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第1部 我が国のものづくり基盤技術の現状と課題



 第1章 経済のグローバル化と我が国の製造業 



  (2)我が国製造業が直面する課題



    経済のグローバル化に対応し、我が国の製造業が競争力を維持・強化するた

   めには、他国に一歩先んじた技術及びそれを化させた製品を生み出す技術開発

   力を強化し、その成果を知財産として保護、活用する体制を確保するとともに、

   国内にいて多品種少量の需要に対し短納期で生産・供給する効率的事業手法の

   確立を図る必要がある。





   ○経営戦略に係る課題



     我が国の製造業の総資本営業利益率(ROA)は低下傾向にあり、欧米の

    主要企業と比較すると、「経営資源の選択と集中」が遅れ、事業部門、製品

    の種類が多く収益性が低下している。

     また、我が国の企業は、間接部門の生産性が生産部門に比べて低い、企業

    規模が小さく経営基盤が弱い等の問題がある。





                             (平成12年度)

      地域別・業種別売上総利益率・売上高営業





      我が国の製造業の売上高総利益率は、欧米に比べ多くの業種で遜色はな

     いが、売上高営業利益率は大きく劣っている業種が多く、総利益と営業利

     益の差に相当する間接部門コスト(販売費及び一般管理費)を相対的によ

     り多く負担しているものと思われる。





      化学メーカーの売上高ランキング(平成12年) 主要化学企業のR&D及び利益率の国際比較





   ○産業技術力に係る課題



     情報通信、バイオテクノロジー等将来を担う革新的技術については多くの

    分野で、米国の優位が指摘されている。民間の研究開発費は趨勢的には増加

    傾向にあるものの、近年は伸び悩んでいる。

     また、我が国製造業の研究開発の成果は、社内に埋もれ事業化につながっ

    ていないケースが多い。この背景として、研究テーマが総花的、自前主義へ

    の拘りが強く産学連携が不十分といった問題点と並んで、多額の投資を要す

    る実用化研究の段階に上昇していく際の「死の谷」を乗り越えることが困難

    化しているという課題が存在。



      我が国技術者に対する革新的技術に係る技術力比較アンケート



      製造業における研究開発費の動向



      主要国の民間研究開発投資と経済成長における技術進歩との関係(80年代と90年代の比較)



      大学の財源のうち民間資金比率国際比較(平成10年度、人文・社会科学+自然科学)



      研究段階から市場投入に移るまでの資金調達の容易さに関するギャップ「死の谷」





   ○知的財産権に係る戦略的対応に係る課題



     我が国企業は、研究開発等の成果である技術や知的財産を戦略的に管理・

    活用する取組が不十分。

     この結果、企業がグローバルな事業展開を進める中、模倣品等権利侵害品

    に市場を奪われる事態や、アジア地域への意図せざる技術流出といった事態

    が発生。





      日米欧の自国内及び海外における特許取得件数の比率(平成10(1998)年)



      模倣品の製造国・地域及び被害分野





 [意図せざる技術流出の事例]



  ○取引先たる東アジアの企業に対して、これまでの「つきあい」等から、その求

   めに応じ、先端技術に近い技術を供与したところ、キャッチアップされ、海外

   市場での競合が生じた。(素材メーカー)



  ○東アジアの企業で取引関係のあるところに、プロセス技術の一端を見せた(製

   品開発上見せざるを得なかった)ところ、その関係会社が当該技術について特

   許申請した。(半導体装置メーカー)



  ○ノウハウの塊である金型の図面、CAD設計データ等を無断流用され、全く同

   様の部品が東アジアのメーカーから流通している。(金型メーカー)



  ○生産の事業手法に係る課題

    我が国製造業の強みは生産現場にあると言われてきたが、90年代に入り欧

   米の製造業は、各種のアウトソーシングとあわせて事業再構築を進めるととも

   に、ITを活用した新たな生産技術を積極的に導入し生産性を向上。また、汎

   用品分野においては、中国等アジア諸国が低コストを背景に、生産能力を飛躍

   的に拡大。このため、我が国製造業においては、企業の組織改革も視野に入れ

   ITを戦略的に活用するとともに、製造現場において小ロット・短納期への柔

   軟な対応や、リードタイムの短縮に資する生産方式の導入、活用を図ることが

   肝要である。





      業種別IT投資の民間設備投資比率



      主要国ITの普及率と全要素生産性の変化

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