タイトル:キャリア・コンサルティング技法等に関する調査研究報告書の概要

     (労働者のキャリア形成支援のためのキャリア・コンサルティング・

     マニュアルを作成)



発  表:平成13年5月17日(木)

担  当:厚生労働省職業能力開発局総務課

                  電 話 03-5253-1111(内線5738)

                      03-3502-6783(夜間直通)

I.調査の概要


 技術革新や産業構造の転換に伴う労働移動の増加等、労働者を取り巻く雇用環境が

大きく変化する中で、労働者の適切なキャリア形成を図るためには、労働者に対し、

業務に必要な職業能力に関する情報、教育訓練に関する情報その他の情報が適切に提

供されるとともに、これらの情報を十分に活用した相談、援助(キャリア・コンサル

ティング)が行われることが不可欠である。

 このため、国においては、本年10月から、各都道府県に「キャリア形成支援コー

ナー」を設置して、求職者等に対するキャリア・コンサルティング等を実施する体制

を整備することとしているが、これに加え、キャリア・コンサルティングの積極的な

普及を図るため、雇用・能力開発機構の協力を得、企業の職業能力開発推進者に対す

る研修等を通じて、各企業内においても、従業員がキャリア・コンサルティングを十

分に受けられるような仕組み作りを促進することとしている。

 今般、こうした企業内におけるキャリア・コンサルティングの普及の促進を図るた

め、企業の職業能力開発担当者や人事・労務担当者を対象とした、キャリア・コンサ

ルティング・マニュアルを作成した。

 本マニュアルは、従業員のキャリア形成支援の意義とキャリア・コンサルティング

の進め方や留意点についての基礎的な事項を解説するとともに、個々の従業員が職業

生活の節目、節目で自らの職業経験や能力の棚卸をし、今後のキャリア形成の目標を

立てることを支援するためのツールとして、「キャリアシート」の標準的な様式と、

その具体的な記載要領を含むものである。

 厚生労働省においては、今後、本マニュアルを、企業の職業能力開発推進者に対す

る研修等で積極的に活用する等によりキャリア・コンサルティングの積極的な普及に

努めるとともに、今後、更に調査研究を重ね、労働者のニーズに応じた各レベルの専

門家の養成やキャリア・コンサルティング技法の開発及び普及に取り組むこととして

いる。



II.報告書の概要

1 従業員のキャリア形成と企業における雇用管理及びキャリア・コンサルティ

ング
(キャリア・コンサルティングの概要)

 技術革新や産業構造の転換等、労働者を取り巻く環境が大きく変化しており、

個別の労働者が、主体的に個々の希望や適性・能力に応じて、生涯を通じてキャ

リア形成を行い、企業内外で通用する職業能力を高めることが重要となっている。
 一方、企業は、「個人のキャリア形成のニーズ」と「企業が従業員に求めるニ

ーズ」との調和を図るための組織的、計画的な雇用管理を行う必要がある。
 これらのことから、従業員が自らのキャリア形成の方向やその実現のための具

体的手段・方向を考えることを支援すること(情報提供、助言・相談等)が必要

不可欠。

(キャリア・コンサルティングの定義)
 従業員と十分な話し合いの上、従業員のキャリアを十分に把握し、それを的確に記

述するとともに、その能力を正確に評価した上で、企業や産業界のニーズと従業員の

適性・能力・希望等を照合することにより、従業員のキャリア形成の具体的方向と職

業能力の開発の方針を決定することを通して従業員のキャリア選択の支援を行うこと。

2 キャリア・コンサルティングの実施に向けて(キャリア形成のための6つの

ステップ)

 個人のキャリア形成は、(1)自己理解、(2)仕事理解、(3)啓発的経験(意思決定を

行う前の体験)、(4)キャリア選択に係る意思決定、(5)方策の実行(意思決定したこ

との実行)、(6)仕事への適応の6ステップから構成されており、キャリア・コンサ

ルティングは、これらステップにおける個人の活動を援助するもの。

(キャリア形成の6ステップ)

(1)自己理解:   進路や職業・職務、キャリア形成に関して「自分自身」を理

          解する。

(2)仕事理解:   進路や職業・職務、キャリア・ルートの種類と内容を理解する。

(3)啓発的経験:  選択や意思決定の前に、体験してみる。

(4)キャリア選択に係る意思決定:相談の過程を経て、(選択肢の中から)選択する。

(5)方策の実行:  仕事、就職、進学、キャリア・ルートの選択、能力開発の方向

          など、意思決定したことを実行する。

(6)仕事への適応: それまでの相談を評価し、新しい職務等への適応を行う。

 なお、個人のキャリア形成は、これを長期的に見た場合、上記の6ステップが職業

生涯の節目、節目において繰り返される中で、年齢とともに知識・経験は広がりを見

せるとともに、専門性は深まっていくもの。

3 キャリア・コンサルティングの実践(キャリアシートの記入と相談)

 キャリア・コンサルティングを実施するに当たっては、従業員が、相談の過程で自

らを振り返り、今後のキャリア選択の方向性やその実現を図るための手段・方法を整

理するためのフォーム(キャリアシート)を活用することが効果的。

(1)キャリアシートを活用した相談

  イ キャリアシートの趣旨・目的

  (1) 従業員個人についての情報を集約・整理・保存し、相談の場面でそれら情

    報を活用すること。
  (2) 従業員自身がキャリアシートを記入する中で、自らを見つめ直すこと。

  ロ キャリアシートの構成

  (1) 本人の属性に関する部分
  (2) 自己理解に係る部分
  (3) 意思決定に係る部分
  (4) その他


  ハ キャリアシートの記入


  (1) キャリアシートの記入を従業員本人が行う。
  (2) キャリアシートの記入は、

   1.相談の際、本人が相談担当者の助言を得ながら記入する方法
   2.相談後において、本人が一人で記入する方法が考えられる。

  二 キャリアシートの保存

  (1) 本人が保存し、必要に応じて追記しながら活用。
  (2) 原資料(テスト結果等)についてもキャリアシートに添付して保存する必

    要。
  (3) 従業員本人の了解を得た上で、企業内においても写しを保存。

  

従業員の主体的なキャリア形成を支援するために

―キャリア・コンサルティングマニュアル― 

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