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II 統計から見た申告事件の概要



1申告事件の取扱い件数


─全国で約2万5千件─

平成8年に新たに受理した申告件数は、21,494件。これに、前年から引 き続き取扱いを継続したもの4,043件を加えた、合計25,537件につい て解決に努めた。



2 新規受理の状況


─6年続けて増加─

申告事件の新規受理件数は、過去10年間の推移を見ると、

    昭和62年20,117件
    昭和63年16,972件
    平成 元年13,589件
    平成 2年12,637件
    平成 3年13,013件
    平成 4年16,267件
    平成 5年20,162件
    平成 6年20,390件
    平成 7年20,848件
    平成 8年21,494件

と推移しており、景気の動向に左右される傾向があり、いわゆるバブル景気中は 減少したが、バブル景気の破綻後は、6年間連続して増加しており、平成8年は 過去10年間において最も多くなった(図1)。



3申告の内容


─賃金の不払が約75%─

申告の内容を法律の主要事項別に見ると、平成8年は賃金の不払関係が16,0 87件あり、新規に受理した事案の74.8%に及んでいる。
解雇の手続関係については、平成8年は5,434件と全体の25.3%を占 めている。この他では、平成8年は労働時間関係が1,037件(4.8%)、 安全衛生関係が347件(1.6%)、最低賃金関係が293件(1.4%)な どとなっている。(一度に複数の事項を申告することもあるので主要事項別の件 数は重複して計上されたものである。)



4 申告の対象となった事業場の業種


─建設業、商業、製造業で半数以上─

平成8年に処理した25,537件の申告の対象となった事業場の業種は、建 設業が5,193件(20.3%)と最も多く、次に商業の4,986件(19 .5%)、製造業の4,447件(17.4%)、接客娯楽業の 3,873件 (15.2%)、運輸交通業の2,090件(8.2%)の順となっており、こ れら5業種で全体の80.6%を占めている。 上記以外の業種では、近年の成長産業であるソフトウェア業を含む教育研究業 が586件(2.3%)、労働者派遣業が378件(1.5%)となっている。 これらの2業種についてみると、いわゆるバブル景気の影響を大きく受けていな い昭和62年は、教育研究業が409件(1.7%)、労働者派遣業が70件( 0.3%)となっていたが、いわゆるバブル景気崩壊後に申告件数が急増し、平 成5年には、教育研究業は約2倍の854件、労働者派遣事業は約7倍の472 件と最高となった。その後、景気が回復基調にあると言われているが、依然とし てこれらの業種についての申告件数は、大きく減少することなく推移している。



5申告についての指導・監督結果


─監督した約7割に違反─

平成8年に取り扱った25,537件のうち、臨検監督や使用者に出頭を求め た上での指導などにより解決するなどして完結したものは、21,104件であ り、8年中に事案が完結せず、翌年に繰り越したものが4,433件であった。 平成8年に労働基準監督官が事業場に赴き関係書類を調査し、使用者等関係者 に直接会って事情を聞く等の監督を実施したものは16,151件(新規に受理 した21,494件の75.1%に相当)であり、その結果労働基準法等の法令 違反を確認して改善指導等を行ったものが、11,229件、違反率は69.5 %となっている。
この違反率は、昭和62年73.7%、昭和63年71.0%、平成元年69 .3%、平成2年68.6%であり、平成3年以降は、毎年7割前後で推移して おり、平成3年69.8%、平成4年70.4%、5年70.2%、平成6年7 0.6%、平成7年69.8%と、近年ほとんど変化がない。



6賃金の不払関係の事案の動向


─1年間で労働者47,456人の賃金約202億円が不払。
このうち約85%の労働者の賃金約132億円を当該年度中に救済─


新規に受理した申告事案の内、賃金の不払関係の事案の過去10年間の動向は

    昭和61年16,335件
    昭和62年14,473件
    昭和63年12,126件
    平成 元年9,554件
    平成 2年8,683件と、減少を続けたが、
    平成 3年8,981件と、増加に転じ、
    平成 4年11,918件
    平成 5年14,401件
    平成 6年15,770件
    平成 7年15,461件
    平成 8年16,087件

と、6年連続して件数が増加している。 平成7年度中(この項目は年度統計)に労働基準監督署が取り扱った事案で法 令違反があったものは、件数が13,283件、対象労働者が47,456人、 不払の金額の総額は、約202億3,527万円(1件平均約152万円、労働 者1人平均約43万円)であり最近の傾向としては平成2年を境にして大幅な増 加傾向にある(図3)
これらの事案について、平成7年度中に労働基準監督署の行政指導により使用 者が賃金を支払ったものは、7,461件であり、対象労働者が18,692人 、支払われた金額の総額は約48億5,461万円である。 さらに企業の倒産等により「賃金の支払の確保等に関する法律」(昭和51年 5月27日法律第34号)に基づく立替払制度によって未払賃金の一定部分の支 払を受けたものが1,274件であり,対象労働者は21,574人、立替払を 受けた金額の合計は約83億5,137万円(労働福祉事業団調べ)である。 これにより、件数で8,735件(65.8%)、対象労働者数で40,26 6人(84.8%)、金額の総額で約132億598万円(65.3%)が平成 7年度中に救済された。
なお、平成8年に賃金の不払の申告等を契機として、全国の労働基準監督署が 賃金支払の行政指導に従わない等の理由により使用者等を労働基準法違反で送検 した件数は311件である。



7解雇の手続関係の事案の動向


─バブル景気後増加し、高止まり傾向─

労働基準法では、労働者を解雇をする場合、原則として、少なくとも30日前 に予告するか、予告に代えて解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払 うこと等が定められている。
この解雇の手続関係を内容とする申告事案は、平成8年では5,434件とな っている。

過去10年間の動向は、図2に示すとおり

    昭和61年4,891件
    昭和62年4,407件
    昭和63年3,428件
    平成 元年2,821件
    平成 2年2,611件と、減少を続けたが、
    平成 3年2,842件と、増加に転じ、
    平成 4年3,967件
    平成 5年5,505件
    平成 6年6,002件
    平成 7年5,371件
    平成 8年5,434件
    と高止まり傾向にある。

なお、平成8年に解雇の手続違反の申告等を契機として、全国の労働基準監督 署が行政指導に従わない等の理由により使用者等を労働基準法違反で送検した件 数は10件である。



8外国人労働者に係る事案の動向


─申告件数は1,000件前後で推移 ─

全国の労働基準監督署において取り扱った外国人労働者に係る申告事案の件数
は、
平成4年  740件
平成5年1,009件
平成6年1,059件
平成7年  991件
平成8年  950件

と、平成5年以降の過去4年間は、約1,000件前後で高止まりしている。 平成8年の申告の内容を見ると、賃金不払の関係が700件(73.7%)、 解雇の手続関係が197件(20.7%)となっている。


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