(参考資料) 第2 企業訪問調査概要 当研究会では、企画業務型裁量労働制の対象となり得る事業場、業務及び労働 者の範囲を具体化する場合の参考とするため、事務局を通じて、企業に対する訪 問調査を実施した。調査対象は、業種に偏りのないように選定した11企業(建 設業、製造業、運輸・通信業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産業、サービ ス業)である。その概要は、以下のとおりである。 1 組織編成 組織編成については、大別して、次の(1)〜(3)の3つの形態がとられてい る。また、本社以外に事実上本社と言い得る事業場がある形態もみられる((4))。 (1)「本社」「地域ごとの営業組織」からなる形態 本社は、全社的な管理部門(図中の「経営企画を担当する部署」から「広報を 担当する部署」までをいう。(2)〜(4)において同じ。)及び企業の営業全 体を統轄する部署から構成される。また、地域ごとに営業本部が設置され、地域 ごとの営業全体を統轄している。地域ごとの営業本部には、役員が常駐している 場合が多い。さらに、営業本部の担当地域をより細分化した地域ごとに、支店や 営業部が設置され、具体的な営業活動を行っている。主要な支店には役員が常駐 している場合もある。(2)「本社」「本社における商品ごとの営業・事業組織」「地域ごとの営業組織」 からなる形態 本社は、全社的な管理部門及び営業本部・事業本部から構成される。(1)と は異なり、本社内部に、取り扱う商品ごとの営業本部・事業本部が設置され、そ の商品についての企業の営業・事業全体を統轄している。営業本部・事業本部は、 役員が統轄している場合が多い。また、本部の下部組織である本社営業部・事業 部では、具体的な営業・事業活動が行われる。さらに、地域ごとに支社・支店が 設置され、地域ごとの営業全体を統轄するとともに、具体的な営業活動を行って いる。主要な支社・支店には役員が常駐している場合もある。
(3)「本社」「商品ごとの営業・事業組織」「地域ごとの営業組織」からなる形態 本社は、全社的な管理部門のみで構成される。本社とは別事業場として、取り 扱う商品ごとの営業本部・事業本部が設置され、その商品についての企業の営業 ・事業全体を統轄している。本部には役員が常駐している場合が多い。また、本 部の下部組織である営業部・事業部では、具体的な営業・事業活動が行われる。 さらに、地域ごとに支社・支店が設置され、地域ごとの営業全体を統轄するとと もに、具体的な営業活動を行っている。主要な支社・支店には役員が常駐してい る場合もある。
(4)本社以外に事実上本社と言い得る事業場がある形態 全社的な管理部門を有する本社(東京以外にある場合が多い。)のほかに、全 社的な管理部門の一部を分掌する事業場(図では東京本部)があり、事実上本社 と言い得る事業場が複数存在する。事実上の本社(図では東京本部)には、役員 が常駐している。
2 各部署における業務 各部署における主な業務は、次のとおりとなっている。 【経営企画を担当する部署】 1 経営方針・経営計画の策定 2 取締役会・株主総会等の事務局 3 社内組織編成の企画及び管理 4 全社予算・決算の管理 5 経営上の問題点の把握及び改善策の策定 6 部門横断的事業のフォロー 7 社会経済情勢の調査 8 グループ企業との交流 【人事・労務を担当する部署】 T 人事管理に関する事項 1 人員計画・採用計画の策定及び実施 2 社員の募集・採用・配置・異動の実施 3 就業規則・人事関係諸規程・従業員名簿等の作成 4 賃金・退職金制度の策定 5 人事考課・昇進・昇格等の人事制度の策定 6 賞罰・服務規律の策定及び管理 7 出退勤・出張・休職・出向等の管理 U 福利厚生に関する事項 1 慶弔に関する事務 2 安全衛生管理・健康管理施策の企画及び実施 3 福利厚生制度の企画及び実施 4 福利厚生施設の管理 5 レクリエーション等の行事の企画及び実施 6 社会保険・労働保険の加入・脱退事務 7 共済会の事務局 V 労務に関する事項 1 労働組合との交渉 2 職場管理施策の立案 3 労働関係諸法規・労働事件に関する調査 4 勤労統計の作成及び生計調査の実施 5 労務費の管理 W 教育・研修に関する事項 1 教育・研修計画の立案及び実施 2 小集団活動・提案制度の推進 【財務・経理を担当する部署】 T 財務に関する事項 1 財務方針・財務計画の策定及び実施 2 資金調達計画の策定及び実施 3 資金の管理・運用・調整 4 金融機関との折衝 5 担保の検討・管理 6 銀行預金の出納管理・記帳照合 7 小切手・有価証券等の取得・管理・処分 8 法定書類の保管 9 外国為替の調査・企画・管理・銀行手続 10 会計システムの開発 U 予算・決算に関する事項 1 予算の編成及び管理 2 予算方針・業績計画の企画及び管理 3 決算に関する方針・実施要領の作成 4 決算上の調査及び分析 5 決算財務諸表・付属明細書・部門別業績管理表の作成及び検討 6 税務に関する申告書類等の作成及び申告納付 V 給与に関する事項 1 給与・賞与・諸手当・退職金の計算及び支給 2 所得税・個人住民税の源泉徴収事務 3 社会保険・労働保険の保険料の徴収及び納付 4 賃金台帳等の給与に関する諸資料の作成及び保管 5 給与計算システムの管理 W 経理に関する事項 1 売上高の集計 2 納品残高・値引額の集計 3 売掛金の集計及び入金処理 4 売掛金・買掛金の残高管理及び伝票等の保管 5 帳簿形式・計算方法の決定及び変更 6 為替差益・差損の算出 7 販売定価・仕入価格の点検及び集計 8 納品書と請求書の照合 9 仕入代金等の支払請求の点検及び実行 10 商品・サービスの原価計算の統轄 11 勘定科目の設定・改廃に伴う会計処理 12 会計伝票・会計諸帳簿の作成、点検及び保管 【総務を担当する部署】 T 庶務・管理に関する事項 1 来客受付 2 電話管理 3 浄書 4 寄付・賛助・広告に関する事務 5 諸団体の入退会・会費に関する事務 6 社外慶弔に関する事務 7 式典・社内行事の実施 8 非常災害対策の策定 9 社内会合の事務局 10 組織の新設・改廃 11 使用室・備品・什器の管理 12 物品の購入 13 自動車の管理・配車 14 固定資産の管理、固定資産税の申告 15 資産の償却 16 社内規律の策定・管理 17 部内現業の監督 18 電話料金その他料金管理 19 保険及び新聞等の購読に関する事務 20 社内各部間・社外会合の連絡・調整 U 文書に関する事項 1 定款・社則等の制定、運用管理及び改廃 2 会社内外で発受される文書類に関する事項 3 文書管理方法の企画及び管理 4 重要書類の保管 5 社史・年表等の資料整理・保管 V 株式に関する事項 1 株主総会・取締役会等の事務局 2 中間決算事務 3 増資・減資事務 4 社債の発行 5 株式の投資及び管理 6 配当金支払 【広報を担当する部署】 1 宣伝・社内外の広報の企画及び実施 2 社外からの取材への対応 3 社内誌の編集 4 インターネットホームページの維持及び更新 【法務を担当する部署】 1 訴訟への対応 2 弁護士との調整 3 契約書等の作成・審査 4 各部署からの法律相談対応 5 業務上の行為の遵法性の調査 6 営業用土地建物の登記・台帳管理 7 商業登記 8 商号・社標・商標等の管理 9 社印・職印押捺書類の審査・捺印 【営業を担当する部署】 1 営業の基本方針・基本計画の策定 2 市場実態・動向の調査・分析 3 営業成績及び収益の分析 4 営業担当部署の機構・要員・営業効率に関する調査、企画及び調整 5 販売促進策の企画 6 営業・販売活動 7 営業用物品・販売機器の管理 8 顧客からの苦情・要望等の受付及び処理 3 各部署における業務遂行の形態 各部署における業務遂行については、大別して、次の2つの形態がとられている。 (1)課制による形態 課を統轄する者(課長)の管理の下に、それぞれの担当業務を遂行する。それ ぞれの担当業務は、おおむねその職位ごとに重要度や困難度に応じて与えられる が、おおむね3〜5年程度の経験を経た者(図の例では、A:主事、B:係長、 C:総合2級)以上については、具体的な業務の遂行方法は一定程度本人の判断 にゆだねられる場合が多い。 (具体例)
・A 部長 | ─── | 課長 | ─── | 課長代理 | ─── | 主事 | ─── | 主事補 | ||
入社 12年目 |
入社 9年目 |
入社 6年目 |
||||||||
・B 部長 | ─── | 課長 | ─── | 課長代理 | ─── | 係長 | ─── | 非役職者 | ||
入社 10年目 |
入社 8年目 |
入社 5年目 |
||||||||
・C 部長 | ─── | 課長 | ─── | 課長代理 | ─── | 主任 | ─── | 総合2級 | ─── | 総合3級 |
入社 15年目 |
入社 11年目 |
入社 8年目 |
入社 4年目 |
|||||||
(注)年数は、大卒者がその職位に就く入社後の最短の年次を表す。 |
(2)グループ制による形態 グループを統轄する者(図の例では、D:グループリーダー、E:グループマ ネージャー、F:チームリーダー)の管理の下に、それぞれの担当業務を遂行す る。グループを統轄する者以下の者は相互にフラットな関係にある。それぞれの 担当業務は、その時々のグループ全体の業務の状況に応じて、経験年数や職務遂 行能力を勘案して与えられるが、おおむね3〜5年程度の経験を経た者(図の例 では、D:基幹、E:総合2級、F:総合3級)以上については、具体的な業務 の遂行方法は一定程度本人の判断にゆだねられる場合が多い。 (具体例)
・D 部長 | ─── | グループリーダー | ─┬─ |
マネージャー(入社9年目) | ||
(入社9年目) | ├─ |
統轄(入社7年目) | ||||
├─ |
基幹(入社3年目) | |||||
└─ |
一般 | |||||
・E 局長 | ─── | グループマネージャー | ─┬─ |
ディレクター(入社13年目) | ||
(入社13年目) | ├─ |
総合1級(入社9年目) | ||||
├─ |
総合2級(入社5年目) | |||||
└─ |
総合3級 | |||||
・F 部長 | ──次 長───チームリーダー | ─┬─ |
総合4級(入社6年目) | |||
(入社16年目) (入社9年目) | ├─ |
総合3級(入社4年目) | ||||
└─ |
総合2級 |