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      労働基準法の1部を改正する法律案要綱





1 契約期間の上限



  次のいずれかに該当する期間の定めのある労働契約については、契約期間の上限を

 3年とするものとすること。



(1)新製品、新技術若しくは新役務の開発又は科学に関する研究に必要な専門的な知

  識、技術又は経験であって労働大臣が定める基準に該当する高度なものと認められ

  るものを有する労働者が不足している事業場において、当該高度の専門的な知識、

  技術又は経験を有する労働者を新たに確保するために締結する労働契約



(2)事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内に完

  了することが予定されているものに必要な専門的な知識、技術又は経験であって労

  働大臣が定める基準に該当する高度なものと認められるものを有する労働者が不足

  している事業場において、当該高度の専門的な知識、技術又は経験を有する労働者

  を新たに確保するために締結する労働契約((1)に掲げる労働契約を除く。)



(3)60歳以上の労働者と締結する労働契約((1)及び(2)に掲げる労働契約を

  除く。)





2 労働条件の明示



  労働契約の締結に際し、使用者が命令で定める方法により労働者に対して明示しな

 ければならない事項について、労働時間に関する事項その他の命令で定める事項を追

 加するものとすること。



 注  「命令で定める事項」は、@就業の場所及び従事する業務に関する事項、A始

   業及び終業の時刻(所定時間外労働がある場合は、その旨)、休憩時間、休日、

   休暇並びに就業時転換に関する事項、B退職に関する事項、C労働契約の期間

   (有期労働契約の場合に限る。)とする。





3 退職時の証明



  労働者が退職の場合において使用者に証明書を請求できる事項として、退職の事由

 (退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)を追加するものとするこ

 と。





4 1箇月単位の変形労働時間制



  労使協定(使用者と、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合

 においては当該労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては

 労働者の過半数を代表する者(以下「労働組合又は労働者の過半数を代表する者」と

 いう。)との書面による協定をいう。以下同じ。)又は就業規則等により制度を実施

 できるものとすること。





5 1年単位の変形労働時間制



(1)労働大臣は、対象期間における労働日数の限度を命令で定めることができるもの

  とするとともに、命(令で定める連続して労働させる日数の限度に関し対象期間中

  の特に業務が繁忙な期間として労使協定で定める期間に係る特例を定めることがで

  きるものとすること。



 注(1)命令で定める労働日数の限度について、一定日数とすることと併せて、1日

  又は1週間の最長所定労働時間を延長する場合は延長前の労働日数を下回ることと

  する。



 注(2)命令で定める連続して労働させる日数の限度は6日とし、特に業務が繁忙な

  期間として労使協定で定める期間に係る特例は現行どおりの日数とする。



 注(3)命令で定める1日及び1週間の労働時間の限度について、7(1)の基準と

  の均衡を考慮して所定労働時間が限度に達する期間がいたずらに長期間にわたるこ

  とのないよう必要な措置を講じた上で、対象期間が3箇月を超える場合についても

  1日10時間、1週間52時間とする。



 注(4)7(1)の基準において1年単位の変形労働時間制に関する時間外労働につ

  いての労使協定で定める時間の限度について低い水準を設定する。



(2)使用者は、労使協定により、対象期間を1箇月以上の期間に区分したときは、最

  初の期間以外の各期間の労働日及び労働日ごとの労働時間を、当該各期間の初日の

  少なくとも30日前に労働組合又は労働者の過半数を代表する者の同意を得て、あ

  らかじめ労使協定により定めた労働日数及び総労働時間を超えない範囲内において

  定めるものとすること。



(3)対象期間を通じて使用されない労働者についても制度の対象とすることができる

  こととし、この場合において、使用者は、対象期間中の当該労働者の使用期間を平

  均して1週間当たり40時間を超えて労働させたときは、その超えた時間について

  法定割増賃金に係る規定の例により割増賃金を支払わなければならないものとする

  こと。





6 一斉休憩



  使用者は、一斉に付与することに代えて、労使協定の定めにより休憩時間を与える

 ことができるものとすること。





7 時間外労働



(1)労働大臣は、労使協定で定める延長する労働時間を適正なものとするため、当該

  労使協定で定める時間の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外

  労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができるものとすること。



(2)使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、労使協定で延長する労

  働時間を定めるに当たり、当該労使協定が(1)の基準に適合したものとなるよう

  にしなければならないものとすること。



(3)行政官庁は、(1)の基準に関し、使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代

  表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができるものとすること。

 注 労働者の過半数を代表する者の選出方法及び職制上の地位等を適正なものとする

  ために必要な事項については、命令で規定するものとすること。





8 裁量労働



(1)事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、使用者及び当該事業場の労

  働者の代表者を構成員とし賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審

  議し事業主に対し意見を述べることを目的とする委員会が設置されている場合であ

  って、使用者がその委員会において委員の全員の合意により行われた次に掲げる事

  項に関する決議を行政官庁に届け出た場合において、ロの労働者の範囲に属する労

  働者をイの業務に就かせたときは、当該労働者は、ハに定める時間労働したものと

  みなすものとすること。



  イ 事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、

   その性質上当該業務を適切に遂行するためにはその遂行の方法を大幅に当該業務

   に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があることから、当該業務の遂行の手段

   及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務



  ロ イの業務に就かせたときは決議で定める時間労働したものとみなされることと

   なる労働者の範囲



  ハ ロの労働者の範囲に属する労働者であってイの業務に従事するもの(以下「対

   象労働者」という。)の労働時間の算定については、当該決議で定めるところに

   よること。



  ニ 対象労働者の労働時間の状況に応じた対象労働者の健康及び福祉を確保するた

   めの措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。



  ホ 対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使

   用者が講ずること。



(2)(1)の委員会は、次の要件に適合するものでなければならないものとすること。



  イ 委員会の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働

   組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合が

   ない場合においては労働者の過半数を代表する者に指名されている者であること。



  ロ 委員会の設置について、行政官庁に届け出ていること。



  ハ 委員会の議事について、議事録が作成され、かつ、保存されるとともに、労働

   者に対する周知が図られていること。



  ニ イからハまでに掲げるもののほか、命令で定める要件



  注 労働者の過半数を代表する者に指名されている者の信任手続については、命令

   で規定するものとすること。



(3)労働大臣は、対象労働者の適正な労働条件の確保を図るために、(1)の委員会

  が決議すべき(1)イの業務、ロの労働者の範囲並びにニ及びホの措置並びにその

  他の事項についての指針を定め、これを公表するものとすること。

  注 指針において、制度の適用に当たっての労働者本人の同意及び申出による適用

   除外、労働者が同意しなかったこと等を理由とする不利益取扱いの禁止並びに業

   務の遂行状況や成果等の評価基準等労使が話し合って定める事項についても示す

   こととする。



(4)(1)の委員会において、労働時間に関して労使協定により定めることとされて

  いる事項等について、その委員全員の合意による決議が行われた場合は、当該決議

  は労使協定等と同様の効果を有するものとすること。





9 年次有給休暇



  使用者は、3年6箇月以上継続勤務し、直近の1年間の全労働日の8割以上出勤し

 た労働者に対しては、2年6箇月を超えて継続勤務する日から起算した継続勤務年数

 1年ごとに2労働日の有給休暇を追加して与えなければならないものとすること。





10 就業規則



  就業規則の作成に当たり別に規則を定めることができる事項に関する制限を廃止す

 るものとすること。





11 紛争の解決の援助



(1)都道府県労働基準局長は、労働条件についての労働者と使用者との間の紛争(労

  働争議に当たる紛争(及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する

  事業主の措置についての紛争を除く。)に関し、その双方又は一方からその解決に

  つき援助を求められた場合には、必要な助言又は指導をすることができるものとす

  ること。



(2)都道府県労働基準局長は、(1)の助言又は指導をするため必要があると認める

  ときは、広く産業社会の実情に通じ、かつ、労働問題に関し専門的知識を有する者

  の意見を聴くものとすること。





12 法令等の周知義務



  使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨並びに就業規則に加えて、この法

 律に基づく労使協定並びに8(1)及び4に規定する決議を労働者に周知させなけれ

 ばならないものとし、これらの周知に当たっては、常時各作業場の見やすい場所に掲

 示し、若しくは備え付けること又は命令で定める方法によるものとすること。



 注(1)「命令で定める方法」は、労働者に書面を交付することを定めることとする。



 注(2)使用者は労働者が労使協定の締結当事者又は8(1)の委員会の委員である

    こと等を理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならないことを

    命令で規定するものとすること。





13 その他



(1)適用事業の範囲を号別に列記する方式を改め、労働者を使用する事業又は事務所

  に適用する(同居の(親族のみを使用する事業若しくは事務所及び家事使用人につ

  いては適用しない。)ものとすること。



(2)使用者は、15歳に達する日以後の最初の3月31日まで児童を使用してはなら

  ないものとするとともに、軽易な労働についての許可に係る年齢を13歳とするも

  のとすること。



(3)その他所要の整備を行うものとすること。





14 附則



(1)施行期日

   この法律は、平成11年4月1日から施行するものとすること。ただし、11に

  ついては平成10年10月1日から、13(2)については平成12年4月1日か

  ら施行するものとすること。



(2)経過措置等



  イ 労働大臣は、7(1)の基準において労使協定で定める時間の限度を定めるに

   当たっては、平成11年4月1日以後女性の時間外労働に関する規定が適用され

   なくなることにかんがみ、改正前の当該規定に該当する労働者であって子の養育

   又は家族の介護を行う者(労働省令で定める者に限る。)の職業生活の著しい変

   化がその家庭生活に及ぼす影響を考慮して、労働省令で定める期間、使用者に申

   し出た当該労働者に係る労使協定で定める時間の限度を、当該労働者以外の者に

   係る労使協定で定める時間の限度とは別に、これより短いものとして定めるもの

   とすること。



  ロ 政府は、イの労働省令で定める期間が終了するまでの間において、子の養育又

   は家族の介護を行う労働者の時間外労働の動向、育児休業、介護休業等育児又は

   家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行状況等を勘案し、当該労働者の

   時間外労働に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるとき

   は、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。



  ハ この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるものとすること。



  ニ 関係法律について所要の改正を行うものとすること。



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