8.労働災害防止の支援体制の整備 (1) 情報提供体制の整備 安全衛生情報センターにおいては、既に、災害事例、法令通達等有用な安全衛 生情報をインターネット上でアクセスできる体制をとっているが、引き続き、安 全衛生情報センターから情報の提供を図る。 また、安全衛生情報センターにおいては、安全衛生意識の高揚に寄与するため、 労働災害を疑似体験できるバーチャル・リアリティ(VR)シアター及び3次元 (3D)シアター等による情報提供を推進する。さらに、併設された産業安全技 術館では各種の機械設備、保護具等を展示しており、これら体験型の3施設の機 能を連携強化することにより、安全衛生情報センターを労働安全衛生分野におけ る情報発信の拠点として位置付け、広く国民全般の安全に貢献する。 (2) リスク評価及び調査研究の体制整備 労働安全衛生関係法令や施策を検討する際の基礎情報を得るために、科学的か つ実証的観点からリスクの評価、専門技術的な立場から労働災害の原因究明等を 実施する調査研究機関の行政との連携を検討する。 また、労働災害の原因調査については、人的要因及び物的要因にとどまらずに、 その背景にある管理的要因にも踏み込んだ本質的な原因の究明を図るための災害 分析手法の開発を行い、有効な再発防止対策に結び付ける仕組みを検討する。 労働安全衛生分野の調査研究については、労働災害の発生原因、防止対策等の 自然科学的観点からのアプローチが中心であったが、今後は同分野での研究に加 えて、労働災害防止対策の普及のための条件、費用対効果分析、社会システムの 在り方等の社会科学的視野も踏まえて、より一層効果的、効率的な労働災害防止 対策に取り組むこととする。 さらに、労働安全衛生対策が産業現場全体のニーズ、科学的なリスク評価等を 基礎として策定される必要があることから、調査研究機関、行政機関、産業界等 の間で、調査研究課題の選定、調査研究成果の活用等に当たって緊密な連携を図る。 (3) 労働災害防止団体等の活動の充実 労働災害防止団体等の安全衛生関係団体が、事業者等のニーズを踏まえた有効 な支援サービスの開発を進め、その普及定着に積極的に取り組むことを促進する。 特に、業種別労働災害防止団体において、業種特有の有効なリスク低減対策に 関する継続的な調査研究の実施を促進し、その成果を各分野における労働災害防 止対策に活用するとともに、安全衛生管理活動を引き続き効果的に進めるために、 安全衛生に関する専門スタッフのノウハウを継承し活用する方策を検討する。 また、労使による労働災害防止活動を推進するという観点から、労災防止指導 員の効果的な活用を行うことにより、中小規模事業場等における安全衛生管理の 向上を図る。 (4) 労働安全衛生サービスのアウトソーシング化への対応 中小企業においては労働安全衛生のすべての分野について専門的な知識・ノウ ハウを有したスタッフや機材を抱えておくことが困難であり、大企業においても 専門的なサービスについてアウトソーシング化のニーズが高まりつつある状況を 踏まえ、企業からの依頼に応じて専門的な労働安全衛生サービスを提供する質の 高い外部専門機関の活用及びその活用による安全衛生管理の在り方の検討を行う。 (5) 国際的な視点に立った行政展開 ILO条約を始め安全衛生に関連する国際的な条約、規格等については、国内制 度への取り入れを図るとともに、その策定段階から積極的に参画し、我が国から 提案を積極的に行う等国際貢献の一層の推進を図る。 また、海外進出企業で働く日本人労働者の安全衛生を確保するため、海外進出 企業に対する安全衛生セミナーの開催、国際安全衛生センターを通じた安全衛生 情報の提供を推進するとともに、海外巡回健康相談の実施等を推進する。 さらに、開発途上国に対する安全衛生分野の技術協力については、積極的に推 進する。 (6) 評価を踏まえた施策の実施 労働者の安全と健康の確保に関する施策の評価についても既に一部実施してい るところであるが、労働市場の変化、科学技術の進展等に基づく今後の見通しを 踏まえ、業種別等の労働災害防止対策、中小規模事業場対策、自律的な安全衛生 管理体制の確立等の安全衛生の施策に係る適切な評価の方法を検討し、的確な評 価を実施することにより、施策の効率的かつ効果的な実施を図る。