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第5部 石綿含有非建材の代替可能性について
1.断熱材用接着剤
厚生労働省が実施したアンケート調査において、「石綿を使用しなければ安全
確保等が困難か」等の設問に対し、石綿製品のメーカー、ユーザーともに安全確
保等の観点からは石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
また、ヒアリング等の結果、電動機のローターとシャフトの接着に石綿を含有
する接着剤が用いられているものがあったが、接着剤メーカーからは数ヶ月以内
に代替する予定であるとの回答があった。
接着剤の規格としては、日本工業規格「JIS A5537 木れんが用接着剤」、
「JIS A5538 壁・天井ボード用接着剤」、「JIS A5547 発泡プラスチック保
温板用接着剤」の各々の本文において充てん材として石綿を含有してはならない
と規定されている。「断熱材用接着材」に係る日本工業規格はない。既に製造さ
れている非石綿製品に使用されている代替繊維には、セピオライト、二酸化けい
素、樹脂等がある。
断熱材用接着剤については、次に示す理由により、非石綿製品への代替化は可
能と考えられる。
・既に商品化されている非石綿製品があり、技術的には非石綿製品への代替化
は可能であると考えられること。
・厚生労働省が実施したアンケート調査において、石綿製品のメーカー、メー
カー団体から既に製造を中止していると回答があったこと、またユーザー団
体からは石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
・ヒアリング等の結果石綿製品の使用が判明した、電動機において使用されて
いるものについては、代替が確実であると考えられること。
2.耐熱・電気絶縁板
(1)調査結果等
厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカーから
は、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、安全確保等
の観点からは石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用が
やむを得ないか」との設問に対し、2団体から石綿製品の使用が必要と回答があ
った。
代替が困難なものは、高温高圧ガスから保護するための断熱ゴムシート、変圧
器のヒーター・磁気遮断器の電気絶縁板等の回答があった。
(2)ヒアリング結果
委員会においてユーザー団体からヒアリングを行ったところ、次のような意見
があった。
・2000℃を超える極めて高い温度で使用される断熱材は代替困難である。
・電力用機器内のヒーターの取付けに用いられる耐熱・電気絶縁板は、機器の
点検時にセラミック系のものに代替する予定である。
・検知器の取付け部に用いられている絶縁シートは、現在代替品を検討中で見
込みはある。
・配管に巻き付ける耐熱シートについては、代替品を選定済みである。
・ジョイントシートを断熱材や高圧縮力を受ける部分の絶縁板として用いてい
る例があり、代替可能性は不明である。
(3)規格・関係法令等
海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)及び船舶安全法に基
づく船舶設備規程等においては石綿を含む材料の使用が禁止されているが、10
00℃を超える高温下で使用される軟性及び弾力性の必要な断熱材、ロータリー
式圧縮機及びロータリーポンプにおいて使用される羽根車は適用を除外されてい
る。
英国の石綿禁止法令においては、乾燥時に1900kg/m3以上の密度で500
℃以上の温度に使用する板状のものは施行時期を猶予された。
フランスの石綿禁止法令においては、1000℃を超える温度に対応するため
工業的環境で用いられる柔軟・フレキシブルな断熱装置は施行時期を猶予された。
日本工業規格には、「耐熱・電気絶縁板」を規定する規格はない。
(4)耐熱・電気絶縁板の代替可能性について
耐熱・電気絶縁板については、厚生労働省が実施したアンケート調査において
メーカーは石綿製品の使用が不可欠とは回答しておらず、既にセラミック等の非
石綿製品に代替されているものや代替が予定されているものがあり、非石綿製品
への代替化が可能なものがあると考えられる。しかしながら、極高温の環境下で
使用されるもの等一部のものについては、安全確保の観点から石綿の使用が必要
とされており、現時点で代替可能なものと代替困難なものを温度等の使用限界や
使用される機器の種類等から明確に特定することは困難である。
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