III 政策の方向性 2 具体的方向性 (3)パートについての日本型均衡処遇ルールの確立 ・ヨーロッパ諸国では同一労働同一賃金の考えに立脚した労働時間による差別 的取扱い禁止の立法化。97年、EUパートタイム指令として共通のルール化。 ・ただ、わが国では、ヨーロッパ諸国と仕事の組み立て方や処遇の仕組みが異 なり、正社員の間でも外形的に同じ仕事でも処遇が異なりうる。ヨーロッパ 的な意味での「同一労働同一賃金」原則が公序となっているとは言いがたい。 ・今後、わが国で柔軟で多様な働き方が「望ましい」形で広がっていくために は、「日本型均衡処遇ルール」の確立が必要(「パートタイム雇用管理研究 会報告」の考え方)。 (1)「同じ職務の場合に処遇の決定方式を合わせる」 同じ職務であれば、正社員が職能給ならパートも職能給というように 処遇の決定方式は合わせ、その決定方式の下で各人をどう評価・処遇す るかは企業のルールに委ねるべき。 (2)「残業、配転、転勤等の拘束性が正社員と異なる場合、合理的な差を設 けることもあり得る」 現在は同じ職務でも、異動の幅、頻度などキャリア管理実態が正社員 とパートで違えば処遇決定方式に違いのあることは合理的。ただ、フル タイムでも拘束性の少ない働き方が広がっていけば、それとパートの間 では処遇決定方式を合わせるべき。 要は、フルかパートかの違いだけで、職務も責任もキャリア管理の実 態も同じであれば、同じ評価の枠組みの中で処遇すべきということ。 現状、職務も責任も配転・転勤等の扱いも同じであり、処遇決定方式 を合わせるべきと考えられるケースは、事業所、正社員、パートいずれ からみてもパート全体の4〜5%(図表41)。 (3)「水準について正社員とのバランスを図る」 合理的な理由があり、処遇決定方式を合わせられない場合においても 職務が同じなら処遇差は合理的範囲内であるべき。ただ、その判断は一 律には定められず、企業、労使に委ねられるべき。 調査によると正社員と同様の仕事をしているパートが納得できると考 えている所定内賃金の水準はパート、正社員、事業所いずれからみても、 正社員の約8割が平均値(図表42)。 ・「日本型均衡処遇ルール」は、それぞれのケースに応じて判断すべき要 素が多く、画一的な規制にはなじまない。法律では基本的な原則を示し、 その具体的な内容をわかりやすく事業主等に示すガイドラインで補う手 法が望ましい。 ・法制のタイプについて 目指すべきルールは「均等処遇原則タイプ」と「均衡配慮義務タイプ」の 二者択一でなく以下の二つの組合せ。 (1)「同一職務・合理的理由なしケース」 ・・・「均等処遇原則タイプ」に基づいてパートの処遇 決定方式を正社員に合わせること (2)「処遇を異にする合理的理由があっても、現在の職務が正社員と同じ ケース」等 ・・・幅広く「均衡配慮義務タイプ」に基づく均衡配慮 措置を求める ・そこに至る道筋について ・上記ルール実現のためには、部分的なパートの処遇改善でなく、正社員の 働き方や処遇のあり方も含めた見直しが必要。それには時間を要する。 ・にも関わらず、このルールを法的措置として直ちに導入した場合、パート 雇用機会の減少、派遣・構内下請等への代替、低処遇のまま職務分離の進 行、などの影響が懸念。 →ルール実現への方向性を確実にするための方策が必要 (1)均衡考慮の内容の明確化 ・ガイドライン策定により、均衡処遇ルールの具体的考え方を社会的 に浸透・定着。 ・ルール遵守を図るための法制の道筋としては、(イ)「同一職務・合 理的理由なしケース」も含め、均衡配慮措置を先行させる考え方と、 (ロ)時間はかかっても均等待遇も含めた法整備をする考え方あり。 →いずれにしても、時機を計る必要あり。 (2)処遇決定等へのパートの実質的参加の促進。→パートも含めた労使 協議の中で、パートのみならず正社員も含めた公平な配分のあり方に ついて検討することの有効性。 ・I、IIでみたような問題・課題についての共通認識の醸成→法整備 への国民的合意形成の推進。これを促進するためにも何が均衡かに ついてのガイドラインの策定が必要。ガイドラインの実効性を高め るための事後的な救済措置の充実、均衡処遇のベースとなる「働き に応じた処遇」を促すための職務、能力、成果の評価手法の開発な どの取組をあわせて行なっていくことが重要。