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第4部 石綿含有建材の代替可能性について



 3.繊維強化セメント板



 (1)繊維強化セメント板(平板)の調査結果等



   厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、

  「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、40種類の商品

  中30種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理由は

  ないと回答、10種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、3種類

  の商品については安全確保のために、7種類の商品については安全確保以外の理

  由で必要と回答があった。

   石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品は経年変化について

  の信頼性や強度が欠ける、非石綿製品に代替化するための製造法の転換が困難等

  の回答があった。

   また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2005年頃

  とする商品がある他、2008年、2007〜2012年頃とする商品があり、

  さらに時期未定又は代替不可能とする商品があるとの回答があった。

   一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用が

  やむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回

  答があった。



  

 (2)繊維強化セメント板(波板)の調査結果等



   厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、

  「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、52種類の商品

  のうち23種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理

  由はないと回答、29種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、8

  種類の商品については安全確保のために、21種類の商品については安全確保以

  外の理由で必要と回答があった。

   石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品の耐久性や強度の不

  足、危険物倉庫・高温高圧機器設置工場の火災・爆発時の被害軽減、化学工場・

  沿岸地域の工場の建屋の腐食防止、高電圧取扱建屋の感電事故防止、代替化する

  場合の成形上の問題・設備投資が必要・コストアップ、葺き替え補修等の回答が

  あった。

   また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2004〜

  2005年頃とする商品がある他、時期未定又は代替不可能とする商品があると

  の回答があった。

   一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用が

  やむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回

  答があった。



  

 (3)繊維強化セメント板(平板及び波板)のヒアリング結果



   委員会においてメーカー及びメーカー団体からヒアリングを行ったところ、主

  に次のような意見があった。



   ・繊維強化セメント板(平板)に比べ繊維強化セメント板(波板)の代替化は

    遅れているが、一部の非石綿製品については商品化されている。



   ・繊維強化セメント板(波板)については「JIS A5430 繊維強化セメント

    板」の性能基準(本体の性能基準及び附属書1で示された性能基準等)を満

    足する試作品が開発されている。



   ・代替繊維を用いた製品は、石綿製品と比較して収縮率が大きく、製造当初の

    強度は技術的に確保できるが耐久性が低い。



   ・繊維強化セメント板(波板)については業界全体で非石綿化の取組みを行っ

    てきているが、特に大波板については非石綿製品の強度、長期の耐久性等を

    考慮に入れた慎重な検討が必要である。



   ・非石綿製品についてはプレスで密度を高め強度を上げることとなるため、大

    型のプレス機が必要である。



   ・山むね、波・・・・のきさき等の役物スレートは非石綿繊維製品への代替が

    不可能なため金属製品に代替することになるが、その場合には、耐防火性能

    に係る国土交通大臣の認定を取得する必要があると考えられる。



   ・非石綿化を図るためには技術の革新や製造設備の投資のための支援措置が必

    要である。



   一方、ユーザー団体からヒアリングを行ったところ、アンケート調査の結果と

  異なり、平板及び波板のいずれも石綿製品を使用しなければならない理由はない

  との意見があった。



  

 (4)関連規格等



   繊維強化セメント板については、日本工業規格「JIS A5430 繊維強化セメン

  ト板」で平板、波板ともに性能等が規定されている。既に製造されている非石綿

  製品で使用されている代替繊維は、パルプ、ビニロン繊維が中心である。



  

 (5)繊維強化セメント板の代替可能性について



   厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングにお

  いて、石綿製品メーカーから、一部の製品を除き非石綿製品への代替化は困難で

  あるとの意見が出されたが、高圧プレス装置の導入等の製造設備の変更、混和材

  料の添加等の原材料の変更、製造方法の変更等の必要がある場合があるものの、

  次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。



   ・技術的な可能性

    (1)既に商品化されている非石綿の繊維強化セメント板があること



    (2)「JIS A5430繊 維強化セメント板」で規定されたスレートの性能基準

     (曲げ破壊荷重、吸水率、透水性、難燃性、耐衝撃性)に適合する非石綿

     製品があること



    (3)建築基準法の不燃材料として国土交通大臣に認定されている非石綿の繊

     維強化セメント板があること



    (4)欧州において屋根材、外装材の非石綿化が進んでおり、代替品として、

     石綿以外の繊維を使用した製品のほか、金属が使用されている例もあり、

     金属等の非繊維製品への代替化も可能であると考えられること



    等から、技術的には非石綿製品への代替化は可能であると考えられること



   ・関連規格等の状況

     平成12年6月施行の改正建築基準法において不燃材料の基準が性能規定

    化されたこと、繊維強化セメント板の日本工業規格については、平成13年

    3月の改正により石綿を含まない製品の性能基準がISO規格の内容を附属書

    として取り込むことにより規格化されたこと(「附属書1 繊維強化セメン

    ト板−長尺波板」で性能基準として破壊荷重、たわみ、透水性、耐凍結融解

    性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定。「附属書

    2 繊維強化セメント平板」で性能基準として曲げ強度、透水性、耐凍結融

    解性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定)等から

    非石綿製品への代替化が促進されやすい状況になっていること



   ・ユーザーの認識

     厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリング

    の結果から判断して、建材製品のユーザーは安全確保の観点から石綿製品の

    使用が不可欠とは認識していないと考えられること



   ・安全確保上の必要性

     非石綿繊維を用いた代替品は石綿製品に比べて耐久性が低下するとのデー

    タがあるものの、屋根材として使用する場合の踏み抜き等による作業者の墜

    落の危険性は石綿製品も同様にあり、通常の使用においては、非石綿製品に

    代替化することにより新たに安全上の問題が発生することはないと考えられ

    ること、化学工場等の建屋に防火性能上の観点から石綿製品が不可欠である

    という理由は特にないと考えられること等、安全確保の観点から石綿製品の

    製造・使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること

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