4.その他の石綿製品 (1)摩擦材 (1)調査結果等 厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカーからは、 「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、石綿製品の使用 を必要とする理由はないと回答があった。 一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がや むを得ないか」との設問に対し、石綿製品の使用が必要と回答があった。 代替が困難なものは、クラッチ、ブレーキライニング材との回答があった。 これらの製品の非石綿製品への代替見込時期は、2003年頃との回答がある 他、時期未定との回答があった。 (2)ヒアリング結果 委員会等において、石綿製品のメーカー、ユーザーからヒアリングを行った ところ、次のような意見があった。 ・エレベータのブレーキについては既に非石綿化されている。エスカレータ、 特に自動運転式のエスカレータのブレーキについては、停止頻度が高く摩耗 量が多いために石綿製品が使用されているが、2003年中に非石綿製品へ の代替が可能である。 ・クレーンの走行部分やコンベアの制動用に使用されているブレーキについて は石綿製品が使用されているが、非石綿製品への代替化は可能である。 ・フォークリフトのブレーキは非石綿化が進んでおり、石綿が使用されている 機種についても、部品の交換の際に非石綿製品への代替化を予定している。 ・自動車のブレーキについては、業界の非石綿化への自主的取組みにより、平 成7年以降の自動車のブレーキは非石綿化されている。 ・鉄道車両のブレーキについては、新造車両のものは既に非石綿化されており、 旧来の車両のものについても非石綿化が進んでいる。 ・航空機の滑走用車輪のブレーキについては、石綿は使われていない。 ・原子力発電所の制御棒駆動機構の摩擦材については石綿製品が使われている ものがあり、石綿製品を使わない機構の適用を検討中である。 ・代替材としては、ブレーキライニング及びディスクパッドにアラミド繊維、 クラッチフェーシングにガラス長繊維が主として用いられている。また、焼 結合金が自動車のブレーキに用いられている。 (3)規格・関係法令等 日本工業規格においては、「JIS R3455 産業機械用石綿ブレーキライニン グ」、「JIS D4311 自動車用クラッチフェーシング」、「JIS D4411 自動 車用ブレーキライニング及びパッド」で性能等が規定されている。 英国の石綿禁止法令において、車のブレーキライニング、航空機又はヘリコ プターの部品で安全運転に必要なものは施行時期が猶予されている。 フランスの石綿禁止法令において、航空機用品は施行時期が猶予されている。 (4)石綿製品の代替可能性について 摩擦材については、次に示す理由により、非石綿製品への代替は可能と考え られる。 ・厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカーからは 石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。 ・自動車、鉄道車両、フォークリフト、クレーン・エレベータ・エスカレータ 等産業機械のブレーキについては、既に非石綿化されているか、今後代替化 が予定されており、技術的には代替化が可能と考えられること。 石綿を含有するクラッチ、ブレーキライニングは製造の際のみならず、当該 製品の使用において摩耗することにより、メンテナンス時等に関係労働者が石 綿に曝露されるおそれがあることからも、代替化することが必要である。 (2)石綿布、石綿糸等 厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品メーカーは、「石綿 を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、半製品であるためにユ ーザー、最終製品メーカーでないと代替可能性等について判断することは困難と 回答があった。 また、ヒアリング等の結果、防炎服には現在石綿は用いられていないとの回答 があった。 日本工業規格においては、「JIS R3451 石綿布」及び「JIS R3452 石綿組 みひも」で性能等が規定されていたが、これらの規格は現在廃止されている。 石綿布、石綿糸等の代替可能性については、それら製品がシール材等として使 用されるか、二次的にシール材等に加工されることから、シール材等の代替可能 性に連動すると考えられる。