添付
「今後のパートタイム労働対策の方向について」(報告)に反対する意見書 労働者委員 秋元 かおる 岡本 直美 片岡 千鶴子 佐藤 孝司 吉宮 聰悟 1993年の現行パート法制定以降、行政による施策は行われてきているにもかか わらず、フルタイム労働者とパートタイム労働者との賃金や労働条件等の処遇格差が むしろ拡大しているのは、法律のあり方に問題があることにほかならない。 フルタイム労働者とパートタイム労働者との賃金や労働条件等の処遇格差をそのま まにしておけば、企業の人件費コスト削減圧力も加わって、フルタイム労働者から安 上がりで雇用が不安定なパートタイム労働者への置き換えがますます進む。また、労 働組合等の反対を押し切って解雇ルール・有期雇用や労働者派遣などの労働基準等に 関する規制を緩めようとしているが、これらが「均等待遇原則」の確立もなく強行さ れれば、労働市場全体の著しい不均衡や処遇条件の低下だけをもたらすことになりか ねない。 賃金等の処遇のほかに、パートタイム労働対策にあたっての重要な課題のもうひと つが、有期雇用契約のあり方である。パートタイム労働者の多くは有期雇用契約で、 契約を反復更新し、雇用が不安定なものになっている。また、雇い止めをめぐる個人 等の紛争を惹起している。当分科会で私たちは、有期雇用契約のあり方についてパー トタイム労働の立場からの検討を求めたが、労働基準の問題という理由で当分科会で は一切、議論がされなかったことは極めて遺憾である。 政府にいま求められているのは、ILO175号パート条約やわが国が批准している ILO100号同一価値労働・同一報酬条約、ILO156号家族的責任条約を踏まえた早期の 「均等待遇原則の法制化」である。それは、労働者がライフスタイルの中でパートタ イム労働を安心して選択できることにもなり、わが国の経済社会の安定的発展に貢献 するものと考える。 この考え方にたって、報告に反対する以下の意見を提出する。 1.均等待遇原則の法制化を明記しておらず、反対である 報告は、均等待遇原則の法制化を明らかにしておらず、パートタイム労働者の期待 を裏切るものになっている。私たちは、均等待遇原則の新たな法律または現行パート 法の改正を直ちに行い、段階的に施行していくことを、報告に明記すべきとの意見を 述べてきたが受け入れられなかった。 私たちが求める法律は、「合理的な理由がある場合を除いて、短時間労働等を理由 に通常の労働者との差別的取扱いを禁止する」という均等待遇原則を明記したもので ある。この目的を果たすために、法律には、(1)賃金などの均等待遇原則、(2)「合理 的理由」に関する立証責任を事業主に課す、(3)フルタイムからパートタイム、パー トタイムからフルタイムへの転換権、(4)就業規則の作成・変更に関する意見聴取の 義務づけ等を定め、「合理的な理由がある場合」の考え方は厚生労働大臣が定める指 針で明らかにすべきである。 2.現行パート法第3条をそのままにした「指針の改正」は容認できない 現行パート法が事業主に雇用管理の改善を促す行政指導の根拠法にすぎないこと、 および現行パート法第3条が「均衡考慮に努める」という努力義務規定であることが、 処遇改善の実効があがってこなかった原因である。施行後10年たった見直しのこの時 期になお、強制力をもたない努力義務規定の法律のまま、どんな「立派な指針」と力 説されても、処遇改善に効果をもたらすことは期待できない。 以上