策につい

ては、毎年度、政策評価に係る運営方針において規定するものとする。

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