II 雇用システムの変化の方向(柔軟で多様な働き方が選びとれる社会の形成に向けて) 1 正社員も含めた雇用システムの多元化(図表32) ・「拘束性の高いフルタイム正社員か補助的パート」の二者択一からの脱却が必要。 ・従来の正社員に比べ、残業、配転などの拘束性は少ないが、ある程度基幹的な 仕事を行う「中間形態」の形成が一つの方向性として考えられる。 ・基幹的パートについても「中間形態」に位置づけ、その中でパートかフルかに こだわらず、できるだけ統一的な雇用保障・処遇を行なう連続的な仕組みを形 成。これは現在の複線型人事管理の流れの延長線上にあるもの。 2 さまざまな働き方を納得して選択できる「働きに応じた処遇」の確立 ・企業の賃金決定における重視要素は年齢・勤続年数から職務遂行能力、業績・ 成果へ、いわば「必要に応じた処遇」から「働きに応じた処遇」にウェイトが 変化しつつある。 ex.年齢別賃金カーブのフラット化。家族・扶養手当の支給企業割合低下。 ・働きに応じた処遇の流れは、基幹的役割を担いつつあるパートにとって望まし い方向。ただ「家計の支え手としての正社員」と「家計補助的なパート」とい う発想を変える必要あり。共働き世帯が多数派となる中で、正社員も世帯全体 の生活を支えなければならないというのは必ずしも平均的な姿でなくなりつつ ある。 3 ライフステージに応じて多様な働き方の間を行き来できる連続的な仕組みの構築 ・まず、育児・介護に関連して、さらには他の理由を含めて、内部労働市場にお けるフルとパートの行き来の可能性を広げることが重要。 ・内部労働市場の中で本格的な短時間就業(ex.短時間正社員)が一つの働き方と して確立されれば、外部労働市場からの参入による働き方にも選択肢が広がる 可能性。補助的パートから入職しても、経験を重ねる中で、意欲と能力に応じ て、より基幹的な働き方に移れる仕組みを広げていく。そのためにも雇用シス テムの多元化により「連続的仕組み」を作っていくことが重要。 4 新たな雇用システムがもたらす労使双方、社会全体へのメリット (1)企業側にとって・・・パートを含めた「働きに応じた処遇」を図ることは企 業経営にとってマイナスか。 最近の大手スーパーの動きとして、パートと正社員との不合理な仕事の垣 根や処遇の違いをなくしていく取組が実際に進行。 →パートの増加の下で、正社員との不合理な処遇の違いをそのままにして おくことの方が企業活力の低下をもたらす恐れが大きい(cf.日経連ダイ バーシティー・ワーク・ルール研究会(本年5月)) (2)働く側にとって・・・例えば、年齢を重ねるごとに「正社員指向」が強まる 若年フリーターの経済的自立の問題。 →「拘束性の高い正社員」か「補助的パート」という 二者択一でない連続的な仕組みの確保により、多様 な層の経済的自立の可能性が増す。 (3)社会全体にとって・・・ ・「働きに応じた処遇」による労働市場のアンバランスの改善→雇用のミスマ ッチの改善。 ・多元的な働き方の仕組み→より多くの層の就業可能性と経済的自立→支え手 の拡大。 ・少子化対策として出産・子育て後に再就職しやすくすることが重要との世論 調査→いったん子育てのために退職しても再び活躍できる柔軟な仕組み→少 子化抑制効果。