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I パート労働の現状と問題点





 2 問題点と課題



  (1)パートの基幹的役割の増大



   ・正社員と同じ仕事をしているパート等がいる割合は(正社員からみて)4割

    強で、そうしたパートは3年前に比べて増加。責任の違いなどはあれ、従来

    正社員がやってきた基幹的な仕事にパートが組み込まれつつあることが類推

    される。



  

  (2)処遇の実態



   ・女性パートの所定内給与を時間換算で正社員と比べると7割弱の水準、格差

    の推移をみると拡大傾向(図表20)。職種構成の違いを除去するため、パー

    トの職種構成を正社員にそろえ、いわば同じ職種における正社員との賃金格

    差を推計すると8割強である(図表22)。

    また、賞与、退職金制度の適用を受ける正社員は9割超だが、パートでは4

    割強、1割弱と大きな差。



   ・常用パート(臨時、有期でないパート)の割合はオランダ、フランスの8割

    程度に比べ日本は4割。常用パートが少ない形でパート化が進行。



   ・パートの労働組合組織率は3%弱。労働者全体の組織率(2割弱)を大きく下

    回る。



  

  (3)背景となる構造と問題点(内部労働市場と外部労働市場)



   ・正社員とパートとで勤続を重ねた時の賃金の上がり方の違いが顕著

    (図表25)。

    「長期的な企業内キャリア形成、家計の支え手を前提とした正社員の賃金体

    系」と「地域市場で代替可能な仕事、家計補助を前提としたパートの賃金体

    系」の違い。



   ・パートの基幹的役割が増している中での問題点



    (1)正社員とパートの大きな処遇差の中で正社員からパートへのシフトが加

     速しており、正社員雇用の入口が狭まるなど労働市場のアンバランスも拡

     大。非自発パートの増大。近年、新規学卒のパート入職が急増(図表26)

     している背景にも、若年者の意識の問題のみならず、こうした労働市場問

     題が影響。



    (2)増加する母子世帯、単身世帯の場合、パートであっても家計の支え手

     (図表30)。こうした場合、働きに見合わない処遇差の存在は特に不公平

     感をもたらす。



    (3)「残業や配転などの拘束性は高いが雇用保障や高い処遇に守られたフル

     タイム正社員グループ」と「自由度は高いが雇用保障が不安定で低い処遇

     のパート等非正社員グループ」の二者択一の構図では、就業意識の変化が

     進む若年層やライフステージに応じた働き方を求める女性のニーズに対応

     できず。今後の少子化で、これら人材の有効活用が課題となる企業にとっ

     てこうしたニーズへの対応が必要。





  → 今後、多様で柔軟な働き方の拡大は不可逆的な流れであるとしても、それが

   労働市場全体の不安定化や処遇条件の低下に結びつくのではなく、いわば多様

   な働き方が「望ましい」形で広がっていくためにはどうすればよいのか。それ

   は今後のわが国の労働市場のあり方にも関わる重要課題。

    こうした課題への対応を考える上で、パート労働者がすでに1,200万人とい

   う大きなグループとなっていること、フルタイムも含めた就業意識の変化を念

   頭に置く必要あり。すなわち部分的にパートの処遇改善をすればいいというこ

   とではなく、フルタイム正社員の働き方や処遇のあり方も含めた雇用システム

   全体の見直しが必要。

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