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別 紙 2 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告 平成10年7月22日 1 はじめに 平成10年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し 、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な論議が展開されるなど、 十分審議を尽くしたところである。 2 労働者側意見 労働者側委員は、一般労働者の賃金水準に対する地域別最低賃金水準の比率は、80 年代半ばから低下の一途をたどり近年横這いとなっており、これは地域別最低賃金の 表示単位が「日額」中心となっているため、時間短縮の成果を積み残してきたことが 主因とみられるとの考えを表明した。 また、今年度の目安作成にあたっては、日本経済が非常に厳しい状況にあるなかで 、内需拡大や消費回復に「適度のインパクト」を与える見地から、低所得層の賃金引 上げが望まれていること等により、賃金におけるナショナルミニマムである地域別最 低賃金を、労使の立場を超えて、公益主導による社会政策的な観点から、また、低所 得層に安心感を与える社会のセーフティ・ネットの観点から、目安引上げを検討すべ きであると主張、さらに規制緩和の進む現況においては、最低賃金を含む社会的規制 が必要不可欠である旨主張した。 以上のことを踏まえ、一般労働者の賃金水準に対する最低賃金水準の回復を確実な ものにするため、当該年度の組織労働者の賃上げ結果に格差是正分を加味することが 必要であり、平成10年度の賃金、経済等の諸指標を総合的に勘案した引上げを強く主 張した。 しかしながら、公益委員との数次にわたる折衝を踏まえ、審議のとりまとめを重視 する観点から、賃金改定状況調査結果における賃金上昇率に組織労働者の賃金上昇率 を考慮して、1.8%+αの引上げを強く主張した。 3 使用者側意見 使用者側委員は、今まで目安審議を行う際に、賃金改定状況調査結果の第4表を中 心として審議を行ってきたが、現在の経済情勢が全く予想できなかったほど落ち込み 、今なお下降の様相を強めていると指摘し、現在の目安審議の運営方法を尊重する考 えであるとしながらも、現在の経済情勢に鑑み、事情変更の原則を適用すべきである という考えを表明した。 また、賃金改定状況調査結果においても、賃金引上げを行わない事業所が昨年と比 べて飛躍的に増加していることを指摘し、これは中小企業を含めて経営の状態がもは や賃上げを許容しえない状況にまで下がっていると主張した。 さらに、今後においても、日本経済が上向きになる見通しが全く認められず、中小 企業のほとんど全てが経営悪化を懸念している中で、これ以上の賃上げを行うと中小 企業の存立基盤を危うくする恐れがある旨指摘した。 以上のような諸般の状況を踏まえ、本年は最低賃金額の引上げは行うべきではない と強く主張した。 しかしながら、公益委員との数次にわたる折衝を踏まえ、審議のとりまとめを重視 する観点から、最低賃金引上げ率は、賃金改定状況調査結果第4表を念頭に置きつつ も、凍結事業所割合等を考慮して1. 5%以下にすべきであると強く主張した。 4 意見の不一致 本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安をとりまとめるべく努めたところ であるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。 5 公益委員見解及びこれに対する労使の意見 公益委員としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、賃金改 定状況調査結果を重要な参考資料として目安額を決定するというこれまでの考え方を 基本としつつ、上記の労使の小規模企業の企業経営への配慮及びそこに働く労働者の 労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表われた諸般の事情を総合的に勘案し、 公益委員による見解を下記1のとおりとりまとめ、本小委員会としては、これを公益 委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。 また、同審議会の自主性発揮に関し、従前同様下記2のとおり示し、併せて総会に 報告することとした。 なお、下記1の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容 となっているとし、不満の意を表明した。 記 (以下別紙1と同じ)