株式会社 ニチレイ 「女性管理職登用のための、ポジティブ・アクションの取組」 食料品製造業 正社員数約1920人(うち女性約460人) 取組背景 平成10年に経営改革のための3か年にわたる「中期構造改革計画」を策定し、 その計画の一環として平成12年4月に、人的資源の見直しを行う「フレッシ ュ・アンド・フェア・プログラム」(以下、FFプログラム)を導入した。この プログラムは、新しい時代に対応する人材処遇・雇用制度の再構築を目指す人的 資源管理のプログラムであり、仕事を通じた個人と会社の「フェア」な関係を構 築する(年齢、性別、学歴、入社年度等を人事評価・処遇の判断要素から排除す る)ことを主目的としている。 また、FFプログラムの導入と相前後して、平成12年3月から4月にかけて 第1回社員満足度調査を実施した結果、社員の満足度に男女間格差がみられ、全 体として女性の満足度が低いことや、チャレンジの機会が少なく、男性ほどには 仕事に面白味を感じていない女性社員の姿が明らかになった。 この調査結果を踏まえて、FFプログラムに基づき、平成12年9月に主任・ 係長を対象とした公募による管理職登用制度「新・役職者登用制度(プロチャレ ンジ制度)」を導入したが、女性の応募が少なかったため、当時の社長をトップ とする人財委員会で「制度としてポジティブ・アクションを行うこと」を決定し た。 取組体制 会長を委員長とし、その他社長、専務取締役、常務取締役や人事部長で構成さ れる「人財委員会」が主となって推進している。 取組目標 管理職(課長職以上)に占める女性比率を、平成12年現在の1.2%から平 成15年までに5%にする。 取組内容 (1)女性管理職登用優遇制度 管理職に占める女性比率に注目し、男女間の格差を是正することを目的とし て、「プロチャレンジ制度」で女性のみを対象とした追加公募を実施した。 追加公募に際しては、趣旨を明確にするとともに、社内外への広報を徹底し、 女性の応募を促した。また、エントリー資格を拡大し、勤続8年以上であれば 誰でも応募できることとした。応募には上司の推薦は不要とし、自薦を原則と したが、上司に対しても女性の応募を促すよう呼びかけた。 (2)ポジティブ・アクション・キャリア研修の実施 「プロチャレンジ制度」の応募者全員を対象に行う研修に加えて、女性応募 者のみを対象に能力開発支援のための研修を行った。研修内容は、(1)FFプ ログラムやポジティブ・アクションの説明、(2)管理職適性検査結果のフィー ドバック、(3)キャリアに関するディスカッション、(4)他企業の女性役職者に よるキャリアに関するスピーチ、(5)今後のキャリアについての決意表明等で ある。 なお、この研修内容が好評であったため、平成13年からは、「プロチャレ ンジ制度」の応募者以外の女性希望者も研修対象に加えている。 (3)キャリア・ドライブ制度 FFプログラムの一環として、「キャリア・ドライブ制度」を導入した。こ れは、各社員が自己のキャリアについて明確な意識を持つことができるように、 異動について社員の意思を尊重しながら運用するという制度である。この制度 の定着により、「転勤できないから管理職になれない」という状況の改善が期 待されている。 (4)女性支援の風土づくり リーダー研修の中で、男性管理職に対しポジティブ・アクションの必要性や 自社の取組内容について説明を行い、理解を促している。 また、女性支援の取組も積極的に周知するなど、女性が働きやすい風土づく りを目指している。 取組の結果 「プロチャレンジ制度」への初回応募者は、女性5名(男性155名)だった が、追加公募を行ったことにより、女性応募者は20名に増加した。応募者のう ち、管理職に登用された者は、女性13名(男性46名)となっており、管理職 (課長職以上)に占める女性比率は、平成12年度の1.2%から平成13年度 は2.6%に増加した。新任女性管理職にはフォローアップを行うなど、ポジテ ィブ・アクションのPDCA(Plan,Do,Check,Action)を徹底している。 また、管理職登用だけでなく、女性の積極的な採用にも努めており、平成14 年度採用者の女性比率は30.3%(平成12年度13.3%)となっている。 今後の課題 FFプログラムの推進とポジティブ・アクションの定着のために、女性管理職 が組織のリーダーとなるためのマネジメント・スキルの向上といった、更なる教 育プログラムの充実を図り、また、女性の満足度を継続的に把握しつつ、ポジテ ィブ・アクションの取組を進めていくこととしている。