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   はじめに

1. 方針のねらい

(母子家庭等施策の必要性)
  近年の離婚件数の増加に伴い、ひとり親家庭、特に母子家庭が急増している。  現実の母子家庭のおかれている生活状況を見ると、子育てと生計の担い手という二  重の役割をひとりで担うこととなった直後から、その生活は大きく変化し、住居、  収入、養育などの面で様々な困難に直面することとなる。
  母子家庭の場合、就業経験が少なかったり、結婚、出産等により就業が中断する  ことに加え、事業主側の母子家庭に対する理解不足、求人の際の年齢制限の問題な  どが重なり、その就職・再就職には困難が伴うことが多い。また、保育所入所待機  児童が増加する中で、就業のため子どもを保育所に預けることには困難が伴い、就  業しても低賃金や不安定な雇用条件等に直面することが多い。さらに、約8割の離  婚母子家庭は養育費が支払われていない。こうしたことなどから、その85%が就  業しているにもかかわらず、平均年収は229万円と低い水準にとどまっているの  が現状である。過去と比較しても、臨時・パート就労の割合が高まっている。また、  子の養育や教育のために収入を増やそうと複数の職場で就業したり、より良い就業  の場の確保のために自らの職業能力を高めるなど、懸命な努力をするなかで、中に  はその努力が結果として健康面の不安を招き、生活をより困難にしている場合もあ  る。   こうしたことから、特に母子家庭については、子育てをしながら、母親が収入面  ・雇用条件面などでより良い就業に就き、経済的に自立できることが、母親本人ま  た、子どもの成長にとっても重要なことであり、自立支援策の必要性が従来以上に  高まっている。   一方、父子家庭については、既に家計の担い手として就業していた場合が多いこ  とから、その平均年収は422万円となっている。しかしながら、子どもの養育、  家事等生活面で多くの困難を抱えており、子育てや家事の支援の重要性が非常に高  い。   また、離別世帯の子どもの養育においては、その養育に対する責務は両親にあり、  離婚により変わるものではない。別れた親からの養育費は、子どもの権利であるに  もかかわらず、その確保が進んでいないことから、親の子どもに対する責務の自覚  を促し、子どもを監護しない親が、その責務を果たすことを社会全体が当然のこと  とする気運を醸成していくことが重要となっている。   さらに、母子、父子を問わず親との離死別は、子どもの生活を大きく変化させる  ものであり、そのことが子どもの精神面に与える影響や進学の悩み等、子どもの成  長過程における諸問題についても十分な配慮が必要とされている。また、現代にお  いて、ひとり親家庭は決して特別な家庭ではないことから、社会全体が、こうした  家庭を家族形態の一類型として捉え、理解を深めていく必要がある。   このように、ひとり親家庭等の抱えている困難は、多くが複雑に重なり合ってお  り、総合的な支援策を展開する必要がある。その際には、施策の実施主体は、精神  面で支えを必要としている場合や養育能力・生活能力の問題など生活について幅広  く支援する仕組み、個々の世帯の抱える問題に対し相互に支え合う仕組みを活用す  るなど、きめ細かな配慮をすることが求められており、そうした観点から、ひとり  親家庭に身近な自治体において、母子寡婦福祉団体やNPO法人等様々な関係者と  緊密に連携しながら、きめ細かな施策を展開することが重要である。 (母子寡婦福祉対策の見直しと国の基本方針)
  我が国における母子寡婦福祉対策は、昭和27年に戦争未亡人対策から始まり  50年以上の歴史をもっているが、母子家庭等を巡るこうした状況の変化に応じて、  母子寡婦等福祉対策を根本的に見直し、新しい時代の要請に的確に対応できるよう、  「母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律」を第154回国会に提出し、第  155回国会において、平成14年11月22日可決・成立し、11月29日に公  布された。   この改正法においては、ひとり親等に対する「きめ細かな福祉サービスの展開」  と母子家庭の母等に対する「自立の支援」に主眼をおいている。離婚後等の生活の  激変を緩和するために、母子家庭となった直後の支援を重点的に実施するとともに、  就業による自立を支援するため、福祉事務所を設置する自治体において、母子自立  支援員が総合的な相談窓口となり、児童扶養手当など各種母子家庭等の支援策に関  する情報提供、職業能力の開発、就職活動の支援を行う体制を整備しつつ、1)子育  てや生活支援策、2)就業支援策、3)養育費の確保策、4)経済的支援策を総合的に展  開することとしている。また、国が母子家庭及び寡婦の生活の安定と向上のための  措置に関する基本的な方針を策定することとなっている。

  本基本方針は、法改正の趣旨も踏まえつつ、父子家庭も含めた母子家庭等施策の  展開の在り方について、国民一般に広く示すとともに、都道府県、市及び福祉事務  所設置町村において自立促進計画を策定する際の指針を示すこと等により、母子家  庭等施策が総合的かつ計画的に展開され、個々の母子家庭等に対して効果的に機能  することを目指すものである。
2.方針の対象期間
 この基本方針の対象期間は、平成15年度から平成19年度まで5年間とする。
3.用語の定義
 この基本方針において、次に掲げる用語の意義は、以下のとおりとする。  1) 「都道府県」   都道府県、指定都市、中核市  2) 「市町村」    市(特別区を含む。)、町村  3) 「市等」     市(特別区を含む。)、福祉事務所を設置する町村  4) 「都道府県知事」 都道府県知事、指定都市の長、中核市の長  5) 「市長等」    市長(特別区の長を含む。)、福祉事務所を設置する町村             の長  6) 「ひとり親家庭」 母子家庭及び父子家庭


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