株式会社 大丸 「意欲、能力重視の人事制度への転換により、上級管理職への女性の登用を実現」 各種商品小売業 正社員数約4870人(うち女性約2070人) 取組背景 従来から人事制度や配置等において男女均等な取扱いをする方針をとっており、 男女雇用機会均等法施行前の昭和57年から大卒男女を同一区分で採用、育成し ている。また、昭和50年代には、既に外商部門で課長職に女性が登用されてお り、バイヤーへの女性の積極的配置も早い時期から行われてきた。 しかしながら、過去の学歴別採用や男女の役割分担意識などから、役職者比率 等において男女間に事実上の差が生じている実態もあった。 そこで、21世紀に向けた経営戦略の一環として、学歴や性別、勤続年数に関 わりなく社員が能力発揮できる人事制度への転換を図ることにより、事実上の格 差を解消し、より一層女性が働きやすい職場づくりの実現が図られることとなっ た。 取組体制 株主総会でトップが女性を登用していくことを発言するなど、経営陣全体が女 性の積極的活用の重要性を認識し、取組を行っている。 取組目標 性別や勤続年数に関わりなく、個人の意欲、能力、適性を重視し、女性の能力 発揮促進が実現できる環境の整備を目的としている。 取組内容 (1)人事制度改革 平成12年度には、人事制度をこれまでの年功重視から能力・成果重視へ転 換し、男女を対象とした人材育成、適性のある者の積極的登用という枠組みの 中で、意識的に女性の人材に目を向け、女性の能力発揮促進を図っている。 具体的には、制度として、(1)意欲のある者を支援する仕組みの確立(社内 公募制、FA<フリーエージェント>制の導入)、(2)抜擢登用を可能にする 仕組みの確立(一定の資格ランクに対応する職位等級に達していなくとも、適 性があると認められる者を当該ポストにつけ、実績を上げれば昇格させるとい うもの)、(3)新しい仕事へのチャレンジや能力アップを可能にするための教 育制度の充実(「大丸スクール」を開設し、知識習得、実践、検証、フィード バックを継続的に行うことで知識とスキルを身につける)、などを導入してい る。 (2)社内公募制による女性の積極的登用 社内公募制には、女性も積極的に応募しており、それまで従事していた仕事 とは全く違う分野への配転がかなった女性もいる。特に、専門店の運営の陣頭 指揮の役割を担うショップ店長職を創設した際には、社内公募を行い、優先的 に女性を登用した。 (3)バイヤーへの女性の積極的登用 従来は男性向きと考えられていた仕入れ業務への女性の配置に早くから取り 組んでおり、仕入れ専任のバイヤー職掌が設けられた平成元年には15名の女 性がバイヤーに登用されている。バイヤーに占める女性比率は年々高くなって いる。 (4)母性健康管理への配慮 母性健康管理についても、管理職に通達を出して従業員に制度を周知するよ う指示するなど、職場の理解を得るための配慮がなされている。 (5)セクシュアルハラスメント防止対策 全社的な取組の推進母体として「セクシュアルハラスメント防止対策委員 会」を設置し、全店での状況管理や全社的に行うべき啓発、改善策を検討する などの取組を行っている。 取組の結果 長年にわたって女性が働きやすい職場環境の土壌が形成されてきた結果、現 在では、女性の平均勤続年数は16.9年と長く、10年以上の長期勤続者の 女性が約8割、既婚者比率も3割を超える状況となっている。 女性管理職は、平成11年に部次長級の統括マネージャーへ4名の女性が初 めて登用されており、その後、平成13年に新人事制度(抜擢登用)により女 性のライン部長が誕生した。この成功事例をもとに、平成14年度には新たに 2名の女性がライン部長に登用されることとなった。 また、バイヤーの女性比率は平成元年度には7.2%であったが、平成13 年度には14.5%まで増加している。 今後の課題 制度面の整備は一応整ったが、業態の特性からも、一層の女性の活用と活躍が 不可欠であると考えており、さらに一段と能力・適性・意欲のある人材の登用、 抜擢を進めるため、平成14年度を「人材育成強化元年」と位置づけ、全社をあげ て人材の育成・強化に取り組んでいくこととしている。